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道化師の蝶

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評判

道化師の蝶の評価:

3.30/5点 レビュー 73件。 E ランク

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平均点3.30pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全76件 41〜60 3/4ページ
No.36
(3pt)

言葉の迷路

この本、というより著者の作品は、読みやすい文章がない。
まるで外国文学を翻訳して日本語に無い言葉を
それに近い言葉で無理に当てはめて書いたような印象。

この本がよく例えられている絵画に例えれば、文章は表現技法に例えられると思う。
この本はアブストラクトで描かれているように感じた。
いつも花の具象画を見てる人が、モダンアートの花の絵を見るような、
そんなわかりづらさを与える文章。

そして、その花にあたる、絵のモチーフは本・文章。
ここに読みづらさの理由・仕掛けがあるように思う。
内容には、前述の読みづらい文章までも内包した世界だという仕掛けがある。
読み手は絵の技術=文章力ではなく、モチーフによって引き込まれる。
今まで読んだ事の無い世界が広がっている不思議な世界。
文章が読み解き辛くとも、その面白さは変わらない。
つまり、モチーフにしている具象そのものは素晴らしいセンスで選び抜かれていると思う。

けれど、いかんせん、アブストラクトを普段見慣れない人間にとっては、
いかに素晴らしい世界がひろがっていようと、それは霧がかってはっきりとしない。
好んで見ないものにとっては苦痛ですらあるかもしれない。

私は少ない色、線で描いているのに、叙情的で説得力のある素晴らしい水墨画を知っている。
同じように、どこにでもある言葉、誰もが使ったことのある言葉だけで、
人々を新しい世界や感覚へ旅させることができる文章や本があるのを知っている。

私にとってこの本はモチーフは好きだが、手法が好きではない絵と同じ。
著者が書き方を好んで書いているのか、それともこうしか書けないのかは分からない。
が、そこが私にとっては、とても惜しい作品。
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.35
(4pt)

Fabula de scribendo fabulas? 小説を書くことについての小説?

レビューの長さの関係上、とりあえず、この場では表題作の「道化師の蝶」について述べることにする。
この作品、ストーリー/プロットやテーマ性などにおける小説の約束事に対する問題意識の故なのか、
それらにはかなり捻りが加えられていて、それが難解さにもつながっているが、
かといって純粋な言葉の遊戯に自閉している訳でもない。
むしろ「言葉」と「概念・事物」との関係性がテーマとして設定してあり、
それに基づいて作品全体が極めて明確な構成意識によって周到に構成されている。
加えてそのテーマが「作家が作品を書く行為」にもリンクしていくメタ作品、という趣もある。
ストーリー自体は一応、「冒頭の作品内小説の作者は誰か?」という、
まさにストーリー展開の原動力として要請された謎を追求する形で進む。

さて、物質的な網で架空の蝶を捕まえて経済的成功を企むという作品内小説の筋は、
文学に対する資本主義的発想の、いかにも意地の悪いパロディのという印象があるが、
言葉の網で、言葉になる前の着想・インスピレーション、という蝶を捕まえる、という営み自体は、
架空の物語を編む物書きのみならず、真実の把握を試みる学者にも、それから
言葉にならない感情を表現したいと悩むごく一般の人間にもごく自然にあてはまることだろう。
さて、ここで作品の重要な主題として現れるのは、以下の疑問だ。
「どんな言葉なら、確かな、真なる着想を捕えることができるのだろう?」
それは、書き手が随意に振る舞えて、「思うところをそのまま表現できる」理想的人工言語なのか。
いやいや、言葉以前のものを理想的な状態で捕まえるとかそういう問題ではなくて、
むしろ土地や歴史に根ざした自然言語の模様をなぞり、
言葉のテクスチュアを織る行為そのもののなかで、
着想の卵は孵化し、やがて蝶へと羽化するのだろうか。
とはいえ、固有の自然やら文化やらの堆積をくぐりながら模様を追う作業は時に重苦しい。
作品内小説の作者と目される『友幸友幸』もその不自由さは折に触れて吐露していて、
だからこそ、彼女はひとつ所には長く留まらず、放浪のうちに生を送るようだ。
しかしその土地土地それぞれが持つ匂いの多彩さ、
テクスチュアに用いる技法や模様の種類の恐ろしいほどの豊穣を楽しんでいるようでもある。
ただしその多様さは、決して一つの真なる模様に収斂せしめられようとはしないし、
真なるものに近づくための前提となる経験の蓄積というプロセスとか
記憶というものを、はなから問題にしていない。
だから当然ながら彼女は日々作りだす文字の連なりに執着することも、
それが文学作品と呼ばれるかどうかも顧慮せず、
いわんや経済的なサイクルに乗っかるかどうかを期待することもない。
しかし彼女は、少なくとも蝶を求める者にとっては、
金の恵みをもたらす蝶と同様に探索すべき対象であるようだ。

