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(短編集)

あなたの人生の物語



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【この小説が収録されている参考書籍】
あなたの人生の物語 (ハヤカワ文庫SF)

あなたの人生の物語の評価: 3.90/5点 レビュー 131件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.90pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全90件 41~60 3/5ページ
No.50:
(5pt)

何度も読みたくなる本です

科学や東洋思想の基礎的なベースがあると尚楽しく読めるような気がします。ちょっと難解なところもありますので、繰り返し、学びながら味わいたくなる短編集でした。
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No.49:
(5pt)

たこちゅう

「あなたの人生の物語」における時間論を知って驚きました。
これは道元が正法眼蔵「有時」にて展開している時間論。
これは哲学者マクタガートが「時間の非実在性 unreality of time」で論じているC系列の時間。
テッド・チャンはどちらでこの時間を知ったのでしょうか?それとも自ら「見た」のでしょうか?
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No.48:
(4pt)

作者の想像力に感嘆します

複数の物語が描かれるこの作品ですが,どの物語も私が想像したことも無い世界が描かれており,
読後はひたすら感心するばかりでした.
ひとつ気になることを挙げるならば,登場人物の感情を読み取りにくく,
ロボットのように感じるところです.
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No.47:
(5pt)

理解

難解な短編集ですが、私には「理解」の人間の知能の進化の過程が、人口知能の進化はこのようになるに違いないと思わせ、たいへん興味深かったです。
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No.46:
(5pt)

ハードSFと叙情性の奇跡的な融合

デビューからの全作品を集めた短編集と言うのが信じられないハイレベルで、正しく天才的。中でも表題作は、地球に流れ着いたエイリアンの言語を理解しようと悪戦苦闘する女性科学者が、悲しい結末を迎える娘とのエピソードを時間の流れ逆順に交互に語るスタイルで、一見無関係に思える話がラストで感動的に重なる素晴らしい構成力。ハードSFと叙情性の奇跡的な融合に感心した。
 他作品もハードSF的アイディアを基底としながら、小説として面白く読ませる力作揃い。評判に違わぬ作品集だった。
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No.45:
(5pt)

圧倒的な力を持つ物語たち

短編から中編くらいの長さの小説集。どれも「現実」から少しずつ認識のずれた異世界が圧倒的な説得力を持って構築されています。
緻密な力業です。

SFからはしばらく遠ざかっていましたが、知らないうちにこんなところにまで到達していたんですね。ジェイムズ·ティプトリー·Jrを初めて読んだとき以来の衝撃でした。

叙述スタイルは変化に富んでいるし、読み手の丁寧な読解や想像力が求められる本です。時間のあるときにじっくり読むことをお勧めします。
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No.44:
(5pt)

言葉を話せ書ける読む事は最高に素晴らしい

映画を5回見ました。それくらい感動し
原作に興味を持ち購入しました。これもドキドキものです。言語の素晴らしさを感じました。
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No.43:
(4pt)

安易に表紙を変えるな

内容は素晴らしいです。
数年前に出会ってから人生でも特にお気に入りの一冊です。

最近kindleを使い始めて、文庫版だけでなくkindle版も買おうとしたところ、表紙が映画メッセージ仕様のものになっていました。
この短編集には表題以外にもそれはそれは美しい作品が収録されているのですが、映画の話題性に乗っかり安易に表紙を刷新したことに怒りを覚えます。
もちろんこの方が売れるのかもしれませんが、私は映画と原作を別物と割り切っているので、この本は買えません。
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No.42:
(5pt)

認識や世界観の変容をテーマにすえた秀逸な短編集

本書には、アメリカのSF作家テッド・チャンが発表した、以下の短編が収められています。

「バビロンの塔」(The of Babylon, 1990)浅倉久志 訳
「理解」(Understand, 1991)公手成幸 訳
「ゼロで割る」(Division by Zero, 1991)浅倉久志 訳
「あなたの人生の物語」(Story of Your Life, 1998)公手成幸 訳
「七十二文字」(Seventy-Two Letters, 2000)嶋田洋一 訳
「人類科学の進化」(The Evolution of Human Science, 2000)古沢嘉通 訳
「地獄とは神の不在なり」(Hell Is the Absence of God, 2001)古沢嘉通 訳
「顔の美醜について ― ドキュメンタリー」(Liking What You See : A Documentary, 2002)浅倉久志 訳
「作品覚え書き」(Story Note)古沢嘉通 訳

