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シャーロック・ホームズの凱旋
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シャーロック・ホームズの凱旋の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.40pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全31件 21~31 2/2ページ
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森見登美彦作品は四畳半シリーズや有頂天家族がすごく好きで今回森見登美彦によるシャーロック・ホームズというおよそ検討がつかない組み合わせであったが、今までの小説で屁理屈を並べまくってたのがホームズとすごく相性がよかったと感じた。 ただ、前半のなかなか物語が動かないあたりは読み進めるのがしんどかったが、中盤あたりから物語の進行が速まり、同時に多次元構造となってきて混沌とした流れとなってくる。 そこを上質なファンタジーとして捉えるか否かで読者の評価は二分すると思う。 シャーロック・ホームズというミステリの大正義な題材を持ってきてここまで大胆な形にしてしまう思い切りの良さは森見登美彦の凱旋と言っても言い過ぎではないと思う。 これからこの本を読む人はつまみ読みではなく一気に読んでしまうぐらいでいかないと、自分が今どこを読んでるのか迷子になりますよ。 あと、この本を推理小説と思って読む人は今読むのはやめて、ペンギン・ハイウェイとかの他の森見登美彦の本を読んで合うかどうかを判断してから読んだ方がいいです。 先に言っておくが、この本は断じて推理小説ではない。 | ||||
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初めから終わりまで全ての描写が映像で想像できました。 近いうちに必ず実写かアニメで映画になるに違いないと確信します。 私が知らないだけでもう既にそのようになっているのかも知れませんが。 今まで小説になった森見さんの作品は全て読ませていただいておりますが、 既視感を述べられている方もいる中で、私は過去の作品とは全く違うように思いました。 とはいえ、森見さんの作品のところどころでシャーロックホームズの名前は出ているので、恐らく森見さんはシャーロックホームズを極めておられるのですね。 そこから掘り下げて妄想を繰り広げたストーリーにされているのがとても面白かったです。 最初にも書きましたが全てが映像的で、文字を読んでいるのに映画を観ているような感じがさすが森見登美彦!と感動しました。 こんな壮大な妄想を広げられるなんて、素晴らしい。 というわけで、 夜遅くまで読み耽ってしまった私は腐れ大学生のように今から惰眠を貪ろうと思います。 | ||||
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電子書籍で拝読しました。 なんと痛快なファンタジー推理小説でしょう! 正直なところ、半ばくらいまでは、読み進めることが辛かったです。森見先生の小説は全て読んでいますが、恥ずかしながら、何日かに分けて日を置きながら読み進めました。「四畳半神話大系」や「太陽の塔」から、爽快さを取り除いた鬱屈さしかないと思いながら読んでいました。分量的にも両作品くらいはありますから。 でも、そこから先は読む手が止まりませんでした。読み終わってから気づきました。前半の鬱屈さこそ、スランプそのものではありませんか! モリアーティ教授の寝室なんて、スランプや、人生がうまくいかない人がよくやってしまうことだと思います。と言いますか、私がよくやっています。そうしないと、心の平静が保てないから。 最後の展開こそ、森見先生の凱旋にふさわしいです! 「夜行」や「熱帯」で森見先生が書かれた主題の、その先(森見先生の答え)が書かれています。 ホームズが好きな人が、クスッと笑えるネタがたくさんあります。 ホームズを一切読んだことがない方も、もちろん大丈夫!すごく面白いです! 小説の半ば以降から最後まで、怒涛の展開が待ち受けています! でも、電子書籍でいうと50%くらいまでは、我慢して読んでいただけると、森見ファンとしては嬉しいです。 今の森見先生なら、この言葉をお伝えしても大丈夫なはず! 今から次作が楽しみです!先生のペースで構いません。次作も絶対に読みます! | ||||
