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(短編集)

暗渠の宿



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【この小説が収録されている参考書籍】
暗渠の宿
暗渠の宿 (新潮文庫)

暗渠の宿の評価: 4.34/5点 レビュー 50件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.34pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全41件 1~20 1/3ページ
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No.41:
(5pt)

欲しかった本

なかなか入手できない本で、やっと読める喜びでいっぱいです。ありがとうございました。
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No.40:
(5pt)

平成なのに昭和

平成なのに昭和の匂いがします。
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No.39:
(5pt)

初期の作品

作家の町田康の著作「私の文学史」の文中、随筆についてで西村賢太氏のことを触れており、最近になって図書館で借りて読んでみたが、ドハマりして、文庫本を手元におき、いつでも読みたいと思い購入しました。西村賢太氏亡き後にファンになったわけで、もっと早く知っていればと思った。自分は大正、昭和初期の作品が好きで近年の小説はあまり読んだことがなかったが、彼の文中の言葉や流れるような文章がいい。内容については賛否両論あると思うが、それでも説明できない魅力がこの小説にはあふれていると感じた。
西村賢太氏は亡くなったが作品は読み続けたい。他の作品も買い集めたい。
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No.38:
(4pt)

good

good
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No.37:
(5pt)

人間臭さが魅力

中学卒業と同時に親元を飛び出し,貧しさや孤独を骨身にまで染みて経験しながら生きてきた作者が随所で自分の性格を冷静に自己分析しながら進めているのが面白い。冷静な自己分析の割にはそれが全く役に立っておらず,驚くほどの純粋さで悪い女に騙されたりする。そのアンバランスさが実に人間臭く物語の魅力になっているように思う。
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4101312818
No.36:
(4pt)

凄い下卑、でも上品

なんだろ下品なのに品がある、漢字とか文体がそう思わせるのか 女性器の匂い、女を殴って恫喝、これを見たくない人は読まない方が良い ただそんな挿話も読み終えると凄い上品な後味の本だった この作者はハイレベルな物をコンスタントに書く能力がある
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No.35:
(5pt)

私笑説

3回読んだ感想を書きます。

最初読んだときは、手元に置いて何度も読み返すような小説ではないだろうけど面白いなと感じた程度でした。でも、何年かしてまた読みたくなり再読、さらに再再読して、ドツボにハマってしまいました。読み返す毎に面白さが増していきます。

この作家の魅力は何だろう?と考えると、まず他の私小説とちがって、筋がしっかりしていることが挙げられます。だから読みやすいし、先も気になります。それから、暗くて救いのないような書き方をしてないです。みじめさを笑ってます。それを読者に向けてるところがこの作家の才能だと思います。

笑いを生む要素は、筆力と内容の落差です。しっかりした文章と、「この人、馬鹿なんじゃなかろうか?」と思わせる内容。ツッコミ待ちかのようなボケボケ描写が、ガッチリした文章で綴られるので、思わず読みながらツッコんでしまいます。

ところで、新潮社から出ているこの作家の作品ほぼすべてが絶版になっている上に、『やまいだれの歌』が文庫化されていないところをみると、西村さん、新潮社と喧嘩してしまったのかなと。和解するか他社から文庫出てほしいです。
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No.34:
(5pt)

相変わらずエネルギー溢れる一冊。

風俗嬢にだまされたり、同棲した女をはりたおしたりの私小説。
西村賢太ほんと好き。
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No.33:
(5pt)

さらけ出された人間の本性の面白さ!

