唐福睿
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本作は「法廷内で激しいやりとりを繰り返す弁護士と検事」の物語ではなく、「犯人捜しやトリックに苦心する」ミステリーではありません。インドネシア国籍の船員が3人を殺した、という事実から始まりました。 しいて言えば一番のテーマは「刑罰としての死刑の是非」ではありますが、背景の描き方がとてつもなく巧みです。「台湾の司法制度」「司法界の権力闘争」「人身売買」「密漁」「船上での事故に偽装された証拠なき殺人」「無国籍児」「インドネシア語(方言も含む)など通訳制度の不備」「イスラム教の理解」などその問題提起はとどまることを知りません。 そして最後に死刑が執行されるのか、というだけでなく暗闇のなかに微かな光明が見えるところが希望につながりました。 | ||||
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直近での台湾ミステリと言えば紀 蔚然による「DV8 台北プライベートアイ2」(2024/5月)を思い浮かべますが、本書は例えば「リンカーン弁護士」シリーズのような手に汗握るリーガル・スリラーなのかどうか? 主なる舞台は、台湾の漁師町、八尺門。 主人公は、<先住民、アミ族>でもあり公設弁護人の佟寶駒(トンバオジ)。被告人アブドゥル・アドルはインドネシアからの移民労働者ですが、働いていた漁業船の船長一家を殺害した罪で投獄されており、既に一審では「死刑」判決を受けていました。二審に於いて被告人の弁護を担当することになった佟寶駒は、配属された代替役の連晉平というバディを得て、困難な裁判に突き進んでいきます。と書いてみて、しかし今回のこの物語は今まで私が読んできた欧米のリーガル・スリラーとはかなり異なることを再確認しました。 事件の全容は前半で明らかにされていますが、焦点は「被告人が果たして死刑になるのか否か」という一点に絞られます。そして、死刑にさせない側の二人に通訳のために私的に雇われたインドネシア人の家庭介護士、リーナが加わることで物語はよりジェネラルでドメスティックでダイナミックな展開を見せつけてくれるようになります。 登場人物たちもまた多彩です。死刑制度の廃止を唱える法務大臣、巨悪の象徴のような船会社の経営者、強大な権力者たち、何より佟寶駒の同胞でもある<先住民>たちの歴史と生き様が物語に縦方向の深さを与えています。 とは言え、私が台湾の裁判制度を理解しているわけではありませんので、インサートされるそれぞれの注釈について検証できるわけではありません。しかし、そのことが物語に或る種のリアリティを与えていることは間違いありません。 終盤についてはアンフェアを恐れて多くを語ることができませんが、物語は次第に私が望まない方向に向かって爆進します。負のサスペンスが、台湾が抱えるより多くの現実を晒しています。それがこの読書の醍醐味だったと言えるでしょう。 もう一つは裁判制度に於ける「翻訳」についてのアプローチが、緻密に描かれています。多くの言語が行き交うこの世界で<人は何をもって心を通わすことができるのか>考察に値しますね。視点を変えて、この小説の翻訳者の丁寧な仕事にも感嘆を禁じ得ない。貴方は、リーナだ。 台湾の裁判制度、アミ族が抱える陰影、台湾で働く外国人労働者たち、どの国にも巣食う既得権益層に蔓延る犯罪者たちを超えた邪悪、それらを一つの事件に実証的に集約させながら、公設弁護人の佟寶駒という特異なキャラクターを生み出した作者の筆力もまた凄まじい。 少なくともこんなリーガル・スリラーをこの国(日本)で読んだことはなかった。 □「台北裁判 “Port of Lies”」(唐 福睿 早川書房) 2024/12/11。 | ||||
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