わたしたちが孤児だったころ

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評判

わたしたちが孤児だったころの評価:

4.00/5点 レビュー 80件。 E ランク

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Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全162件 121〜140 7/9ページ
No.42
(5pt)

いろんな意味で探偵小説

夏目漱石でいうと、「それから」「彼岸過迄」「こころ」みたいに、ミステリ、推理小説の構造になってる。

出生のなぞがふくらんでいって、最後に訳知りの叔父さんがすべてを解き明かすっていう。

「わたしを離さないで」と同じですね。

けど、技巧が冴え渡ってる。こんな複雑な筋と多数の登場人物をよく処理できたなと。

最後知らんでよかったことまで解き明かされてもうて、スッカラカンになるわけだけど、それでも生きていくんや、酸いも甘いも噛んでいくしかないやろ的なアティテュードが落ち着いていて、読後感は悪くない。

まあ、とくに感動はしなかったけど、非常に面白い作品であることは確か。

姪との関係性、距離感もなんかええかんじ。

あ、アヘン戦争を扱っていて、イギリスにおいてはわりと勇敢な行為だったのではないかなと思いました。

麻薬で他国民をダメにしたっていう史上最悪の犯罪行為ですからね。

それを批判するでもなく淡々と描写する方法が良かったと思います。

っていうかあんま言うことないな。他の作品が良すぎるんで
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ)より
4152083425
No.41
(5pt)

いろんな意味で探偵小説

夏目漱石でいうと、「それから」「彼岸過迄」「こころ」みたいに、ミステリ、推理小説の構造になってる。

出生のなぞがふくらんでいって、最後に訳知りの叔父さんがすべてを解き明かすっていう。

「わたしを離さないで」と同じですね。

けど、技巧が冴え渡ってる。こんな複雑な筋と多数の登場人物をよく処理できたなと。

最後知らんでよかったことまで解き明かされてもうて、スッカラカンになるわけだけど、それでも生きていくんや、酸いも甘いも噛んでいくしかないやろ的なアティテュードが落ち着いていて、読後感は悪くない。

まあ、とくに感動はしなかったけど、非常に面白い作品であることは確か。

姪との関係性、距離感もなんかええかんじ。

あ、アヘン戦争を扱っていて、イギリスにおいてはわりと勇敢な行為だったのではないかなと思いました。

麻薬で他国民をダメにしたっていう史上最悪の犯罪行為ですからね。

それを批判するでもなく淡々と描写する方法が良かったと思います。

っていうかあんま言うことないな。他の作品が良すぎるんで
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)より
4151200347
No.40
(4pt)

他の読者と感想を交換したくなる作品でした。

カズオ・イシグロの作品は数冊読んだ程度ですが、不思議と主人公に魅力を感じず、読後他の登場人物のことばかりを考えていることがあります。主人公は他の人を際立たせるための存在なのかと思えるほど。この作品もそうでした。主人公は設定では優秀で名声のある探偵ということになっているのですが、描写からはとても平凡で鈍い印象すらあります。それよりも、自ら思う正義のために戦い敗れた人、耐え難い屈辱を生きた人、時代に愛に翻弄された周囲の人々が実に人間くさく、印象に残るのです。さまざまな詳細を秘めたままにしてしまうイシグロ氏の作品ですから、周囲の人物の心についてあまり紙幅は割かれていません。読後に考えるという楽しみを残してくれます。書かれていなかったあれやこれやについて他の人はどう思ったのだろう、と感想を交換したくなる作品でした。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ)より
4152083425
No.39
(4pt)

他の読者と感想を交換したくなる作品でした。

カズオ・イシグロの作品は数冊読んだ程度ですが、不思議と主人公に魅力を感じず、読後他の登場人物のことばかりを考えていることがあります。主人公は他の人を際立たせるための存在なのかと思えるほど。この作品もそうでした。主人公は設定では優秀で名声のある探偵ということになっているのですが、描写からはとても平凡で鈍い印象すらあります。それよりも、自ら思う正義のために戦い敗れた人、耐え難い屈辱を生きた人、時代に愛に翻弄された周囲の人々が実に人間くさく、印象に残るのです。さまざまな詳細を秘めたままにしてしまうイシグロ氏の作品ですから、周囲の人物の心についてあまり紙幅は割かれていません。読後に考えるという楽しみを残してくれます。書かれていなかったあれやこれやについて他の人はどう思ったのだろう、と感想を交換したくなる作品でした。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)より
4151200347
No.38
(5pt)

