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氷壁



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氷壁の評価: 4.37/5点 レビュー 83件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.37pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全72件 61~72 4/4ページ
No.12:
(5pt)

死に吸い寄せられる青年

かなり前に読んでいたのですが、昨年のNHKのドラマ化をきっかけに、何年振りかで読み返してみました。
おそらく「神々の山嶺」よりはこちらの方を先に読んだはず。ですが「山」というよりは魚津という青年の内面描写しか印象に残っていませんでした。自分が「山」に全く縁がなく、「ザイル」「ピッケル」という道具の形状も、用途も知らないということも、もちろんあります。
しかし何よりもこの作品の肝は、会社勤めをしながら山に登ってはいたが心情的にさほど山に入れこんでいる訳ではなく、バランスをとりながら都会生活を送っていた青年が、自分の譲れない主張が裁判で証明できない→世の中に分かってもらえない、また分別もありながら人妻の魅力にあらがえず、それでも自分を想ってくれる人の気持に答えなければ…という葛藤から追い込まれて、まるで山に呼ばれるかのように「死」に吸い寄せられていく…という青年の変化であると思います。
「ナイロンザイルは切れるはずがない」という当時の定説。いや、でもザイルは切れたんだ!これは死亡した小坂の友人としても、登山家の端くれとしても譲れない!やがて都会生活の中で息苦しくなっていき逃げ込むかのように山へ…。
2度目読むと、しっかり「山」のことを書き込んでありました。にも関わらず後に残っていないくらい、青年の内面を描いたしっかりした文学作品です。
山には関係なく、本格的な文学好きな方にこそ是非読んでいただきたいです。
氷壁 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:氷壁 (新潮文庫)より
4101063109
No.11:
(5pt)

昭和中期のひとびとの、凛とした、生きざま

山岳小説の名作として有名ですが、最近はじめて読みました。山の魅力がよく伝わってきます。また重い社会派サスペンスとしてのドラマ性も含まれており、とくに企業間のエゴや微妙な連携の手法は今日の社会のありようそのものです。巨大製薬企業の横暴をえがいた映画「ナイロビの蜂」を思いだしました。

この小説のもうひとつの大きな魅力は、昭和30年代初頭の東京人や、日本の女性たちの生き様が、鮮やかに描かれていることです。いまとくらべるとどこか不器用だが、実に凛として、自己の魂の清潔さや、誇り高さを自己注視する文化がそこにあり、日本人はこれほどしっかりしていたのか、と読んでいて気恥ずかしくもなり、また、元気とエネルギーをもらいました。

文豪井上さんの若き日の傑作であるとともに、日本の近代文学のなかで、経済成長著しい昭和中期の銀座界隈など東京の様子や、ひとびとの生き方が鮮やかに描写されている、稀少で、極めて重要な作品とおもいます。
氷壁 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:氷壁 (新潮文庫)より
4101063109
No.10:
(5pt)

誰かが呼んでいる

誰かが背中を押している

何かが見える

もう、後ろを振り向いてはいけない

前だけを見て、未来への一歩を踏みだす

氷のように冷たく、山のように高い、

人生の壁を乗り越えようとする時、

それを支えているのは、人と人との絆だと実感できる、

恋と友情の物語。

待っていてください
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4101063109
No.9:
(5pt)

井上靖の中で私が一番好きな作品

新進の2人の登山家の一人が山で事故にあう。切れるはずのないザイルが切れたのか、あるいは誰かが切ったのか、事故か自殺か殺人かと言う状況の中、残された登山家と、死んだ登山家が愛していた人妻、同じく死んだ登山家の妹との恋愛感情のもつれを事故に絡め、緻密に描いていきます。私などにとってはあの懐かしい昭和のよき時代も偲ばれます。

 一見長い小説で手に取りにくく思われる方もいるでしょうが、極限状態の連続で一気に読めてしまえます。間違いのない名作です。
氷壁 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:氷壁 (新潮文庫)より
4101063109
No.8:
(5pt)

