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ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件



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ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件

ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件の評価: 3.67/5点 レビュー 9件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.67pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全5件 1~5 1/1ページ
No.5:
(4pt)

映画と比べると良いのでは。

一番映画と違うのは、少年が蜂に刺されて亡くなること。ホームズの遺産の相続の話はないこと。いわゆるハッピーエンドの要素はなく、まさにこれが人生だという、老齢の悲哀が身にしみる作品。物語はこれといって面白いという作品ではないが、最後まで惹き付ける力量がある。ただし、文体が文学的というほどでない。日本人であるウメザキの苦悩があまり描かれていない。おそらく、父親がイギリスの諜報機関、つまりスパイなので、ウメザキは敗戦の日本で生きずらさ、引け目を感じていたのであろう。戦後の日本の描写も、日本の読者としては、物足りない、リアリティに欠けると思わざるを得ない。自殺したケラー夫人の話は、秀逸、挿話ではなく、ストーリーの本筋だろう。調味料の山椒の話が出てくるが、今ひとつ理解に苦しむ。云うまでもなく、少年と老探偵の自然な友情が、涙を誘うほど感動的だ、しかし、深読みすれば、少年の死は老齢者ホームズの童心喪失の象徴であろう。少年の母親マンロー夫人も、人間的に魅力がある。以上、ネタバレだが、ネタバレでも読めるものが小説だと自分は思っている。原作と違うが映画も一定の水準だと思った。
ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件Amazon書評・レビュー:ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件より
4041015596
No.4:
(4pt)

好き嫌いは分かれる

事件の謎解き自体はそんな大したことはありません。というか拍子抜けするくらいの謎でありあっさり解決するものです。
しかしながらホームズという誰もが知る天才、機敏に働く脳によって名声を得た人物が老いていき、肉体も頭脳も若かりし頃とは変化していく。
その若かった頃との落差、誰もが逃れることのできない老いというものの物語として読めば非常に素晴らしい作品だと思います。
最近のミステリーでも老人が主人公の作品が多く有り(良作もあり)、若い頃との落差が描かれますが、読者はその人物の若い頃を知りません。
しかしホームズは違います。そのためより一層老いの切なさを感じることができると思います。
晩年のホームズにとって少年は第2のワトソン、大事なものを分かち合う唯一の相手だった。その少年に不意に先立たれたホームズの悲しみ。
不器用で感情表現の苦手なホームズ同様、派手さのない文章が一層悲しさを伝えてくれます。
ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件Amazon書評・レビュー:ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件より
4041015596
No.3:
(5pt)

ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件

若き日のシャーロック・ホームズの様に事件を解決する、という内容ではありません。 「老い」という時間の中で、過去の思い出と現在の出来事をホームズが夢の中や頭の中で行き来する、感じです。 なので、「今」と「過去」が入り交じった感じの文章になっていますので、時々、今読んでいる所が「今」なのか「過去」なのかが一瞬分からなくなった時もありましたが、全体的には読みやすいです。 以前、名探偵ポワロの物語をアガサ・クリスティー以外の作家が書いた翻訳本を読みましたが、その本に比べるととても読みやすいです。 ホームズが嫌いでなければ、一読してみるのも良いと思います。
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4041015596
No.2:
(5pt)

「喪失」の物語

ホームズのパスティーシュとしては極めて異例の作品だが、小説としてのクォリティは高い。
ずば抜けた頭脳を誇りながら、人間関係において不器用だったホームズ。(ホームズ物の読者ならその辺は何となくご承知と思うが)
老境に達したその内面が描かれ、切ない。
これは「喪失」の物語なのである。
戦争にコテンパンに負け、原爆まで落とされた日本が出てくるのもその流れだろう。
(まあ日本がその後復興し経済大国になったのは誰しも知っている事実なので、それが多少の救いになっているような気がしないでもない。)

事件が解決してスッキリ!みたいな物を期待する人には不向きだろうが、読み応えがあり、私としてはお勧めである。
ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件Amazon書評・レビュー:ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件より
4041015596
No.1:
(5pt)

ホームズ晩年の「心」を描いた良質の「パスティーシュ」

ゆるやかなホームズ晩年のお話です。はでな冒険譚ではありません。
ほぼホームズの内面描写が中心に進みます。

御年93歳。サセックスの隠遁先で養蜂を営み、お手伝いさんとその息子だけが日常の人々です。
今はなき親友ワトソンを通じて語られたホームズ譚が今も名声をとどろかせ、たくさんの手紙や訪問者がいることに辟易しています。「空白の3年間」にチベットには行ったが日本にはまだいったことがない。隠遁生活で「実用養蜂便覧」の改訂版と「探偵学大全」を執筆中です。

舞台は、1947年のサセックス。お手伝いさんの未亡人マンロー夫人の息子ロジャーとの交流を現在として、これについ先ごろ、日本人ウメザキの招きで訪問した戦後直ぐの日本での思い出の話。そして、屋根裏部屋で書きかけの若き頃の冒険譚、1902年発生した「グラス・アルモニカ事件」。この3つの話が交互に描かれます。

ホームズは既に老齢で、記憶力も体力も衰えて、物事に対する思考方法はかわらないものの記憶の引き出しは不如意です。そのぶん感受性は豊かになり、「諦観」や「達観」が垣間見えます。
 日本での不思議な関係のウメザキ一家、敗戦後もなお逞しく生活する人々、原爆で廃墟となった広島などをめぐりながら、ホームズの心が揺れます。
 1902年の事件の思い出では、不思議な魅力を持つケラー夫人に惹かれてゆく自分の心を記述してゆきます。
 そんな思い出とともに、現在の養蜂生活の中で、おとなしく利発でホームズにまぶしいくらいの憧れを抱くロジャー少年との交流が描かれ、落ちついた隠遁生活に満足している様子が描かれます。

物語は、そのロジャー少年が急死するところから展開します。現実と思い出が錯綜し始め、境界があいまいになっていきます。冷徹なはずのホームズが心を乱され、その乱される心に気づき、困惑するホームズ・・・。
全編をただようイメージは、「秋の夕暮れ時の、影が長く伸び、風景が半分闇に沈みはじめた時」の空気です。
 
 ホームズ物としては、冒険活劇ではなく、また推理物でもありませんので、カタルシスを期待すると失望しますが、晩年のホームズの「心」に着目すると、大変おもしろい本です。

 なお、日本の描写は正確で「日本人作家が書いた」といわれても信じてしまうほどに丁寧です。
ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件Amazon書評・レビュー:ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件より
4041015596

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