日本では2017年5月に公開予定の『メッセージ』(映画の原題は “Arrival”)の原作「あなたの人生の物語」が収録されていたため、本書を手に取ってみました。はじめてテッド・チャンの作品を読んだのですが、どの短編もまるで違う魅力を放っていて、それでいながら共通のテーマを持つことに驚きました。

旧約聖書における神と人との対立を象徴するモチーフが、世界の構造を探求しようとする人々の営みの象徴として読み替えられた「バビロンの塔」。人間が人間を超越していくさいの意識の変容がつづられた「理解」。
けっして到達できるはずのない真理に到達してしまった人間の悲哀が語られた「ゼロで割る」。異星人とのコンタクトによる人間的世界観の変革がシミュレーションされた「あなたの人生の物語」。

ユダヤ教におけるゴーレムの伝承と、前成説(あらゆる動物の胚珠のなかに生まれてくる子がすでに形をなして存在しているとする説)とが近代合理主義にもとづいて運用されている、サイバーパンク風の世界が舞台の「七十二文字」。人類と人類を超越した存在が共存する世界において、人類に残された学究の可能性を説く疑似論文「人類科学の進化」。
天国と地獄が実在するうえ、それらが可視化された世界を舞台にし、信仰の意義や滑稽さを寓話的に描く「地獄とは神の不在なり」。美醜を認識する働きを抑制するテクノロジーが開発された未来を、ドキュメンタリー風に描いた「顔の美醜について ― ドキュメンタリー」。

科学、言語学、数学、宗教と異なるモチーフに彩られながらも、いずれの作品も “わたしたち人類がこれまで抱いていた認識の変容をせまられたらどうなるか” という問題意識を孕んでいます。そのなかでも、とくに表題作「あなたの人生の物語」と「顔の美醜について ― ドキュメンタリー」は傑出していると思いました。

「あなたの人生の物語」は言語SFであり、“人類は言葉を使って世界を認識している” とすれば、“人類とまったく異質の知的生命体の言語と接触したばあいにどうなるか” を突き詰めた作品です。壮大なテーマが徹頭徹尾 “あなた” に向けた個人の物語として語られるうえ、喜びと苦しみをもふくめた生の肯定を謳っていることに、すごみを感じました。

「顔の美醜について ― ドキュメンタリー」で描かれるのは、容姿による差別をなくすために美醜を認識する機能を抑制するテクノロジーが開発された世界。考えうる賛否様々な知見がドキュメンタリータッチに叙述されます。
“差別はいけない” というポリティカル・コレクトネスが、科学技術によって実現および強制されたらどうなるか。その答えが示唆されているのですが、たくみに皮肉とユーモアが交えられているので、おもしろおかしく読めてしまいました。もちろん差別一般のメタファーとも読めますが、人種や性に関する差別とは違い、“美醜” という政治や司法ではあつかえないデリケートな問題にフォーカスしているところがユニークです。

*kindle版には、SF翻訳家の山岸真さんによる解説は収録されておりません。
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No.41:
(5pt)

アイデアと哲学性とストーリーテリング(ネタバレあり)