小説とドラマの違い

テレビドラマに惹かれて原作を読んだが、ドラマの方が娯楽性が強く面白いと思った。

まず、主人公魚津恭太(TV=奥寺)の親友の小坂乙彦(TV=北沢)の登攀途中の滑落死については、ドラマではカラビナの故障、小説では使用したザイルが突然切れた事によるもので大した違いはない。しかしその後、ドラマでは事故の真相をめぐり製造元の佐倉製鋼を絡めた法廷論争に展開するのに対して、小説はザイルの耐久不良を匂わせる程度。親友の死を無駄にしないため、事故の真相を解明しナイロンザイルの特性を理解しようとする魚津の姿勢は立派だと思うが、世間の人は大方無関心だったのである。なぜなら、登山家は人口のごく一部に過ぎないからだ。しかしだからといって、ザイルは決して切れないと言い切る佐倉製鋼の傲慢さも許せない。それは両者共通だが、問題は、小説には真実を捻じ曲げようと暗躍する人物が登場しない事である。物言わぬ大企業も確かに不気味だが、これでは不善な企業に警鐘を鳴らしているとは言い難い。

 一方、二人の男をたぶらかす八代美那子は悪女だと思うが、魚津と奥寺ではその対応が異なる。何処までも硬派な魚津は八代美那子を忘れ、小坂の妹かおると結婚を誓い合うが、奥寺は情熱に身を任せ、結果的に夫哲夫の手から美那子を奪ってしまう。なるほど、理性より、友情より、愛情である。ストーリーはこの方が面白い。

 結局の所、著者は一登山家の姿を描いていた。山を心から愛し、義理人情に厚い男のそれだ。そんな心情を察すると、美那子を忘れる為に一人単独で穂高に登ろうとする魚津の悲愴感が痛いほど胸に伝わってくる。魚津はこの登攀で命を落とすが、自分の趣味に命を捧げたのだからなんて幸せなのだと言いたい。童謡に『山男の歌』という曲があるが、魚津はその例にピッタリ合致する。冒頭でドラマに一票投じたが、お互い視点が違う。甲乙つけがたい傑作と言うのが本音だ。
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4101063109
No.7:
(5pt)

ドラマになってなければ読まなかった作品

久しぶりに美しい日本語を読んだ気がします。井上靖というと、わたしの中では『しろばんば』『敦煌』というイメージしかなかったので、この内容は意外でした。かおるの描写の美しいことといったらありません。対する美那子の若さを抑えようと苦労している中にもにじみ出てくる怪しさが女豹という言葉で表されていたり(これは現代としてはちょっと古いかな)、海面がぶさぶさと波立つなどとおもしろい表現も。

読み終わったあとに、これが昭和32年に出版されたものだと知って驚きました。確かに妻を呼ぶときにに手をたたいて呼ぶなんて、古風な描写もありますが、そんなことは気にならず人物は生き生きとしています。

何十年も前に出版された小説を読む気にさせたのは、TVドラマ化されたのを知ったからです。

ドラマ自体は見ていませんが、この小説だけでなく、原作に触れる機会を作ってくれるドラマ化は、わたしにとってはありがたいです。
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4101063109
No.6:
(5pt)

山と井上靖の文章の魅力

淡々とした物語の進行がいい。山から下りてくると、人と話をしたくなる。そして、都市生活の雑多な毎日に飽きてくる(或いは疲れてくる)と、また山へ行きたくなる。主人公は登山家とはいえ、スポンサーがついているわけではない。金を工面する為に給料を前借りし、登山の時間をつくるために周囲を気にしながらも休日取得を会社に申告する。そこには一人のサラリーマンの姿がある。難関ルートを一緒に踏破しようとしていた友人は、山を下りてみれば、女性に翻弄されている普通の男の面をもっていた。更に、登山用品としてのザイル、一癖ありながらも理解のある上司、実験結果重視の技術者など物語はいくつかのポイントを織り交ぜながら進み、最後はまた山へ。

 読んでいる途中で何度も行きたいと思った。穂高へ、新宿駅へ。静かにそんな気持ちにさせてくれる一冊。
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4101063109
No.5:
(4pt)