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スランプに陥った自分自身という難事件に取り組むシャーロック・ホームズ。 舞台は京都でありながら、京都警視庁をスコットランドヤードと読ませたり、ビッグベンのような時計塔があるあたり、現実の京都ともちょっと違う。 つまりコナン・ドイルの描くシャーロック・ホームズの世界とはパラレルな世界ということなのか? などと思いながら読み進めていくと、本家コナン・ドイル『シャーロック・ホームズの冒険』の冒頭を飾る『ボヘミアの醜聞』でホームズをアッと言わせたアイリーン・アドラーが登場したり、同じく『シャーロック・ホームズの冒険』収録の『赤毛組合』では見事な推理力で事件解決に結びつけたホームズが、本書では逆に、その事件で大失敗したことからスランプが始まったことになっていたり、とやはり本家ホームズの世界とは意識的なずれがあります。 それでいて、でっぷり太った金魚「ワトソン」や片目の入った達磨がホームズの部屋に登場するあたり森見登美彦らしさ満載。 そんな本書、第4章まではグイグイと読ませる面白さですが、第5章で世界がグラリと揺らぎます。 私たちが今いるこの世界は、本当に現実の世界なのか・・・ 本書は雑誌連載終了後、かなりの年数をおいて完成に至っていますが、これだけ年数が必要だったのは、森見登美彦自身も本書のホームズのようなスランプに見舞われ、本作の終わらせ方にかなり悩んだのかもしれません。 そんな印象を持つ第5章でした。 でも本書、出てくる女性がみんな魅力的です。 ワトソンの妻メアリー、アイリーン・アドラー、ハドソン夫人、といずれもスランプで暗いホームズに代わり明るくキラキラ光った存在感を見せてくれます。 彼女たちの存在感によって物語が明るく救われているように感じます。 | ||||
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碁盤の目の京都の街は、通りに名前や番号があり、ベーカー街のオマージュがとても合うなと思いました。ホームズたちが京都の街を颯爽と歩くのが目に浮かびワクワクします。それを堪能できる第1章で心をつかまれました。ヴィクトリア朝京都でのホームズはスランプ中で、謎を解くことに邁進するのではなく、じっくり味わう姿は新鮮でした。ホームズたちが本当に実在していたら、事件と事件の間の日常はこのような感じだったのではと思わせます。その現実感を作り出しているのは、事件の記録ではなく、ホームズという人物の記録だからなのかもしれません。ホームズという人物の謎にじわじわ迫っていく小説です。 | ||||
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シャーロックホームズであってシャーロックホームズではない。シャーロックホームズを触れたことがある人は聞いたことが、見たことがある馴染みのある登場人物がどう絡んていくのか読み進めたくなる作品。消してミステリではないホームズ達が日本の京都というパラレルでどのように過ごすのかは見どころです。 | ||||
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ヴィクトリア朝京都という異世界を舞台に、〈シャーロック・ホームズ〉シリーズの登場人物たち──シャーロック・ホームズ、ジョン・H・ワトソン、メアリ・モースタン、アイリーン・アドラー、モリアーティ教授 etc.etc. ──が活躍する物語。 ぐうたらなホームズがなかなか動き出さない展開が腹立たしく、第三章の半ばくらいまでは頁をめくる手があまり進みませんでした。でも、〈東の東の間(ま)〉をめぐる不可思議な謎へと話が及ぶ辺りから面白くなってきて、終盤は一気読みに走りました。 主要キャラたち同士の友情、愛の綱引きみたいなのが一つ、この物語のテーマになっていたかなあ。語り手であるワトソンが、相方ホームズと愛妻メアリとの間で、それぞれへの愛が振り子のように揺れ動き、右往左往する様子に、はらはらしました。アイリーン・アドラーがホームズをリスペクトしつつ競い合いたい思いの強さ、これも印象に残ります。 アイリーン・アドラーと言えば、この異世界では●●だってことにビックリしたなあ。この設定を知った瞬間、「うひっ!」てな変な心の声をあげてしまいました。 さて、本作品で殊に魅力的に感じたのは、ヴィクトリア朝京都の幻想的で美しい描写でしたね。次の文章なんか、その情景にぞくぞくしましたよ。 《そこから先、二条通の街路は寺町通(てらまちどおり)とは打って変わって薄暗い。漆喰(しっくい)塗りの古い建物が狭い通りの両側に櫛比(しっぴ)して、ぽつんぽつんと飛び石のようにガス灯がある。スポットライトのような光の中にモリアーティ教授の黒々とした姿が現れ、ふたたびその先の闇へ溶けていく。その繰り返しには夢幻(むげん)的な雰囲気が漂っており、モリアーティ教授がこの世の者でないような気がしてくる。ホームズと私は暗がりに身を隠しつつ、足音を忍ばせて追跡を続けた。》単行本 p.35 《冬の日は早くも暮れかかっていた。薄青い夕闇が下鴨(しもがも)の町を浸しており、通りの向かいの糺ノ森(ただすのもり)は黒い影になっていた。点灯夫が街灯を点すたびに、揺らめく光のまわりに新しい夜が生まれていく。その情景がたいへん美しく感じられて、私はしばらく道に佇んで眺めていた。下鴨本通を南へ歩いて葵橋(あおいばし)へ出ると、仄(ほの)かな明るみを残す空が頭上に広がった。》単行本 p.308 フィンセント・ファン・ゴッホによる、ローヌ川の星月夜の景色を描いた絵だとか、サン=テグジュペリの『星の王子さま』の中の点灯夫の描写だとか、そういった景色が脳内スクリーンに浮かびましたね。いやあ、うっとりしましたわ。 それと、著者の竹林(ちくりん)への偏愛ぶりにも、「やあ、なんかすごいなあ」思いました。 | ||||
