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(短編小説)
押絵の奇蹟
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押絵の奇蹟の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.56pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全1件 1~1 1/1ページ
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夢野久作の中編三篇を収録した作品集。彼の作品の特徴を為す主題が描かれている。 「氷の涯」 (1933) 疾走というのは、いつも desperate であって、行く宛先の無いものだ。男女二人の終末の後ろ姿には、そうした何処か乾いた美しさがある。 「押絵の奇蹟」 (1929) 夢野久作らしい、伝奇的にしてロマンティシズム漂う凄絶な恋物語。夢野はしばしば、人間の精神と肉体の拠って来たる所を闡明せんとする近代の技術的学知たる精神医学と遺伝学が却って垣間見せるところの、人間存在の否応無き深淵の底知れなさを剔抉する。 「・・・、場合によりては男女間に於ける精神的の貞操の有無をも、形而下の諸現象、・・・によりて、具体的に証明され得るに到るべく、・・・」 夢野の筆は、民俗的な土着性とモダニズムとが混淆した、奇妙な舌ざわりのロマンティシズムを帯びた作品世界を描き出す。 「あやかしの鼓」(1926) 上に加えて、夢野の作品に繰り返し現れるもう一つのモチーフは、性・女への抗い難い暗い力、それへの畏れだ。女に魅せられながら同時に女を畏怖している、そんな ambivalence が透けて見える。 女が放射している(と男が勝手に思い込んでいる)暗い性愛の芳香によって否応なしに自我が翻弄されてしまう男は、女に対して一面では憧憬を他面では憎悪を、しかしその根底には何よりも恐怖を、抱いているのではないか。「……彼女は暗黒の現実世界に存在する底無しの陥穽(おとしあな)である……最も暗黒な……最も戦慄すべき……。……陥穽と知りつつ陥らずにはいられない……」(『瓶詰の地獄』所収の「鉄槌」より)。それが何より現れているのが、あの「ホホホホホホホホホ」というやつだ。 □ 「しかし私はこんな一片の因縁話を残すために生まれて来たのかと思うと夢のような気もちにもなる」(「あやかしの鼓」より) | ||||
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