西村賢太氏の小説の面白さは、なんだろうか?
さらけ出された人間の本性の面白さか!
所詮、人間の本性など多少の差はあれ、下品で、
自己中心的で、性的欲望に支配されているので
どこかで笑いながら、馬鹿にしながらも、共感して
しまうのだろうか?
かく云う私も、何故か、この暴力的な小心者の
ドスケベを憎めず、ファンとなっている。
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4101312818
No.32:
(5pt)

猛烈に面白い

芥川賞授賞式における有名な発言で、著者の存在はずっと知っていた。ふてくされたなかにも愛嬌を感じさせるキャラクターで、私個人としては少なからず好感を持っていた。
著者の経歴は、著者が小学生の時に父親が性犯罪で捕まり、家族とともに故郷を追われるように飛び出し、中学校卒業と同時にほとんど一家離散状態となっている。そのまま高校へは進学せず、日雇いの仕事をこなしながら小説家として現在に至っている模様である。
著者のファンを公言する著名人は、「ビートたけしのオールナイトニッポン」でおなじみの高田文夫氏を筆頭に、石原慎太郎氏、江國香織氏、友川カズキ氏、町田康氏、小川洋子氏、そしてたけし軍団の玉袋筋太郎氏と、一癖も二癖もある味わい深い方々が名を連ねている。私もいつかは著者の私小説を読んでみたいと思っていたが、身辺が慌ただしい時期と重なり著者の作品を手に取ることが出来ないでいた。

『小銭をかぞえる』の帯にあった町田康氏の「激烈に面白い」という絶賛文を読み、いても経ってもいられず本書を含めて数冊を購入。読み進めると、作品全体が著者の叫びであるかのような錯覚を覚え、地を這いつくばってでも生きてやるという著者の生に対する凄みを感じて身震いに襲われた。猛烈に面白いのである。

本書に収録されてある「けがれなき酒のへど」は、恋人が欲しいあまり風俗嬢に貢いで騙されるという話である。彼女をつくるため日雇い労働で稼いだ金を一回四万円の風俗に何度もつぎ込み続け、お気に入りの風俗嬢とヤらずにデートをこぎ着ける機会を探り、そこで風俗嬢に八十万の借金があることを知る。寂しさが極限に達していた主人公は勢い余って風俗嬢の借金を肩代わりすることを伝える。その風俗嬢の発言は、少し落ち着いて聞けば誰でも見破れる嘘が何度も露見しているのであるが、愛情に飢えていた主人公は全て真に受け風俗嬢を信じ込む。案の定、高層ホテルにて金を渡して一発ヤらせてもらった後、風俗嬢とは音信不通となる。

「暗渠の宿」は、その後に出来たのであろう彼女との話である。やっと出来た彼女のことが世界一愛しいはずなのであろうが、彼女の一挙手一投足において気に入らないところがあれば激怒をし、風俗遊びが祟ったのか一応治癒はしたらしい膿が溜まった経験がある自分のマラを棚上げして、彼女の過去にヤキモチを焼いたりする。喧嘩になれば暴言を吐いて、彼女を張り倒す。しかし、いつも威勢が良いのかといえばそんなことはなく、前歯を折ってしまった前の彼女の親が怒鳴り込んできたときは号泣して謝罪して土下座をして彼女の両親に許しを請うている。要するに、最低最悪なのである。

このような男に嫌悪する人は男女ともに非常に多いと思う。いや、嫌悪しないほうがおかしいといえるのかも知れない。金を風俗嬢に貢いだ行為も、彼女に暴力を働く行為も、号泣して土下座をして謝罪を請う行為も、すべてみっともない小心から行われたことである。
しかし、私は西村賢太氏が好きである。このような弱さを書き連ねるには想像以上の強さが必要であり、人間が持つ卑小、猥雑、汚辱などを隠した虚勢よりも、著者のありのままの弱さに私は惹きつけられるのである。高田文夫氏の激励に感激して落涙する姿や、テレビで見られる畏まった著者の姿を知ったとき、私はさらに著者のことが好きになった。純粋で、非常にいい男なのである。

高田文夫氏は著者の作品を「カスピ海で浮かんで読むのに最もふさわしくない小説」と評されている。著者にとって、これほど嬉しい激賞はないのではないか。まだまだ著者の作品が読み足りない。陰ながらではあるが、新作を心から楽しみにしているとお伝えさせていただく。
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No.31:
(5pt)

究極リアリズム?