幻想的な余韻

何年も前に誘拐された両親を探しだす、しかも間には戦争が勃発。
ただでさえ、混沌とした当時の上海で、見つけ出すなんて、何を非常識な。と思いながら読んでいたのだが、ましてや、スラムと化した戦地の空き家に今も両親が拉致されているって考える、主人公。登場人物もそれに疑問をもつことなく、捜査をはじめるので、感覚がおかしいのは自分の方かと思った。ここでかなりの困惑を読者に持たせることが狙い?
そしてあんなに見つけ出すことに執着して、責任を持って命を救うとアキラに約束したのに、あっさり、引渡し、何もなかったように、アキラについてその後言及しない。
読み終わった後は、不思議な余韻に包まれた、そもそも本当にアキラだったのか怪しい。極限状態の二人には正常な判断ができない?
ましてや、なんだかそもそも本当にそんな危ない地域を二人で進んだとういうそんなシーン事体、あったのか?幻覚をみせられたのは、読者である私の方だったのか?
なんとも不思議な感覚を読書後に覚えました。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ)より
4152083425
No.37
(5pt)

幻想的な余韻

何年も前に誘拐された両親を探しだす、しかも間には戦争が勃発。
ただでさえ、混沌とした当時の上海で、見つけ出すなんて、何を非常識な。と思いながら読んでいたのだが、ましてや、スラムと化した戦地の空き家に今も両親が拉致されているって考える、主人公。登場人物もそれに疑問をもつことなく、捜査をはじめるので、感覚がおかしいのは自分の方かと思った。ここでかなりの困惑を読者に持たせることが狙い?
そしてあんなに見つけ出すことに執着して、責任を持って命を救うとアキラに約束したのに、あっさり、引渡し、何もなかったように、アキラについてその後言及しない。
読み終わった後は、不思議な余韻に包まれた、そもそも本当にアキラだったのか怪しい。極限状態の二人には正常な判断ができない?
ましてや、なんだかそもそも本当にそんな危ない地域を二人で進んだとういうそんなシーン事体、あったのか?幻覚をみせられたのは、読者である私の方だったのか?
なんとも不思議な感覚を読書後に覚えました。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)より
4151200347
No.36
(5pt)

ブッカー賞作家、カズオ・イシグロが綴る「追想」の冒険譚

英語圏で最高の権威を誇る文学賞「ブッカー賞」を『日の名残り』で’89年度に受賞した、現代英国文学界を代表するカズオ・イシグロの’00年発表の第5長編。

おもな舞台は不安定な中国情勢・国際情勢の中での上海の外国人特別区“租界”。‘わたし’ ことクリストファー・バンクスは10才の時、父母が共に謎の失踪を遂げて孤児になった。長じて父母を捜すために探偵となり、数々の難事件に関って名を成し、社交界にデビューする。

本書は、全部で7つの章から成り立っていて、それぞれ1930年、1931年、1937年、1958年と、異なる時点から過去を振り返る‘わたし’の「追想」小説である。少年時代の父母の思い出、隣家の日本人少年アキラとのいたずらなどの遊びの思い出、名を成してからのサラ・ヘミングスとの淡い恋、養女ジェニファーとの関係などが抒情的・自省的に綴られてゆくが、常に‘わたし’の心にあったのは父母を探し出し、救出することだった。第6章の1937年時の追想は日本軍と中国共産軍、蒋介石の国民軍が入り乱れる上海の戦闘区域で、負傷した日本軍兵士であるアキラと再会して父母を救出するべく執念の探索行が描かれている。このくだりは圧巻であり、リーダビリティーにあふれている。そしてついに明かされる衝撃の真相と、それを知ったのちの‘わたし’のなんとも名状しがたい心の動き。