移動と変化と忘却を人生とする彼女は、しかし誰とめぐりあうことを望むのだろうか。
それが叶ったとするなら、そのときは蝶が繁殖するような時なのか。

「作者の意図」などというものをこの種の作品から穿鑿するのは、
それこそ作者の仕掛けた罠に進んで嵌まりに行くようなものだが、
それでもこの点につき少々思いを致すならば、
思考・概念・感性などの普遍性よりは個別性・固有性を志向し、しかも常にそれを越境移動し続けることを
作家の宿命として提示するとともに、
小説家の作為・人為じたいを自虐的に皮肉っている、ということになるのだろうか。

ともあれ、テーマと噛み合った形で非常に精緻に組み立てられた作品であり、
抑制された文体にもまさに玲瓏たる風骨が感じられた点、これらはすなおに評価したい。
ただ、「言語と事物」の関係性という問題を、このような高踏的な手法で表現するのも一つの方法ではあるが、
それをもっと現実のに生きる人々の切実さとリンクさせて読者の心に響かせることができたはず、とも思う。
これはもはや個人的好みの領域ではあるが、
「言語」という、哲学的理論的対象として扱うことができる一方で
我々一人一人が個別の人生を背負った「自分」として成立するという事態にもダイレクトに関わる問題を、
どこまでも思弁的な装いのもとに展開させてしまったことはやはり勿体ないと感じられ、若干憾みが残る。
ここまでを記すにあたって、「小説」なる一ジャンル名を用いて本作品を呼称するのにどうも逡巡させられたのも、
その辺りが一因のようである。(よって星4つ)

★                                 ★

  (以下、作品の結末に関わる記述があるので注意)

★                                 ★

それにしても、そもそもあの小説を書いたのは、以前その言語を用いる「国」にいた彼女自身なのか、
時と世界を自由に行き来できるらしい「男」なのか、
あるいは、堅固なものに固着し、小説の作者を仮構することで
翻訳者の立場におさまろうとしたのかもしれないエージェントなのか、という問いは、
それが作品内世界の中に生まれ落ちることになった理由や動機とともに、結局開かれたままのようだ。
ただともかくも、この小説を介して人工言語の荒涼たる森に導かれた友幸友幸は、
この罠ともいえる世界でも見事に手仕事をやってのける。
それは蝶を捕まえる網でありながら、
実質的に蝶を捕獲状態から解放し、誰にも捕まえなどさせないことを運命づけるもの。

彼女が「第一の網」を制作したことで、
「現実世界」を微妙にずらしつつトレースした無活用ラテン語の言語世界に包含される作品内小説の世界でも混乱が生じ、
益体もない人工物の蝶で溢れかえる結果になっていたのだけれど、
その網が作中終盤、作品内小説が再度語りなおされる場面にて
少々捕獲能力に劣る網にすり替えられることで、そうした混乱状態の発生は食い止められ、
その世界に孤独に閉じ込められたほんものの蝶も、雄にめぐり会い繁殖できた模様である。
この実り少ない世界でも、新たな着想が生じ、文字として現実化するようになるのかもしれない。
このすり替えは、A氏が蝶を決して捕えられないにもかかわらず永遠の探索を続ける、
という呪いの発動をもまた意味すると思われるのだが。
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.34
(1pt)

