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(短編小説)
押絵の奇蹟
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押絵の奇蹟の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.56pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1~9 1/1ページ
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"私は一生のうちに一度はキット、あなた様からの結婚のお申込を受けますことを、ずっと前から覚悟致しておりましたのでございます"1974年発刊の本書は江戸川乱歩激賞の表題作含む書簡体傑作三作を収録した傑作短編集。 個人的には"猟奇的な世界観が大半の著者作の中で『清楚で流れるような美しさがただよっている』と表題作が紹介されているのを見て、未読だったので手にとりました。 さて、そんな本書は前述の肺病を病んだピアニスト、トシ子が自身の出生の秘密に思いをめぐらし、母親にうり二つの歌舞伎役者、中村半次郎に長い手紙を綴る表題作『押絵の奇蹟』著者名義でのデビュー作、恨みをこめて作られた鼓をめぐる数奇な運命が独白対の遺書として語られる『あやかしの鼓』そして収録作の中では最も探偵小説らしいシベリア出兵中の帝国陸軍の一等卒が「売国、背任、横領、誣告、拐帯、放火、殺人、婦女誘拐」等々の罪で追い詰められる顛末を描く『氷の涯』の三作品が収録されているのですが。 収録作に共通する登場人物の書簡を連ねることによって間接的にストーリーが展開していく『書簡体小説』がどれも効果的で、著者の他作品でも共通する『信頼できない語り手』として、表面的なテキスト(手紙)で書かれている結末とは別に【実際はどうなんだろう】と想像する余地があるのが楽しかった。 また表題作も確かに美しいのですが。個人的には女嫌いの文学青年であり、探偵趣味を持つ一兵卒、上村作次郎。そして酒を飲むと豹変する自称コルシカ人とジプシーのハーフ、ニーナが登場する『氷の涯』が一番、登場人物たちが個性的で、映像化してほしいなあ。とか思ったり。 著者作品に触れる最初の一冊として、また書簡体形式の作品好きにもオススメ。 | ||||
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角川文庫で他に発売されている、 夢野久作さん作品のなかでは、 一番、文学っぽい本でした。 少し長めの作品が、三本入っています。 ①『氷の涯(こおりのはて)』 まず、タイトルが読めない笑。 ②『押絵の奇蹟(おしえのきせき)』 これは奇蹟じゃなく、 “奇跡”じゃないのか?という疑問は、 最後まで解けない | ||||
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主人公の出生にからむ驚愕の話は、読者を引き込まずにはいない。ストーリーの展開も手に汗握るものです。 惜しむらくは、もう少し物語の中に居たかった。中篇ぐらいがよかったのではないか。次から次へと驚きを繰り出すことに短兵急で、情緒を味わう余裕がなかったのが残念でした。 | ||||
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私が本書を買うきっかけとなったのは、 読書好きの知人と夢野久作先生の作品についてお話ししている時でした。 当時私は瓶詰の地獄、少女地獄、ドグラ・マグラの順に読み猛烈にマイブームが夢野作品になっており、 知人に「オススメの久作先生の作品もっと教えてー」と泣きついたところ「”氷の涯”がオススメだよ」と言われたため即購入に至りました。 正直氷の涯以外はあまり期待していませんでした。 以前に読んでいた”少女地獄”が個人的にあまりハマらなかったため(”童貞”などはとても楽しめましたのですが…)”氷の涯”だけ読めればそれでいいやと軽い気持ちで読んだのですが、 ”押絵の奇蹟”も”あやかしの鼓”も思っていたよりずっと面白かった、というよりやはり久作先生の独特の文体があるだけでその作品は一回りも二回りも面白く感じられるんだと気付かされました。 そして期待に胸を膨らませて読んだ”氷の涯”。 素晴らしかったです。 一気に読んで、読後の余韻がとても心地よかったのを覚えています。 マイ久作ランキングでは”ドグラ・マグラ”と”死後の恋”の次にお気に入りになりました。(今となっては、後に読んだ”戦場”が”死後の恋”の次にランクインしたので実質4番目ですが) とてもオススメなので ”ドグラ・マグラ”は気になるけど少し怖い。とか久作作品に手を出したいけど何から読んだらいいかな?など悩んでいる方はこの作品から入るのもアリかと思います。 ”ドグラ・マグラ”よりとっつきやすいですし久作先生の良さも全面に出ているので是非気になった方は手にとって頂けると幸いです。 | ||||
