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鹿の王
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【この小説が収録されている参考書籍】
鹿の王の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.01pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全245件 141~160 8/13ページ
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上巻と下巻で、それぞれサブタイトルがついているが独立していないので、上下揃えてから読むべき作品。上橋の代表作の”獣の奏者”と比べると、本作は、内容が微生物学の話や国家の陰謀などが絡んでいるので、読みすすめるのに、より時間はかかるが、1週間ほどあれば読める。小学校高学年から中学生以上でないと理解は困難と思われ、児童文学の範疇には入らないと思われる。上巻(と下巻の一部)では、本作品のみの空想上の病気である黒狼病が、実際の病気である狂犬病(本作では”狂犬ノ病”と表記)と対照され、微生物学の謎解きが魅力。狂犬病は脳に狂犬病ウイルスが入っておこる病気である。私は、神経ウイルス学の研究と教育をしていますが、本作の狂犬病の記載は、予備知識がないと、難解な部分があると思われるので、”あとがき”などで、狂犬病についての簡単な説明が欲しいところ。本作では、”細菌”という用語は登場するが、”ウイルス”という用語は登場せずに、かわりに” 病素”という言葉が使われれいる。狂犬病ウイルスに感染した動物に噛まれたり引っかかれたりした場合は、発症を予防するために、1)まず傷口を石鹸と水でよく洗い流し、2)狂犬病ワクチンと3)狂犬病ウイルスに対する抗体(ガンマグロブリン)を注射することになる。一度、ウイルスが脳に入ってしまえば、治療方法はない。本作では、333頁で、発症した患者に深い麻酔をかけて昏睡状態にさせておいて、その間、患者のウイルスに対する免疫がつくのを待つという方法がとられているが、これは、狂犬病で実験的にアメリカで行われたミルウォーキー・プロトコルによるものと思われる。このミルウォーキー・プロトコルは2004年にはじめて成功例が報告されてから、狂犬病患者に何度か試されたが、失敗例のほうが多く、生存者は現在まで数名のみで確立された治療ではない。ちなみに本作の131頁にある用語を解説すると以下となる。病素=ウイルス。弱毒薬=弱毒化ワクチン。抗病素薬=抗ウイルス薬(”鹿の王”の世界では地衣類から取った有効なものが使われているが、現代医学ではこれに相当するほど強力なものはない)。抗病素体=抗ウイルス抗体。血漿体薬=抗ウイルス血漿(ガンマグロブリン、ウイルスに対する抗体を含んだ血液の成分)。本作には、近年、ワクチン接種を拒否したことで、麻疹などが増えたことに対する警鐘となる次のような金言もある。”感染症の場合は、あきらめて治療を拒んだ者がいることで、他の人々に病を広げてしまう可能性がある”(p362)。以下は金言。 心の底に、生き延びることに、たいした執着も見いだせぬ空ろさがあった。この命が尽きるときは、その空ろさが、わずかなりとも助けになるのかもしれない。(p14) 己を、手放すな(p71)。これも、すでに、自分なのだ。(p72) 病に、国は関係ない。私は医術師です。病から人を救うために生きるという誓いを立てている者です。(p147) どう言い繕おうと、おれたちは飛鹿を自分たちの都合で使っている。父は、己が己に嘘をつくことの意味を思い続けることの出来る人だった。(ヴァンは飛鹿を見ながら)、人の都合で使ってきたのだ。ならば、譲るべきは、彼らではなく、自分だろう。(p210) | ||||
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本作の主人公ヴァンは、妻子を過去に病気で亡くしてから、生きる希望を失い、死ぬことを願っているのだが、彼のガンサ氏族の信仰では、”絶望に負けた卑怯な”自殺をすれば死んだ家族との再会を果たすことができない(p52上巻)。そこで、ヴァンは、早く死ねるために、戦士となる。この行為は、氏族を制圧しようとする大国に抵抗し、氏族の弱者を助けはするのだが、大国に勝利する見込みなどはない。ヴァンの行為は、彼の父親によれば、英雄的な行為などではなく、たまたま、ヴァンに弱者を助ける能力があったから、おこなったに過ぎないとされる。ヴァンも同意見で、自分のこれまでの戦闘や、その後の数々の人助け(養女のユナを育てたことや、飛鹿の飼育を指導したことなど)に対しても、自分ではポジティブ評価を与えていない。ヴァンは、普段は自らを虚ろな存在としており、”裏返った”時は、黒狼病に感染した仔犬たちと一体感を感じ、自分と他者の区別がなくなっている。