欠けたままのパズル

作者がそれなりに博識なのは伝わってきます。
しかし、この作品は完成品ではありません。
何度も読めば、全体の3割くらいは理解できます。
それと同時に、全部を読み解いたところで5割以上は理解できない作品であることに気づきます。
もともと5割以上の回答が用意されていないからです。
この作品を「絵画のような作品」という人が多いですが、部分的には絵が見えますが、半分以上は合わないパズルを無理やりはめ込んだようなモザイクだらけの絵画です。
「モザイクの部分は皆さんで想像して楽しんでくださいね」という事なのだろうけど、それは未完成に他ならない。
なんて事をいうと、「文学は自由だ。何でもありだ」という人もいるでしょうが、芥川賞には見合わない。
未完成品というのもありといえばありだけど、それはあくまでもニッチな人たちが楽しむものであり、文学の賞を得るような類のものではない。
芥川賞なんて取らせたら、ある意味で、この未完成品が「正解」かの様な誤解をまねくでしょう。
実際、これを読んで「これぞ文学!」と騙された人も多いでしょう。
この作品は文学ではなく、ニッチな市場で楽しむ自慰小説です。

加えて、この作者の『記法』には仕掛けがあります。
それゆえに、一度読んだだけでは理解ができず、再読を強いられます。
ここで私がその記法についてヒトコト示せば、この本は格段に読みやすくなりますが、それはこの作品にとっての生命線であり、致命的なネタバレになりかねません。
私はその記法を、『上質なもの』ではなく『不親切』と判断します。

さてこそ以上、悪口ではありません。
なぜならば、後半に収録されている『松ノ枝の記』での記述が本心であるなら、作者自身も投げっぱなしの悪ふざけであることは承知のはずですから。
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.33
(4pt)

偶然性の問題

道化師の蝶だけでのレビューになりますが、個人的にはこの作品は神話=言葉が
生成される、その偶然性をひたすらに扱ったような小説だと思いました。
もちろんここで言う生成とは、
完成など無くてひたすらその過程の中にいるというような作中の台詞が指すように、
素材の集まりやコードの置換、変換、人称性の薄れ、音の連なりや意味の消失など
様々な事象が幾度となくほつれたり、
また再び縫いあげられたりという終わりの無いうねりのことだと思います。
ラストの方に挿入されたいくつもの蝶が粉々にされるシーンは、
そうした偶然性が人為によってすり減り、
輝きを失ってしまうような瞬間を示唆しているようにも思えました。
この本についてボルヘス的という意見を何度か見ましたが、
この本を読んだときにはやはり現代思想的、もっと言えば記号論的に作られ、
寓話化された世界観という印象を受けました。
そういう意味では幻想小説に近いのだろうかと思いますが、
わたし自身SFは恥ずかしながらあまり読まないので、
著者がSF畑の人だと言われても正直この作品だけではよくわかりませんでした。
また、数学的という言葉については、私自身全くに暗い分野ですので、
この小説が、そうした考え方で成り立っているのかどうかは全く判断がつきません。
そうした点はともかくとして、個人的には芥川賞にふさわしい小説だと思いますが、
個人的には同じ論考をするならばアサッテの人のように、
内面に入りこむような小説の方が好きなので私の嗜好とは少し合いませんでした。
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.32
(5pt)

奇妙な理屈の迷宮を彷徨う楽しみ

第146回芥川賞である表題作を含む、2編を収録した本書。
「オブ・ザ・ベースボール」「これはペンです」に続く3冊目として読みましたが、冒頭の奇妙な一文からして、「お、この著者らしい不可思議な世界が展開していくぞ」と、楽しみながらページを繰ってしまうのは、著者の魅力に強く惹かれているためでしょうか。

【道化師の蝶】
「着想を捉える網」を巡る「言葉」をテーマにした本作品は、「これはペンです」の発展系であるとともに、「A・A・エイブラムス」なる人物が登場してくるところは、「オブ・ザ・ベースボール」収録の【つぎの著者につづく】の登場人物「リチャード・ジェイムス」を思わせるところもあり、興味深く読みました。
この作品の奇妙で、面白いところは、いろいろな「わたし」が登場してくるところです。
ある特定の「わたし」ではなく、章が切り替わるところで、別人格に転化しているようにも感じられます。
これが、私には、作品のテーマのひとつである「網で捉えることの出来る着想」を描いているようにも思われ、「着想」が花々を飛び回る蝶のように、様々な人格を飛び回っているのかも知れません。