西村賢太、すごいな。
いわゆる私小説なのだが、ここまで「私」をさらけ出した作家は過去にいただろうか。
2編所載されているが、
「けがれなき酒のへど」では最初から最後まで「女が欲しい」と叫んでいる。
あげく風俗嬢に入れ込んで騙される顛末をこと細かに書いてものすごい。
大金を渡す際にする(結局最後になる)セックスの表現で恵里の臭いのことを書いているのがリアルで驚いた。全て事実なんだろうと思わざるを得ない。

続きにあたる「暗渠の宿」では冒頭から同棲することになった女性と棲家を探して不動産屋を巡るところから始まるのだが、「なんだ同棲できることになってよかったじゃない」と思って読み進むと、なんと料理の作り方から何からぐちぐちと文句言って、あげくDV。あれまあ、なのだが、、
自ら師とする藤澤清造の譲り受けた墓標を陳列するガラスケースを金もないのに65万円かけて特注し、出来上がってきたそれを見ながら二人で祝杯を上げるシーンは西村賢太という人が持つ業を見るようで切なく哀しい。

「苦役列車」の解説で石原慎太郎が書いていたように、受賞して境遇が変わったあと、どのように変質するかが見ものだ。「芸風」は変わるのか?
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No.30:
(4pt)

独特の文体で、異様な迫力がある作品。

新潮文庫の『暗渠の宿』。芥川賞作家・西村賢太の作品集で、「けがれなき酒のへど」と「暗渠の宿」の2編が収録されています。
 西村賢太の作品は、講談社のアンソロジー『文学2014』で「跼蹐(きょくせき)の門」を読んだことがあり、それがとてもおもしろかったので、他の作品も読みたいと思い、デビュー作「けがれなき酒のへど」を収録した、この本を手に取りました。
 「けがれなき酒のへど」は、風俗店に通って恋人探しをする独身中年男の話。ソープ嬢といい仲になれたと思ったら、100万円近い金を騙し取られてしまいます。
 「暗渠の宿」は、ようやくできた恋人と同棲を始めた中年男の話。激高型の男は、恋人に暴力を振るうようになり、次第にそれがエスカレートしていきます。
 独特の文体で、異様な迫力があります。下品で無様で身勝手な男の話ですが、それでも作品の世界に没入し、一気に読んでしまいました。とてもおもしろかったです。
 西村賢太が傾倒している藤澤清造の作品を読んでみたいと思いました。
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No.29:
(5pt)

結構ショッキング

こんな発想する人がいるんだ!
こんな行動する人がいるんだ!
その後西村賢太の本を読みまくりました
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4101312818
No.28:
(5pt)

知的で下品な中編小説

西村賢太の小説はインテリジェンスで、
下品だ。新しくて、古めかしくもある。
不思議な小説だ。

文体や語彙から考えると、亡くなった大
御所の作品的な雰囲気を感じさせるが、
ハリーポッターの映画の話が出てきた
り、内容は間違えなく現代の話だ。

言い回しや使っている言葉に知的な面を
感じるが、やっていることは風俗通いや
DVなど下衆の極みだ。
その、緩急が堪らなく面白い。

売れてしまったこれから、どのような小
説を書くのかがとても楽しみだ。
暗渠の宿 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:暗渠の宿 (新潮文庫)より
4101312818
No.27:
(5pt)

