■スポンサードリンク


聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号
聖灰の暗号



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

聖灰の暗号の評価: 4.23/5点 レビュー 39件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.23pt
Created with Highcharts 5.0.101件2.56%0件0.00%6件15.38%14件35.90%18件46.15%得点得点☆1☆2☆3☆4☆5


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全32件 1~20 1/2ページ
12>>
No.32:
(5pt)

本作品はミステリーではありません。宗教とは何かを問う作品です。

本作品はミステリーではありません。宗教とは何かを問う作品です。
主人公たちは、上巻の終わりで、キリスト教・カタリ派の弾圧を目撃した人物の手稿を見つけます。
下巻は、上巻で見つけた手稿の内容から始まります。手稿は複文で、一文がかなり長く、突然に昔の話が始まりますので、面食らいます。
上巻で、主人公がキリスト教を批判して、学会の発表会を白けさせる場面に違和感がありましたが、下巻の手稿の伏線だったようです。
巻末の注釈によれば、手稿は作者の創作とのことですが、中世に行われた異端審問や魔女狩りは、おそらく本作品以上のものだったのでしょう。
手稿が終わると、手稿の続きを探す話や、殺人事件、誘拐事件が起こります。
作者=帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)の歴史小説ばかり読んでいたので、現代を舞台にしたミステリーは不思議な感じがしましたし、残りのページ数で手稿を見つけ、犯人が分かるのか心配になります。
後半は、再び、見つけ出した手稿の話となります。
後半の手稿もカタリ派弾圧の非公式記録ですが、信心とは、宗教とは何かという問題を読者に出してきます。
手稿は、まるで作者の「信仰告白」のようです。(ネットを検索しましたが、作者がクリスチャンかどうかは分かりませんでした)
キリスト教の信者ではない者にとって、カトリックの、三位一体とか、死んだキリストが生き返るという教義は、受け入れにくいのですが、本作品で展開されるカタリ派の教義や信者の生活は、すんなりと心に入ってきます。
中世の、権威・権力を持ち堕落した(?)カトリックよりも、カタリ派の方がクリスチャンらしく思えます。
殺人、誘拐事件のミステリーは唐突に終わりますが、本作品の主題は謎解きではなく、権威主義や宗教心にありますので、全く問題ありません。
宗教とは何かを問う、おすすめの1冊です。
聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)より
4101288208
No.31:
(4pt)

帚木蓬生(ははきぎ ほうせい)の小説にハズレなし

本作品は、主人公がフランスの田舎にある図書館で、キリスト教カタリ派の弾圧に関する文書を見つけるところから物語が始まります。
物語の始まりがゆったりとしているので、史跡を巡って、忘れられているカタリ派の歴史を掘り起こしてゆく話かと思いましたが、親切にしてもらった図書館長が不審な事故で死に、重要な資料を持っていると思われる人が自殺を装って殺されてしまい、一気にミステリー小説になってしまいます。
歴史を掘り返されたくないのならば、鍵を握る人物を殺すよりも、探求している主人公を殺した方が良いのではないかとか、「偶然」墓地で知り合いになった女医や、「偶然」田舎の村で出会ったナイフ職人と一緒になって謎解きをはじめるのは不自然ではないのかという疑問を吹き飛ばして物語は進んでゆきます。
主人公たちは、上巻の最後に重要な文書を見つけますので、続きを楽しみに下巻に進みます。
本作品の舞台は、日本ではほとんど知られていない、ピレネー山脈のフランス側。
内容は、やはり全く知られていないオキシタン語(フランス語の方言?)と、キリスト教カタリ派の弾圧についてです。
カタリ派とは三位一体やキリストの復活を認めない宗派だそうで、カトリックから見たら異端そのものです。
作者が何故に、カタリ派を小説化しようとしたのか下巻で明らかにされるのかもしれません。
本作品の中で、フランスの町並み、墓地の様子、食材や料理について、田舎の風景と教会建物、人々の暮らしぶり、ピレネー山脈について細かな描写がたくさん出てきます。
「神は細部に宿る」といいますが、作品の中の詳細な描写が物語にリアリティーを与えています。
ネットで検索すると、作者は仏文学を修めているようですが、フランスに留学したとか暮らしたとかの情報はありませんでした。
想像ではとても書けないような内容を作者はどこで得たのでしょうか。
何はともあれ、解決編になるだろう下巻が楽しみです。
聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)より
4101288194
No.30:
(5pt)