【松ノ枝の記】
著者の作品は初めて、という方にはこちらがオススメ。
主人公である「わたし」が、「松ノ枝」と名付けた人物の著書を翻訳、すると、彼が、「わたし」の著書を翻訳してくれる。
お互いが翻訳者であるという不思議な関係にある二人に不協和音が生じ、「わたし」が「松ノ枝」を訪ねていくと。
というように、割とストーリーが分かりやすいものとなっているからです。
著者の手にかかると、「言葉」が、「太古の人類史」に結びついてしまう。
本当に、奇妙で面白い作品の書き手だと感じています。

(※「コメント欄」に本筋とは外れるあることを記載しました)
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.31
(4pt)

上質な言葉遊び

なるほど、文学とは言葉遊びであることを、自分はだけど、忘れていた。 命令と応答の規則、文学に伝統を押し固めそこに規則。 自由と平等の現代は案外息苦しい。 収録二編はともに何かを求める話で、道化師の蝶はさまざまな人物が何かを求めながら、絡み合うように関係していく話。 松の枝の記は登場人物が共通の過去と未来を求める話。 そこに何かあるのか、とも思ったんだけど、作者の読み取って欲しい意図が案外古臭くも、普遍で変え難いテーマがあるような気がして、達筆で斬新な文章共々中々上質な読み物にも思えました。
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.30
(3pt)

小説の顔をした小論文

頭の中の観念を言葉にしてみると、考えていたものと違ってくる。あるいは、聞き手や読み手に伝わる内容が違ってくる。そういう言語表現の限界について著者が考えたことを、やや無理やり小説にしたような印象だ。
 小論文やエッセイとして書いても読まれないから、あえて前衛小説の仮面をかぶせたように思える。もし同じことを考えた有名人がいれば、エッセイでも(少なくとも固定ファン層には)読まれるから、あえて小説にはしなかっただろう。
 話の筋を完全に理解しようと思うと、おそらく疲れる。急な場面展開があるが、あまり気にせず先へ進んだ方がいいと思う。斜め読みのつもりで読んでも、それなりに収穫のある本ではある。
 ところで「飛行機の中で本が読めない」という(おそらく著者の)悩みには、非常に共感する。私は深層意識の部分で緊張していることが原因と考えるが、物理学専攻の著者の考察が(作家だから当然だが)文系的すぎて面白い。
 ただし、飛行機の中に乗客の着想が舞っているというイメージには反対。あんな狭い空間に縛り付けられて、たいした発想が得られるはずがない。だからカントら哲学者は机上ではなく歩きながら思考したわけで、私は詳しくないが脳科学では身体的運動が脳活動を活発にすることが定説のはず。
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.29
(5pt)

友幸友幸とエージェントの二人編み

難解という意見も多いですが、自分なりの解釈を書きます。本文からの引用あります。

これは友幸友幸とエージェントが二人編みをしているように紡ぎ出す物語だと思います。

1章:友幸友幸が書いた文章・わたし=友幸友幸'
2章:1章の謝辞・わたし=エージェント
3章:友幸友幸の人生・わたし= 友幸友幸
4章:エージェントが書いたレポート・わたし=エージェント
5章:(蝶が宿った)友幸友幸が蝶になり、1章に還る。わたし=友幸友幸 
  4章最後で友幸友幸がエージェントに会い、5章でそのレポートを読んだ時に気持ちが交わり、次の蝶を産む。

全体イメージ
「繰り返し語られ直すエピソードが、互いに食い違いを見せるたび、文法の方が変化していく言語」
≒「裏と表で模様の違う刺繍。ただ変えるだけではなく、何か微妙な拘束がある。」

友幸友幸やエイブラムス氏等、登場人物の性別変化は次の文がヒントだと思います。
「友幸友幸の文章においては・・性別や年齢が変わることも多くある」
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.28
(5pt)

