ソラリス
評判
ソラリスの評価:
4.32/5点 レビュー 136件。 A ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全221件 121〜140 7/12ページ
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ソラリスの評価:
4.32/5点 レビュー 136件。 A ランク
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小説の詳細ページを閲覧すると、ここに履歴が表示されます。最近閲覧した小説詳細ページへ簡単に戻る事が出来ます。
『ソラリス』を、ポーランド語のオリジナルから全訳してくれたからです。
以前の和訳は、1962年にソ連で出たロシア語版を底本とした重訳であり、そのロシア語版は当時のソ連検閲当局の顔色をうかがいながらおそらくは編集者とロシア語翻訳者がロシア語版から削除した箇所が三章にもわたると推測される(「訳者解説」より)そうです。
さらに、レム自身による「ソラリスのステーション(抄録)」2002年が、本書の付録として巻末に収録されていることも、著者の真意が語られていて、読者にとってうれしかったです。
原作が、検閲、編集、翻訳、映画化というプロセスによって、原作者自身も驚き、怒るほどまったく違った作品に変貌していくのかを、つくづく感じさせてくれました。
訳者沼野充義さんが推測している旧訳の脱落(ないし削除)箇所は、主に「怪物たち」、「思想家たち」、「夢」の三章にわたるそうです。
読者としては、それらの章に特に脱落(ないし削除)あるいは忖度すべき内容が書かれているとは思えませんでした。
1961年当時の歴史的状況が忘れ去られた今となっては、なぜ削除までする必要があったのか、理由を理解することはほとんど困難です。
この長篇小説を読んで、「ソラリスの海」の不思議さが謎として心に残りました。
何かべとべとした怪物のような海。
有機的な変形体で形成される物。
原形質状の機械のように作動し行動(流動)する不可思議なゼリー状の個体。
たった一つの巨大な個体として、惑星ソラリスの全表面を海のように覆って漂っている。
その波立つ表面は様々な形を作り出すことができる。
思考する怪物たちか、思想家たちか。
宇宙の本質について異様なほど幅広く理論的な考察を行う海。
単なる夢か。悪夢か。悪魔の海か。
重さは十七兆トン。
信じがたいほどの規模に肥大し、惑星全体を取り巻く原形質の「巨大な脳」のようなもの。機械を使わないし、それを作ることもしない海。
神経膠腫(グリオーマ)のような海。狂人のような神経症的海。
レム自身の言葉によれば、
「この本はロマンティックで悲劇的な結末を迎える。ハリーは、心から愛する男性を未知の力を持った何者かが研究しようとしており、自分がそのための道具であることを理解する」(417頁)
この「未知の力を持った何者か」とは、「ソラリスの海」です。
ハリーという女性もどきを使って、地球からの「客」を研究しようとしている巨大な脳「ソラリスの海」です。
「ソラリスの海」は、地球人と違って、機械を使わないし、それを作ることもしない海です。
なので、ハリーという「地球の女性もどき」は、地球人がいう人工知能ロボットのような機械ではありません。
自分が「ソラリスの海」の研究のための道具であることを認識するや、「そんな道具の状態に甘んじられず、みずから自分を破壊することを願う」という悲劇的な感性を持った「異星人」です。自分以外の存在の「道具」にされることを自ら拒否する存在です。
なにかしら、地球の女性にも似たような行動をとる人がいますよね。
『ソラリス』の著者レムは、2002年に言っています。
「作者としての私にとって大事だったのは、繰り返しになるが、単に、存在している何者かとの人間の出会いのヴィジョンを創り出すことだった。その何者かは、人間よりも強力な存在であり、人間が持っている概念やイメージには決して還元できない。だからこそこの本は『宇宙空間の恋』ではなく、『ソラリス』と題されているのである」(417頁)
訳者沼野充義先生は、この新訳を原作どおり『ソラリス』と題されました。作者としてのレムの意向を最高に尊重した翻訳に仕上げてくださいました。
翻訳とは、ほんとうに恐ろしい作業なんだなと思いました。
国家当局による検閲制度があるからです。その国の言語への翻訳者が、検閲の存在を怖れ勝手に忖度して、他国の原作者の意向を踏みにじった翻訳にしてしまう。検閲に目を付けられそうな箇所は平気で削除してしまう。現実に、そんなことが歴史上、起きていたのです。
翻案による映画化も恐ろしいと思いました。原作者を本気で怒らせてしまう翻案もあるからです。
映画化する権利を譲った後で、レムは映画監督と三週間も議論した末、監督に「あんたは馬鹿だ」とロシア語で言って、モスクワを発った(407頁)というのですから。