■スポンサードリンク


最後の矜持 森村誠一傑作選



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
最後の矜持 森村誠一傑作選 (角川文庫)

最後の矜持 森村誠一傑作選の評価: 3.00/5点 レビュー 1件。 -ランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.00pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(3pt)

時代の勢いが削がれている。

森村誠一の短編から、山前譲が選び出した作品集。
 長い間森村誠一には触れることがなかったが、Amazonで目にとまり入手した。
本屋にも取り扱いが少なく、今でも森村誠一が読み継がれているのは、思いがけ
なかった。不明を恥じる。
 森村誠一は、私にとっては松本清張と引き比べてしまう作家。清張の短編集は
幾種類かは新たに編纂されていて、入手は容易。清張と比すると「社会派」として
はいささか影が薄い。久々に手に取ってみた感想となる。

 最初の一編は文字を追うと、どうにもゴツゴツとして引っかかる印象が強い。
しばらく気がつかなかったが、はっきりした理由があった。「音の懸け橋」だけな
のだが、一文ごとに段落替えをしている。どうにも読み辛く、これはどうかと思
った。が、この一編だけが一文ごとの段落替えをしていた。ストーリーとしては
面白いのだが、その文体が惜しまれる。

 事件の推理を元に主人公が謎を追跡するが、その推理過程がご都合主義と思え
るのが「殺意を運ぶ鞄」。偶然入った店で、探している人の住所、それも団地の住
所が細部まで分かるのは頂けない。少々甘すぎるストーリー。

 主人公の家族、主人公の同僚の家族、別の同僚の家族が事件で失われたとする
設定はいかにも無理。日本でこの設定は駄目だろう。
 こう呟いてしまった「後朝の通夜」。どうにも作り物めいてリアリティがない。
最後の謎解きも不十分。作中で被害者の婚約者があけすけに喋りすぎ。ここまで
長々と被害者との関係を語ることなどありえない。

 2つの事件が並行して語られる。小市民と言えば小市民の犯罪。しかしそこに
はやはり色と欲がある。過度に入りくんだストーリーでもなく、そのまますらり
と読むことができる。そして緊張感が最後まで続く。本書第一の物語だろう。そ
う感じた「ラストシーン」。

 少し「正義」が鼻につく「余命の正義」。後味良く書いてくれればいいが、心なし
かくどい。これは受け取り方が人によってかなり違うだろう。

 生硬なままに青春時代と現在を語る「青春の遺骨」。読んでいるのが気恥ずかし
い。絵に描いたような青春時代は果たして実在するのだろうか。

 森村誠一はどの程度読み継がれているのだろうか。角川文庫ではかなり刊行さ
れているが、もともと多作の人なので少ないとも言える。
 代表作「~の証明」と「棟居刑事シリーズ」だけなのはいささか淋しい。一時の勢
いはなくなっているのは明かだが、よく作品が残っていると評すべきか。
 30年以上の年月を経て読んだ私には、森村誠一が次々とヒット作を刊行したあ
のエネルギーが懐かしかった。そのエネルギーを感じられなかったのは残念。
 辛いレビューとなるが、どの作品も(少なくとも現在の作家に比して)質は高い。
 あと数冊は読み込んでみようと思う。
最後の矜持 森村誠一傑作選 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:最後の矜持 森村誠一傑作選 (角川文庫)より
4041135575

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!