エクリチュールをめぐるエクリチュール

練りに練られた構成とシンプルで無駄のない文体
確かな表現力と豊かな想像力,意表を突くアイデア

話の筋は一見すると荒唐無稽に感じるかもしれません
「真実はただ一つ」的な視点で一生懸命に読もうとすると,
確かに難解でしょう
その網をかいくぐろうとするのが著者の作戦でもあり,
ことばというものと書くという行為そのものが作品のテーマだからです
書くことをめぐる考察は執拗でさえあります
まるで要約や解説を拒むかのように,
あらかじめ作品のなかで作品自身を解説してしまう

ぜひ文庫化されて余計な尾鰭がついてしまう前に,
2作を通読されることをお勧めします

一回読んで分からなければ何度も読めばいい
短いですし,それに耐えうる文章力を持った作品だと思います
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.27
(3pt)

星の数で評価できる小説ではない。

私は、文芸春秋で本作を読んだので、同時収録されている作品は読んでいないので純粋なこの本のレビューではないかもしれません。
が、読み終わった後、何かしら残るものを感じたので、ここに書きます。

はっきり言うと、5分の1も理解せずに読破してしまいました。
しかし、理解は出来なかったのですが、何か、ほんわかとこの作品の発している香りは嗅いだ様な気がします。
単純に「良い」とか「悪い」、「面白い」、「つまらない」という二分化で評価できない作品なのです。

私は、今まで芥川賞受賞作を50作以上は読んでいるのですが、大体以下の分類に分けられます。

単純に面白かったもの。
単純につまらなかったもの。
普通なもの。
不愉快なもの。
意味不明なもの。
意味不明だけど、何か感じるもの。
意味不明で、かつ、不愉快なもの。

・・・こんなもんでしょうか。
それで、本作「道化師の蝶」は、意味不明だけど、何か感じるもの・・・でした。
実は、このカテゴリーに入る小説と言うのは滅多にありません。
何で、意味も分かってないのに、何かを感じるのだ・・・と、言われれば、僕自身、返せる言葉が少ないですし・・・。
ただ、あくまで私個人は、この作品に今までの小説とは違う「何か」を感じたのも事実です。

人間と言うのは、矛盾した生き物です。
嫌いなんだけど、何か心のどこかで気になっていたり、好きなんだけど、冷たい態度を取ったり・・・対象は様々でしょうが、こういうアンヴィバレンツな感情をもった経験は誰でも一度はあるのではないでしょうか。
いわば、一種の二律背反的な解釈が成立する小説・・・それが、この「道化師の蝶」という作品なのです。
一つ一つの言語をパズルのピースみたいに当てはめていく・・・、そんな作業をしながら、組み合わせてみたら、いままで見たことも無いような小説、もしくは絵ができた・・・。
そんな感じで、言語を本来の意味の情報の伝達ではなく、新製品を作るみたいに、パーツとして考えていく・・・そんな小説のあり方もありだな、と、感じさせてくれる小説でした。

一度読んだら、充分な小説もありますが、この小説はそういう類の小説ではなさそうです。
つまり、評価の星3つと言うのも、4つになる可能性もあるし、5つにも6にも7にも100にも10000にもなる可能性があるのです。(時には1にもなるかもしれません・・・)
読み手の解釈で広がりが出てくる小説と言えるでしょう。
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.26
(3pt)

おじいちゃん新党が言う程読みにくくないです

ボルヘス好きな人なら、許容範囲です。
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.25
(3pt)

情緒の文学ではなく、高度な言葉遊び

芥川賞受賞作を手に取ったのだから、文学をしたい、と思っている。しかも何かと話題の今回の受賞作だ。主人公はアメリカ人の実業家、エイブラムスか、いや、エイブラムスは作家の友幸友幸を追跡した人物なんだけれどもその姿を友幸が描く小説世界に押し込めたのか、つまりこの小説は二層構造のバーチャル世界なのか、しかも使用者の殆どいない人工言語で描かれた(ことになっている)・・・と、この辺までは理解できる。

