すべてがFになる
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すべてがFになるの評価:
3.53/5点 レビュー 372件。 A ランク
Amazonレビュー一覧
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全339件 141〜160 8/17ページ
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物語が始まる前に、「すべてがFになる」というタイトルが書かれたページをめくると青木淳の『オブジェクト指向システム分析設計入門』より人間の交換について書かれた部分が引用されている。なぜ人間は交換をするのか。その理由は情報を交換する器官である脳にあるという。脳はまったく異なるものを交換し、等値化できるアナロジーを有している。脳の中で電磁波と音波が等値変換されることによって私たち人間のシンボル活動が生じている。交換され、代替が起こり、シミュレートを試みる。これが抽象化を生み、オブジェクト指向の考え方になったとあるが、この文章が物語にどう関係しているのかは読み進めてみないとわからない。
萌絵を含む建築学科犀川ゼミのメンバーで四季の研究所がある孤島のキャンプ場へ向かったことが犀川と萌絵が事件に巻き込まれることになった発端である。犀川と萌絵の2人があわよくば四季に会うため、真賀田研究所に向かったところで事件は発生する。地下にある密室状態の四季の研究室から両手・両足が切断され、ウエディングドレスを着た四季と思われる死体がワゴンに乗せられて出てきたのである。その後犀川と萌絵、研究所の面々が初めて四季の研究室に足を踏み入れるが、そこにいたのは四季が作ったと思われる言葉を話すロボットだけで、外に繋がっているような出口もなかった。では一体、誰が四季を殺したのか?研究室に四季のほかに誰かいたのか?四季の研究室に入れるような人間は存在したのか?そもそも、なぜ四季は地下の研究室に15年間誰とも会わず籠っていたのか?四季の伯父や妹、研究所の面々、さらに孤島に駆け付けた萌絵の叔父である刑事らも交えて物語は進んでいく。
本作の最も魅力的な部分は、数字を絡めて物語が進んでいくところである。まず、萌絵との対談の場面で四季が言った「7だけが孤独な数字でしょう?」「BとDもそうね」という言葉。これだけを読んでもこの時点では何のことなのか全くわからない。だが、この言葉は後々とても重要な意味を持ってくるのだ。それがわかった時の爽快感は他では味わいがたい。最初は意味のわからない数字やら用語やらがたくさん出てきて謎ばかりだが、読み進めるにつれて少しずつその数字や用語が何を意味するのかがわかっていくところも本作の面白いところである。まるでパズルを解いているような感覚であった。数学の問題を解く感覚とも少し似ているのではないだろうか。私は文系でプログラミングの用語などを理解するのに時間がかかったが、もともと数学が好きだったので楽しく読み進められた。だが、数学が嫌いな人や数字を見るのも苦手だという人には少々苦しいかもしれない。とにかくたくさんの用語や数学に関する言葉が出てくるのだ。著者が理系であり、そもそも理系ミステリーと銘打っているのだから当然だが、やはり理系向けであり、文系に優しくない小説といっても良いだろう。しかしずっと頭を使う場面ばかりではない。萌絵は執事がいるような生活を送れるほどお嬢様育ちで世間知らずなのである。よって庶民がどういう生活を送っているか、どのような食事をしているかなどは全く知らない。レトルトカレーを知らなかったり、キャンプ場に日傘を持ってきてしまったりと世間知らずで突拍子もない行動をする萌絵や、それを指摘する犀川ゼミの学生とのやり取りは思わずくすっとしてしまう。
理系でさらに情報工学を専攻の人ならまだしも、読者の大半はそれらとは無縁だったのではないか。私がそうだったが、大半の人が半分を過ぎてもなお全くわからないことばかりではないかと思われる。一つ謎が解けるとそこからはあっという間に様々な謎が解けていくのだが(やはりパズルや数学の問題と似ている)、後半の解説部分と比べると、中盤までは少々展開が遅いように感じる。展開が遅いというか、一つ何かが判明するたびに一つ謎が増えていくのである。何もわからないまま半分以上を読み進めなければならないので、途中まではつまらなく感じるかもしれないがそこを我慢した先にとんでもない爽快感が待っている。理系の人や数学が好きな人はもちろん、数字が嫌いだという人にもその先入観を捨てて読んでみてほしい。きっと数学の世界の面白さがわかるはずである。