■スポンサードリンク
そして僕らはいなくなる
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
そして僕らはいなくなるの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.33pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全3件 1~3 1/1ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
講談社タイガでは「七日目は夏への扉」以来の登場となる児童文学作家・にかいどう青。 物語の主人公は高校生・永岡宗也。 劇団を主宰する父親とモデル出身で今はエステ会社を経営する母親の元に生まれた優等生。 ただし当人は「優等生」の方は着ぐるみであり、自分はその中に詰まった醜い臓物だと自認している高二病。 そんな宗也がイケてる友人たちと友達ごっこをしている最中に気になっているのは 「魔法少女」と呼ばれるクラスメイト・松浦志緒。 類稀な美術の才能を持つ一方で他人と関わらず、かつては自分の髪に火を点けた女子生徒に 凄惨な報復を加えて転校に追いやったと噂されるクラスの異分子。 ある晩宗也は近所に住む一つ上の幼馴染・穂村梨花が返ってこないと自宅を訪れた梨花の母親・恵から伝えられる。 他校にも伝手のある友人に協力を求めて梨花の行きそうな場所を探り始める宗也だったが、 自分も思い当たる場所を探そうと夜の町に自転車で出たものの車に撥ねられ病院に運ばれる羽目に。 幸運にも大怪我をする事無く、退院できた宗也だったが、その直後から少女の死体を処理する男の視点を幻視する様になり…… これはまた評価が難しい作品だなあ。 前作は主人公・朱音のタイムリープ何するものぞとガンガン突き進むパワフルな生き様に惹かれるものがあったのだが、 本作は終始ダークな雰囲気で前作の様なパワーのある女性の姿を描いた作品を期待していたら肩透かしを食った感じ。 「自分は他人が思っているほど綺麗な存在じゃない」と自意識を拗らせた高二病少年と、 「魔法少女」と呼ばれ、クラスでは浮いた存在となっているクラスメイトが主役なので作品としての毛色が違うと言われればそれまでだが。 ただ、取り組んだテーマ自体はギリギリの所を攻めた意欲作であり、感情を揺さぶられるものがある。 しかし、物語として楽しめる、納得できるかと言えばそれもまた別の話……本当に評価がし辛い。 物語は幼馴染の失踪事件とそれを追った宗也が巻き込まれた事故の後で視る様になった 「降ってわいた様な死体を己の不幸を呪いながらバラして処理する男の視点」というちょっと変わった幻視が絡む形で進行し そもそも自分の視ている幻覚は現実に起きた事なのか、仮に現実だとしても誰の視点なのか、を追う宗也と志緒の姿を追っている。 その追跡の果てに綺麗に見えていた物の内側に潜んだ醜悪さ、が明かされるというのがミソ。 ベースとなっているのは作中でも取り上げられているシャーリイ・ジャクスンの「ずっとお城で暮らしてる」。 一家惨殺事件の犯人ではと疑われている姉と二人で屋敷に引きこもる様に暮らしている妹を主人公とした 外界を取り巻く嫌悪を拒絶し、内側だけは歪んだ形で均衡が取れているという奇妙なバランスを描いた物語。 この歪みは本作に登場する二つの家族に反映されているのだけど、ちょっと衝撃を受けたのがヒロイン志緒の家族。 障害者はこの手の大衆娯楽小説には些か登場させにくい代物ではあるが、その中でも扱いが難しい知的障碍者を出した事に驚いた。 完全にネタバレになってしまうのだけど、この知的障害を抱えた姉を温かく見守る松浦家の面々と、 障害者に対して決して「やさしく」はない世間、そしてその温度差を知る志緒が抱えてきた複雑な想いを書くのは簡単じゃ無かった筈だが それを敢えて描いてみせたという点で作者の意欲や度胸は称えられるべきかと。 志緒が事あるごとに「ずっとお城で暮らしてる」のヒロインである屋敷の外に出られない姉を持つメリキャットに 自分を重ねる様な発言を続けてきたのかが、この姉の存在を明かされた瞬間にストンと腹に落ちると同時にひどく苦々しいものを味わった。 