凍氷
評判
凍氷の評価:
4.30/5点 レビュー 10件。 B ランク
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全9件 1〜9 1/1ページ
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凍氷の評価:
4.30/5点 レビュー 10件。 B ランク
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「凍氷」は彼の2作目の作品です。前作「極夜」に続いてカリ・ヴァーラ警部とアメリカ人の妻ケイトを中心とした物語です。前作がフィンランドの一地方を舞台にした猟奇殺人事件だったのに比べて、今回はバックにフィンランドの歴史と国際政治の闇が広がるスケールの大きな作品になりました。物語の展開も、「極夜」ではややもたついた印象があったのですが、こちらは同時並行のエピソードがうまく折り合わされて、より完成度の高い作品になっていると思います。
2次大戦中、ソ連に対抗するために、フィンランドがドイツのナチス政権と手を組んでいたというのは初耳で驚きでした。文中の言葉を引用すると「フィンランドの公安警察ヴァルポとドイツの秘密警察は繋がりがあった。フィンランドとナチスドイツは国内及び国際社会の共産主義勢力との戦いにおいて共闘した。(中略)我々はナチスの理想を共有していたのだ。拡張政策とわが国が拡大するための領土。」「ボリシェビキ、赤軍の将校、共産主義者、インテリ、そしてもちろんユダヤ人。(中略)ひとつの穴には150人から200人が入った。彼らはマシンガンで射殺された。穴がいっぱいになると上から土がかぶせられた」。そしてそれが一般的にほとんど知られていないのはなぜかと言えば「ナチスは記録を廃棄した。ヴァルポも破棄した。だが何より人々がこれを知りたがらなかった。知っている者は忘れようとした。」「フィンランドが責任を問われなかったのは、その言語の特異性によるところが大きい。我々はそのことについて話すことはなく、世界には我々の言葉を読める人間がほとんどいない。」
今となっては、それはフィンランド人にとって思い出したくもない黒歴史ということになりますが、こういうテーマを取り上げることができたのは、作者がフィンランド人の妻と結婚してヘルシンキに住み、フィンランドをよく知り愛しているアメリカ人という立場だったからでしょう。作者の視点はフィンランド人の感情と、外国人であるアメリカ人としての価値観の間を行き来し、非常に客観的に物事を公平に見ていると思えます。この作品がフィンランド人の間ではどんな評価だったのか気になります。
このユダヤ人虐殺に関係したのが自分の祖父だった可能性があるカリ・ヴァーラ警部。そしてその祖父の同僚で戦争の英雄である老人が無罪だとでっちあげろという上司からの政治がらみのやっかいな命令。それと平行して、ロシア人富豪の妻が惨殺された猟奇殺人事件の捜査が進んでいきます。プライベートでは、妻ケイトの妊娠出産と、アメリカからやってきたケイトの弟、妹との文化摩擦に悩まされながら、ヴァーラ警部はヘルシンキの街を駆け回ります。
前作でもそうでしたが、個人的にはミステリの部分よりも、フィンランド人とはどういう人々なのか、フィンランドとはどういう国なのか、そのあたりがへたな評論や解説書を読むよりも実感を持って感じられ、興味深いです。ミステリとしてはどうなのか?ということになるかもしれませんが、へえ、そうなんだとあれこれ考えながら、どんどん引き込まれるという意味では、とても深みがあるおもしろい小説だと思います。