西村濃度100%

本作は西村氏の作品の中では最も濃度の高い作品集である。
「けがれなき酒のへど」は元々は同人誌に書き下ろされたものであり、それが「文学界」と云う雑誌に転載された出世作だが、この時点で既に妙に古風で貫禄付いた言い回しが出来あがっている。リズムよく、一度読みだしたら相当な事がない限り閉じたくない、読み続けたいと思わせる文章力が完成しているのだ。内容的に男身としては情けなく惨めなもので痛いが、至極真面目を貫いた文体が妙に滑稽さを生み出していて面白い。
「暗渠の宿」では、DV男の悲しい性が辟易させらるる程の濃さで描かれる。「けがれなき〜」で女を欲していた主人公が、やっとのことで出会い、付き合うこととなった女と同居するのだが、変に強い自尊心の為に愛しい相手でありながら暴言、果てに暴力をふるい、関係に大きな亀裂を作ってしまうといった話。
西村氏の私小説の醍醐味は、自己嫌悪と自尊心が共存していることであり、自分が悪いことを承知しておきながらも何かにつけて正当化してゆく、傷つけてしまったことを思いやりながらも裏では確実に見返りを求めている、野暮な男の醜い心境が包み隠さず至極リアルに描写されているところだと私は思う。それがこの二作には濁流の如く沸いている。よって、傑作なのだ。
一つの出来事をこれでもかくらいのねちっこさで描く西村氏の本領が十二分にも発揮されている二作を楽しんでいただきたい。これが、西村氏である。
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4101312818
No.26:
(5pt)

著者は蜘蛛の糸を登り切ったカンダタだ(笑

主人公:北町寛多は、著者:西村賢太の単純変換だそうです。ということで、著者の私事をデフォルメ脚色したまさしく私小説。暗渠の宿は第29回野間文芸新人賞受賞本書は、著者一連の寛多シリーズ?の一遍で、寛多30後半?。本作は彼女が欲しいよ風俗嬢ならいいだろって100万とられた編と、彼女できたよ同棲だーって前の男のことなんか妄想してDVかよ編(笑。どちらも主人公寛多がうれしい喜んだ頭にきたむかついたしょぼんDVってあくまで自己中心な心情がネチネチネチネチ昭和初期風文体で描かれる。相変わらずストーリーではなく、著者独自の世界観を堪能するというか、これマジっすか?サイテーっスッゲーなどといいつつ、夢を求めましょうなどと言う文部省推薦の薄っぺらさでない、生きてる人間の生臭ささに圧倒される。驚愕と苦笑という複雑な感情を惹起させる作品なので、この本だけでは、はあ?でよくわからないかもしれない。他の著作も併せて読む必要あり。
 一連の作品のどの辺がフィクションかは著者のみぞ知るですが、著者曰く相当ノンとのこと。現実著者は性犯罪者の親、自身も暴力沙汰で前科持ち、学歴中卒、容貌醜悪、風呂も入らず衛生観念なし、女性は単に性のはけ口で、風俗通いは日常の重要関心事、肝心の人間性もネガティブかつ、自意識過剰という、社会的にも人間的にも破綻者。最近TVでよく見るが、暴言の数々は伝説的ともいえ、芥川賞授賞式における風俗発言を始まりとし、中でも「笑っていいとも」で、お昼時間にもかかわらず、風俗通いや女性蔑視の言行は、放送事故スレスレ、現場の女性客、日本中の良識ある人々を激怒させ、良識のない人々、下品な中高年男性を驚喜させた。著者によると、やっと得た異性のパートナーに些細なことでDVのあげく逃げられた。酒ぐせも悪く、暴言暴行も茶飯事だが、たいていは自分で起こしたトラブルの返り討ちにあうという情けない結末。また、関係した人々に小金を土下座で借金し、それを風俗で使い踏み倒す。風俗通いで、たまに相手に惚れたりすると、金をだまし取られたりする。著者は、まさしく社会的破綻者で、そのうちカッとして殺人などおこして、殺意はなかったんですなどと主張しつつ刑務所に入る確率120%であろう人物だななどと周りから思われ、常識ある人々から関わらんとこなどと見られていたのだろうと想像する。
 しかし、そうはならず、この破綻者の著作が数々の賞をとり、現実受けて判を重ねているのは、自業自得のくだらぬトラブルと同列に、幸運の出会いや運も相当にあるという奇跡。さらにの注目は、人を楽しませるのが好きであったという、かの太宰治と同質のサービス精神が根底にある点。自身のだめ人間ぶりが、実は他人を喜ばせ楽しませるネタとしての価値に気づき、それを提供したいというサービス精神。そこにそれをうまく提供できる文才に恵まれるという希有なコラボ。そこにそんなものが世に出るなどけしからんと、常識ある人々が押さえつけたが、それがまさしくたまったマグマの大爆発ということになった奇跡。我々は、新たなる何者かの登場を見ているのかもしれません。ただ著者の成功を複雑な思いで見ているであろう、関わってひどい目にあった被害者?の方々、特に逃げた同棲相手の心情を思うと、今後、猛獣注意の看板、檻に入れての厳重管理は必要(笑。
 著者にぞっこんで別作品で解説もしている石原慎太郎は、今後の活躍を期待しつつ、金も名誉も得た彼を逆に心配もしている。それを知ってか知らずか、著者は、私小説しか書けないので、今後は題だけ変えたようなモノを書くなどと、ファンをも愚弄するかの、さらなる暴言を重ねている(笑。
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No.25:
(5pt)