ネットオフさんに、一筆御礼。

友人に薦められ帚木蓬生『聖灰の暗号』(上・下)を購入しました。
  古書しかなかったので(普段は新品があれば新品にしてますが)、Amazonマーケットプレイスで古書を発注。「ネットオフ」で、なんと、上が1円、下が19円。配送料各320円。
  てっきり、むか~しの古本屋の店頭平棚に山積みされてたような文庫本が届くんだろうなと予想し、なんの期待も抱かずにおりました。
  発注して3日後にはメールポストに届き、中身を見てビックリ !!。
  文庫本じゃなくハードカバー2冊が入っていたのでした。しかも、新刊書同様の新品で、どちらも2007年初版。
  これには驚いてしまいました。たった20円でこんな上等なものを頂戴してしまったようで、申し訳ないやら有難いやら。いくらわたしがもう老眼で視界も霞み、発注時に品物説明に十分眼も通さず発注してしまったんだとしても、まさか新刊書同然のハードカバー2冊を20円で譲っていただけるなんて想像もしませんでした。
  というわけで、まずは一筆、感謝の気持ちをお伝えしたく、こうして「商品レビュー」を書いております。久しぶりに贅沢な気持ちで読書ができそうです。いつもは新刊のハードカバーなんてとても買えません。感謝しております。

【追記】  巻措く能わず4日で読了してしまいましたので、作品についての感想も一つ。
  これは帯にあるような「異端審問の真相に挑む歴史大作」ではなく、歴史研究者アキラを主人公とする研究者小説ですね。つまり、エーコ『薔薇の名前』や遠藤周作『沈黙』や、さらには堀田善衛『ゴヤ』『コシェル 城館の人』や井上靖『敦煌』・酒見賢一『墨攻』のような歴史小説ではないということ。むしろ、いまはうろ覚えになっていますが、ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』や松本清張『火の路』・高木彬光『邪馬台国の秘密』・中津文彦『黄金流砂』のような歴史ミステリーだということ。
  アキラたちが捜し出した1316年羊皮紙はまさに「ぼくら歴史家が注釈をつける必要がないくらいの一級史料」(下115頁)。とても当時の羊皮紙に記される類の文章とは思えないフィクションたることは明白です。それは歴史屋の夢。著者の歴史小説はこの「史料」邦訳に籠められています。
  いいですね~。本書に描かれているのは歴史研究者の夢です。そして読者であるわたしはその夢に揺蕩い憧れ、フィクションが照らし出すfactum(事実、真実)を後世に伝えたいものだと思わされます。
  最後に「カトリック学院教授」が公衆の面前でつい馬脚を顕わしてしまうのも、これまた研究者の業ゆえでしょう。その小児ぶりは微笑ましくさえあります。
  ちなみにわたしは研究者小説としては、例えば松本清張「断碑」のようなものも好みです。
聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)より
4101288194
No.29:
(4pt)

レイモン・マルティの手記がすばらしい

以前からカタリ派のことに興味があったのですが、たまたまこの本がアマゾンで検索にひっかかってきました。帚木蓬生氏の作品を読むのはこれが初めてです。東大仏文科と九大医学部卒という経歴や著書の雰囲気から、高い教養の持ち主ということが伺われますが、この本も格調高く、いい意味でいかにも”インテリが書いたインテリのための作品”という感じです。

自分はおもしろいと思うといつでも一気読みしてしまうのですが、この作品はテーマが重く悲惨なだけに、読んでいるうちに息苦しくなってしまい、めずらしくそれができませんでした。特にドミニコ会修道士レイモン・マルティによって書かれた古文書とその詩はなんともいえない哀切感に満ちていて、集団火刑にされたカタリ派の人々が焼かれる匂いまでがまわりに漂ってきそうな気持ちになりました。特に、後ろ手に縛られたまま焼かれつつある信者たちが、縄が燃えてほどけやっと手が自由になると、その手を前に回して祈りの形に組み、一様にほっとした表情を浮かべるというシーンが頭について離れませんでした。南仏にあるカタリ派の故地モンセギュールなどは一度訪ねてみたいと思っていたのですが、この詩に書かれているような火刑の雰囲気がよみがえってきそうで、ちょっとためらいが出てきてしまいました。古文書の内容は帚木氏の創作だと思いますが、それほど真に迫っていたということかもしれません。

