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小銭をかぞえる



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【この小説が収録されている参考書籍】
小銭をかぞえる
小銭をかぞえる (文春文庫)

小銭をかぞえるの評価: 4.20/5点 レビュー 59件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.20pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全47件 41~47 3/3ページ
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No.7:
(5pt)

最低男を巧みに描いている

本作品に登場するかつて同棲していた女性は、私小説家の西村氏が女性にモテないこともあって多くの作品に登場する。
その度に「こんな男とよく一緒に暮らしたもんだ」と思う程の最低男振りを本書でも見事に描いている。
女性(の実家)に金銭面を依存する、借金をお願いに行った数少ない旧友に断られたら相手を罵倒する、など大人の男として(人間としても)最低の振舞いを巧みに描き切っている。
個人的には本書に収録されている2作品は西村氏の作品の中では上位の出来栄えと思う。
ファンは必読だ。
小銭をかぞえるAmazon書評・レビュー:小銭をかぞえるより
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No.6:
(5pt)

作中に登場する藤澤清造について

西村氏は私小説作家で、15歳で家を飛び出て自活を始めてから現在までを、短編ないし中篇小説で描き続けています。
この文庫に納められている2編は、西村氏が30代の頃女性と同棲していた時期のお話です。
すでに藤澤清造の作品と出会い、没後弟子を名乗り、全集刊行に奮闘しています。このことは西村ファンなら周知のことなのですが、作者への予備知識なしにこの2編を読む読者は、作中の人物の藤澤清造への傾倒、ほとんど生きるよすがにもなっている傾倒ぶりが、文中からは説得力をもって感じられないかもしれません。過去に芥川賞選考委員からも、同様な意見が出たと記憶しています。西村氏のファン(私もそうですが)ならそんなこと一向に気にならないかもしれませんが、やはりひとつの独立した作品として小説を考えると、藤澤清造への想いは、作品ごとに新たに描きなおすくらいの気持ちでいないと、分かる人にだけ分かる、という具合になってしまうんじゃないでしょうか。
ただ、作家と読者の関係って、いろいろな様態があっていい訳だから、作品の背後の作家像を常に意識しながら読む読者に支えられた作品も、あっていいのかな。よくわかんないや。

解説は町田康。論理的に追っていくとよくわからん点もあるけれど
でも成る程、と思いました。
卑近な現実を描く不体裁な小説というのはほとんどつまらないものが多いけれど
(つまり私小説ってほとんどがつまらんってこと)、西村氏の小説は、不体裁でおもしろい、という稀な小説だと町田氏はいいます。作家を縛る現実(体験)を語りなおすことで、それをページの向こうへぶっとばす、西村氏の文章の力(これこそ才能!)。そしてその力を作者が存分に楽しんで使っているということ。だからこそ読む方も楽しい!
そうか、そういうことだね、と深く納得しました。
町田康さん、好き。いい男だし。
小銭をかぞえるAmazon書評・レビュー:小銭をかぞえるより
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No.5:
(4pt)

戯作小説家

『焼却炉行き赤ん坊』愛情不足の赤ん坊のような主人公は、些細なことで突如爆発する。ぶちきれた主人公が、不妊の女性が赤ん坊代わりに大事にしていた三つの犬の縫いぐるみを破壊するシーンがすごい。ちぎった二つの犬の首を、テレビの上に並べるところで、あまりの異常さに吹き出してしまった。いたるところに笑いの要素があり、円朝の落語のよう。藤澤清造作品の自己戯画化の笑いという方法を、この作家は自家薬籠中のものとしている。西村賢太は、タイプはまったく違うが、人を喜ばせたいというサービス精神において、読者の心をしっかりつかむその方法の確かさにおいて、結局その熱狂的人気において、天才太宰に伯仲する戯作小説家であると思う。ところで小説は面白かったが、町田康の解説がつまらなかった。西村賢太の解説者としては、薄っぺら過ぎてふさわしくないと思う。それに町田康のような二枚目が解説しても、説得力がないのだ。
小銭をかぞえるAmazon書評・レビュー:小銭をかぞえるより
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No.4:
(4pt)

