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ひとり日和
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ひとり日和の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.36pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全34件 21~34 2/2ページ
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この作家には、周辺にいる人々の様々な感情の動きが手に取るようによく見えているのだろう。にも拘わらず、そのことへの向き合い方、描き方に凡そ構えというものを感じさせない。それほどに文章が自然である。これをある種のニヒリズムととる見方もあろうが、私的にはむしろ賢さ(ある種冷徹なまでの)とか、それ故のバランス感覚の良さと見る。微妙な意識の表現がまことに的確で、且つその表現に過不足のないことに感心する。読み進めながらうける感性の流れがまことに自然で、私的には大好きな漱石の作品と同じ心地良さを感じた。途中「この作者、一体いくつなんだろう?(全く予備知識なしに読み始めていた)若そうでもあるが、もしかしてそれなりの手練れなのかも・・・」と奥付を確認して23才と知り又感心させられた。所々で「うーん、いいね」と思わせる文章にも出合わせてくれた。青山七恵、相当にナカナカでしたね。「私に感想をコメントする気を起こさせるとは大したもの」と勝手に思いながら、今後も少し気にかけていくつもりです。 | ||||
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「吟子さん、外の世界って、厳しいんだろうね。あたしなんか、すぐ落ちこぼれちゃうんだろうね」 「世界には外も中もないのよ。この世はひとつしかないでしょ」 見込みがなくても、終わりが見えていても、なんだって始めるのは自由だ。もうすぐ春なのだから、少しくらい無責任になっても許してあげよう。 なるほどなあ〜と思った作中の文章であります。 | ||||
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ここに登場するおばあさんは、何の変哲もなさそうだが、とても味のある人だ。不安定な主人公の気持ちとの対比がおもしろい。一つ一つの描写が、鋭い。そこが理解できないとこの小説を読んだことにはならないだろう。 | ||||
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この小説の良さを理解できないのは私自身が歳をとってしまったからかも知れないと思った。 主人公の女の子も、バイト先で会う彼氏もおよそ情熱とか感情というものをおもてに表さない。 何よりもびっくりしたのは主人公の女の子がバイト先の彼と別れたときに 「あんなに好きだったのに」と示していることだ。 どこにそんな感情のほとばしりがあったのかと思わず読み返してしまった。 それに比べると上海に赴任した母親の恋愛のなんとわかり易いことか。 これが今時の二十代前半の恋愛感情なのか。 | ||||
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ところどころに日本語としての拙さはあるものの、それが意図的なものなのかは謎です。とにかく読者の感性を刺激する心地よい言葉の流れに引きこまれて、3時間ほどで読みきれました。社会や人生とのつきあいかたに戸惑う主人公が、決して恰好をつけずにあるがままの自分の姿を見つめながら自立し、優しい人間へと成長していく姿に心引かれました。優しい人間といっても、「おばあちゃん長生きしてね」というような陳腐なヒューマニズムに完結しないところが素敵です。最後のほうでの老女との率直な魂の交流には思わず涙が溢れてしまいました。美しい映画を見たような感動にひたれます。小説というより名作映画の脚本のような感じを受けました。視覚、触覚、嗅覚、聴覚などがそそられました。おそらく映画化されるのではないかと今から期待してしまいます。ひょっとすると、老女は主人公の少女の心の奥に住む「もう一人の自分」なのかもしれないとも感じました。そういった脚色で映画化されると面白いと思います。ただ、「盗み」がサブテーマになっているだけに、文部省推薦とはならないかもしれないのが残念。主人公にとって「盗み」とは他者と強くつながるための原始的な癒しの手段なのでしょうが、魂の成長とともにそこから脱出していくプロセスに感動しました。 | ||||
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特別な出来事もなくただ過ぎて行く日常を生きていると起こる感情が注意深く描かれてあって、とても共感が持てました。感情で走る方法を知らず、考え、考えすぎるために何事にもそれらしい理由を付け、自分1人で納得し、勝手に結果を招いてしまう。何事も少しでも複雑になるとどうでもいいと思い、経験が浅く視野が狭いため、うまくいかないことにいちいち苛立ち、ただ自然に巡ってくる小さな人間関係の中だけに世界を見いだす。突つかれると折れてしまいそうに見えるのに、本人は何にも負けない強いものになりたいと思っている。その狭い世界の中で。暗い人と思われてもしょうがない主人公だけど、本人はそういう世間からの目を気にしている様ではなく、淡々と自分の目と足で、自分が生きて行く場所を見つけようとしている。世間との微妙なずれには疑問を持たず、苦悩もしない。それよりももっと私的で些細なことに心痛する。端からは分からない様にもがく。そんな主人公の言動にとてもリアルなものを感じました。 | ||||
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審査員の石原慎太郎と村上龍が激賞とのことですが、二人がこの小説を読む姿を想像すると、つい微笑がもれる。そんな感じのなんつうか、おっさんには不似合いなところのある小説なのですよ。でも、そこが実はポイントです。 埼玉から東京に出てきた(この設定もいいな)女の子(フリーター)と居候先のおばあさんとの交流とその後を描いた小説なんですが、読むうちに二十歳前後のなんだかこそばゆい時代の思い出がよみがえってきます。 で、やっぱ新世代というか、自分とは違う世代なのだなあという思いもあり、そんなところが審査員のおっさん二人の心を「きゅっと」つかんだんではないでしょうか。わたしもちょっとつかまれましたよ。作者は83年生まれです。 | ||||