できればあとがきを作者ご本人に書いてほしかったと思いました。というのは、どうして作者がこういうテーマを書きたいと思ったのか、そしてどこまでが史実で、どこからが創作なのか、どんな参考文献に当たったのかを知りたいと思ったからです。それによって、氏が一番描きたかったのはカタリ派に関する歴史なのか、それともカタリ派にまつわる秘密を追うミステリなのか、どちらに重点が置かれているのかがはっきりします。そのあたりがやや中途半端な印象を受けました。正直、ミステリとしては迫力不足です。偶然出会うクリスティーヌとエリックという協力者が本当に善玉なのか、ミステリを読みすぎて人が悪くなっている自分としては、最後まで「実はこいつが悪玉の手先ではないのか」と疑っていましたが、本当に味方だったのがわかり拍子抜けしました。いろいろ事件が起きましたが、古文書を学会で発表するまでの妨害がなんだかおっとりしていたと感じたので、やはり描きたかったのはミステリよりも歴史だったか、と思ってみたり。

あと、会話がとても硬いです。最初に主人公とクリスティーヌが出会う時の会話がいきなり学問の問答のようで浮世離れしていて、なんだか苦笑してしまいました。特に女性の話し方が硬いです。帚木氏は女性が日常にどんなふうに話すのか、あまりご存知ないのではと感じました。それに比べて風景描写がとても美しいです。たぶん実際、このあたりへ旅されたのだと思いますが、野花の広がる風景、風の感触などは読んでいるだけで目に見え肌に感じられるようでした。また、料理の話がたくさん出てきますが、南仏の地方料理がどんなものかよくわかりますし、出てくるレシピもおいしそうで作ってみたくなります。このあたりもきっと作者自身が現地で食されたものなのでしょう。

宗教自体、デリケートなテーマですが、現在のヴァチカンも性虐待問題やその執拗な隠蔽、内部の権力争いなど生臭い問題がいっぱいで、個人的には宗教組織自体にあまり信頼が置けません。ヴァチカンがカタリ派を弾圧した1200年代当時もそれは同様だったのではないでしょうか。この小説がヴァチカンに対する冒涜だという指摘は当たっていないと思います。ましてや一応、娯楽もののフィクションとして書かれているのですから。
たとえばイスラムでも、スンニとシーアはお互いに相手をイスラムではないと非難しあっていますが、自分たちと異なるものをすべて排斥して撲滅しようとするのは、それだけでもおかしいと感じます。これはたぶん日本的、仏教的な多神教の感覚だと思いますが、一神教は他を認めない不寛容さがどうも好感が持てません。

いろいろ書きましたが、大変な力作だと思います。まだこれからカタリ派のことを勉強していきたいですし、帚木氏の作品もどんどん読んでいきたいです。
聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)より
4101288194
No.28:
(4pt)

あくまでもフィクションとして楽しみたい

作品中にリアルに語られる残酷な処刑も審問も、カタリ派の人々の篤い信仰もつまるところはほとんどが作者の創造であり、どこまでが史実に基づくのか疑問です。
ショッキングな内容に引き込まれ、思わずこれが7百年前に起きた事実と思いこんでしまいがちですが、発掘された書簡はあくまでも作者の創作。カタリ派への弾圧自体は事実ですが、作者が詳細に肉付けしたフィクションを史実と混同せず、エンターテイメントとして楽しむ作品だと思います。

解説者がフランスで出版されていないのが残念と言っていますが、ただでさえ宗教というデリケートなテーマを扱い、門外漢の日本人が想像を膨らませ、そのつもりはなくても結果的に教会を貶めるような作品を書いたのでは受け入れられるとは思えません。
遠く離れた日本だけの日本語小説に留めておくのが無難でしょう。

あと、主人公がアプローチしなくても棚ぼた式にヒロインと結ばれますが、いかにも優等生が夢想する受け身のロマンスっぽいですね。
聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)より
4101288194
No.27:
(4pt)

とても気持ちの良い状態でした。

これほどの商品を手にすると、とても気分が良くなります。帯まで着いていましたし。発行年が平成22年の初版ですのに本当にきれいでした。これからも、売る以上は気持ちの良い商品を流通していただきたいと思います。
上巻を他店で購入して商品があまりに悪かったので、特に思いました。
聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)より
4101288208
No.26:
(5pt)

