■スポンサードリンク


聖灰の暗号



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

聖灰の暗号の評価: 4.22/5点 レビュー 37件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.22pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全37件 21~37 2/2ページ
<<12
No.17:
(4pt)

キリスト教の闇が大胆に書かれています。

キリスト教会から弾圧を受けた「カタリ派」が異端として火あぶりにあったことが、歴史学者須貝彰が明らかにしていく物語として記してある。カタリ派の基本データとしては『この世は悪で形成され、天国への道は悪から遠ざける禁欲生活にのみ依存する』というのが根底で、『肉食の禁止、菜食のみ』であって、さらに特徴的だったのが『祈りの場は教会ではなく、どこでもいい』ということ。祈りをするのに教会へ行く意味はない、祈る精神のみが神に届き、それは教会でなくても届くのはあまりまえ。この精神がキリスト教会を否定的に捉える思想で弾圧する理由となった。思想は続き、『洗礼は善悪をある程度見極められる年になってから受ける』『洗礼は聖水など道具によらず、良き人が手を頭に乗っけるだけでよい』
 ある意味、宗教的観念を合理的に捉えていたのがカタリ派であったともう。そして、その合理性がキリスト教会を否定するものになり、キリスト教会は一方的に弾圧した。
 物語の整然性には若干かけるところがあるが、議題としては興味深く、キリスト教会がいかに「排他的」であったがうかがえる。
キリスト教の当時の排他的様子がよくわかってよい。
ただし、恋愛情緒は不要かと。
聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)より
4101288194
No.16:
(5pt)

遠い昔、未知の国で起こったかも知れない…ミステリアスな小説

上から引き続き、購入。日常の生活から逸脱した世界で、想像力を掻き立てられる物語の展開に引きこまれました。どの時代にも理不尽なこと、納得できないことはあるのですね。流された多くの涙に共感しながら、現在の自由な社会に感謝しています。
聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)より
4101288208
No.15:
(4pt)

正統と異端の逆転

史実として、スペインでは「フランク族に対抗していたゲルマン人・西ゴート族が西ゴート帝国を作って、フランク族よりもまじめにキリスト教を信仰した。この西ゴート帝国滅亡以降、イスラム勢力に対抗するまじめなキリスト教徒が仏西の中間、つまり、ピレネー山脈を中心にした現在のバスク地方と、その西北に隣接するフランス・ガスコーニュ地方、そしてその東のツールーズ地方に残ることになる。彼らは意識的にマニ教の教義を取り入れ、厳格な戒律を持つ教派を打ち立てた。それは、完全な反ローマ教会の宗教改革運動となった」。
(栗本慎一郎『全世界史』)

これがアルビ派またはカタリ派である。

本来は正統であるミトラ教・マニ教を「異端」とすることで、本来は異端であるローマ教会が「正統」になるという無理な逆転状態を維持することが至上命題となっているため、「異端」であるカタリ派を排除する運動は、苛烈に暴力的なもの(アルビジョア十字軍)となる。

本書は小説の形を借りて、カタリ派がキリスト教徒として如何に正統な生き方であるかを示すとともに、その正統への弾圧が如何に苛烈であったかも教えてくれる。

『ダ・ヴィンチ・コード』との比較を指摘するレビューアの方がいるが、私にとっては、キリストに子供がいたとかいないとかの(どうでも良い)話よりも、「信仰」というものについてより深く考える機会を与えてくれる本書の方がずっと面白かった。
聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)より
4101288194
No.14:
(5pt)

異端とはなにか

優れた小説は、そこに己との関係性において、読むものである。
カタリ派など、日本と関係ない地球の裏側の話である。遠い異国の宗教弾圧とそれにまつわる事件としてのみ、読む作品だろうか?