ここにおいて、ヴァンは、虚ろな自分も、裏返った自分に対しても、ネガティブな評価しか持っていない。しかし、ヴァンの姿勢は、老荘思想で言う”道”に沿った理想的な生き方に、ほぼ等しい(大乗仏教や禅の瞑想の境地、インドの梵我一如なども近い)。これらの思想では、人間は生きる過程で、ことさらなことをせず、苛酷な出来事も”道”(他の思想で言う’天命’や’神の意思’)のなせるわざとし、それに従って対処することを理想とする。ここでいう対処は、”何事も運命”と諦めて何もしないことではなく、ヴァンのように逆境に”もがく”ことも含まれる。そして、利己的な自分を、無(=虚)として持たず、理想的には、他者と一体となり、死も生もひとつと見なし、生きることに、ことさら執着しない。ヴァンは、既に、この境地に近い(あるいは達している)のだが、本人は、それを幸福とはみなしていない(ヴァンは、以前差別していた多民族の人を、家族とみなすようになり、裏返った時は、もっとも忌み嫌われる感染仔犬とも一体化しており、ここにおいて他者との差別感は、まったくない)。現代社会で、ヴァンに似た境遇にある人は多いと思われる。こうした人物は、対外的に見れば、まだ若く、能力もあり社会に貢献しており、利己的でなく、結果として他者を助けているヒーローである。ところが、本人は、不条理な人生の出来事に、その都度、ベストの対処をしているのだが、自分には限界があることを知り、将来に希望の持てない人生が早く終わることを願っている(自殺はしないものの)。ヴァンも含めたこうした理想を見いだせない社会のヒーロー(鹿の王)は、”幸運”が訪れれば、新しい家族や友人を持つことで救わることもある。ただ、真の救いは、そうした”幸運”がなくても、現在のあるがままのヴァンが、多くの宗教や思想が目指すところの理想であると、本人が自覚するところにあるかもしれない。上橋奈緒子には、今後のヴァンに真の救いが訪れるのか、続編を期待したい。以下は金言。 神というのは、便利な理屈だ。自分たちが思いたいように思わせてくれる神が、都合の良過ぎる方便であることを、彼らが認めることは決してないだろう。(p57) ずっと心に巣食っているこの虚無の源(p58) 寄る辺ない哀しみの中をずっと歩いてきた。異郷で暮らしているあいだも、心の底から家族と暮らした故郷を渇望する気持ちが消えたことはなかった。我が身はもはや木の枝から離れ、落ちてしまった葉だ。流れてゆき、やがては大海に消えていくしかない。そうわかっていても、哀しみや渇望は、消えることはない。(p71) 私たちは、我が身の内で何が起きているのか、見ることも、聞くこともできない。(p271) 裏返っているときに見る風景は、匂いは鮮烈になり、葉がそよぐ音すら大きく聞こえ、色も変わる。私と犬たちは、とても親しい。親しいというより、自分そのものに思える。(p292でこう表現されている感覚の鋭敏さや自然や他者との一体感は禅や瞑想ではよく言われているところの悟りに近い) 身体の死って、変化でしかないような気がしちゃうんです。(p305) ”裏返し”というのは、”魂の自分”と”身体の自分”が裏返ることだ。(p347) 裏返っているときでも、私の魂は、完全に消えてはいない。”病の生き魂”とせめぎあっていて、危うい均衡を保っている。(p353) おれたちはみな、”独角”になったときには、すでに息をする屍だった。一刻も早く死にたいのに、自ら死んだら常春の地には行けぬ。だから、死んでいいぞ、と許されるときを待ち望んでいた。俺たちは帝国に勝つなどという、ありえぬ夢は見ていなかった。大切なのは負け方だった。(p399) これまでの半生の中では、およそ縁のない遠い他人に過ぎなかった人々のあいだを、いま、こうして歩き、微笑みあっている。(異国人だということなど)まるで気にならない。身体も国も、ひとかたまりの何かであるような気がするが、実はそうではないのだろう。それぞれの命を生きながら、いつしか渾然一体となって、ひとつの大きな命をつないでいるだけのなのだ。(p412-413) おまえらみたいな、ひよっこはな、生き延びるために全力を尽くせ。逃げて命を繋ぎ、子を産み、増やせ。それがおまえたちの務めだ。逃げられない人がいたら、助けるのは、それは、出来る者がやることだ。自らを捨てて、他の命となることを助ける。それが、ただの必然―そういうふうに生まれたから、そうなっただけ。在るように在り、消えるように消えるだけ。(P439-441) この子の命がかかっているわけでもない。ただ巻き込まれただけの、この奇妙な戦。己を捨てるほどの意味が、あるか。運命を悄然と受け入れてよいものではなかろう。その中で、もがくことこそが、多分、生きる、ということだ。他者の命が奪われることを見過ごしてよいのは、助けるすべを持たぬ者だけだ。(過去に自分が助けることができずに死んだ妻子を想って)おまえたちにしてやれなかったことを、縁もゆかりもない人々にしてやってもいいか。(p465-467) | ||||