私的ナンバーワン

今年読んだ本の中で、ナンバーワンにさせていただきました。
Google earthで、現地まで見に行きながら読みました!いつか本当に訪れてみたいです。
聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)より
4101288208
No.25:
(5pt)

マルティやサッコニのような人が実際にいたことを祈ります。

久しぶりにこの作家の本を読みましたが、やはり読者を裏切らない筆力はさすがです。
カタリ派のあまりに禁欲的で現実離れした教義は、この時代に消滅しなくてもいずれは消える運命だったような気もしますし、"良き人"達が審問官を論破する際の聖書からの引用も、新約聖書自体がキリストが実際に言ったことから多分に改ざんされてしまっていることを考えると、彼らの正しさの根拠になるのかは疑問ですが、信じていることや解釈が違う者は殺してしまう、というのは絶対にあってはならないことで、カソリック教会は取り返しのつかない汚点を歴史に刻んでしまいました。
火刑にされた罪のない人々の描写には胸がつぶれてなかなか読み進めることができませんでした。
悲惨な物語ですが、主人公の真摯で慎ましい人柄や、旅での出会いや郷土料理に救われます。
各国語に翻訳して、特にカソリックの信者達にぜひ読んでもらいたいと思います。
聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)より
4101288208
No.24:
(4pt)

現代にも通じる迫害というテーマ

佐藤賢一『オクシタニア』は13世紀に舞台を設定しているが、弾圧されたカタリ派に対しては一定の距離を取っている。もちろん史家として客観的な態度をとっているからだろうが、さらには作家が、肉体と欲望という人間性を重視しているからだと思われる。こうした人間観に立てば、物質を悪として禁欲を重んじるカタリ派の教義は、いわば無理難題の要求に映るはずだからだ。

2008年に刊行された帚木蓬生『聖灰の暗号』は、その前年刊行『オクシタニア』と同じカタリ派を取り上げながら、多くの点で異なっている。舞台は現代、主人公は歴史学者の日本人。古文書の発見、相次ぐ不審死、歴史に隠された謎、そしてカトリック教会の闇…と、道具立ては本書が『ダヴィンチ・コード』のような歴史ミステリであることを示している。しかしなにより『オクシタニア』と異なるのは、カタリ派の弾圧と殉教という史実に対して、作家がかぎりない哀惜の念を示している点ではないだろうか。事実、文庫の下巻冒頭は、発見された古文書の長々とした引用ではじまる。そして謎の多くは結局解明されず(『聖灰の暗号』…?)、ミステリとしてみれば不満が残る。しかしそれゆえに、作家の目論見が、カタリ派のひとびとの苦しみをフィクションの古文書を通してよみがえらせようとした点にあることは一目瞭然だ。宗教に名を借りた弾圧や迫害は普遍的な課題であり、作家の真摯な態度には心を打つものがある。

リア充の颯爽とした主人公の活躍、妙に協力的(ないし敵対的)なフランス人たちなど、ご都合主義的なところもなしとはしない。しかし、ピレネーの自然や文化、緊迫した学会の様子など、リアリティあふれる細部描写のおかげで、そうした点もさほど気にならないで読むことができた。
聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)より
4101288208
No.23:
(5pt)

ミステリというよりもカタリ派についての入門書

ミシェル・ロクベール氏の「異端カタリ派の歴史」という本の書評を読み、初めて「カタリ派」というものを知りました。興味を持ったものの、本の値段、ページ数、本格的な内容にひるんでしまい、もう少しカタリ派についてわかりやすく説明したものはないか、と捜して辿り着いたのが本書です。もちろんミステリ仕立ての小説ですので、主人公が発見した物語の中心となる古文書も創作の産物ですが、カタリ派についての説明はとても詳しく、よく理解することができました。

 12~14世紀の南仏。キリスト教徒ではあるものの、神の子で磔刑に遭いその後復活した、というキリストは幻の存在と考え、それよりも聖書を信仰の拠りどころとし、権力を持つ聖職者も立派な教会も必要とせず、皆が労働に勤しみ、日々を正直に生きる。そんな慎ましい生活を送るカタリ派の人々を、ローマ教会は許せず、十字軍を送り込み、村中を皆殺しにしたり、拷問の末に集団で火刑にしたり、と暴虐の限りをつくし、カタリ派を消滅させました。
 静かな信仰生活を営んでいただけのカタリ派の人々が、ローマ教会に反旗を翻したり、反抗したわけではありません。ローマ教会が、神と地上界を媒介するのは自分達だけだ、その自分達を尊敬すべきだという理由で、カタリ派を異端とし、弾圧したのです。
 私はキリスト教徒ではありませんし、宗教学も学んでいませんから、専門的なコメントはできませんが、正直キリスト教に胡散臭さ、いかがわしさを感じてしまいました。(まあ、どの宗教にもこういう暗い側面はあるのでしょうが)

