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七つの殺人に関する簡潔な記録
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七つの殺人に関する簡潔な記録の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点5.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全5件 1~5 1/1ページ
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ジャマイカの国際的スターが暗殺されそうになり・・・というお話。 読み始めて、最初は何の話しか判然としませんでしたが、途中で「歌手」という言葉が出てきて、どうやらジャマイカの国際的スターだったボブ・マーリーの事らしい、と気づき、最終的にマーリーが暗殺されるまでを描いた小説だというのが判った(つもりですが)次第です。 こういう音楽ネタの小説でありがちですが、中でヒットした曲や有名な曲やミュージシャンの名前が頻発しますが、知っていた方が楽しめますけど、知らないでもあまり支障なく読めます。 ジャマイカの英雄を扱う事で、ジャマイカの国の問題やジャマイカの人のアイデンティティを探った小説という事ですが、活字が二段組で700ページを超えるボリュームで些か怯みますが、最初から最後まで楽しく読めました。 イギリスでダブやレゲエのプロデューサーだった方のインタビューによると、一時期ジャマイカから大量の移民がイギリスから来て、そういう人が自国で聴いていたレゲエやスカの音楽を持ち込んだそうで、その時親の世代が反発したけど、若い人は学校で一緒に勉強したそうで、そういう若い世代が二十歳くらいでパンクのムーブメントが起こり、レゲエのアーティストと一緒にレイシズム(人種差別思想)反対のイベントをしたりと、レゲエやパンクがイギリスの社会構造を変える為にとっても重要だったそうです。この小説でも音楽がカウンタカルチャーだった頃の息吹が感じられました。 長いけど、怯まず読めば面白い、ジャマイカの国民的英雄の生涯とジャマイカの人のアイデンティティを探った小説。必読。 | ||||
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私はこの本でジャマイカの真実を知った。というのは、昔からボブマーリーの音楽に触れていて、その英訳を読んだり、レゲエガイドブックなど読み漁ってはいたのだが、それでもしっくりとしない部分があったのだ、例えば貧しい国だからボブマーリーは強盗に襲われた。とか普通に治安が悪い所なんだと勘違いしていて、実際に私もジャマイカに赴いたことがあるが、度胸試しにトレンチタウンやチボリガーデンなどを歩いてその地の人らとコミュニケーションや子どもから袋ジュースを買わされたりしたのを思い出すが、本書を通してそれどころではないことに気づく、それはそのあたりのゲトーでは殺戮や強姦が日常茶飯事の場所であったのだ。ダンスホールレゲエではノリにあわせてその惨状を歌ってるんだが、まさか本当の本当とは思わなかったのである。それで最近は私も含め多くのレゲエ好きがそんな場所を聖地的な感覚で旅行するのだが、今でもジャマイカはレゲエのアーティストが撃ち殺されるような危険な場所なのであり、JR gongが歌うwelcome to jamrockなのである。 | ||||
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エルロイのLA四部作を彷彿とさせる、もしかしたら凌ぐほどの熱をもつノワール巨編。 レゲエは好きじゃないし、ボブボブ言ってるバカ日本人およびアメ公は死ねと思うが、それはキリストとキリスト教の違いみたいなもんで”歌手”はまさしくキリストだった。 本作は別にそのキリストを祭り上げる訳ではなく、裏でこそこそ動き回ってたゴキブリどもの語りによって主に形作られている。脅し、殴り、撃ち、切り裂き、撃ちまくる人でなしども。ジャマイカってこんなサファリパークだったのか。 今もそうなんだろうか。まさかな。でも、ぜひ行きたいとは二度と思えない。 ゴミの集積が偉大な作品に、歴史に残る小説になることがありうるのか?イエス。 答えはまさかのイエスなのだ。これが、この作品がその証である。 とにかく読んでくれ。 | ||||