強い人など、いないのだ

人はなぜ山に登るのか。

アルピニスト野口健氏は、「地上に帰ってきてすぐは “もういい!”と思う

のに、しばらくすると山に帰りたくなる」と何かで語っていた。

会社の上司、常磐になぜ登るのかと問われたとき、主人公の魚津は

山の魅力を彼なりの言葉で説明しようとした。

続いて常磐が、登っているときに、人はそこで賭けをするものなのかと

問うたとき、賭けはしない。無理だと思ったら引き返すのがするべきことだ、

と魚津はいった。

山とは、そこで自分の力を誇示する場所ではないのだろう。

どんなにがんばったところで、見ているのは神のみ。

ところが、その山に、ある女性を連れて行ってみたいという気持ちが

魚津と、そして切れるはずのないザイルが切れて落ちていった小坂の

胸にわき上がったとき、いつもと同じはずの登山が

何か違う目的のものに姿をかえてしまった。

登ることが目的だったのに、戻って誰かに逢うことが目的のようになったのは

決して責めることではないが、魚津と小坂の「山」で結ばれた絆が

こうも簡単に、ひとりの女性の存在で崩れてしまうとは。

もろい、と言っては言い過ぎだろうか。

しかし、人は、弱いのだ、という事実を突きつけられるような結末に心が痛んだ
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4101063109
No.4:
(5pt)

常磐支社長最高(笑)。

文庫本の裏表紙に書いてある紹介文が、そのままあらすじなんだもん、読み終えてびっくりした。いやそれでも筋を知っていたとしてもおもしろい作品だと思う。魚津・小坂・美那子・かおる・八代・常磐の6人の生き方というか心の推移というか、皆が皆「生きている」と思えるような語り口というか。うまく言えませんごめんなさい。でも良いです。 解説にあったけど、これって「恋愛小説」と捉えるヒトもいるんだね。推理小説っぽい雰囲気もあるし、社会派小説とも言えるし、スポーツ文学(登山がテーマ)とも言えるし、60年代大映ドラマ的な青春小説とも言える。解説の言葉を借りるなら、「自然vs文明という基軸」がしっかりしており、それを多面から切った結果がこのような様々な見方に取れる作品になるのだろうけど、それでいて破綻してないもんなぁ。すげぇ。
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4101063109
No.3:
(4pt)

描写が丁寧で綺麗

氷壁は山岳小説として有名です。山岳小説と言うと無骨なイメージがありますが、この小説では描写が非常に丁寧で、また形容が非常に綺麗です。山岳小説というジャンルにこだわらず、万人に好かれる形式のようにも思います。ただ、内容的には暗い。死に始まり死に終わる。本物の登山家は死を避け得ないという前提に立つ場合、この様な条件設定でも良いだろうが、現代のように冒険が許容されない時代にあっては、少なくともこの様な遭難はほとんど考えられず、したがってこの様な暗さはほとんど感じられなくなっている。この小説の初版は昭和32年だそうだが、時代の変遷が感じられる。一方でこの暗さは重みも持っている。暗さが無くなって明るさが増えると同時に重みも無くなり、現代の登山小説では読むべきものもほとんどない。この点からは貴重な一冊と言えるであろう。登山の経験有無にかかわらず、重みのある小説を読みたい方にはお勧めです。
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4101063109
No.2:
(5pt)

ドラマティック!

読んだ後に大きな爽快感を感じられる1冊です。
特に、男気に富んだ、実直な主人公の最後の登山シーンは大変ドラマティックで、また、彼の残した手記は読むものに感動を与えると同時にその山の情景に吸い込まれていきます。
全体的にストーリーがじわじわと進んで行くため、最終シーンでは一気に興奮と感動が押し寄せます。山に少しでも携わる人はもちろんのこと、そうでない人も十二分に楽しめる素晴らしい本だと思います。
氷壁 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:氷壁 (新潮文庫)より
4101063109
No.1:
(5pt)

山岳文学の最高峰です

登山のメーリングリストで「山の本でお勧めは?」と問いかけて一番に推薦してもらったのがこの本である。切れたナイロンザイルの謎を中心として、様々な人間模様が展開されていくのだが、丁寧で細かな山岳風景の描写に助けられて、山の素晴らしさと厳しさが良く伝わってくる名作である。「山岳文学の最高峰」というキャッチフレーズも嘘ではないと思った。映画化もされたようだし、この本が出版された当時大変な登山ブームがわき起こったというのも分かるような気がする。山を愛する人にはぜひ一度読んでもらいたい、お勧めの一冊である。
氷壁 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:氷壁 (新潮文庫)より
4101063109

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