本書を探偵小説と見るむきもあるが、私は‘わたし’の記憶と過去をめぐる切ない青春小説であり、「追想」の冒険譚であるように思った。
ところでタイトルの『わたしたちが孤児だったころ』であるが、なぜ「わたしが・・」ではなく、「わたしたちが・・」なのだろうか。ここに、読者を物語に巻き込むイシグロの意図がうかがえるような気がする。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ)より
4152083425
No.35
(5pt)

ブッカー賞作家、カズオ・イシグロが綴る「追想」の冒険譚

英語圏で最高の権威を誇る文学賞「ブッカー賞」を『日の名残り』で’89年度に受賞した、現代英国文学界を代表するカズオ・イシグロの’00年発表の第5長編。

おもな舞台は不安定な中国情勢・国際情勢の中での上海の外国人特別区“租界”。‘わたし’ ことクリストファー・バンクスは10才の時、父母が共に謎の失踪を遂げて孤児になった。長じて父母を捜すために探偵となり、数々の難事件に関って名を成し、社交界にデビューする。

本書は、全部で7つの章から成り立っていて、それぞれ1930年、1931年、1937年、1958年と、異なる時点から過去を振り返る‘わたし’の「追想」小説である。少年時代の父母の思い出、隣家の日本人少年アキラとのいたずらなどの遊びの思い出、名を成してからのサラ・ヘミングスとの淡い恋、養女ジェニファーとの関係などが抒情的・自省的に綴られてゆくが、常に‘わたし’の心にあったのは父母を探し出し、救出することだった。第6章の1937年時の追想は日本軍と中国共産軍、蒋介石の国民軍が入り乱れる上海の戦闘区域で、負傷した日本軍兵士であるアキラと再会して父母を救出するべく執念の探索行が描かれている。このくだりは圧巻であり、リーダビリティーにあふれている。そしてついに明かされる衝撃の真相と、それを知ったのちの‘わたし’のなんとも名状しがたい心の動き。

本書を探偵小説と見るむきもあるが、私は‘わたし’の記憶と過去をめぐる切ない青春小説であり、「追想」の冒険譚であるように思った。
ところでタイトルの『わたしたちが孤児だったころ』であるが、なぜ「わたしが・・」ではなく、「わたしたちが・・」なのだろうか。ここに、読者を物語に巻き込むイシグロの意図がうかがえるような気がする。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)より
4151200347
No.34
(4pt)

ミステリーという垣根を越えて。ともかく前向きな生き方が素敵!

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ)
1900年代の初め、
上海で両親と共に豊かに暮らしていたイギリス人の少年クリストファーは、
立て続けに両親が失踪するという奇妙な事件に遭遇する。

以来、イギリスに帰国し、
名門大学を出て、順調に探偵となり、
社交界にデビューする一方で
養女を養うほど
知性と富と慈悲にあふれた人柄を備え、
人生を歩み始めている。
(欠点は女性が苦手なところ。)

そんな彼が自分の不確かな記憶と探偵としての資質を武器に
両親の失踪の秘密を探り、
彼らを捜し出そうと再び(日中戦争が勃発しようとしている)上海を訪れる。

荒削りだけれど、自分の成し遂げようとする事柄に、
後先考えずに真正面から向かっていく主人公が、
なんだかほほえましく
ミステリーという垣根を越えて、
楽しく文字を追いました。

さらにエンディングの
探し出した母と母の環境に理解を示し、
養女の提案を曖昧に享受していく箇所は物語の終点にふさわしく穏やかで素敵。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ)より
4152083425
No.33
(4pt)

ミステリーという垣根を越えて。ともかく前向きな生き方が素敵!

わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ)
1900年代の初め、
上海で両親と共に豊かに暮らしていたイギリス人の少年クリストファーは、
立て続けに両親が失踪するという奇妙な事件に遭遇する。

以来、イギリスに帰国し、
名門大学を出て、順調に探偵となり、
社交界にデビューする一方で
養女を養うほど
知性と富と慈悲にあふれた人柄を備え、
人生を歩み始めている。
(欠点は女性が苦手なところ。)

そんな彼が自分の不確かな記憶と探偵としての資質を武器に
両親の失踪の秘密を探り、
彼らを捜し出そうと再び(日中戦争が勃発しようとしている)上海を訪れる。

荒削りだけれど、自分の成し遂げようとする事柄に、
後先考えずに真正面から向かっていく主人公が、
なんだかほほえましく
ミステリーという垣根を越えて、
楽しく文字を追いました。

さらにエンディングの
探し出した母と母の環境に理解を示し、
養女の提案を曖昧に享受していく箇所は物語の終点にふさわしく穏やかで素敵。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)より
4151200347
No.32
(5pt)

ミステリアス

日本生まれのイギリス文学者カズオ・イシグロの作品。1930年から1940年代。ロンドンと上海を舞台にしている。イギリスの植民地支配時代の空気を出しています。途中までは、抑制のきいた深い物語進行ですが、途中から急転直下の話の進行に頭がついていけなくなります。ミステリーの謎とき張りの進行です。途中までは、カズオ・イシグロの「日の名残り」のような作品らしいのですが、後半はついていけませんでした。私は作品としては、「日の名残り」の方がおさまり良く、ジーンと胸にしみて、好きでした。好きな作家の作品の一つとして読みました。随所にその良さを見つけることはできました。カズオ・イシグロには、今後も期待しています。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ)より
4152083425
No.31
(5pt)

ミステリアス

日本生まれのイギリス文学者カズオ・イシグロの作品。1930年から1940年代。ロンドンと上海を舞台にしている。イギリスの植民地支配時代の空気を出しています。途中までは、抑制のきいた深い物語進行ですが、途中から急転直下の話の進行に頭がついていけなくなります。ミステリーの謎とき張りの進行です。途中までは、カズオ・イシグロの「日の名残り」のような作品らしいのですが、後半はついていけませんでした。私は作品としては、「日の名残り」の方がおさまり良く、ジーンと胸にしみて、好きでした。好きな作家の作品の一つとして読みました。随所にその良さを見つけることはできました。カズオ・イシグロには、今後も期待しています。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)より
4151200347
No.30
(5pt)

再読に堪えうる作品

「日の名残り」「浮世の画家」に続き、私にとってイシグロ氏3作目の小説ですが一番面白く読みました(前記2作品も好きですが)。主人公の独白を基本とし、各章の小見出しだけを追えば時間の流れに沿いつつ、途中回想や過去のエピソードをふんだんに交えることでその世界に引き込まれる点は3作品とも共通していました。しかし本作品はスケールの大きさで過去2作品の比でなく、そこに大きな魅力を感じました(まあ、この点は評価の分かれる点でしょうけど)。前記2作品では「あの人はその後どうなったんだろう、あの事はどういう意味があったんだろう、もう少し詳しく解説(謎解き?)してほしい」と思ったものでしたがこの作品を読むことで、「書き過ぎない」ことがイシグロ氏のスタイルではないかと考えるようになりました。つまり「タネ証し」と「読者の想像力を刺激し続ける」こととのバランスの取り方がこの人の真骨頂なのではないでしょうか。再読すれば、1回目では読み取れなかった“仕掛け”の発見や違った読み方ができそうなので、少し時間をおいて挑戦しようと思っています。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ)より
4152083425
No.29
(5pt)

再読に堪えうる作品

「日の名残り」「浮世の画家」に続き、私にとってイシグロ氏3作目の小説ですが一番面白く読みました(前記2作品も好きですが)。主人公の独白を基本とし、各章の小見出しだけを追えば時間の流れに沿いつつ、途中回想や過去のエピソードをふんだんに交えることでその世界に引き込まれる点は3作品とも共通していました。しかし本作品はスケールの大きさで過去2作品の比でなく、そこに大きな魅力を感じました(まあ、この点は評価の分かれる点でしょうけど)。前記2作品では「あの人はその後どうなったんだろう、あの事はどういう意味があったんだろう、もう少し詳しく解説(謎解き?)してほしい」と思ったものでしたがこの作品を読むことで、「書き過ぎない」ことがイシグロ氏のスタイルではないかと考えるようになりました。つまり「タネ証し」と「読者の想像力を刺激し続ける」こととのバランスの取り方がこの人の真骨頂なのではないでしょうか。再読すれば、1回目では読み取れなかった“仕掛け”の発見や違った読み方ができそうなので、少し時間をおいて挑戦しようと思っています。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)より
4151200347
No.28
(5pt)