文学というのは情緒の世界だと私は思っているし、大抵の方も言葉は違えどそう言ってくださると思う。主人公は友幸友幸か、と狙いを定め、彼の情緒を読み取ってと行こうとするのだが、主人公は蝶のようにひらりひらりと浮遊を続け、一向につかまえどころがない。ここに至り、文学したいと思っていた私は頭を抱えてしまう。

そう、これは所謂文学じゃないんだ。自分はいま美術館めぐりをしている。そこに何か意味を持つらしい幾何学模様とか、難解な曼荼羅とかがあって・・・これは字句の芸術なのか、と選評の助けも借りて理解していく。あえて自分に引き寄せて理解しようとすれば、高校時代の数学の問題のようなものか。

A4サイズのドリルの1ページに、簡潔に書かれた問題が一つ。その問題の回答を導くために私は何行も記述していく。そしてある日、同級生のドリルに妙に既視感のある回答を見つける。問題が回答に結びつくまでに自分の脳が経験した高揚感、自分らしくぶっきらぼうに記載した回答プロセスを丸写ししたらしい同級生のおかしさ・・・。

多分、同級生は何もおかしくなく、数学を苦痛に思っていたのだろう。それと同じように、円城さんの高度な言葉遊びについていけなければ、なんだこれは、という感想しか残らない。私もどちらかというと、今回は同級生に近い。しかし、芸術的な浮遊を紡ぎながら高揚しているであろう円城さんのことは、ちょっと垣間見たつもりになれた。
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.24
(3pt)

平成現代文学がおそまきながら産声を上げようとしているのかしら

この小説のほんとうの値打ちは、やたら肩入れして「死んでいながら生きている猫を描こうとしている画期的小説!?」などと無闇に意気込んでいる川上弘美選手よりも、著者本人がいちばんよく分かっているのではないでしょうか。まあ世間がらあらあと騒ぎたてるような代物でないことは間違いありません。

私はともかく途中で居眠りはせずに最後まで紙上に乾いた視線を晒すだけの義理は果たしましたが、これは新しい文学的感興がむくむくと湧き起こるような瞬間は、ただの一度もありませんでした。

小説に因る人世の方法的制覇を目指して夢中で書いている本ご人はきっと楽しいのでしょうが、その醍醐味は架空の新種アルレキヌス・アルレキヌスよりも、春になれば郷里の里山に優雅に舞い飛ぶ超現実種のルエホドルフィア・ジャポニカを偏愛する私のような蝶保守的古典文学マニアをてんで満足させてくれはしませんでしたね。

文体やあらすじがどうのこうのと評しても意味がないので書きませんが、この醒めた唐人の寝言のような奇妙な日本語列を反芻していると、なぜか最近は誰も聴かなくなってしまったいにしえの現代音楽のことが思い出されてきました。

実際本作品には初めて12音音楽に挑んだかのシェーンベルクの懐かしい響きが聴こえてきますし、同時に芥川賞を受賞した田中選手の作品では新ウイーン学派の無調やノイズミュージックの乱入も散見されます。先駆する中原昌也の革命的な実験作も含めて、鴎外、漱石、芥川、荷風、谷崎、太宰、三島、大江、村上の正統派に反旗を翻そうとする「平成現代文学」がおそまきながら産声を上げようとしているのでしょうか。
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.23
(2pt)

東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。

略歴に書かれたこの経歴を見れば「すごいよ」「圧倒されたよ」「さすがは芥川賞受賞作だ」と感じた方もおられるでしょう。 私の正直な感想は「意味がさっぱりわからない。 読んでも苦痛で何も残らない。 時間の無駄とはこういこと」です。 これが逆に「高卒」だったら何人の方が上記の感想を持つだろう、と思います。 芥川賞候補にもならなかったのではないか、と思います。 作者は「わからない方がいるのは自分の不甲斐なさ」と言われていますが、「賢い自分が書いているのだから、理解しろよ」と迫られている感じがして、読後感もよくありませんでした。
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.22
(3pt)

「難解」

一言で言えば、非常に観念的で難解な作品です。 逆に言えば、だからこそ「芥川賞」なのかも知れません。 全体を通して、「言葉」「書くこと」を哲学的に突き詰めようとしているように思えます。 その哲学的なものを、ユーモアを交えながら書いているので、その瞬間、瞬間は非常に楽しく読むことが出来ます。 でも、結局、何を読んだのか解らない。 ですから、「難解」の一言です。
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.21
(3pt)