たしかに、現代日本にカタリ派はいないだろう(おられたら謝ります)。が、我が国には、「異端」に「位置づけ」られ、陰に陽に、無言の有言の弾圧を受けている人たちはいないのだろうか? そう読むことでこの作品の真の姿が浮かび上がってくるだろう。


聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)より
4101288194
No.13:
(5pt)

失われた歴史上の人々と現代を結んだ物語

 魅力的なテーマである。私自身もカタリ派には興味があるので、歴史的な事実も面白かった。また、フランスが主な舞台となっているが、状況描写も精密だし、分かり易い。ミステリーであると同時に、文化と歴史を描いている作品である。
 カタリ派の殉教の場面は衝撃的である。歴史小説を書く作家の大切な仕事の1つは、失われた時を再現することかもしれない。特にカタリ派の処刑を目撃しながらも、教会に大きな疑問を持った人々の証言は、決して私たちには届かないはずのものなので、それを作家の想像力から再現してもらうことは、貴重な経験であろう。また、冒頭の詩は作者の創作によるものだが、良く出来ていると思う。
 ミステリーとしてはいくつかの疑問がある。カソリックの異端裁判や、異端者の処刑の詳細な記録が今現れたならば、確かに大きなイメージダウンになるかもしれない。しかし、そのために何人もの人を殺すような行為をするかどうか。異端審問そのものは良く知られた歴史的事実であるし、相当な記録が残っているからである。しかも、どのような記録であるかは殺人者にはわかっていないはずなのである。『ダビンチコード』の場合はキリストが結婚して子孫を残していたことを隠そうとする教会という設定である。これはキリスト教にとって大変な事実であるし、独身を原則とするカソリックの聖職者にとっては、プロテスタントよりも大きな打撃であろうから。
 例えば現在知られている新約聖書の資料よりも古いものが発見されて、それがカタリ派の教えに極めて近いというようなことがあれば別だが。
 また、細かい部分だが、学会での発表や質問の場面が、あまりに学問的でない。揚げ足をとるようになってしまうが、一遍とフランシスコの比較の部分などはかなり初歩的な議論である。また、ヨーロッパでの学会の最中に、発表内容とは直接関係のない部分で現代のカソリック批判をすることもあり得ないと思う。日本と比べたら宗教が生活に密着しているヨーロッパでの宗教批判はダブーだと思う。学者がこのようなことをするとは考えにくい。
 大きなテーマから見るとこのような細部はどうでも良いという人もいるだろうが、優れた作品になるためには、このような部分も精密に描くべきだと思う。とても好感の持てる作品であるからこそ少し残念である。
 また、この作品では宗教が大きなテーマとなっているので、キリスト教か、あるいはもっと広く宗教に関心を持っている人の方が興味の持てる作品だろう。
聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)より
4101288194
No.12:
(5pt)

綿密な考証に基づく大作

読了して最初に思ったことは「これを日本人の作家が書いたのか」という驚きだった。
ローマカトリックから異端とされ、弾圧されて消滅したカタリ派と異端審問を記録した架空の文書を題材に、宗教の暗部をあぶり出す本作。日本人がフランスの異端審問などについてこれだけ書くには、相当綿密な取材と史料を研究しての時代考証が必要になり、その労力は想像するだけでもすごい。
本作はカタリ派をめぐる歴史ミステリーの体裁をとりつつ、や異端を認めないローマカトリックの欺瞞や残酷さをまざまざと描き、人を救うはずの信仰が恐ろしい悲劇を生み出す現実を、日ごろ信仰とは無縁に近い日本人にも突きつけてくる。
帚木蓬生氏の小説に共通することだが、人間への視点がものすごくやさしい。主立った登場人物は誰も目の前に立ち現れてくるような気がするほど丁寧に描写され、ちょっとした登場人物にも人柄が分かるようなエピソードが入る。
カタリ派やキリスト教に興味がなくても、歴史ミステリとして楽しめるレベルの作品だが、これをきっかけに宗教や信仰について調べてみるのもいいな、と思っている。
聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)より
4101288194
No.11:
(5pt)

