鼠の島
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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イギリス人ミステリー作家の日本デビュー作。香港警察の警部がニューヨーク警察の依頼でニューヨークのアイリッシュ・マフィアに潜入捜査する、複雑系?ノワールである。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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潜入捜査といえば映画「インファナル・アフェア」のひりつく相互乗り入れ、黒社会は「男たちの挽歌」での派手に爆破されるシーンが思い出されます。本作は「香港警察のアイルランド系捜査官がNYで自国筋の犯罪組織に潜入してアイルランド系と香港系の両方を壊滅させるために命を張る」という新基軸の設定です。 ギャンブルと酒で身を持ち崩して妻子にも去られた主人公は危険でほぼ必ず死が待ち受ける任務に抗うことができず潜入します。待ち受けるのは「死体処理」「麻薬密売」「みかじめ料の取り立て」と目を背けたくなるのですが現実のシノギに邁進せざるを得ません。 このあたりがちょっと饒舌で長話になっているのですが、ここにも「伏線」が巧妙に埋め込まれていますのでお付き合いください。 そして感動のラストにつながります。ここがとても秀逸です。身バレして処刑されるまでの時間稼ぎが思いもよらない方法でしかも完全に「伝統」を踏襲していました。新年にふさわしい傑作です。 | ||||
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珍しく原題通りの邦題の小説。 時は1995年、香港返還直前のニューヨーク。 以前の勤務でしくじりをしてしまいニューヨークに来た警官カラム。 犯罪組織への潜入捜査を命じられ、命懸けの任務を遂行する。 汚れ仕事をこなしながらも、核心に近づくカラムだが、果たして過酷な任務の行く末は、というストーリー。 先ず、話にアップダウンがないので没入感がなく、比較的読みにくい。 最終盤になるまでは、かなり長々とした印象。 最後の畳み掛ける展開は良かったが、個人的には、冗長に感じてしまった。 万人受けするかは見解が分かれると思います。 ポケットミステリーシリーズのアクション小説では、ぶっちぎりで、「アメリカン・ブラッド」が面白かったが、シリーズ3作のうちでの1作目で翻訳が止まってしまった。 | ||||
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2024年掉尾を飾るエキサイテイングな翻訳クライム・スリラーの秀作と言っていいでしょう。 潜入捜査官を描いた映画、同じニューヨークを舞台にした「フェイク」(監督:マイク・ニューウェル)を想起しながら、しかし描かれる時代も道具立ても違っていました。また、かなり昔の話になりますが、「三合会」と言えばマイクル・コナリーの「ナイン・ドラゴンズ」を思い出さざるを得ません。 1995年、ニューヨーク。アイルランド人でありながら王立香港警察の警部でもあるカラム・バークが主人公。彼はニューヨーク市警と麻薬取締局(DEA)が絡む合同捜査班に参加します。目的は、中国人とアイルランド系アメリカ人による組織犯罪の撲滅にあります。 三合会が米国にヘロインを供給、ニューヨークのチャイナタウンを拠点とする「協勝堂」(ヒップシントン)が密輸に協力し、アイリッシュ・マフィアがそれを売り捌くという取引の構図の下、その最も弱い環がアイリッシュ・マフィアだと狙いをつけた捜査班は、カラムをそのアイリッシュ・マフィアの巣窟へ一匹の<鼠>として潜入させることになります。いかに物語が進展し、組織犯罪がいかに撲滅の憂き目に遭うかは、まあお読みください。私がこれ以上書いても、その面白さが半減するだけになりかねません。 主人公、カラム・バークがすこぶる魅力的でした。ギャンブルで借金を重ねた挙句、不祥事を起こしたカラムのキャラクターには、失った<自己>を取り戻そうと足掻く一人の生身の男の苦悩がページを追うごとに増幅します。或る意味投げやりに一個の<暴力装置>と化すカラムの心のプロセスに追随するかのように、それでもなお"失ってはいけないもの"のために三つ巴の捜査班は懸命に彼の行方を追跡しようとします。その哀しみが幾多の暴力シーンの裏側に隠されています。まるでマフィアに潜入した捜査官の生き様をそのままなぞるかのように。 香港返還前、1995年頃のマンハッタンのアクチュアルな街の息吹き。暴力が暴力を生み、快楽が快楽を引き寄せつつ香港、米国、アイルランド、そして日本までもリンクさせた組織犯罪の鎖を手繰り寄せる作者の洞察力。 そして、身体の痛みに加えて、常に正体がバレることを恐れることによる<焦燥感>に晒されるカラムの心の中には、穏やかさと良きものへの憧れが渦巻いているように思えます。しかし、そのことをダラダラと描写しない作者の"ハメットぶり"にも心を動かされました。 <反転>を欲しがるミステリ・ジャンキーには、微細な伏線が張り巡らされています。いずれにしろ、お読みください。 □「鼠の島 “Rat Island”」(ジョン・スティール 早川書房) 2024/12/08。 | ||||
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