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amazou@karakuchiさんのレビューが、 これまた「簡潔」に書かれているので、 読み終わってからレビューを読んで、 納得するところも、たくさんありました。 読み終わったというのも、 じつは3週間かかってます。 最初は50ページ読むのに1時間半くらいかかってます。 面白いんだけども、 何が面白いのか分からない。 汚い言葉遣いや、暴力シーンが多くて、 それがあまり気にならなくなると、 読み応えが出てくるのかな。 596ページに、 ドストエフスキーの話が出てきて、 その章の語り手が言います。 「でも、ある時点で 読書は努力のようなものになってしまった」 この本も努力して読み終えました。 それにしても、720ページ。 この本だけは、ついでに重さも記入しといてほしいね。 台所のメーターではエラーになり、 体重計で測ってみると、1・1キロと出ました。 | ||||
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ジャマイカ島とニューヨークを舞台に、麻薬取引をめぐる抗争で殺された多数の若者たちを 一人称単数(アイ)で綴った、700頁の長編。 著者いわく、登場人物の生々しい「声だけを動力としている小説」(701頁、「謝辞」より) 「死人に口なし」のはずなのに、この本には生き生きとした会話が満載です。 言葉は汚いクソだが、ユーモラス、小XXもらす。 死人の声なのに、そこまでぶつかー、と思うほどの雄弁さ、冗舌さ。 アルミニウム原料と麻薬をアメリカへ輸出する国(植民地?)ジャマイカ。 アメリカの大企業とCIAも裏で暗躍する闇の社会が、 歴史的な事件と国際社会的背景を基にして上手に饒舌に創造されています。 「絡みあってて暗くて」、クリアなドキュメンタリーにはなっていませんが、 「どんぴしゃでなくともかなり近い ――ジャマイカの諺」(10頁、エピグラム)と、 闇の社会のリアルさを読者に感じさせてくれる作品です。 この本は、フィクション。著者の創作です。タイトルは、そこをさらりとすかしてる。 「簡潔な記録」だと! 700頁もあって、簡潔? それはないでしょう。 「『簡潔な』という表題をわざと裏切っていく長大なこの作品」(「訳者あとがき」より) あたかも歴史的事実を死人に証言させた記録のように綴った歴史小説? ではありません。 一人称単数はこわい。嘘つきの語る真実みたいで。読者の誤解も五回すると真実に? 「ならん」。 「七つの殺人」事件? 一つ目は? 二つ目は? 三つ目は? …… と必死で指折り数えて探しながら、やっと700頁を読み終わりました。ふう。 結局は、あまりにも多くの殺人事件が描かれていて、数え切れませんでしたけれど。 「七つの殺人」とは、世界の七不思議みたい。「七」という数は、魔物、無数に近いのかも? 「世界は今や、七つの封印がひとつずつ順番に解かれていっているみたいだ」(227頁) 「七がふたつぶつかるまで、あと三十日もない」(227頁) 今が「1976年12月3日」だとすると確かに、七がふたつぶつかる1977年まであと28日。 著者は、「七」という数が好き みたいです。 「子供が五人もう死んでいる、火事の前に二人が撃ち殺されている」(131頁) 合計、七人。 「彼女の人生で一番不快な七分間を経験させていることだろう」(434頁) 「七回め、男はわたしの前で逸物をぶらぶらと揺すってみせ」(457頁) 「知ってるよ、もう七回ぐらいは聞いたことがある」(513頁) 「そいつ、七つも手を伸ばしてきて」(519頁) 「弾倉から七発を一気に撃ちこむ」(570頁) 「現時点では合計で七人の男がいるはずだ、それとも六人か、とにかくよく覚えてない」(652頁) 結論: 「七」にこだわるのは無駄。でしょ? やめときます。 「これはいくつもの殺人についての物語だ」(13頁) 「そういう若者たちが殺された物語だ」(14頁) 「千人が死んだ」(614頁) 「いたるところで殺人が多発しています」(614頁) 目次には、五つの章のタイトルがあります。すべて、曲のタイトルです。 音楽好きの著者。巻末には、クレージイな六曲についてのクレジットがあります。 各章のタイトルには、年月日が付けられています。 各章は、たった1日です。さすがに「簡潔」! 15年間の全期間の記録の中での1日ですから、短いような、長いような1日です。 簡潔にして、かつ冗長。百年、一日のごとく。 第一章 1976年12月2日 第二章 1976年12月3日 第三章 1979年2月15日 第四章 1985年8月14日 第五章 1991年3月22日 舞台は、二つの小さな島。