江戸川乱歩座談
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他のレビューワーの方が書いていたのと同じく、書店で本書をパラパラめくって立ち読みしたときは何となく面白そうで中公文庫ならではのいい企画だと思ったのだけれど、じっさいちゃんと読みはじめると、うーんとなってしまいました。 収められたものは、座談会や対談といっても、放言ばかりの雑談程度のものになっていて、ほぼ打ち合わせや話の段取りなしで出席者それぞれが入り乱れて言いたいことを言っているようなところ、当世風にいえば皆でわちゃわちゃやっているところがあります。また、きちんとテーマに沿って話が進行し、またそれぞれの記憶が照合されて興味深くも正しい事実が明らかになったり、戦前および戦後すぐの日本探偵小説界の知られざる裏舞台についてデータ的なこともふくめて正確なことがよくわかるということもあまりないといった感じがあります。 もちろん、乱歩や横溝正史など当時のことは何でも知りたい探偵小説マニアであれば、いろいろ面白いエピソードもたしかに披露されているので一読の価値はあるとはいえます。 現在の文芸誌などでの座談会や対談は、終わったあと発言者がそれぞれ話の流れを変えない程度に速記録にある自分の発言に加筆・補筆する機会があると聞きますが、昔はそのようなことはなく、速記録に残された言いたい放題の発言どおりにまったく修正もくわえられず活字にされたものと思われます。 また、古き良き時代(?)というべきか、座談会などは料亭か何かで開かれたのでしょう、何と出席者のそばに侍っていたらしい芸者の発言も拾われています。小林秀雄との対談は、ふたりとも「お酒が少しまわって」のものだということです。 佐藤春夫との対談も、ポオや佐藤自身のものを含む探偵小説関連の話が出てくる前半はともかく、後半はポオの「アモンティリャドの樽」の話から佐藤が当時計画していた大樽のなかに住むという実生活の話になってしまっていて、まあそれはそれで面白い話ではあるのですが、いささか脱線の気味があるといわざるをえません(佐藤春夫はその計画を長々と詳細にわたって披露しているのですが、ほんとうに実行したのでしょうかね。後日談を知りたいところです)。 いっぽうで稲垣足穂との対談のようなきちんと対談らしい対談になっているものもあるにはありますが。 内容はともかく、昔の座談会の雰囲気を知るにはいい本といえばいえます。 最後に、校正が不充分だったのか行のずれ、誤植(海嘲音、問外不出など)が見受けられました。 | ||||
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江戸川乱歩が参加している座談、対談を集めている。 このうち戦前の座談会が2つある。戦前の有名な作家たちが参加している。最初の座談は昭和4年に行われている。我が国の探偵小説(推理小説)がまだ若かった時代であり、今ならできない、する気も起きない、探偵小説についてのそもそも論をしている。次の「明日の探偵小説を語る」の座談会は昭和12年であり、本格的な戦争の始まった年でこれ以降、終戦まで探偵小説が逼塞状態に置かれたのは周知のとおり。 話し合っている内容を見ると探偵小説をどう捉えるか、が前提となっている。巻末の参考資料「論なき理論」(p.437~)で大下宇陀児が、探偵小説はその定義をいつまでも議論している、と言っている。自分の理解を書けば、例えば事件(犯罪)が起こり、探偵が現れ、謎解きが最後にある、といった総論的な話をしてもしょうがない。読者がそれを探偵小説と見るか、の話である。例として『アクロイド殺害事件』に対して小林秀雄は怒っている。(p.365~)アンフェアだと。読者に詐欺を働いていると。この小説、本当に感心したので、小林の意見には驚いた。しかしそういう反応もありうるとは感じた。花森安治や作家の海野十三、小栗虫太郎も同様の意見らしい。(p.413、p.108) 本書で盛んに議論している探偵小説の在り方について、ここの時点から遠い将来に、東野圭吾の『超・殺人事件』という小説集がある。これは現在の推理小説界の戯画化、つまり茶化した本なのであるが、現在の推理小説を読んでこれが推理小説なの、と思っていた自分には腑に落ちたところがあった。真面目に議論している本書のような時代から、東野本のような物が出る時代になっている。 戦後では乱歩の還暦祝い(昭和29年)を木々高太郎、城昌幸らがしている。芸者が入る席で、恋愛観などもある。「探偵小説新論争」(昭和31年)は木々高太郎、角田喜久雄、中島河太郎、大坪砂男らの座談会。こういう議論を好きなのが推理小説好きなのだろう。自分が興味を感じたのは「文壇作家「探偵小説」を語る」(昭和32年)で、普通の小説家、梅崎春生、曾野綾子、中村真一郎、福永武彦、松本清張による座談会。探偵小説の創作家でなく、読者である一級の小説家の議論。松本清張は『眼の壁』の発表時期である。「「新青年」歴代編集長座談会」(昭和32年)は、あの時あの人とどこそこで会った、といった類の回想が多い。 以下は対談で「E氏との一夕」(昭和23年)は稲垣足穂との同性愛を巡る議論。「幽霊インタービュウ」(昭和28年)は長田幹彦(戦前からの作家で戦後は心霊学に関心を持った)との心霊実験に関する対談。乱歩は心霊実験に懐疑的否定的である。