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26歳女性です。 今まで読んだ芥川賞作品の中で、一番面白く読めました。 何だか、主人公が自分にそっくりだったのです。 年や職業や思ってることとか、一見全然違うのに、なにか似てるんですよ。 不思議な感じがしました。 退屈とか長いとかの意見も多数あるようですが、 私は、この作品のけだるい様な雰囲気を、むしろ楽しませてもらいました。 長いんだけれども、ずっと読んでいたいような。 終わったらまた何度でも読み返したいような。 だらだらしてて面白くない!っていう方には無理には勧めませんが、 私みたいに退屈な若者は読んでみるといいと思います。 | ||||
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職場の上司や同僚が勧めてきたので読んでみました。 これが期待以上に面白くて、興味深くて一気に読んでしまいました。 主人公が老婆との共同生活をしながら、恋や仕事など精神的に自立していく物語なのですが、 その単調そうな筋に挟まれるブラックなユーモアが絶妙。 クスッとさせられながら、退屈させることなく一気に読ませる技術は素晴らしい。 最近の芥川賞の中でもずば抜けて好感が持てる作品でした。 「芥川賞=文学的作品」などと敬遠せずに、まずは読んでみることをオススメします。 | ||||
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出ました!芥川賞受賞作品!! この作品を読む上で大事なこと、それは「無」。皆さんは日常に満足していらっしゃるでしょうか。きっと多くの人は、この作品の主人公に共感できるはず。いやさせられている。大学もいかず、ただふらつく人生を夢みながらも、やはり社会的地位を得なくてはいけない我々人間にとって、この主人公は我々に内在する隠れた記号なのである。 さて、作品はというと 若者と年寄りという、かなり明確なコントラストにより、読者を作品へ強引に引き込んでいる。ここで注目すべきことは、若者のような年寄りと老人のような主人公の交差。 文学的にいえば、二人がシニフィエとシニフィアンが自己脱構築しあった、まさにクロスの関係をかもし出しているから読み応えがある。 主人公が老人をうらやましがり、老人は主人公よりも元気であるという、一風変わったプロットに、現代の隠れた部分を鮮明に映し出した作者の意図が読み取れないだろうか。 ひとりの人生、死ぬときは皆ひとり。その不幸を理解したうえで、幸福に生きている老人は、当時のウィトゲンシュタインを連想させなくもない。そして、主人公も虚無という壁に立ち向かい、今日もどこかの電車に乗り込んでいく。 読むべし!! | ||||
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フツーの女性のある1年間をとってもフツーに綴った小説。人生に目標を明確に持った「こういう人のようになるべし」という人達と正反対の世界に居る主人公の日常を通じて、「虚無感」と「人との係わり合いの希薄さ」を思い切り感じさせてくれる作品です。 自分も時々ふとした瞬間に「結局自分は独りぼっち」と感じる時があり、通じるものがありました。読後感は「ふうん」といったところですが、1週間ぐらい経つと「なかなか良かったな」と思い出させてくれます。それから、タイトルは内容にドンピシャリですね。 | ||||
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中国に赴任する母親と別れて、遠い親戚のおばあさんと一緒に暮らすことになった主人公知寿の一年が、たんたんとした描写で描かれてゆきます。 大学進学をいやがり、フリーターとしての生活を主人公は選びます。「生きる」意味を掴み切れない主人公は、他人との深い関係を恐れているようにも見えます。でも、関係を持つことを避けているわけでもありません。 過去の思い出の品を靴箱から取り出して懐かしんでいる少女。現在を、或いは現代社会から逃避しているような感覚は、その関わり方を知らないためかも知れません。 でも、七十を超えたおばあさんの恋愛を楽しむ姿を見、自分の失恋を考える時、何となくおぼろげながら「生きる」方法を見つけたのかも知れません。思い出の品々を捨てる時、彼女の中の何かが変わったのかも知れません。 地の文章で、このおばあさんのことを最初は「彼女」と三人称で書いています。それがやがて「吟子さん」と書かれるようになります。このあたりが、主人公知寿の心境の変化なのでしょう。 一皮向けた彼女が、一般社会の中でOLとしてちゃんとやっていけるようになることを祈りたいと思います。 | ||||
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他人の物の一部を盗むことでその関係を確認するしか人間関係を築けない主人公。本当はもっと深く関係したいのに部分で自分を納得させて、簡単に、便利な人間関係にぐずぐずしている様にとても共感したました。全体の印象としては、二十歳の女性と老婆との掛け合いが、なんでもできると思いがちな年代を包みこんでいる感じがとてもおもしろかった。好感のもてる小説だと思う。 | ||||
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芥川賞と聞いて浮かぶ名前と言えば、「綿矢りさ」や「金原ひとみ」だ。でも私は彼女達の作品 を、誠に恥ずかしながら一読したことは無い。 そんな私が先日、とある電車内の広告で目にしたのが、この「ひとり日和」だった。著名人らの批評などを見て、”うーん。じゃあ何となく買ってみようか”と思った。 この本について感想を述べることが、非常に難しい。何故なら登場人物にも、展開されるストーリーの中にも、取り分けて目立ったものは無いからだ。 物語の終盤に差し掛かったところで、私は”こういうオチがあるに違いない”と踏んでいた。しかしそれは、あっさりと筆者によって裏切られた。 変わることのないもの、ただそこにあるだけのものを描くことはとても難しいと思う。奇想天外なストーリーや斬新なテーマが、一見人目には付き易いものではあるが。 読んでいて、いつの間にか私自身が知寿になってしまった。私も彼女と同じように、生と死 両方から遠く離れた世界にいて、一人でただ繰り返されるだけの毎日を生きている。そして今この瞬間にでも、何かによってこの日々がぶち壊されることを願ってやまないのだ。 これを読んだ私自身は、果たして”生きている”と言えるのだろうか。 そう考えさせられた一冊だった。 | ||||
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