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病(ウイルス)発生の謎。帝国の情勢と、それぞれの部族の事情…。それらが複雑に絡み合い、微妙なバランスが保たれている世界が舞台の、極上ファンタジー小説でした。読んでいて、「うわーこれ、ピータージャクソンに実写化してもらいたいわー!」と思っていたら、案の定、作者の上橋菜穂子さんは、この手のファンタジー小説では有名な方だったのですね。。。(知らなくてすみません。。。) 冒険小説の要素あり、謎解きミステリー要素あり、ナショナルジオグラフィックちっくな自然・共生的な要素もあり、本当にもりだくさんで、大満足でした!上下巻で結構なボリュームありますが、睡眠時間を惜しんで読みふけってしまいました。 支配された王国と、支配した帝国があったり、物語の終盤では一応犯人的な悪者?も出てくるのですが、決して弱者と強者、悪者と善人と、単純に割り切れないところが、この作品の惹かれるところでした。 ブックレビューでは、登場人物や舞台が多いといった意見も目につきましたが、登場人物はそれぞれ魅力的だし、丁寧に描写されているので、具体的なイメージも湧きやすく、個人的にはあまり気になりませんでした。 主人公のヴァンは、もう読み進めていくうちに、ロード・オブ・ザ・リングでアラゴルン役だったヴィゴ・モーテンセンでしかイメージできなかったし、もう一人の主人公ホッサルの父は、同じくガンダルフ役のイアン・マッケランだったんだよなぁ。けど、なぜかホッサルは窪塚洋介イメージだった(笑)繰り返しになるけど、そんな謎の配役で、ぜひロード・オブ・ザ・リングチームで実写化してもらいたいと思うのでありました。 | ||||
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no probrem thank you............... | ||||
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流石 上橋菜穂子さん 上下巻をイッキに読んでしまった 雰囲気としては 狐笛のかなたのような読後感 | ||||
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no probrem thank you............... | ||||
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泣けました。 涙がボロボロ出ます。 主人公の生き様 かっこいい! 鹿の王とは? | ||||
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鹿の王とは何かが明かされます。 愛を感じます。 涙が自然に流れます。 上下巻一体のお話です。 上巻の方がドキドキ感は強いですが、私は下巻の方が好きです。 | ||||
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名前が日本人でない最初は読みにくかった。漢字の読みも難しい。 物語は意外で、詳細で、自分の考えの範疇ではない。書かなくても良いような枝葉の説明も驚きだ。 本屋大賞は良いものを薦める。 | ||||
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全体的な構成、話への引き込み、各キャラクターの感情や行動の起伏とそれぞれに紐づく背景に魅了されて読み始めたら最後まで一気に読めました。 これはこれで素晴らしいと思うので、比較するのは申し訳ないのですが、獣の奏者のような人物間の関係性やストーリーから外れて戻ってきた時の衝撃、各キャラクターの葛藤と背景の部分がもう一歩あればよかったなと思ってしまいました。 苔、動物、病、人の各種族が入り乱れて作り上げられる世界観は引き続き、とても好きです! ただ、これだけでなく、獣の奏者・守人シリーズも合わせて読んで欲しいなと思います。 | ||||
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上橋菜穂子さんの作品はほぼ読んでいます。まだ読み始めたばかりですが期待を裏切られません!わくわくします | ||||
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一気に読んでしまいました。中2の息子はいままで本など読んだこともないのに,この本にははまったらしく,まだ読み終わらないの?とせっついてきます。私も一気に読んでしまいました。 | ||||