よくわからない

前半はすごく興味深く読んだ。 読みやすい文体と安部公房のような独特の世界観。 けれど、読み終わったあと、何も掴めなかった。 世界観は好きだが、ただでさえの独特な雰囲気、それに重ねたあえて不親切な展開。 なかなかうまく飲み込めず、私には消化できなかった。 こういう小説を面白いといえば、格好が良さそうなものだが、わからないものはわからないので正直にわからないと書く。
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.20
(3pt)

前半は秀逸!後半はたるんだか?

話題の田中氏の作品より、実は芥川賞らしい作品だと思いました。 着想をつかまえて事業へ展開できることが事業家の技であるというくだりは、 現代日本がグローバルするさなかへの日本企業や政治家への課題のようにも思えました。 経済が冷え込むととかく着想をつかむ網を持った人がいなくなり、保守的になることが ありますが、そんなときにこの小説が選ばれたことは、月並みながら時代が彼の小説を欲しているのだと思います。 しかしながら、トモユキトモユキを探し続ける話は、いささか長くなりすぎ、中だるみ感を 受けました。 それと、手芸話は、作者の趣味らしいですが、 いまひとつ、共感できないかな?
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.19
(3pt)

奇妙な体験

どんな小説か、と訊ねられれば言葉につまる。どんなストーリーか、読んだそばから、折々のシーンのそれぞれの関連を忘れてしまっていた。
難解さがまた自分のような理解力のない人間にとって小説の総体をつかみにくく感じさせる
その要素がこの作品の魅力でもあるのだろうけれど。
乱暴に単純に言えば、言葉についての考察を小説のかたちにまとめている本である
観念的と一言に言い切れない具体性はある

はじめの数頁読んだとき、これ、小説なのか?という思いが何度かよぎった
自分はこういう小説には出会ったことが少ないので、良い(というかほんとに奇妙な)体験ができたと思う

言葉がどうなりたち、どう発酵していき、どう伝わっていくか、などということを考える必要性をあまり感じなかった自分にとって興味深い内容だった
良くも悪くも教科書を丸暗記したような小説の結構ではないので、そういう本に惹かれる方は一読してみては
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.18
(3pt)

読後、タイトルの通りの心境です。 ファンタジーか多重人格者か。 面白いといえばいろんなことが面白いんでしょう。 丹精を込めました。 好きに読んでください……という物語だったかと思います。
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614
No.17
(4pt)

作者自身が抱える悩みをユーモアを交えて自虐的に描いた異色作

作者の作品としては、「Boy's Surface」、「Self-Reference ENGINE」に続いて本作を手に取った。作者の作品の一番の特徴は「読んでも理解出来ない」点にあると思う。その上で、「作品を産み出すチューリング・マシンは作者ではなく、読者の想像力の方」という独創的哲学の下で執筆している姿勢が伝わって来る。

本作も難解である。どうやら、作家の一番の道具である"言葉"を題材にして、言葉を集め、組み合わせる事によってテンプレート作品を創り出すという作者自身が抱える悩みをユーモアを交えて自虐的に描いた物らしい。広く捉えれば、追い求める物は容易には捕まらないとのメタファーとも取れる。また、旅する手芸家と言う設定も作者のポスドク体験を想起させて面白い。視点や時間軸が目まぐるしく変化する構成は、作者自身の言葉を借りれば、位相幾何学的構成と言って良いのではないか。作者自身の投影である主人公が、作中のどのような時空間に存在しても同一点である様なトポロジーを想定しているのであろう。作中に出て来る表裏同一の幾何学模様を持った織物がそうしたイメージを膨らませる。

作者の作品としては色彩感に溢れているのも珍しい。理解しようとすると挫折する恐れがあるので、作者(あるいは作家一般)の苦衷を"想像"しながら楽な気分で読み進めるのが相応しい異色作だと思った。
道化師の蝶 Amazon書評・レビュー: 道化師の蝶より
4062175614