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下山事件 暗殺者たちの夏
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下山事件 暗殺者たちの夏の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.95pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全4件 1~4 1/1ページ
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柴田哲孝『下山事件 最後の証言』『下山事件 暗殺者たちの夏』読了。 『暗殺者たちの夏』を読んでいる途中に、著者の新刊『暗殺』が刊行され、新聞でも大きく宣伝されている。この『暗殺』は、安倍総理の暗殺には致命傷となった別の弾丸があった等という、小説だとしてもトンデモ系陰謀論らしい。普通であれば、こういう著者の本は読まないのだが・・・。 読んだのは、最初に『最後の証言』を読んでいたからである。 この本は、著者が大叔母から、著者の祖父が下山事件に関係していたらしいという話を聞いたところから始まる。 そこから、2000年前後の当時生存した関係者を訪ねて、下山事件の全貌を明らかにしようとするルポルタージュだ。 カギとなっているのは、著者の祖父が当時勤めていた、日本橋にある亜細亜産業という会社である。 ここは、戦争中に中国大陸で陸軍の特殊任務の下請けをしていた特務機関の生き残りたちが再結集し、戦後においてはGHQに取り入り、非合法的な任務を下請けすると同時に、合法的にも利権を得てビジネスを展開していた拠点である。亜細亜産業の上の階にあるサロンには児玉や田中清玄等の右翼から共産党等の左翼、そして吉田茂や佐藤栄作等の首相や大物政治家、白洲次郎等のフィクサー、加えてヒットマン等が出入りしていたとされる。 そして同書では、亜細亜産業がGHQのキャノン機関と組んで、下山事件を引き起こしたらしい、ということを匂わせるだけで終わっている。それがノンフィクションの限界であるという理由で。 これに対して、『暗殺者たちの夏』は、前書ではノンフィクションという制約から描き切れなかった全貌を、小説という手法で描き切ったとされている。 それで、読んでみたのだが、確かにストーリーは全部つながっている。 亜細亜産業は、ロマンス社という出版社を経営しており、「ロマンス」という雑誌を国鉄売店で販売していた。その売れ残りをすべて国鉄に買い取らせて甘い汁を吸っていたのだが、当時のGHQは国鉄のずさんな経営にメスを入れ、10万人の首切りをはじめとする合理化を進めようとしていた。その過程で、下山はロマンス社にかかわる国鉄の裏帳簿を入手したというのである。 そして亜細亜産業は、この帳簿が明るみに出ることを恐れ、GHQ内の特務機関であるキャノン機関を巻き込みつつ、国鉄総裁である下山の誘拐と殺害を計画したというのが本書の骨格である。 前書:ノンフィクションでは、直接、著者がインタビューした以外にも、報道されたり記録されたりしている様々な証言があるのだが、本書:小説ではそれらの多くを取り入れつつ矛盾が無いようにストーリーをつなげているように見える。 が、犯罪計画としてみると、骨格的なところで疑問符が数多くついて回るのである。 例えば、下山は日本橋三越内で3人の男に取り囲まれ、その後、地下鉄駅に移動し、そこでの目撃を最後に姿を消している。 小説では、下山は声を出そうとしたが、喉が引きつってこえがだせなかった、と書いている。しかし、三越の中で、あるいは地下鉄駅で、さらにはクルマに乗せられようとするときに、大声で助けを求めたらどうなったのか。 誘拐は成立しない。本当に誘拐を試みるとしたら、こういうずさんな方法を採用するだろうかという疑問である。 しかも、下山は当日、お迎えの車で不可思議な動きを繰り返したのちに、三菱銀行の貸金庫から裏帳簿を引き出し、日本橋三越に入るときには、クルマの後部座席に置いたままにしていったとされる。 実行犯たちは、誘拐した下山を拷問し、クルマの後部座席にあることを聞き出すと、二人の男を派遣して、運転手を脅して裏帳簿を回収したとされている。 