 他のレビュワーさんも書いておられましたが、ミステリとしてはいまひとつです。しかし、作者の帚木蓬生さんとしても、読者に一番伝えたかったのは、おそらく日本ではあまり知られていないカタリ派というものの存在とその悲劇、哀しみだったと思います。そう捉えると、非常に有意義な作品だと思いました。
聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)より
4101288208
No.22:
(5pt)

宗教の話だけど…

友達に薦められて上巻を大型店舗(本屋)で購入したところ、大変面白くて、あっという間に完読。ところが、下巻がないので取り寄せしようとしたところ、すでに完売で購入できないとのこと。そんなことがあるのかと思いましたが、早く続きが読みたくて、Amazonで見つけてすぐ注文しました。上巻同様、過去のカタリ派の弾圧の状況や現代でそれを追ってくる人たちの妨害など、ミステリー的な要素が多分にありますが、それより、やはり、人が人を宗教の名のもとに殺害する不条理さと無意味さを感じ、昨今の世界のテロ騒ぎとリンクして、一層感じるものがありました。もう少ししたら、もう一度読み直してみようと思います。舞台が、フランスの中でもスペイン寄りの田舎の地域で、ネットでその城の写真を見たり、村の映像を見て、旅行をしたような気分にもなりました。
聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)より
4101288208
No.21:
(4pt)

学者の日常描写が良い

歴史おたくの知人におすすめされて読み始めた小説。 中世ヨーロッパでキリスト教会で異端とされたカタリ派の秘密を記述した文書を歴史学者が追う、という筋書き。 ローマ教会やカタリ派に絡んだ歴史が随所で解説されており、歴史オタクは楽しめると思う。 個人的には、それと並んで、冒頭部分の学者としての日常を綴った部分に惹かれた。 ヨーロッパに留学したり、1日中図書館にこもってひたすら文献を調査したり、後半のスピード感ある冒険部分に比べて地味で埋もれがちにも見えるが、その中にも学者としての情熱が浮き出てくるような記述に感情移入できた。 後編も読みます。
聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)より
4101288194
No.20:
(4pt)

面白かった

上・下貫巻でお勧めです。
宗教とは、何かを考えさせられました。
聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)より
4101288208
No.19:
(4pt)

闇に葬られたカタリ派

歴史学者が歴史の闇に葬られていた暗部に触れる、と同時にそれを防ごうとする組織が立ちふさがると、まあこんな類のお話でした。
キリスト教カトリックの異端審問期に存在したカタリ派がメインになっており、その分野にまったく無知なので、単純に興味深かった。
おそらく、カタリ派や中世のこの時期を研究した堅い書物はたくさんあれど、なかなか物語として読ませてくれるようなものは少ないだろう。
小説の面白さと素晴らしいところは、物語にそった知識と興味をこんなド素人にでも湧きあがらせてくれることかもしれない。
聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)より
4101288194
No.18:
(4pt)

異端に加担したいが火あぶりは嫌だ

上巻から徐々に謎に迫り、そしていよいよすべての手稿が発見される。
ここに出てくることっぽいことは、おそらく本当にあったのだろう。
たくさんの人々がキリスト教の王道から違う(解釈が違う)というだけで、
残虐に葬り去られてきた。普段は考えないが、信仰とはなんだろうかと考える。

どう考えても、自分はこの小説に出てきた異端の考えの方が共感できる。
そうなると、火あぶりかー、いやでも王道派のふりをするかな、しにたくないし。
そう考えるとやっぱり、信仰を貫いて火刑に処される気持ちもわからず、
どっちもやだなーと思ってしまう。小説的にはまーまー、ちょっと中だるみはあった。
聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)より
4101288208
No.17:
(5pt)

