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(アンソロジー)
ドイツロマン派怪奇幻想傑作集
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ドイツロマン派怪奇幻想傑作集の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全2件 1~2 1/1ページ
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本書『ドイツロマン派怪奇幻想傑作集』には9篇の作品が収録されています。 このなかでは、ティークの「金髪のエックベルト」とホフマンの「砂男」はドイツロマン派という枠をこえてドイツ短編小説アンソロジーなどにもしばしば入るほどの傑作短編です。どちらも何度目かの繙読となりましたが、収録作品中現代にあっても”読める”作品、読んで衝撃を受ける作品はやはりこの2篇です。 ティーク(1773-1853)の「金髪のエックベルト」は、ジャンル的には当時のドイツ文学におなじみの騎士が登場してくるメルヒェンふうの趣向ながら、物語がループするようにひと巡り、ふた巡り展開していくたびに話はいったいどこに向かうのかというぐらいがらりと一変し、しかも思いもかけない残酷な出来事や怖ろしい事実がつぎつぎとあらわれ、最後は、物語のなかにふたたびもどってきた老婆の告白でもって読者を慄然とさせて終わります。 読むたびに、なんでこんな物語があるのかと読者を途方にくれさせる、何かとてつもなく”変な”作品です。 ティークのもう一篇、これもまあメルヒェン仕立てといえる「ルーネンベルク」には、山そして鉱物の神秘と魅惑というドイツロマン派の好んだテーマが見られ、そこが興味深いところでしょうか。 なお、ティークについては、その長篇『フランツ・シュテルンバルトの遍歴』(1798年)の翻訳が国書刊行会から最近刊行されました。 いっぽうホフマン(1776-1822)はドイツロマン派のなかでいちばん独創性もあり優れた作家だったといえます。「砂男」でもそうですが、現実の彼方、幻想の世界へと飛翔しっぱなしではなく、ドイツロマン派ではめずらしく物語そのものはリアルな現実世界をきちんと足場にしているところがあり、それが、バルザックやボードレールなどにも影響をあたえ、フランスで受けいれられたゆえんではないかと思えます。 ホフマンではもう一篇「からくり人形」(原題はDie Automateで「自動人形」という訳題で既訳あり)が収められています。 この作品では、「砂男」もそうでしたが、理性的な日常世界からふと一歩踏みだしてしまいそうな危うい感覚、そこから幻想という以上に何か非理性さらには狂気のようなものへと落ちこんでゆく心理的衝動がかなり細緻かつリアルに描かれていて、こうした描写を読むと、そしてまた物語造型から見ても、ホフマンというのはドイツロマン派のなかでも抜きんでて優れた作家だったのではないかと思えてきます。 この「からくり人形」を読んで、評者は、トーマス・マンの中篇「マリオと魔術師」(1930年)を思い出さずにはいられませんでした。 フケーは傑作『ウンディーネ』を書いた作家ですが、本書収録の「絞首台の小男」は、同時代作家シャミッソーの「影をなくした男」(本来のタイトルは「ペーター・シュレミールの不思議な物語」)なんかと同様、悪魔との契約というファウスト伝説につらなる物語類型にぞくする短編です。作品として首尾結構よくまとまっていますが、あえていうなら、それ以上のものはないかなあ。 フケーについては、未読ですが、2022年に幻戯書房のルリユール叢書の一冊として長篇『魔法の指輪: ある騎士物語 』(上・下)が刊行されていることを付け加えておきます。アイヒェンドルフの長篇『予感と現在』(邦語タイトル『フリードリヒの遍歴)がそうであったように、ドイツロマン派は構成力が弱いから、このフケーの小説も長いだけに退屈しそうで読むのをちょっとためらってしまいますが… ハウフの「幽霊船」はよく知られた作品で、種村季弘編『ドイツ怪談集』(河出文庫)に既訳がありました。 アルニムの「世襲領主たち」は、話としてはなんだかとっちらかった感じで、いまひとつのところがありました。 また、このアンソロジーでザリーツェ=コンテッサの作品をはじめて読みました。この作家のものとしてすでに国書刊行会『ドイツ・ロマン派全集』第8巻に短編「別れの宴」が翻訳されていたようで、当該書は所有しながらも未読のままでした。本書には彼の短編が2編(「死の天使」と「宝探し」)収められています。「死の天使」は、同時代に流行したドイツ運命劇ふうのよくある展開ではじまりますが、物語そのものは構成が散漫というか展開がワンパターンの繰り返しで、残念ながら凡作といわざるをえません。 最後に本書訳文についていえば、どの作家も同じような文体と調子になってしまっていますが、ひっかかるところなく読みやすいものでした。 | ||||
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興味がある人はどっぷり浸れると思いますが、さほどの関心が無い人には厳しい作品。 手に取った時点で既に引き込まれているとは思いますが、独特なドイツ発の世界観は 時代的な隔たりも有り 読み手を選び、一言で言えば摩訶不思議としか形容できない。 特に印象深かった作品は「世襲領主たち」で、重なり合ったモチーフやストーリーは 長編になりそうな多彩要素を 宗教や世代を跨ぐエピソードにサスペンスと夢幻を絡めて ドロドロ煮詰め、神秘的な香りを施し凝縮した逸品。”たち”が必要なのかは今一つ?だった。 続く”ホフマン”の二作はメインとなるカラクリ人形が現代のロボット風で、SFの魁的であり 両作とも狂気が主題。 上記以外も見事な作品ばかりで、作者による違いも顕著で 訳も上手く 非常に楽しめる傑作集だと思います。 | ||||
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