凄い小説と遭遇した気分です

西村 賢太が芥川賞を受賞したこともあり、本書をじっくりと読みました。実に無頼な主人公をまるでそこに生きているかのように描き切っています。作者のインタビューでは、9割がた作者自身の姿が投影されているようですが、この傍若無人ともいえるバイオレンス、愛憎、思いこみの激しさなど、読む人の心を鷲掴みにするような展開は、他の作家にはない個性でした。好き嫌いは分かれるでしょうが、平成の世にこんなにどうしようもない人を描ける力量が芥川賞に結び付いたのでしょう。

「焼却炉行き赤ん坊」という読む前から不安な気持ちにさせるタイトルで、奇妙な男女の相依存ともいえる関係が実に生々しい会話によって組み立てられています。実際にこんな人間関係が日々繰り広げられてははたまりませんが、生活のある局面をこれほどの赤裸々に語り、描き切った小説を他で読んだことがなく、衝撃を受けた作品でした。

「小銭をかぞえる」も、『藤澤清造全集』の印刷や古書のためにお金が入用な主人公とその金使いに振り回される女性との奇妙な日常生活が 臨場感あふれる描写で描かれています。確かに現実のエピソードでなければ、ここまでは描けないようなディーテイルですし、その筆力にまた凄みを感じ取りました。いやはや凄い小説ですね。
小銭をかぞえるAmazon書評・レビュー:小銭をかぞえるより
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No.3:
(5pt)

あきたりない

借金はしてもサラ金には手を出さない、のくだりを読んで「おや?」と感じた。この主人公、そういや、酒と女は好きなようだが、博打はしないみたいだし、DVといっても相手がシェルターに逃げ込むほどタコ殴りにするわけでもなさそうだし、案外、手堅いのか? 
博打に溺れてサラ金に手を出し、挙げ句の果てに人様のカネに手をつけたり、といった話が巷には溢れている。比べれば「私」は往年の地味で薄幸な作家の全集を出そうと奔走。それをライフワークとしている。
つまりはまとも。知的。エリート。それもそのはず、なんせ著者は野間文芸新人賞の作家先生なんだから。「私小説作家は馬鹿のフリして裏で舌を出す」とはよく言ったもの。
なんだ、そうか、そうだったのか。あやうく騙されるところだった。くわばらくわばら……。
とかいいながらも☆は五つ。
小銭をかぞえるAmazon書評・レビュー:小銭をかぞえるより
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No.2:
(4pt)

洗練か堕落か

西村の最新作品集である本作は、かなり意識的にコミカルに仕上げられている
この戦略を良しとするひともあるだろうが、個人的には以前のスタイルの方を支持したい

コミカルさを意識したスタイルを採用することで、笑いどころが以前よりも明確になった
また、笑ってよいところですよ、と合図されることで、より笑いやすくなったのも事実である

しかし、そのぶん笑いがマイルドになってしまっている
加えて、笑わせようという意図が見えるだけに、わざとらしさが感じられ
圧倒的なリアリティーや、それに支えられていた迫力が、残念ながら、失われてしまっている

一言でいえば、商品になってしまっているのだ
食べやすく、消化しやすいものになってしまっているのだ
それをプロの作家としての洗練と捉えるか
異能の作家の商業主義的堕落と捉えるかは各人の判断だ
小銭をかぞえるAmazon書評・レビュー:小銭をかぞえるより
4163274308
No.1:
(4pt)

なんとも言えない味わい

・・たった今し方、題名の小説を読み終えたところだ・・
この作家の作品は、最初の本から読んでいるが、今回が一番ある意味哂えた。
中卒には思えないような難しい言い回しと言うか旧漢字の言語を随所に鏤めたり、
藤澤清造と言う超マイナー作家に惚れ込んだ異常なファン心理、
全集刊行の為ならどんな事でも厭わない傲慢極まる男意気、
文中に随時出てくる私小説作家や古書・・川崎長太郎の名前もそこには有る・・
並外れたコレクター魂を持って「よし」とする、その為にかかずらわされる者達・・・
なんとも言えない味わいが出ている不思議な作家である。
但し、こういう輩には実際には、絶対に係わりたくはない、
小説で読んでいるだけだからこそ、安心して哂っていられるのである。
毎回新刊が出る度に、今度こそ絶対に読まないぞ!!
と想いながらも・・何時の間にか読んでしまう妙な「魅力」がある。
女性にはオススメ出来ないが、心ある男には、是非ご一読を勧める次第。
小銭をかぞえるAmazon書評・レビュー:小銭をかぞえるより
4163274308

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