けがれなき酒のへど

西村氏の作品のなかに於ても、「どうで死ぬ身の一踊り」、そして本書に含まれる「けがれなき酒のへど」、この二つが最も完成度の高いのものではなかろうか。
前者は藤澤清造と、主人公(西村氏自身であろう)と同棲する女との生活を描いたものであり、これほど女性読者に不快感を与えることのできる作品も稀である。一人の女から愛される資質を徹底的に欠いた、この男の"卑劣"な側面を有りありと示しながらストーリーを展開する。
さて、本作品であるが、これも一人の女を得る資格に欠いた男を描いたものには違いないが、「どうで―」とは異なり、"卑劣"というよりもむしろ"愚か"な部分を全面に出した作品である。
内容と文章の一部紹介するが、
「はな肉欲と金銭欲と云う、最も唯物的なものを露出し、交換し合ったあとで、もし互いに相手に対する好意が残るようなことがあったなら、これこそ私の求める、まるで装いのない、損得抜きな真の愛情との邂逅ではなかろうか」
「もっとも、こうしたさもしい下心は、昔流にいえば遊郭の遊戯をわきまえぬ野暮てんの骨頂、と云うことにもなるのであろうが、そんな流儀は遊郭という言葉とともに、建物もろともとっくに解体しているのだから知ったことではない」
風俗で出会い、岡惚れした女性の借金を肩代わりするために、藤澤清造全集の発行資金のうちから100万弱を女に手渡すのであるが、結果的にこれを持ち逃げされてしまう。
それを悟った後で女性に対する復讐心が一度は湧き上がるが、やはり清造全集の為にと、これを思いとどまる。
「しかしとどのつまり、それは花屋に行って分葱を求めようとした私が間抜けだったに過ぎぬと云うことであろう。やはり遊郭の流儀は滅びてはいなかった。はな"遊ぶ"ことをカン違いしてかかった私が阿呆だった」
風俗嬢に騙されて金銭を持ち逃げされてしまった、と云っただけの内容の小説であれば、そのような作品は探せばどこかしらにあるであろう。
しかしこの作品がどこまでも優れているのは、(勿論、文章力の高さも大きな因であるが)それがどこまでも藤澤清造を追い求める西村氏の作品であるという点に尽きる。
風俗嬢に騙された結末を迎え、それから藤澤清造へと話が移るのだが、そこからこそが本作の肝であり、また見所でもある。
そのような展開と内容は、結句のところ氏の作家としての技量のよるものであり、そして自身の体験を根底とした「私小説」によって為し得るものである。そして私は氏の作品が手放すことができなくなってしまった。
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4101312818
No.24:
(4pt)

強がりと小心

このひとに真に土下座させられるのは藤澤清造だけなのかもしれないと思った時、
思わずおかしさとその心酔ぶりに愛おしさ、わずかに胸の痛む思いを感じた。
ほんの些細なことで裏切りを感じ女に暴力をふるってしまうが
そこには永遠に満たされることのない愛されたい、寂しい、ひとりの男と幼心が見え隠れする。
冒頭から雄臭さを前面に放たれた作品には嫌悪感を抱いてしまい、買うに至らなかったが
暗渠の宿はコンパクトに始まりその中で作者の深淵をちらちら垣間見させられ、
風俗、暴力という言葉からは思いもつかない形容しがたい後味が残った。
苦役列車で躓いた女性にも是非一度読んでみて欲しい。
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4101312818
No.23:
(5pt)