アイデアとか世界観が秀逸だがそれだけではない。それぞれの話に哲学的テーマが含まれていてしかもそれを一気に読ませるだけの語りのうまさがある。「あなたの人生の物語」は異星人の言語を通して新しい視点や知覚を得る話だが、実は人生の意味とは何かを問うているように思える。人生には幸も不幸もあるが、なぜ不幸が起こるのかと言う問いを因果律的に突き詰めていけば、ユダヤ・キリスト教的には原罪と言うことに行き着くだろう。しかし変分原理的に解釈すれば、人生には意味があり、それはあらかじめ定められていて、その中で起こることはその最終目的に向かうための最小値あるいは最大値を取っていることになる。したがって不幸にさえ意味があることになる。ちなみに、外国語、たとえば英語をある程度習得した人なら、英語で考える時には思考そのものが英語的発想になることを体験していると思う。そういう人なら、言語の習得で世界観が変わるということは受け入れやすいのではないか。
同じテーマをややシニカルに扱ったのが「地獄とは神の不在なり」ではないだろうか?神や天使が実在する世界で、主人公は最愛の妻を天使の降臨の巻き添えで失う。妻は天国へ行ったことが目撃されているが自分はほぼ間違いなく地獄に落ちる。彼女と再会するには自分も天国に行くしかないが、これは啓示なのか?生まれながら脚のない体で生まれたジャニスは伝道に使命を見出すが、ある日突然天使の降臨によりすばらしい脚を与えられてしまう。そのために彼女が人生をささげた伝道師としての活動は収縮してしまう。これは救いなのか罰なのか?この話をヨブ記と比較するのは自然な事だと思うが、ヨブ記では神の意思も目的もはっきりしているのに対し、この話ではまったくそれが分からない。結局神の意思は人間にははかり知ることはできず、気まぐれにさえ見える。またこの世での出来事を罰とか啓示とか信仰に結び付けて考えるのは人間の方であって、神にとってはそれすら関係ないのかもしれない。しかし神が存在しなければそこは地獄であって、この世(この小説の世界)には神が存在しそれを信仰することができる。結局人を救うのは神ではなく、信仰という心の状態であると作者は言っているのかもしれない。
「七十二文字」の中の「名辞」はコンピューターのプログラムのアナロジーにも、DNAのアナロジーにも読めるが、最後の「人間はその名辞の表現型であると同時に、その名辞の器でもある」というのは、生物(人間)とは結局なんのために存在しているのかという問いに対する彼なりの答えかもしれない。
他の作品もみな含蓄のある作品ばかりなので、ぜひ読むことをお勧めする。
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No.40:
(5pt)

知性と想像力で飽和した短編集

荒唐無稽でファンタジックな異世界地球の上に築かれた話もある。
いつかは現実のものとなるかもしれない時代の上に築かれた話もある。
共通するのは、その世界について作者の科学的な知性が許す限りの合理性を骨として、限界まで展開された想像力の翼の広さだ。
たとえ作品世界が荒唐無稽であっても、その中で生きる人間は知的で合理的でどこまでも現代地球人的で、その世界で物を思い煩悶しながら生きている。
仮定の枠をピンホールカメラの穴のように使い、その向こうに広がる世界を想像し活写してみせる、そんなSFの真髄を備えた傑作集だ。
ただその想像力が余りに隙がないものであるがゆえに、読んでる私の想像力が作者の想像力より外に出て行けないような窮屈さも感じた。
各作品の舞台は作者の作り上げた箱庭であり、作者その中に生きた人間を放ってその言動を観察しているかのような、緻密な実験記録のような小説なのだ。
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No.39:
(5pt)

一気読み

SFにはなじみのない私ですが、一気に読んでしまいました。
とてもおもしろかったです。
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No.38:
(5pt)

計算された透明感が心地よい

表題作を真っ先に読み終えたばかり。
「あなた」への語りかけと、現実。
それらが交互に綴られるという奇妙な構成で進んでいくうちに、
「あれ、これって・・」ジワジワ気づきの種を蒔かれていく。
そして木製のサラダボウルのくだりで、交互に綴られてきたものが読み手の中で完全に融合する。
「・・ああ、やっぱり」と感じたその時、
頭頂の髪の毛を上に引っ張られているような寒気とともに、目頭が熱くなるほどの切なさを覚えた。

でも何より惹かれたのは作品のカラーとして感じられる透明感。それがとても心地よかった。
澄み渡る透明感が「あなた」への語りかけの優しさをさらに際立たせている。
柔らかな日差しが注がれる日向にいるような心地にさせる、澄み渡る透明感。
ヘプタポッド的ものの見方が備わり、人生のすべてを知り同時に見ているルイーズの感覚としては、
この透明感は正しいのでないか。これもギミックに次ぐ作者の計算なのではないか。そんな風に感じた。
因果の法則でものごとを見、時系列上にしか体験できない人類が持つ人間臭い感傷やジャッジを、
恐らくヘプタポッドは全く持たないであろうから。

訳者のセンスも大きいのでしょうが・・。
さて次はバビロンを読んでみよう・・。
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No.37:
(4pt)

訳者も作家

読みはじめから、和訳に違和感を感じながらも
作品の作り込みの緻密さに引き込まれ、一気に
読了した後に、その和訳の違和感に納得しました。
安易な意訳では、表現出来ない原書の真意が、ジワジワと伝わりました。
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No.36:
(4pt)

久々にSF翻訳物を読ませていただきました

面白いですが、翻訳がちょっと固いかな。あまり意訳過ぎなのも良くないと思いますが、難しいところですね。
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No.35:
(4pt)