不思議な読後感

非常に不思議な読後感を味わえる小説。
主人公が成長して探偵として活躍する現在と、幼少のころの両親や幼馴染たちとの思い出がイギリスと上海を舞台に語られる。そこには旧友の、両親の、そして現在の恋人の、という具合に様々な人々との個人的体験が重層的にちりばめられていて、極短い短編小説がいくつもいくつも連なっているという風に読むことができた。むしろ通常の小説であれば物語の肉付けとも言えるそれらの「短編」的エピソードが醸し出す雰囲気こそ、この小説の骨格となっているような感覚さえ覚える。
そして何より不思議に感ずるのは、物語の後半、上海に戻った主人公が体験する幼馴染と邂逅する場面。重い現実感のある夢のような描写で、エンターテイメントを期待する読者を全く別の地平へと連れ去ってくれる。
こんな小説には滅多に出会うことが出来ないと思う。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ)より
4152083425
No.27
(5pt)

不思議な読後感

非常に不思議な読後感を味わえる小説。
主人公が成長して探偵として活躍する現在と、幼少のころの両親や幼馴染たちとの思い出がイギリスと上海を舞台に語られる。そこには旧友の、両親の、そして現在の恋人の、という具合に様々な人々との個人的体験が重層的にちりばめられていて、極短い短編小説がいくつもいくつも連なっているという風に読むことができた。むしろ通常の小説であれば物語の肉付けとも言えるそれらの「短編」的エピソードが醸し出す雰囲気こそ、この小説の骨格となっているような感覚さえ覚える。
そして何より不思議に感ずるのは、物語の後半、上海に戻った主人公が体験する幼馴染と邂逅する場面。重い現実感のある夢のような描写で、エンターテイメントを期待する読者を全く別の地平へと連れ去ってくれる。
こんな小説には滅多に出会うことが出来ないと思う。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)より
4151200347
No.26
(4pt)

傑作と呼ぶには何かが足りない。

本書の主人公バンクスは、上海育ちの英国人であり、
彼が10歳の時に両親が相次いで失踪した結果、
英国に送られて教育を受けたという、かすかにイシグロ本人の
経歴を思わせるような人物設定になっている。

内容のほうも、これまでの純文学路線とは違い、
探偵小説のパロディめいたエンタメ寄りのもので、
前半では、上海での少年時代の回想を差し挟みつつ、
バンクスが英国のスノビッシュな社交界の中で、
探偵としての名声を築いていく過程が描かれ、
後半はいよいよ、第二次上海事変から日中全面戦争へと至る
渦中の「魔都」上海へと、バンクスが乗り込むことになる。

こう書くと、傑作たることはほとんど約束されているようにも思えるが、
読み終わって、そう呼ぶには何かが欠けていると感じた。
ひとつには、バンクスの養女となる孤児のジェニファーが、
物語の流れにうまく組み込まれていないように思えることが
挙げられるかもしれない。彼女が登場する場面は、主要な筋からは
半ば独立しているため、単に孤児をもうひとり登場させる必要上、
都合よく導入された人物ではないかという気がしてしまうのだ。

また、舞台が上海に移った途端、急速に現実感が乏しくなり
なぜか皆がバンクス一人に事態の解決を要求するという、
「セカイ系」の展開に突入していくのだが、ここでの上海の描き方が
むしろ類型的なものに留められていることにも、
(イシグロ本人によれば意図的なものらしいが)
微妙な物足りなさを覚えた。名探偵であるはずのバンクスが、
現実にはあり得ない仮定を信じ込むに至る経緯が、
いささか簡単に描かれ過ぎているようでもあるし、
結末近くで明かされる真相の重さとも、
もうひとつうまく釣り合っていないような気がする。