こういう小説でも、違和感がない時代に。

カタリ派のことは予備知識を持っていた。TBS「世界遺産」の番組で、フランスの世界遺産カルカソンヌをやったときに見た。
「何だテレビかよ」と言う声が聞こえてきそうだが、なんのなんの、なかなかいい番組だった。30分の放送時間のうち半分をカタリ派の歴史の紹介に費やし、最後はエンドロールの流れる中、ライトアップされたカルカソンヌの城壁をバックに、吟遊詩人にふんしたガイドがバイオリンを奏でながらカタリ派の悲劇を歌う、というシーンで、たちまち自分の中でカルカソンヌが一度は行ってみたい場所になった。
そう思ってると、この文庫が本屋に並んでいるのを見た。
感想は二つ。
まず、驚くほど違和感を感じない。
西洋史の秘史をモチーフにして日本人を主人公にすると、今までの小説にはどうにもとってつけたような違和感がぬぐえなかった。この小説には、そういう違和感を特に感じない。日本人が西洋史の謎に迫るというストーリー展開に無理がない。
これもグローバル化の時代の影響か。それとも作者の筆力を褒めるべきか。
もう一つ。
巻頭で、作者は30年前にカタリ派ゆかりの地を訪ねて、この小説を思い立ったと書いているが、何しに行ったのだろう。仕事ではあるまい。おそらくバックパッカーの個人旅行だったのでは。私もかつてヨーロッパを放浪旅行した経験があり、お仕着せの旅行ではない自分の興味をそそられた地を訪ね、感銘をうけ、さらにこの地を舞台に小説を書いてみたいなどど、楽しい空想にふけった経験がある。
・・・いまだに実現していない。だが帚木は実現した。そういう帚木へのジェラシーを抱きつつ小説のページをめくるのも読書の楽しみ・・・、なわけないか(笑
聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉 (新潮文庫)より
4101288194
No.10:
(4pt)

カタリ派

カタリ派の異端審問について記録した古文書を巡る学者とバチカンの暗闘を描いた作品です。
ただ、作者の力点はアクションやサスペンスではなくて、むしろ古文書の内容自身、すなわちカタリ派とカトリックの宗教観にあります。(あ、この古文書の内容もフィクションです)
古文書の作者は、異端審問を行う大司教の通訳兼書記。
カタリ派の宗教指導者と大司教の神学論争では、カトリックの矛盾をカタリ派の指導者が聖書の引用を駆使しながら論破して行きます。
そこでは、教皇を頂点とする宗教的ヒエラルキーに従わないものはすべて異端であり、悪であるとするカトリックの独善性が露わにされます。
しかし、カトリックに不利な記録を残すことは許されません。
審問の過程で徐々にカタリ派にシンパシーを感じた書記官はカトリックの司祭達には読めない故郷(カタリ派が隠れ住んだ地方)の方言で、その記録を残し秘匿したのです。カトリックに廃棄されないように。
この作品でもたびたび言及されるモンセギュールの陥落を描いた佐藤賢一の『オクシタニア』と併せて読むと感興も一入だと思いますよ。
聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈下〉 (新潮文庫)より
4101288208
No.9:
(5pt)

凄烈な物語

帚木作品の素晴らしさは第一に、ストーリーの清々しさです。悪戯に殺人や裏切りで非現実感を煽ることがなく、悪人にさえどこか隣人愛を感じさせる暖かい視点がある。 本作品で暴かれる、ローマ教会の深い闇と「異端」とされ歴史に葬り去られたカタリ派殉教者達の清烈な生き方。 立派な教会などいらず、形式だけの洗礼もいらない。嘘をつかず、日々の仕事、眼前にあるすべての出来事が神との対話となる…。 家や職場こそが教会だというカタリ派の教えを邪教とし、全信者が根絶するまで拷問・処刑を繰り返す本家カトリック教会の存在意義とはなんだったのか。 同氏のアフリカシリーズが、そんな社会の歪みが現代でも健在することを示しているように思う。宗教権力は巨大企業・資本主義の偽善にとって変わり、虐げられる人々は貧困国や隣国の片隅で今も命掛けの祈りを呟いているのだろうか。 帚木作品を読んで得られる気付と内省は、私にとっての小さな信仰の場になっていると言えます。 心に残る一冊です。
聖灰の暗号〈上〉Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉より
4103314141
No.8:
(5pt)

