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白い悪魔



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【この小説が収録されている参考書籍】
白い悪魔 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

白い悪魔の評価: 4.00/5点 レビュー 4件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.00pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全2件 1~2 1/1ページ
No.2:
(5pt)

曖昧な語りの魅力的なノワール

人によって読後の印象がだいぶ異なる作品ではないでしょうか?
語り手は主体性に欠け、ただ運命に流されるだけの存在のように読めますし、語られる出来事もほのめかしや思わせぶりな表現に彩られて、なんだか曖昧な蜃気楼のように思えます。
このぼんやりとした調子が嫌いな人も多いかもしれませんが、独特の魅力があると思います。
ノワール物のミステリがお好きな方なら、一度手にとっては如何でしょうか?
白い悪魔 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:白い悪魔 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150019525
No.1:
(5pt)

富、善良さ、強さなど何の秤にもならない

最近Netflixでみた映画「2人のローマ教皇 "The Two Popes"」(監督:フェルナンド・メイレレス)。ローマ教皇・ベネディクト16世の座を継承するホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿(現教皇フランシスコ)、その二人の対話による物語が、この小説の時代背景を炙り出します。
 「白い悪魔 "The White Devil"」(ドメニック・スタンズベリー 早川書房)を読みました。「告白」の翻訳出版が2005年ですから、忘れていることもあって(笑)その<作家性>について語ることはできません。
 主な舞台は、ローマ、そしていつしかカリフォルニア。アメリカ人女優、ビットリアの視点からこの蠱惑的な物語が語られていきます。アメリカ人作家、ビットリアの夫・フランク、イタリア元老院議員・パオロ、その妻でもあるイタリア人女優、そのボディガード、そしてビットリアの異父兄・ジョニーたちが奏でる<セレブリティ>たちのイタリアの夜。ビットリアのアメリカ、テキサスでの説明されない「過去」、イタリア人女優・イザベラの死、夫・フランクの死、そしてもう一つの死とそのすべてを操作したかもしれないジョニーの存在。
 フランクの伯父でもある枢機卿も姿を現します。「ドイツの枢機卿の徳を褒め称え、彼にこそ教皇になって欲しいと言った」という描写で、この物語はそのラッツィンガー枢機卿が教皇になる前の時、着座する前の時ですから、2004年あたりから始まるのかと想像できます。そう、ローマ・カトリックがスキャンダルとマネー・ロンダリングの苦難に晒された時代の前にあたるのでしょうが、<ノワール>のない時代などこの世にはきっとなかったのだと思います。
 スリラーですからストーリーを語ることはできません。吉野仁さんの長文の解説も読まずに書くことになりました。物語の「外縁」にいて多くを語ることができないもどかしさが常にありますが、少しだけ。
 イタリア映画がロッセリーニ、フェリー二、アントニオーニ、ベルトリッチを輩出した時代からは遠く離れていますが、イタリア人女優・イザベラの容姿は誰と言うこともなく浮き上がってきます。官能的なシルクのような女優の晩年の姿。好きな女優をあてはめてみましょう。
 そして、主人公・ビットリアと異父兄・ジョニーの関係性が、この物語を語る上での「鍵」なのかもしれません。ビットリアは人目を惹く美しさを持ち、多くの快楽という見せかけの喜びに満たされない自分を抱えながら、そして巨大化した自我を持て余しながらも、「何もしないこと」で悪魔との白い取引を成立させてしまう物語のようにも受け取れます。圧倒的な闇、妖しさ。富、善良さ、強さなど何の秤にもならない。ハメット賞受賞作だそうですね。「11月に去りし者」であれ、この物語であれ秀作を世に送り出しているのだと思います。

 この本を読んだ後、国道16号沿いのコンビニで買物をしました。土曜日の夜、閑散とした店内。東南アジア系で、やせ型、そして瞳の大きな綺麗な女性がレジ打ちをしてくれました。名札を見たら、カタカナで「エンジェル」。この子もまた、「白い悪魔」なのかもしれない。
白い悪魔 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)Amazon書評・レビュー:白い悪魔 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)より
4150019525

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