最後に、これは翻訳の問題になるが、
原文でアキラが話す英語は、be動詞や3単現のsが
ほぼ完全に省略された舌足らずのものであり、
邦訳はそこを流暢に訳し過ぎていると思う。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ)より
4152083425
No.25
(4pt)

傑作と呼ぶには何かが足りない。

本書の主人公バンクスは、上海育ちの英国人であり、
彼が10歳の時に両親が相次いで失踪した結果、
英国に送られて教育を受けたという、かすかにイシグロ本人の
経歴を思わせるような人物設定になっている。

内容のほうも、これまでの純文学路線とは違い、
探偵小説のパロディめいたエンタメ寄りのもので、
前半では、上海での少年時代の回想を差し挟みつつ、
バンクスが英国のスノビッシュな社交界の中で、
探偵としての名声を築いていく過程が描かれ、
後半はいよいよ、第二次上海事変から日中全面戦争へと至る
渦中の「魔都」上海へと、バンクスが乗り込むことになる。

こう書くと、傑作たることはほとんど約束されているようにも思えるが、
読み終わって、そう呼ぶには何かが欠けていると感じた。
ひとつには、バンクスの養女となる孤児のジェニファーが、
物語の流れにうまく組み込まれていないように思えることが
挙げられるかもしれない。彼女が登場する場面は、主要な筋からは
半ば独立しているため、単に孤児をもうひとり登場させる必要上、
都合よく導入された人物ではないかという気がしてしまうのだ。

また、舞台が上海に移った途端、急速に現実感が乏しくなり
なぜか皆がバンクス一人に事態の解決を要求するという、
「セカイ系」の展開に突入していくのだが、ここでの上海の描き方が
むしろ類型的なものに留められていることにも、
(イシグロ本人によれば意図的なものらしいが)
微妙な物足りなさを覚えた。名探偵であるはずのバンクスが、
現実にはあり得ない仮定を信じ込むに至る経緯が、
いささか簡単に描かれ過ぎているようでもあるし、
結末近くで明かされる真相の重さとも、
もうひとつうまく釣り合っていないような気がする。

最後に、これは翻訳の問題になるが、
原文でアキラが話す英語は、be動詞や3単現のsが
ほぼ完全に省略された舌足らずのものであり、
邦訳はそこを流暢に訳し過ぎていると思う。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)より
4151200347
No.24
(4pt)

名探偵小説への批評的アプローチ

上海とロンドンを舞台に、中国とイギリスと日本の文化を巧みに描き分けている。 アキラとの交流、サラとの運命、ジェニファーとの関係と、いずれも背景に描かれきらない広がりを感じさせる。  そして、名探偵小説を批評的に解釈したようなストーリー展開が斬新。 アヘンをめぐる醜い力関係が、最後の謎に深くかかわってくる。 真実は、いつも光を伴ってくるとは限らない。 だが、人はそれでも真実を知りたい。 クリストファーが探偵だというのは、皮肉な設定である。  日中戦争の生々しい情景を描き、その後の世界大戦をスルーし、「筆舌に尽くしがたい」という形容を、書かずして表現している。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ)より
4152083425
No.23
(4pt)

名探偵小説への批評的アプローチ

上海とロンドンを舞台に、中国とイギリスと日本の文化を巧みに描き分けている。 アキラとの交流、サラとの運命、ジェニファーとの関係と、いずれも背景に描かれきらない広がりを感じさせる。  そして、名探偵小説を批評的に解釈したようなストーリー展開が斬新。 アヘンをめぐる醜い力関係が、最後の謎に深くかかわってくる。 真実は、いつも光を伴ってくるとは限らない。 だが、人はそれでも真実を知りたい。 クリストファーが探偵だというのは、皮肉な設定である。  日中戦争の生々しい情景を描き、その後の世界大戦をスルーし、「筆舌に尽くしがたい」という形容を、書かずして表現している。
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫) Amazon書評・レビュー: わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)より
4151200347