しかし、まず、当日に下山が貸金庫に寄らず、裏帳簿が残った場合には、犯罪の証拠がまる残りになってしまうのである。 あるいは、運転手は何時間も三越の前で下山の帰りを待っていて、その間に下山失踪がニュースになっているが、運転手は知らなかったとされるが、もし運転手が不審に思って国鉄本社にクルマを回送していたら、犯人たちは窮地に陥るはずだ。 こんなずさんな計画を立てるだろうか。 その他にも、下山の衣装を着た男が五反野の旅館で休憩し、周囲を歩き回って目撃者をつくるというシーンがある。これは旅館の経営者が元特高警察で旅館の女将も含めて犯人側の協力者とされている。他の著作でも、そこまでは事実らしいのだが、このために下山を裸にし、さらに殺害後に苦労して衣装を着せる様子まで描写されているのだが、灰色のコート、ソフト帽、ロイド眼鏡等であれば、遠目にしか目撃されないのであるから、似たようなものを似たような背格好の男に着せて歩かせれば済むことだ。どうにも合理性が感じられない。しかも、この小説では、目撃者が「国会議員の西尾末広に似ていた」と証言しているところから、犯人グループに弱みを握られている西尾が下山の服を着させられて歩かされるというシーンまで挿入している。これなどは、荒唐無稽というか噴飯ものとしか言いようがない。 が、しかし、ロマンス社の国鉄利権をめぐって亜細亜産業が犯人であったということまで、否定しようとは思わない。ノンフィクションも含めれば、かなりのリアリティがあるからだ。上に書いたことは、小説にしたにしては、杜撰なところが目立ってしまうという意味である。 ところで、過日、NHKBSで「未解決事件 下山事件と占領期の闇」という番組をやっていた。GHQの秘密文書が公開されたことに焦点を当てつつ、小説でも実行犯の一人とされている在日韓国人にも犯人グループとして焦点を当てているのだが、亜細亜産業については一言も触れられていなかった。 NHKは著者については、うさんくさいトンデモ系としか評価していないのかもしれない。 松本清張の『日本の黒い霧』で下山事件について読んで以来、この問題に関心を持ち続けているが、今もって疑問は解消されないのである。 | ||||
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「下山事件」に関する本は多少読んできたが、ノンフィクションの類が殆どで、このようなフィクションはあまりなかった。随分、分厚い本なので、当時の世相が実感でき、知らぬ間に戦後直ぐの日本に導かれ、自分が歴史の中に居るような錯覚を覚えた。 そういう意味では悪くないが、小説としての完成度としては、どうだろうか。菱子という少女が読み始めて直ぐに登場するのでどうなるか期待したが、その後尻すぼみになってしまう。年齢的に現在まで生存していてもおかしくないが、その後を語る小説手法はなかったのか。 また、ライカビルにある亜細亜産業内での謀議が、たまたまドアの外にいた李中煥に盗み聞きされたり、金正甲が下山の遺体を運ぶ段になって、自分が殺される話を盗み聞いて逃げるストーリーなど、俄かには信じがたく、薄っぺらなスパイ小説を読んでいるようである。 構成的にも不満だ。やはり白眉は捜査の過程なので、ここに重心を置き、そして、下山・三鷹・松川事件は一体と考えるべきなのに、他の二事件が余りにもさらりと流しているので、その辺りも掘り下げてほしかった。 | ||||
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文庫本の「~最後の証言」を読んでいたので、つい買って読んでしまいました。 面白さはやっぱり「~最後の証言」のが上かなぁ。わざわざフィクションと強調してまで小説に仕立てる意味があったかどうか。個人的には佐藤一氏の「~全研究」が正しいだろうと思っています。ぜひ本書と比べてお読み下さい。 | ||||
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「最後の証言」の伏字部分を伏字でなくして(仮名ですが推測できます)、隙間を想像でつなぐために「小説」としたのだと思うので、「小説としての面白さ」をうんぬんするのは野暮だとは思いつつ、でも小説としては微妙でした。 | ||||
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