カタリ派の話

中世キリスト教の異端、カタリ派の秘密を日本の歴史学者がフランスで追いかける。
熱い本だったな。著者のカタリ派に寄せる思いが伝わってくるいい本だった。カタリ派好きの自分にとっては、すごく好きなテーマだし、ストーリーも分かりやすくて(ダヴィンチ・コードみたい?)、あっという間に読み終えてしまった。
カタリ派を描いた最近の小説には佐藤賢一の『オクシタニア』もあるが、あちらは、現代の話ではない。あれもいい小説だった。
それにしても自分がカタリ派に惹かれるのはどうしてだろう?高校生のころからそうだったんだよな。不思議。
聖灰の暗号〈上〉Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉より
4103314141
No.7:
(3pt)

良くも悪くも日本人の作品

 先に下巻の方にレビューを書いたのだが、言い足りないので、こちらでも少し。断っておくが、帚木作品は大体においてファンである。
 私は多分、ごく普通に育った日本人であり、キリスト教に詳しいわけではないのだが、どうも腑に落ちない。手稿の筆者マルティの理論(というほどのものもない)も、それに感銘を受ける主人公たちの考えも、要するに人間が無心で行うことすべての中に神がおり、目にするものすべてに神がおられるって、つまり日本古来の「八百万の神」の信仰ではないか。これに対して、仮にもヨーロッパで1神教であるキリスト教徒として育ったクリスチーヌやエリックが共感するというのは、あり得るのだろうか。信仰の自由を書くのなら、もっとほかに幾らでも書きようがあると思う。
 要するに、書き手も読み手も、良くも悪くも日本人だということではないのか。
聖灰の暗号〈上〉Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉より
4103314141
No.6:
(5pt)

勉強になった

私は、単純に面白かった。
「ダヴィンチ・コード」より、こちらのほうがわかり易かったし。
カタリ派にしろ何派にしろ、宗教がなぜ分裂していくのか、不思議。
イスラム教もキリスト教も、元(根っこ)は同じような気がするのだけどなー。
カタリ派とローマ教会がなぜ相容れないかの理由は、この本を読んで理解はできたが。
聖灰の暗号〈上〉Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉より
4103314141
No.5:
(4pt)

カタリ派の歴史を知るだけでも価値がある

二人ほど前にレビューを書いた方が、「全キリスト者を侮辱」する作品と酷評しているが、この作品で取り上げられているカタリ派というのも立派なキリスト者であった、ということを忘れてはならないだろう。宗教的な権力闘争(とは言ってもカタリ派のほうに権力欲があったわけではないのだが)と政治的な領土獲得欲が都合よく手を組んだことで、滅ぼされることになった南フランスのカタリ派とカタリ派を擁護する貴族達、彼らについての歴史的な事実を推理小説という形を借りて日本の読者に知らせた、というだけでこの作品は価値がある。カタリ派弾圧に象徴されるような異端に対する抑圧は、キリスト教という宗教の病なのではなく、キリスト教会という制度の病である、ということをはっきり理解する必要がある。出来るだけ多くの方がこの作品を読んで、西欧の根幹にある制度の問題点を少しでも読み取ることが出来ればいいのだが。ただし、この作品、ミステリーとしては今一である。
聖灰の暗号〈上〉Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉より
4103314141
No.4:
(4pt)

ミステリーとしてはちょっと。

12〜13世紀異端のキリスト教であるカタリ派をローマ教会が弾圧したという実話を元に、歴史学者が偶然発見した地図を手がかりに、その弾圧の証拠を宝探しのように見つけていき、それに誘拐劇などが絡み合うミステリーだ。実際にカタリ派へのローマ教会からの弾圧は相当あったようで、ネットで調べると日本語だけでも沢山出てくる。その弾圧の物語がこの本の3/4以上を占める。キリスト教異端弾圧の歴史物語を読むという意味であれば、この本を読む意義は大きい。私は夏休みでもあったので、ゆっくりこの弾圧の歴史の物語を読むことができ、大いに勉強になった。ただミステリーとしての部分がかなり薄くなってしまっているので、ミステリーとしてはあまり面白くない。(私は夏休みに長編のミステリーを読むことにしているので、その点では期待はずれであった)
また昔の物語として読めればいいのだが、現代のローマ教会、されには現教皇を批判するような箇所が多々あるので、その辺はちょっといただけないと思った。踏み込んではいけない領域に踏み込んでしまっていると感じた。
私としては、異端弾圧の歴史の部分もっと押さえて、ミステリーの部分をもっと膨らませて欲しかった。
聖灰の暗号〈上〉Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉より
4103314141
No.3:
(5pt)