独創的な世界観を魅せる短編集

どの作品も独創的で面白い。評価が高い本書であるが、その期待に十分応えてくれるだろう。訳文も読みやすく、すらすらと読めてしまった。個人的に面白かったのは、「バビロンの塔」「理解」「七十二文字」「顔の美醜について」だ。なんだほとんどじゃないか。ただ一方で神と関わる話が多く、私を含む日本人には本当に内容を理解するのは難しいかもしれない。

以下、個別の作品の感想。

◎バビロンの塔
あのバビロンの塔の建設中に人間が世界の正体を知る。神話と哲学が混じった不思議な感覚が面白い。宇宙の形がどうなっているのかなど物理的な要素もあり、いくつものSF的要素が絡まって、楽しく読める。

◎理解
「アルジャーノンに花束を」に似た話になるのかなと思いながら読み進めたが、進む方向が違っていた。神を薬で創り上げるような物語だった。面白い。

◎ゼロで割る
1=2を証明してしまって苦悩する数学者を見守る学者の物語。“もしだったら”を想像したらこんなことが起こりそうというのがよく分かる。きっかけは面白いが、結末が少し物足りない。

◎あなたの人生の物語
異星人とのファーストコンタクトものというには大雑把過ぎるかな。ファーストコンタクトの難しさは分かるが、それと“あなた”、つまり異星人と“あなた”の関係がよく分からなかった。想像を膨らませると、“あなた”の父親が誰なのかを考えてしまう。独創的な物語である。

◎七十二文字
AIではなく生物学的に人工生物(オートマトン)を作り出そうとする。粘土ロボットに命を吹き込むというか、ゴーレムを作り出そうとする。現代の技術に近いものはDNA解析技術でクローン生物を作り出す試みであろうか。背景に人類が5世代のうちに滅んでしまうことがあるのだが、あまりうまく活用されていないのが残念なところか。

◎人類科学(ヒューマン・サイエンス)の進化
シンギュラリティを迎えた時の科学がどうなるのかを警告(想像)している。楽観論かな。

◎地獄とは神の不在なり
キリスト教徒ではない人(私を含む)にとって、この物語を理解するのは難しいのではないだろうか。知識としてキリストを含む神を知ってはいても、それをベースにされた時点で、きっと知るべきことが欠けていると思う。自分にとっては難解でした。

◎顔の美醜について――ドキュメンタリー
この作品は、読者が美男美女かそうでないかで印象が変わるのではないだろうか。そう思うと普通に面白い。人間が本来持っている生理的な反応に対して人工的な操作をするのは、文字通り不自然だと思うな。あらゆる差別を撲滅するのは賛成だけど、論理ではない感覚的なところの差別を撲滅するのは教育だけでは難しい。だから科学の力を使おうという発想はアリなのだけど、それも不自然なのかもしれない。

◎作品覚え書き
著者がどのような発想で収録されている作品を執筆したのか本人の解説が読める。こちらを先に読んでおいてもいいかもしれない。
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No.34:
(4pt)

光線は動き始める方向を選べるようになる前に、最終的に到達する地点を知っていなければならない

私にとっては思った以上に内容が学術的で、なるほどチャンがイーガンと並んで現役最高のSF作家と呼ばれているという、その意味が理解できました。
 言語学など結構難しい内容を扱っているにもかかわらず、これほど多くの読者に支持されているのは、読後になにやら重いものが残る独特な雰囲気を持ったテーマやストーリーテリングのせいかもしれません。
 表題作の「あなたの人生の物語」の物語展開も、勘のいい人だと中盤以降で気づくのでしょうが、私は読み終えた直後おやっ?と思って、もう一度最初に戻って読み直すことで、「うーん、なるほど、良くできている」と、この作品の「深さ」のようなものに気づきました。
 エイリアンとのコミュニケーションを成立させるべく「単一言語による正しい文法の発見」のため交渉にあたる主人公が言語学のプロで、言語学的考え方が紹介されたりするくだりは少々難しく、これにより目くらましにあったような気になったがため、ラストに至っても一瞬「?」と思ってしまったのですが、読み返すとエイリアンたちの考え方の発見が、文法の発見に大きく関わっていることがわかり、主人公がエイリアンとの接触により最終的に到達した心境を想像するに、実に深く考えさせられる内容であることに気づかされます。
 「地獄とは神の不在なり」における世界観も独特です。
 天使がたびたび降臨し、それにより奇跡をもたらすばかりか災厄をも引き起こし、人々が死後に向かう天国と地獄をもかいま見ることができるという世界。
 天使が災厄をもたらすという設定は、個人的にはエヴァの使徒を彷彿させられましたが、チャンならではのなんとも不思議な読後感が残る作品です。
 「バビロンの塔」「顔の美醜について」の2作は割と読みやすくかかれています。
 「理解」も前半部分はサスペンスフルな展開で非常に面白いのですが、後半に至るにつれて徐々に言語学的になり多少難しいと感じます。それでもこの作家ならではの雰囲気や世界観には独特なものがあり、今後どのような作品を発表してくれるのか期待がもてる作家だと思います。
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No.33:
(5pt)