愚かしさの中に見える自分

とにかくダメな人間である。
ダメとは社会に全く適合できないどころか、人との関わりという根本的なところから破錠している様である。
寂しさを認めたくがないために強がり、他人を馬鹿にし、ちょっと優しくされるとその優しさに盲信する。
かといって幸せになったらなったで、今度は疑心に苛まれる。
くだらない嫉妬とわかっていてもそれを確認せねばならない強迫観念。
全くの思い込みがどんどん膨らんだ末の暴力。

読みながら「最低な男だ!」と思いながらも、その端端に自分でも感じたことのある、心臓に痛みが走るような記憶がある。
このような人間を馬鹿にしている自分も同じ程度なのかという思いに襲われ、ゾクッとする私小説だと思った。

どんどん引き込まれるさまは、見世物小屋のようでもあり、己の恥ずかしい過去でもあり、自分が行く末なのかもしれないという恐怖感も感じられる。

己とここまで向きあう様はまさに戦いであり、殆どの人が有耶無耶にしている血みどろの孤独な戦いである。
そんな姿を自分と重ねるもよし、ただの読み物として捨て去るもよし。

すべてのダメな男、自分はダメだと思ってもいない男にもオススメです。(女性は生理的に拒絶しそう。)
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4101312818
No.22:
(4pt)

悪態のつき方

表題作は、後年「秋恵もの」と称される、著者唯一の、相思相愛の女性との同棲生活の修羅を描く一連の小説のはしりといえるもの。
 ほんの些細なことがきっかけで、主人公の男は、同棲相手と諍いになる。その諍いは、どちらかというと男の側からの一方的な攻撃に終始するのだが、時々応戦する女の反逆の言葉が、さらに男の怒りをエスカレートさせる形となり、最後は振上げた拳が女の頭目掛けて振り下ろされて終焉を向かえるといった、所謂るドメスティック・バイオレンスの一部始終が描かれる。
 しかし、ここには、生のDV現場の陰惨さは微塵もない。それは、自ら公言する「スタイリスト」たる著者の、ある種のストイックな生き方のしからしむる所とも言えよう。男の悪態は、決して単なる感情に身を任せた「暴言」などではなく、見事にスタイルを有した『セリフ』と化しており、本書のクライマックスとなっている。日常生活において、ある意味もっとも劇的とも言うべき「夫婦喧嘩」(二人はまだ籍を入れてはいないが)のシーンを、冷静に再現することによって、あたかも正統なる「セリフ劇」の見本を提示してくれる。まさに、正しい悪態のつき方とはこうなのだと言う、見本市のようだ。
 併載される「汚れなき酒のへど」は、風俗で知り合い昵懇になった(と錯覚した)相手に、大金をネコババされる顛末を描く。何とも情けない事態に陥る著者の愚かさを赤裸々、かつ自虐的に描いた私小説、というのが一般の見方だろう。私も読みながら素直にそう感じてページを繰っていた。しかし、その情けない事態を語る著者の筆致には、みじんも悔恨の悲哀なり、裏切りに対する怒気が感じられない。それはそうだろう、これは小説なのだから、何がテーマであれ読者に奉仕するのがその使命である。己が不幸な運命にウジウジと拘泥していては小説にはならない。であれば、どんな無様な醜態も、何れは小説のネタになる訳だ。 しかしいずれはこの自虐ネタもそのストックが底を尽き、読者も再三の同工異曲に新鮮味を感じなくなる時は来るだろうし、そうなった時それを意識した著者が作家としてどんな行動に出るのか?さらに私生活での行動をエスカレートさせるのか?はたまた、私小説からの転換を図るのか?岡目八目ではあるが、その辺りが今後の見所と言えそうだ(H23.10.1)。
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4101312818

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