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本作品を読むにあたって、つくづく後悔と無念を感じることは、僕が夢野久作さんの著作を読んだ最初の作品が 「ドグラマグラ」 だったことだ。 ドグラマグラはあまりに刺激が強すぎて、もうちょっとやそっとの探偵小説では満足出来ない人間になってしまった。 ドグラマグラをいきなりはじめに読んだのは、僕にとって不幸な出来事だったのかもしれない。 正直に言うと、この「押絵の奇跡」という短編集もそんな事情で、あまり読む気がしなかった。 しかし、この本に収録されている 「あやかしの鼓」 を読んでみたら非常に面白かったので、ぜひみなさんにもとレビューした次第である。 僕はまだドグラマグラにこだわっている。 なにやら、見落とし、読み間違い、あるいは夢野さんのトリックにまだ引っかかっているような気がして落ち着かないのだ。 | ||||
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オーディオブックで良かったです。 トシ子の気持ちが良く伝わってきます。何か切ない気持ちが非常によく感じ取れます。 夢野久作の純愛物。中々の作品かと思います。 ナレーションの方も、非常に感情が込められ引き付けられます。久しぶりに、感激しました。 おすすめの一冊です。 | ||||
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夢野久作さん、、恥ずかしながら先日まで知らなかったのです。 はまってしまいます。 | ||||
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夢野久作の中編三篇を収録した作品集。彼の作品の特徴を為す主題が描かれている。 「氷の涯」 (1933) 疾走というのは、いつも desperate であって、行く宛先の無いものだ。男女二人の終末の後ろ姿には、そうした何処か乾いた美しさがある。 「押絵の奇蹟」 (1929) 夢野久作らしい、伝奇的にしてロマンティシズム漂う凄絶な恋物語。夢野はしばしば、人間の精神と肉体の拠って来たる所を闡明せんとする近代の技術的学知たる精神医学と遺伝学が却って垣間見せるところの、人間存在の否応無き深淵の底知れなさを剔抉する。 「・・・、場合によりては男女間に於ける精神的の貞操の有無をも、形而下の諸現象、・・・によりて、具体的に証明され得るに到るべく、・・・」 夢野の筆は、民俗的な土着性とモダニズムとが混淆した、奇妙な舌ざわりのロマンティシズムを帯びた作品世界を描き出す。 「あやかしの鼓」(1926) 上に加えて、夢野の作品に繰り返し現れるもう一つのモチーフは、性・女への抗い難い暗い力、それへの畏れだ。女に魅せられながら同時に女を畏怖している、そんな ambivalence が透けて見える。 女が放射している(と男が勝手に思い込んでいる)暗い性愛の芳香によって否応なしに自我が翻弄されてしまう男は、女に対して一面では憧憬を他面では憎悪を、しかしその根底には何よりも恐怖を、抱いているのではないか。「……彼女は暗黒の現実世界に存在する底無しの陥穽(おとしあな)である……最も暗黒な……最も戦慄すべき……。……陥穽と知りつつ陥らずにはいられない……」(『瓶詰の地獄』所収の「鉄槌」より)。それが何より現れているのが、あの「ホホホホホホホホホ」というやつだ。 □ 「しかし私はこんな一片の因縁話を残すために生まれて来たのかと思うと夢のような気もちにもなる」(「あやかしの鼓」より) | ||||
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大正15年(1926年)に[新青年]の懸賞小説に二等当選した(因みに一等は山本禾太郎の「窓」だった)夢野久作名義のデビュー作「あやかしの鼓」、同じく[新青年]に昭和4年(1929年)発表した代表作の一つ「押絵の奇蹟」、昭和8年(1933年)の傑作中編「氷の涯」を収録。 死の床にある女性ピアニストが押絵に秘められた己の出生の秘密を綿々と手紙に綴る「押絵の奇蹟」 日本軍の公金拐帯事件をめぐり満州からシベリア、ウラジオストックへと逃亡する運命となった軍人を描いた一種のスパイ奇譚「氷の涯」 乱歩に賞賛された、呪われた鼓に魅入られ破滅する人々を描いた奇怪な因縁話「あやかしの鼓」 いずれも主人公の憑かれたような独白体をとっているのは偶然ではなく、久作の代表作は『ドグラマグラ』を筆頭にほとんどが独白体ないしは書簡体をとっているのは、彼が如何に語り口の技巧に秀でた作家であったかということを物語る。 異様な運命に翻弄される登場人物を描いて鬼気迫る世界に説得力を与えているのは自在な語り口の妙に他ならない。 反近代的な匂いさえ感じられる論理では割りきれぬ、いわば業に囚われた世界をこのような闊達な筆致で描いた夢野久作という作家の存在が奇蹟だったとすら思う、呪術的な魅力に満ちた作品集。 (蛇足だが米倉斎加年の表紙画が復活しているのは嬉しい。角川文庫の夢野久作といえば、このタッチが良く似合う) | ||||
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