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最初からはまりました。鹿の迫力が良く伝わりました。楽しかったです。 | ||||
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本屋大賞に選ばれたことで知り購入 上橋作品は初めて 世界観はファンタジーで主人公は二人 一人はとある傭兵団の元団長 もう一人は登場する国を代表する優秀な医師 ひょんなことから出会った幼い女の子との心温まる親子の絆 謎の狂犬病のような病気に立ち向かう医師 いつ交わるのかドキドキする二人の主人公の物語 ページ数は多いが読みやすく、スラスラ読める 下巻が気になって仕方ないので即続きを購入したい | ||||
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上下巻ぶっ通しで読了。 登場人物、地名がたくさん出るので、読み始めは大変。 鹿の王とは何か、如何に生きるかが本書を貫く主題。 上橋ワールド中毒になってしまった。 | ||||
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上橋菜穂子は、何であんなに動物を創り出すことが上手いのだろう。今回も、飛鹿、火馬という魅力的な動物がいて、それに纏わる特殊な人々が活躍しています。鹿の背に乗って主人公が雪山を駆け回る時に目に映る景色がとても素敵です。 | ||||
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世界観がしっかりと作り込まれていて久しぶりに良い作品に出会った気がします。 | ||||
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物語はよく練られており、深く重いテーマをよく消化したと思う。ファンタジーとしてはアクションシーンは少なめだが、むしろ登場人物たち(動物も含む)の行動と意思が交錯する場面に、アクションを読むのにも劣らぬ興奮を憶えた。 お気に入りの人物はサエ。物静かで胸の内を表に出さない彼女が、ラストで見せる決断のすがすがしさに心打たれる。 気の毒なのはマコウカンで、かなりの実力者であるはずの彼が、ホッサルはともかくヴァンやサエや実姉に翻弄されるまま終幕となったのはやや残念。クライマックス付近でもう少し活躍させてあげたかったが… | ||||
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少し早く取得した夏休み旅行のおともに購入。 しかし、夏休み中には読めずに、通勤時に上下巻とも読みました。 ネタバレはなるべく書きたくないので、 この作者の著書を「子供のための読みものでしょ…」と思っている方へひとこと。 上橋さんの著書は、大人でも、いや、大人だからこそ理解できる心情がたくさんあります。 平坦な文章で、ここまで深い表現をできるものなのかと毎回、驚嘆させられっぱなしです。 通勤・通学時間のおともに、おすすめです。 | ||||
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いわゆる冒険ファンタジー小説の体裁をとっているが、下巻「あとがき」にあるように、作者の狙いは、そこにはない。 つまり、善と悪の対決、素晴らしい宝物を手に入れる、あるいは冒険を通じた主人公の成長物語といった展開はない。 表層的には、この物語における共通の「敵」は、病気あるいはその原因である病素(ウィルス)である。 しかし、話はもっと複雑である。 そもそも人体を構成する細胞は数十超個であるが、体内に生息する微生物は100超個を超える。 これらの体内微生物は、時には人体に有益であったり、害をなしたりする。 外部から侵入してくる微生物・ウィルスは病気を引き起こす半面、免疫抗体反応などの新たな生体防御メカニズムを創りだすことも知られている。 「黒狼病」という架空の感染症との闘いが描かれているが、作者の視点は医学、生物学の領域を超え、社会・文化の仕組みにも向けられている。 広大な帝国と支配された国の対立、という単純な図式でなく、様々な民族が、複雑に入り乱れて、いろいろな思惑でうごめく。 ここでも、部分と全体の対比が明らかだ。 上下二巻の大著のエンディング近く、民族や立場の異なる者たちが、深い森に向かうシーンがある。 そこからは、敵と味方、あるいは人間と自然という次元をも超えた、「共生」という言葉が立ちあがってくる。 実に奥深い物語である。 ちなみに本書は、第4回日本医療小説大賞を受賞したが、純粋冒険ファンタジー小説としてみると、主要人物の描き方 などはいまいちである。今回の星4つは、どちらかというと、前者の視点からの評価である。 | ||||
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