カタリ派について語る派

著者は30年前から本書の構想を練っていたと「波」で読み本書の背景も知りました。わたし自身は20年ほど前に「異端カタリ派」という本でカタリ派のことを知りました。自分なりに限られた出版物を読み漁りました。本書には手稿という形で火刑に処せられるカタリ派の人々がまさに蘇ってきます。こういう本が出ると決まってローマ教会を冒涜するだの嘘だの書く人が現れますが、まさに思ったとおり上巻のレビューにも出ていましたね。
わたしは著者に対し深い敬意を表します。また本書を支えてきた編集者の方にも賞賛をおくります。ピレネーの山の中で残酷な時代に生きた清貧なカタリ派の人々もさぞかし喜んでいることと思います。ピレネーの山中にこの本を捧げにに行くという著者と共に、読者としてのわたしのこの感想も捧げてほしいと思います。本当によく書いてくれました。どのように焼かれ死んでいったのかは知っていても、その時代に生きた人々の感情は小説なくしては読めれなかったからです。何度も読み号泣いたしました。素晴らしい本を本当に書いてくださりありがとうございました。カタリ派を語れる本に出逢えてとても幸せです。
聖灰の暗号〈下〉Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈下〉より
410331415X
No.2:
(5pt)

現代人に必要なもの

おおよそ文学とは、著者の感覚を読者が感じるものなのかもしれない。そういう意味で言えば本著の意図するところは達成されているのではないだろうか。
須貝、クリスチーヌ、エリック、エリーズ、カタリ派の聖職者たちと手稿を護り通した人たち。そしてその相反する立場にいる人たち。その人たちの心が読み取れる作品ではなかったか。と同時に、その心とは、現代人が忘れている人間らしい心。
いうまでもなく宗教と人間とは切っても切り離せない関係にある。悪の側に立つならば、宗教的権威と政治権力が結託して人間を支配しようとする心は現代にも生きている。その反面、宗教を人間の側に取り戻そうとする心もある。いつの時代もそれらがシーソーのように揺れ動いているのだ。
しかし、私は、本著を読んで思うに、人間らしい生き方、人間らしく生きるための、また人々と生きていくための「覚悟」を見たような気がする。そのことを感じるならば、本著に書かれたものが史実か、史実でないかは関係のないことなのである。
アリエス教授は言う、真贋を見分ける感性を持つことも人間にとって不可欠な資質だ、と。これこそが本著のテーマ、主題であるのだと確信する。現代に生きる人々はそのことを真摯に学ばなければいけないのではないだろうか。
聖灰の暗号〈上〉Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉より
4103314141
No.1:
(1pt)

そこまでやるのか

上下纏めて扱う.この作品は危険な問題を孕んでいる.著者によれば,カトリック教会は現在でも極秘裡に異端審問の機能を備え,例えばカタリ派の弾圧に関する同時代資料など都合が悪いものが発見され世に出るようなことを防ぐため,事故に見せかけた殺人,教会内への拉致監禁などを行うとのことである.私はこの説に否定的だが,どうやって著者はこのような暴論を保障できるのか.更に 1316 年に書かれたと言う文書において,著者は無制限に聖書それも福音書からの大量の引用をしているが,娯楽用の作品にこのような引用をして神聖冒涜にならないのか.教義問答をくどくどと入れる必要そのものが疑わしいのに,である.こうしてこの作品は全キリスト者を侮辱し,カトリック教徒に無用の苦痛を与えるものになった.およそこれほど信仰に無関心で,傲慢な作品はあるまい.大体,Kate Mosse の Labyrinth (2005, 邦訳あり) 以後に同様なテーマで先行作を超える作品が書けるとは到底思えないのだ.
聖灰の暗号〈上〉Amazon書評・レビュー:聖灰の暗号〈上〉より
4103314141

スポンサードリンク

  



<<12
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!