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(短編集)

機龍警察 火宅



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機龍警察 火宅の評価: 4.54/5点 レビュー 24件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.54pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全22件 21~22 2/2ページ
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No.2:
(5pt)

鮮明にして底なし沼のような、人間の謎が匂い立つ

『機龍警察』の短編集。主要な登場人物と舞台を、既刊の長編群と共有している。 個々の短編は独立した読み切りだ。

各編の読後感に、強い印象がある。
「寒気のするような」止まった笑い。 意味の読み取れないあどけなさ。真意を察知できない笑み。
虐待と親殺し。潜在的なネグレクトと、潜在的な親の見殺し。 不信と信頼の間を揺り動かされる若い心。
鮮明な、それでいて底なし沼のような、人間の謎に対する恐ろしいイメージだ。

長編の緻密な構成を一旦離れたとき、人物に、あるいは手短な一連の場面に、人間のこれほど強い謎が匂い立つことに、息を呑む。
著者の、人物達に対する思い入れと、長編群で育て上げてきた物語空間に対する愛情を、感じる。

虚構らしい虚構に加え、リアルな描写の短編もある。それらにもまた、固有の味わいを感じる。
不規則な過重労働に翻弄される勤め人の心理を、著者がこれほど正確に知ってくれていることに、嬉しくなった(登場人物は、僕とは階層が異なるエリートだけど)。 コミカルですらある。

長編を一編でも読んでいるなら、本書は必読だ。
機龍警察 火宅 (ハヤカワ・ミステリワールド)Amazon書評・レビュー:機龍警察 火宅 (ハヤカワ・ミステリワールド)より
4152095091
No.1:
(5pt)

アルファからオメガまで…全てに遍く歯車の短篇集

今年始めに長編第4弾「未亡旅団」を、そして長編第1弾の完全版を刊行し
最早「サーガ」としての地位を確立しつつある月村了衛の「機龍警察シリーズ」
数年前より各雑誌に掲載されていた短篇を書籍化したのが本書である。

各短篇を読了したが、ネタバレを避けてレビューをするのが苦難だ…
「火宅」は先の「未亡旅団」でも大活躍だった捜査主任・由紀谷志郎警部補の
新人時代の恩師が物語る、絶望とそして「慄然すべき」現実の一篇。
実際に基づいた事件を元に、短篇一つの主軸となる人物だけにこれ程の存在感を与えるとは…
やはり著者は組織の中に於ける人間を書くのが上 手い、この「火宅」はお気に入りの一つ。

「焼相」では籠城する凶悪犯を打倒する特捜部の活躍。
「自爆条項」以来感じた、技術主任である緑と突入要員・ライザの微妙な交感が垣間見れる。
最後に見せた「顔」は、ライザの本来の人間性を確かに証明するものだった。

「輪廻」…「方向転換といきたいのだがね」
ウガンダ反政府軍・LRA(神の抵抗軍)の幹部を追跡する特捜部。
特捜部長・沖津の機転により身柄を拘束したものの、それから語られる事は…
これもまた「自爆条項」での既視感を覚える。決して絶たれる事のない、忌まわしき地獄の因果。

「済度」は特捜部加入直前のベネズエラでのライザを描く、長編との内容に極めて関連性の高い短篇だ。
私にとって漸く 溜飲が下がった。いや、合点がいった。
彼女が彼を「あの人」に似ていると評した、その片鱗を見たからだ。
沖津部長…貴方の本性は釈迦か、それとも魔羅か。

「沙弥」ではまたも捜査主任である由紀谷の「未亡旅団」で語られた過去について詳細に記されている。
彼は地元・山口では「白面鬼」と呼ばれる程に荒れた少年時代を過ごしたが、
自身の正義感は決して失ってはいなかったのだ。福本との遣り取りがそれを物語っている…
夏川やユーリといい、彼は警察官としての現在に於いて同僚に恵まれている。
それを私は本当に喜ばしいと思っている。

「勤行」…正直な話。これ程までに………爆笑した一篇はなかった(笑)
一言宜しいだろうか。宮近くん、君の辛さは理解で きる。でも浮気はダメだぞ!
特捜部の理事官に心からの敬礼を捧げたい。(庶務主任の桂女史こそ「鬼子母神」なんじゃ…)
「小説屋 sari-sari」に出誌されたのも妙に納得である。

そして、本書掲載の短篇の中でもずば抜けて異彩を放つ「化生」
これはご自身の目で確かめて頂きたい。
特捜部の、そして主要登場人物が直面するとてつもない闇を予期させる
まさに「オーメン(予兆)」と形容するに相応しい一篇。

本編の補完というには到底収まらない本書。
これから先、一体何が待ち構えているのだろうか…
月村了衛の創り出す世界は、まだまだ果てしない…!
機龍警察 火宅 (ハヤカワ・ミステリワールド)Amazon書評・レビュー:機龍警察 火宅 (ハヤカワ・ミステリワールド)より
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