家に帰れば温かい家族を演じて暮らしているが、外に出れば姉に悪意を向けてくる世界に対して牙をむき続けなければならず、 そして自分の胸の中にもその世間に流されそうな不安が過り……決して綺麗ごとだけでは済まない障害者を抱えた家族の姿がここにはあった。 ただ、志緒とその家族の物語の部分は良いのだけど、話の軸となる主人公・宗也の幼馴染の失踪と 宗也を襲った幻視現象の真相の結末がひどく微妙。 こっちも真相の部分には家族の問題が絡んでくるのだけど、これが真相を明確に明かしてくれれば良いのだが ボヤけたまま終わってしまうのでミステリファンが期待する「全容解明」のカタルシスは得にくいのである。 しかもその真相の明かし方も基本的に宗也の推測・憶測の域を出ないのでひどくモヤモヤしたものが残ってしまう。 また宗也自身の高二病もクラスのイケている連中との付き合いと志緒との付き合いの絡みの差でしか描かれないので どうにもボヤけているというか、もっと言えば「この設定は必要あったんだろうか?」という疑問もわく。 「内側と外側」の歪んだ関係を家族の問題を絡めて、それも扱いの難しい知的障害者を絡めて描いた意欲は素晴らしいし、 そこに関してはしっかりと掘り下げてあった。 でも、テーマばかりが先走り過ぎて、物語の軸となるミステリの部分が読み終えても些かの不納得感を覚える出来になっている。 テーマだけ楽しめれば良いという人もいるんだろうけど、娯楽小説としてはそれでは困るなあという難しさを持った一冊。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
クラスメイトの冗談や,友達みたいな親子のやり取り,腐女子の奇妙な歓声など, 台詞や思考,動きまで,ガチガチに決められた台本通りの人形劇を見ているようで, さらには主人公たちのこじらせぶりに,どうしても入り込むことができませんでした. 物語の方も,事件の大半が夢の中で展開,真相も『想像』とぼかされたままで, ミステリ的には面白く映ったただけに,そこはしっかりと畳んで欲しかったです. また,その夢の元となる不思議な現象も,原因は究明されないまま終わってしまい, 事件周りも含めて,多くが『想像』に逃げられたようで,消化不良の思いが残ります. そうなると,青春小説が適当なのでしょうが,命の危機にすら飾った言葉が並び, お決まりの死や破滅の類の叫びは,『そういう年代』で片付くのかもしれませんが, 生々しさを描きながら,やはり人形のような,作り物を見ている違和感を覚えました. | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
青い鳥文庫から出ている『ふしぎ古書店』のスピンオフ第2弾のようです。ジャンルでいうとSF青春ミステリ(ホラー?)でしょうか。 導入部がやや長いものの、ぐいぐい引き込まれて、すぐ気にならなくなりました。 美しく謎を解く本格ミステリを期待したらハズレですが、文字通り全てがひっくり返るラストの展開は圧巻です。 クリストファー・ノーラン監督の初期の映画を彷彿とさせる仕掛けが用意されています。 ただ、語り手も探偵役も事件の詳細を説明してくれないので、想像で補う必要があります。 色んな意味で読んでいる側の能力や感性が試されますね。 これを味わいと受けとるか、不親切と受けとるかは好みでしょう。 そして泣けるw悔しいけどw 少年と少女の甘酸っぱさにもだえると同時に苦くてヒリヒリしました。 言葉選びが絶妙で、ささいな言い回しも胸に刺さります。 小ネタ満載の会話は楽しく、一方で不道徳的だし、その上さわやかですらある。 前作『七日目は夏への扉』と同じく読後感がとてもいいです。 こんなにも後ろ向きにポジティブな物語は読んだことがありませんw 小説とはこんなにも自由なのかと思わされました。 辻村深月作品や乙一の『GOTH』、桜庭一樹の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』などが好きな人はハマると思います! | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!