(短編集)
十一郎会事件 梅崎春生ミステリ短篇集
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サスペンス風味、ミステリ風味、幻想風味の文芸作品集で読みやすく大変面白い作品集だと思います、戦争経験者でないと書けないような味わい深い作品も収録されています。 ただ斬新なトリックや意外な犯人など本格的な推理小説を期待する方には物足りないと思われます。 | ||||
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中公文庫での梅崎春生作品の刊行は4冊目で、喜ばしいことこの上ない。 収録作は、ミステリータッチの以下の13篇(それに、エッセイ4編と乱歩のエッセイの抜粋)。 小説について言えば、全体的に文章は読みやすく、人間の内面や現実世界に対する深い洞察に満ちている。 冷笑的、虚無的かつ懐疑的な作者の視線が、恐怖や不安、ユーモアやアイロニーをもたらしているが、全作品に共通するそれらの要素の配分は作品ごとに異なり、結果的にサスペンス小説やユーモア小説の形を取ったり、あるいは、ホラー小説やいわゆる「奇妙な味」のような悪夢めいた小説に姿を変える。 「失われた男」 :いわゆる「文学的」な傾向が強めの作品だが、文章は明快で読みやすい。 戦中物でストーリーの起伏には乏しいが、老兵3人の心理の葛藤が強烈なサスペンスを生み出している。 「小さな町にて」 :戦後間もない頃の話で、行方不明者の人探しという意味では、説明文にあるとおりハードボイルド的ではあるが、その他の点では特にそうは感じない。 人探しといっても、主人公が降り立った小さな町に目的の人物が住んでいることは明らかで、人探しというよりはその目的の人物に会うかどうかを逡巡する主人公の内面が眼目である。 また、ついにその2人が対峙する場面はただならぬ緊迫感に覆われている。 そういった心理描写はいつもながら秀逸であるが、町の情景や人物も目に浮かぶようで、梅崎氏はまた映像的描写にも長けていると思う。 「鏡」 :ある男が闇取引で得た札束の金庫番の老人と、その裏帳簿を作製する主人公のやるせない物語。 欲望に翻弄される貧しい男2人の心理が生々しく描き出されている。 「犯人」 :終戦直後の話で、ひょんなことから家主のいないガレージに無断で同居することになった3人の男の共同生活と、その近所で頻発する盗難事件の顛末を描く。 ミステリ要素はほとんどないが、全編を通じてそこはかとないユーモアが漂っている。 これがいわゆる「奇妙な味」というものだろう。 「師匠」 :主人公の絵の師匠である初老の画師の不可解極まりない行動の真意はどこにあったのか。 本作もまさしく「奇妙な味」としかいいようのない不思議な印象を残す。 「カタツムリ」 :常に控えめで周囲から自分を隠すように生活する初老の男と、その男を執拗につけまわす主人公。 この2人の人物造形が好対照で、読後には無気味な余韻が漂う。 「春日尾行」 :高価な腕時計を紛失したことに端を発するのどかで愉快な尾行譚。 万人におススメしやすいユーモア小説。 「十一郎会事件」 :本作も「春日尾行」と同様、主人公の自宅を訪ねてきた友人が奇妙な話を語るというパターン。 タイトルから、「赤毛連盟」や「紫電改研究保存会」などの系統のミステリかと思ったら、それは確かにそうなのだが・・・ 謎が解決したようなしていないようなモヤモヤした感じが残る。 表題作にもかかわらず、本作品集の中で最もビミョーな出来。 「尾行者」 :私立探偵の依頼者に対する報告が脱線していくところは面白いが、全体としてはイマイチ。 「留守番綺談」 :留守番を頼まれた男が、留守番を監視する役目を任ぜられた男に遭遇するという話がやがてやるせない幕切れを迎える 滑稽と切なさがブレンドされた不思議な味わいと深い余韻を残す。 「鏡-破片より」 :背中合わせの隣家の部屋が自分の部屋を裏返したようにそっくりになっていくという不安と恐怖を描いた神経症的な作品で「奇妙な味」の真骨頂。 「侵入者」 :お人よしの男の自宅に、電気屋や写真犯や植木屋が唐突に現れては、彼らなりの用件を処理して去っていく。 本作でも不安や恐怖の要素はあるけれどもユーモアの度合いが高く大変面白い。 「不思議な男」 :作者の長編小説で映画化もされた『つむじ風』の登場人物のモデルとなった男の話。 常習的なウソつきで、松平家の出であることを周囲に信じさせたかった理由とは何か。 当人にも分からないのではないかという、まさしくタイトルどおりの話。 以上、13編。総じて大変楽しめました。 | ||||
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