正統を盲信する権力者による異端弾圧の普遍性を実感する優れた歴史の断面とその悲劇の鏡像

歴史は正統派による異端とみなされた側への弾圧の記録だが、それを史実を下敷きにしてフィクション化した点では、読み応えのある傑作だと思った。この小説を読みながら眼蓋に浮かんだのは、ナチスによるユダヤ人の弾圧と抹殺、スターリンによる批判勢力の粛清、日本の特高警察による自由主義者や社会主義者の徹底的な弾圧などだが、それだけではない。安倍政権による批判勢力の徹底排除と情報支配に続く全体主義政治が、われわれの目の前で進行しているのに対して、それに無関心な日本人が圧倒的である現実。そういったことは異端と名づけて排除する路線であり、単なる宗教の問題に限ったことではない。精神科医の帚木博士の筆法はそういった社会の暗い面に照明を当てて、我々の眼前でも同じことが起きていることを思い出させてくれる。彼のイマジネーションと教養の深さに対して敬意を表したい。
聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)より
4101288194
No.16:
(5pt)

とても満足しました

梱包が素晴らしく、併せて購入した下巻とも一気に読了しました。大変、考えさせられる内容で、深い満足感を覚えました。
聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)より
4101288194
No.15:
(4pt)

キリスト教の闇が大胆に書かれています。

キリスト教会から弾圧を受けた「カタリ派」が異端として火あぶりにあったことが、歴史学者須貝彰が明らかにしていく物語として記してある。カタリ派の基本データとしては『この世は悪で形成され、天国への道は悪から遠ざける禁欲生活にのみ依存する』というのが根底で、『肉食の禁止、菜食のみ』であって、さらに特徴的だったのが『祈りの場は教会ではなく、どこでもいい』ということ。祈りをするのに教会へ行く意味はない、祈る精神のみが神に届き、それは教会でなくても届くのはあまりまえ。この精神がキリスト教会を否定的に捉える思想で弾圧する理由となった。思想は続き、『洗礼は善悪をある程度見極められる年になってから受ける』『洗礼は聖水など道具によらず、良き人が手を頭に乗っけるだけでよい』
 ある意味、宗教的観念を合理的に捉えていたのがカタリ派であったともう。そして、その合理性がキリスト教会を否定するものになり、キリスト教会は一方的に弾圧した。
 物語の整然性には若干かけるところがあるが、議題としては興味深く、キリスト教会がいかに「排他的」であったがうかがえる。
キリスト教の当時の排他的様子がよくわかってよい。
ただし、恋愛情緒は不要かと。
聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)より
4101288194
No.14:
(5pt)

遠い昔、未知の国で起こったかも知れない…ミステリアスな小説

上から引き続き、購入。日常の生活から逸脱した世界で、想像力を掻き立てられる物語の展開に引きこまれました。どの時代にも理不尽なこと、納得できないことはあるのですね。流された多くの涙に共感しながら、現在の自由な社会に感謝しています。
聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)より
4101288208
No.13:
(4pt)

正統と異端の逆転

史実として、スペインでは「フランク族に対抗していたゲルマン人・西ゴート族が西ゴート帝国を作って、フランク族よりもまじめにキリスト教を信仰した。この西ゴート帝国滅亡以降、イスラム勢力に対抗するまじめなキリスト教徒が仏西の中間、つまり、ピレネー山脈を中心にした現在のバスク地方と、その西北に隣接するフランス・ガスコーニュ地方、そしてその東のツールーズ地方に残ることになる。彼らは意識的にマニ教の教義を取り入れ、厳格な戒律を持つ教派を打ち立てた。それは、完全な反ローマ教会の宗教改革運動となった」。
(栗本慎一郎『全世界史』)

これがアルビ派またはカタリ派である。

本来は正統であるミトラ教・マニ教を「異端」とすることで、本来は異端であるローマ教会が「正統」になるという無理な逆転状態を維持することが至上命題となっているため、「異端」であるカタリ派を排除する運動は、苛烈に暴力的なもの(アルビジョア十字軍)となる。

本書は小説の形を借りて、カタリ派がキリスト教徒として如何に正統な生き方であるかを示すとともに、その正統への弾圧が如何に苛烈であったかも教えてくれる。

『ダ・ヴィンチ・コード』との比較を指摘するレビューアの方がいるが、私にとっては、キリストに子供がいたとかいないとかの(どうでも良い)話よりも、「信仰」というものについてより深く考える機会を与えてくれる本書の方がずっと面白かった。
聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)より
4101288194

スポンサードリンク

  



12>>
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!