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"どんなプロフェッショナルにも、失敗があり、挫折があり、不遇の時代がある(中略)それは名探偵シャーロック・ホームズも例外ではなかった"2024年発刊の本書は「ヴィクトリア朝京都」を舞台にしたミステリー風味ファンタジー。 個人的には、著者の架空の京都を舞台にした作品たちが好きな事もあり、本書も手にとりました。 さて、そんな本書は雑誌連載された同名作品を単行本化したもので、著者曰く"コナン・ドイルが生きたヴィクトリア朝ロンドンは、いまの京都と似ていると思うんです"と語る「ヴィクトリア朝京都」寺町通221。そこに一時は活躍するも(原作読者ならお馴染みの)『赤毛連盟事件』で、“大失態”を演じて以来、引きこもる名探偵ホームズ。そんな彼が、外の現実に起きる謎ではなく『スランプ』という自分の内なる謎解決に挑んでいくミステリー、もとい鮮やかなには解決されないファンタジー作品で。 まあ、著者の他作品を読んできた身としては【ホームズも詭弁論部だったのか!とか】登場人物達に他作品との共通点を感じたり、相変わらず(京都市内在住者としても)作中の風景が鮮やかに浮かんできて面白いわけですが。 一方で、重ねて書くように本書はミステリーならぬファンタジーで。本書後半の並行世界、メタフィクション的な展開は【駆け足的な印象があって、賛否がわかれるのではないか】と思いました。(いつものことかもしれませんが) 著者ファンの方はもちろん、架空の京都市内を舞台にしたファンタジーとしてもオススメ。 | ||||
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昨年末、滅多に更新されない著者ブログが更新されて本書の刊行日が公表されるとともに「またしても怪作になった」と記されていました。最初のうちは、「昔に書いていた、グータラ腐れ大学生小説をシャーロック・ホームズに置き換えただけか」と思って読んでいたのですが、途中から「怪作化」が進行し、とんでもない方向に話が展開、、、というか、いつもの森見ワールドが全開するというか、、、ネタバレなのでそれ以上は書けませんが。 「ヴィクトリア朝京都」という人を喰った設定の下、スランプに陥ったシャーロック・ホームズが、ひたすらにぐうたらとする姿はデビュー以来何作か続いた「腐れ大学生」の系譜に属すると共に、スランプで数年間断筆していた森見自身の姿が投影されているようでもあり、『夜行』や『熱帯』のようなメタ小説の系譜にも属する物語です。 「盟友」万城目学さんは、直木賞受賞記者会見で「次は森見さんだとバトンを渡したい気持ちです」と語りましたが、本作品は『熱帯』以上に選考委員から嫌われそうな作品でした。つまり、私のような読者にはとても面白かったです。 | ||||
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シャーロック・ホームズの活躍を探偵小説として伝記化してきたワトソンの視点で描かれる。 ヴィクトリア朝京都とロンドン、どちらが現実でどちらが幻想か。 ワトソンたちは探偵小説の登場人物で、作者に作られた存在なのか。 はっきりした結末が描かれるわけではない。 この世には解いてはいけない、解くことのできない謎があるということなのだろうか。 森見登美彦さんは以前のインタビューで、読者が求めるものは初期のグータラ大学生ものだということは分かっているが、そこに留まるのではなく新しいものを作らないといけないというようなことを仰っていた。 夜行、熱帯、そして今作からはそういう挑戦が感じられる。 これからも応援しています。 | ||||
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ホームズ、モリアーティー博士、アイリーン・アドラー、メアリ・モースタン、ハドソン夫人、レストレード警部他、シャーロック・ホームズシリーズの愛すべき人物たちがヴィクトリア朝京都の街で活躍する様子をワトソン博士が『シャーロック・ホームズの凱旋』なる小説に書きあげたという物語なのですが、もちろんロンドンの街も出てくる多重の入れ子構造になっていて、読者のドキドキが3倍になる、正に森見ワールド。 探偵としてスランプに陥ったホームズは再度輝きを取り戻せるかというおちゃらけたストーリーは次第に深刻化し、『熱帯』と同様、ある物語の終わりが新しい豊かな物語を起動していく展開に進み、作者も読者も含めて物語を愛する人々を激励し勇気づけてくれます。 『ペンギン・ハイウェイ』とのイメージの近縁性を強く感じました。「東の東の間」「巨大な月」「世界の綻び」は『ペンギン・ハイウェイ』の「草原」「<海>」「世界のやぶけたところ」に繋がっているし、「いかなる名探偵にも解決できない事件」はアオヤマ君のお父さんの言った「世界には解決しないほうがいい問題もある」と共鳴します。 探偵小説的な事件の謎じゃなくて非探偵小説的な世界の謎に迫る痛快な物語を通じて、物語を創造することの苦悩と喜びが響きます。物語読者の代表とも思えるヴィクトリア女王の言葉が素敵でした。 ホームズシリーズに距離を置きたかった感情や心霊主義の傾倒などコナン・ドイル自身への関心も編み込まれ、ホームズファンに喜ばれるか、けしからん偽典とされるかも興味深いです。 | ||||
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