多彩な作品集。素晴らしく楽しめました。

根っからのSFファンではありません。
小・中校生時代はブラッドベリにはまりましたが、彼のソフトなファンタジー性に強く惹かれていたのだと思います。
現在の読書傾向は雑食で、気ままに「面白そう」な物を楽しんでいます。
この作品も偶然平積みを手に取り、表題作の冒頭数行を流し読んで出会いました。
訳者の力量も左右すると思うのですが、このテッド・チャンのオムニバス作品はどれも私には素晴らしかったです。
バラエティに富んだ編集で、多彩な作品が楽しめました。
表題作は3度読み返す機会がありましたが、やっぱり深く感銘を受けます。
特に、ノスタルジックで、笑ましく、切ない親子関係の描写が大好きです。
総じてハードでドライな内容が支えているのですが、だからこそ、
人が決して数字のように割り切ることができない事柄が綾織られて、素晴らしい作品だと感じます。
この1冊で、すぐにテッド・チャンのファンになってしまいましたが、作品が少なく残念です。
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4150114587
No.32:
(4pt)

あなたにもおすすめの物語

短編集です。まったく傾向の違ういろいろなお話が集められていて楽しめました。特に本のタイトルにもなっている「あなたの人生の物語」は、いわゆるファーストコンタクトもので、特に異星人の言語に焦点を当てた物語で、斬新な着想で面白かったです。別に物理法則をねじ曲げなくとも言語体系と世界の認識のしかたによってはあたかも時間を超越したかのような視点を得られるのかも、と。個人的には本書ではこれがベスト。
全8篇がすべてSFなのかというとなかなか微妙で、ハードSFと言えるものからファンタジィ仕立てのSFぽい物語までいろいろです。舞台・背景の設定と語り口が上手で、いずれの話もそれぞれいい雰囲気が感じられt印象に残ります。個人的には★4つの評価ですが、割と万人受けするわかりやすくて面白い話ばかりですので、気楽に読むにはおすすめです。
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No.31:
(4pt)

数式を文章に変換したような感覚

本集に収載された中短篇8作品がその時点での全作品で、粒ぞろい。どの作品も哲学的ファンタジーの色合いが濃い。アイディアは本質的で面白く、プロットの展開も納得がいくもの。読後にいろいろと考えさせるような強さもある。

 著者は人間が持つ「自然存在を認識・理解する能力」の限界を常に問題にしている。プロットは数学的、論理学的な構造が明らかで、数式(あるいは不等式)を文章に変えているような感覚がある。
 「地獄とは神の不在なり」などは集合論の不等式を使い、条件を変えながら物語を作っているのではないかとさえ思わせる。原案の段階ではあらすじを数式で書いている、と言われても驚かないだろう。 

 自然科学(数学、物理学、生理学、数理哲学)をメタファにして人間の物語を語るというのが著者のスタイルだ。
 本作品集の中でそれがいちばん成功しているのは、もっとも高い評価を獲得したという表題作「あなたの人生の物語」だと思う。因果律を否定するような、合目的的な「フェルマーの最小時間の原理」を媒介に、時制を否定して母娘の心情をつづるという構成は(はじめは何のことかよくわからないだけに)面白くできている。

 残念なのは、本作品集でいちばんオチを強調することができるプロットなのに、著者がそれを拒否しているように見えること。私のような大衆小説好きからすると問題は、全体に展開のメリハリと、どんでん返し的なオチが不足していることだろうか。

 気に入った作品にふれると、
 「理解」。“人工解脱”の意味が問われ、スリルがある。
 「ゼロで割る」。数学はどこまで完全か、人はプラトン主義の否定に耐えられるか。
 「地獄とは神の不在なり」。天使の降臨が災厄でもあり得るというアイディアは新鮮秀逸。
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