「問答有用」(昭和29年)は徳川無声(無声映画時代の弁士で後、俳優になった)との対談、軽妙洒脱で読んでいて一番楽しい。乱歩は答えて、この時点で自作のうち『心理試験』『陰獣』『押絵と旅する男』『パノラマ島奇談』『鏡地獄』をベストとして挙げている。「幸田露伴と探偵小説」(昭和32年)は文豪の娘で自身も小説家である幸田文との対談。露伴が探偵小説に興味があり、私生活でシャーロック・ホームズもどきの推理をしていたなどと知り、乱歩と同様全く驚いた。「ヴァン・ダインは一流か五流か」(昭和32年)は小林秀雄との対談。先にアクロイドの評価を書いた。将棋が機械では人間に勝てない、という主張は時代のせいもあるだろう。また題になっているヴァン・ダインは探偵ファイロ・ヴァンスが嫌いらしい。探偵小説に心理的な要素を入れたのを否定しているが、議論があるところと思われる。「樽の中に住む話」(昭和32年)は佐藤春夫、城昌幸との対談。乱歩は推理小説を書き始めた当時、谷崎潤一郎、芥川龍之介と並んで佐藤春夫に影響を受けたとある。「本格ものの不振打開策について」(昭和33年)は花森安治(雑誌「暮らしの手帖」の編集者で昭和時代は結構有名な文化人だった)との対談。回顧談の他、題にあるようにいかにして本格推理小説を盛んにするか、を聞いている。 本書を読んで世の中、推理小説好きが多いと改めて知り、なぜこんなに推理小説は読まれているのだろうかと思った。なお本書でアクロイドやYの悲劇などはネタバレが書いてあり、これらのような超絶有名作品は読んでいる読者が対象である。 | ||||
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この世知辛い時代に豪華な出版物!!まず「乱歩vs徳川無声」に大笑いしました。これは、面白過ぎる「大・乱歩」研究書。超オススメです。 | ||||
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一、あれこれ ◯江戸川乱歩推理文庫第64巻『書簡 対談 座談』の中島河太郎氏の解題には「戦前は座談会の機会も少なかったし、乱歩自身の厭人癖も手伝って数えるほどしかない。ところが戦時中にはつとめて出席するように心がけたが、戦後になると探偵小説の啓蒙と普及の意味から、講演と並んで座談会出席の数が激増している」(287頁)と書かれている。 ◯本書(『江戸川乱歩座談』)の巻末(447〜451頁)の主な座談・対談一覧には、戦前9篇、戦後63篇(数え間違いご容赦)の座談・対談が載っていて、やはり戦後が圧倒的に多い。 ◯本書はこの戦前9篇、戦後63篇の中から、戦前座談2篇、戦後座談4篇、戦後対談7篇の計13篇を収録している。年度別には、1957年のものが5篇選ばれていて、圧倒的に多い。 ◯江戸川乱歩推理文庫第64巻『書簡 対談 座談』で中島河太郎氏が選んだ対談は「幽霊インタービュウ」(対長田幹彦)「問答有用」(対徳川夢声)「ヴァン・ダインは一流か五流か」(対小林秀雄)「樽の中に住む話」(対佐藤春夫・城昌幸)の4篇だが、これらは全部、本書にも収録されている。 二、私的感想 ◯戦前のものも戦後のものもたいへん面白いが、個人的には、戦前の2編「探偵小説座談会」と「明日の探偵小説を語る」が圧倒的に面白かった。 ◯生意気にベスト5を選んでしまうと、 1位「明日の探偵小説を語る」・・海野、小栗、木々、乱歩の4人が1937年の時点で、未来の探偵小説について語る。 2位「探偵小説座談会」・・1929年。大下、甲賀、浜尾、森下、乱歩、の5人と、編集部の加藤武雄。ヤメ検弁護士の浜尾はこの年に作家デビュー。 3位「「新青年」歴代編集長座談会」・・1957年。題名通り。 4位「E氏との一夕」・・乱歩と稲垣足穂が同性愛、美少年、少年愛、女性同性愛について語り合う。 5位「本格物不振の打開策について」・・探偵小説大好きで、創元社版もハヤカワミステリも全部とっている花森安治の、本格派への助言。もっと勉強して、もっと調べて、リアルに書けと。 | ||||
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本書は企画力の勝利だと思う。本屋で立ち読みすると面白そうで、買ってあらためてじっくり読んでみると実はそんなに面白くないという…。企画力の勝利ではないか、と思うゆえんである。 しかし乱歩は偉い。どの発言をとっても一貫して探偵小説への愛があふれている。「探偵作家の総てが一つの同じ方向に進もうとするのはいけない。各人各々好む方向に進むべきだと思う」(p62-63)など、早くから多様性の大切さも説いて立派だ。 一方で、小林秀雄はバカだ。この人が批評家としてどれほどのものか知らないが、僕にとってはこの対談で5つ星のバカ認定だ。この人の批評を現代に当てはめると、「信用できない語り手」がお得意のカズオ・イシグロなんて読む価値もないことになる。 ちょっと笑ったのは、横溝正史のこの発言。「しかし、乱歩という名はどっかで聞いたと思ったら、アッ、エドガー・アラン・ポーだ、と気がついた(笑)。(中略)ポーなんて向うの作家のペンネーム使う奴は下らん奴だ、と思ったんですよ」(P223)。仲が良いからこそ言えることだと思う。 | ||||
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