ジャマイカ島とマンハッタン島。 第一章 ジャマイカ島。 第二章 同ジャマイカ島。 第三章 同ジャマイカ島。 第四章 ニューヨーク。 第五章 ニューヨーク(一部、ジャマイカ島)。 「配役」(登場人物一覧)は、総勢70名以上(正確には、76名)の豪華キャスティング。 はぐれ者、ギャング、用心棒、泣き虫、警察官、ドラッグ密輸業者、失業者、受刑者、殺し屋、介護労働者、ドラッグ中毒者といった「職業」の皆さん。 「配役」は、舞台と年で、六つに分けられています。まるで映画。 キングストン首都圏 1959年から コペンハーゲン・シティ エイト・レインズ ジャマイカ外、1976年~79年 モンテゴ・ベイ、1979年 マイアミおよびニューヨーク、1985年~91年 〈語り手〉 一人称単数の「アイ」(アルファベットの「I」)を品格に応じて 「私」、「オレ」、「あっし」、「僕」、「わたし」と訳し分けています。 「私」 サー・アーサー・ジョージ・ジェニングス (元政治家、故人) 「オレ」 バン=バン (ギャング・メンバー) 「オレ」 ウィーパー (ギャング用心棒、ストーム・ポシー団の用心棒頭、マンハッタン/ブルックリン地区) 「泣き虫(ウィーパー)って名前は、どうしてだ?」(604頁) 「オレ」 バリー・ディフロリオ (CIAジャマイカ支局チーフ) 「支局長」(186頁) 「あっし」 パパ=ロー (コペンハーゲン・シティのドン、1960年~79年) 「ママ=ロー」(342頁) 「オレ」 パパ=ロー(101頁) 「オレ」 トリスタン・フィリップス (ライカーズ島刑務所受刑者、ランキン・ドンズ団メンバー) 「オレ」 ジョーズィ・ウェールズ (用心棒頭、コペンハーゲン・シティのドン、1979年~91年、ストーム・ポシー 団のリーダー) 「刑務所独房内で焼死体で発見」(699頁) 「オレ」 ディーマス (ギャング・メンバー) 「ジョン・クロウ山地で木にぶら下がっていた」(435頁) 「オレ」 ジョン=ジョン・K (殺し屋、車泥棒) 「白人」(608頁) 「わたし」 ドーカス・パーマー (介護労働者) 「わたし」 キム・クラーク (失業者) 「ミス・キム」(290頁) 「オレはおまえを追いかけていくぜニー…… その名前でわたしを呼ばないで」(326頁) 「僕」 アレックス・ピアス (ジャーナリスト、『ローリング・ストーン』誌) 「27歳」(77頁) 「作家さんは おまえだろアレクサンダー・ピアス」「いい話をでっちあげろ」(694頁) 「わたし」 ニーナ・バージェス (元受付嬢、現在失業中) 「わたし」 (誰なの?) 「キミー?」(700頁)で終わる、この物語! 〈推察〉 キム=マリー・バージェス (ニーナの妹) 「妹のキミー」(168頁) ラス・トレント (キム=マリーの恋人) 「外務大臣の息子」(168頁) キム=マリー・バージェスが「妹のキミー」(168頁)ということは、 「わたし」とは、姉のニーナ・バージェスってことになるわね? 「オレはおまえを追いかけていくぜニー……その名前でわたしを呼ばないで、そのどうしようもない名前を絶対に口にしないで。それは死んだ名前、死んだ町の死んだ女の」(326頁) あれれ? これは、「第三章 シャドー・ダンシン」の〈キム・クラーク〉の語りの最後の言葉です。 第三章では、シャドー・ダンシングのように、一心同体になって踊っていた、死んだ姉と妹の影。 この物語の最後では、妹からの電話に手を震わせる姉。 この小説には、死人の声までも記録されているのです。 奇妙な「アイ・アンド・アイ」(82頁)は、アイ・アンド・ユーのようです。一人称と二人称。 「アイ・アンド・アイ、これがどういう意味か、神様ですら今では知っているけど、まるで誰かが独自の三位一体を唱えようとして、三人目の名前を忘れてしまったみたいに聞こえる。わたしに言わせれば、全部まったくくだらないこと」(169頁) またまた、すかされました。 各章の「まえがき」みたいなものの語り手である 「私」サー・アーサー・ジョージ・ジェニングス(元政治家、故人)も不思議でいいかげんな人物です。 「ふむふむ。そうだな。十二月三日だったことにすっか」(129頁)だって。 真面目にやってくださいませ。真剣にマジで読んでる読者だって少数いるんですから。 サー・アーサー・ジョージ・ジェニングス と「サー」付きで呼ばれる紳士は、著者マーロン・ジェイムズ自身かとも思われまッサー。 | ||||
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