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水神
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水神の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全30件 21~30 2/2ページ
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箒木氏の作品に魅せられて,読んでおりますが,この作品はスケールと,人間としての生き様の見事なドラマ,誠実がいつしか群衆を巻き込んで,困難な工事を見事に成就させる。それを死をもって励ました古武士の雄々しさなどとても素晴らしい作品です。 氏の作品のいくつかには,氏がその郷土を通して,築後の風土,方言や記述に土地のおおよその見当がつくような所にも,大変身近なものを感じています。 | ||||
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筑後川沿いではあるが、その雄大な流れの恩恵を受けられない江南原の庄屋5人と、一人の老侍が、江南原を潤すために身命を賭して筑後川に堰と溝渠を造成する物語。 農民の水に対する思いが痛いほど感じられ、農業には水が必要であるという基本的なことを改めて思い知らされる。 全国に築かれてきた農業のための様々な施設の一つ一つに、きっと同じような歴史があり、水を希求する農民や、農民の願いを酌んで施設造成に尽力した為政者の思いが込められているのだろう。 医者である作者がこのような小説を書いてくれるとは思わなかった。個人的には、これまでのベストだった「臓器農場」「閉鎖病棟」を凌ぐ良作。しかも、白血病の闘病中に執筆されたものというのも驚き。是非一読をお勧めする。 | ||||
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目の前を流れる筑後川。その豊かな水の恩恵を受けられない村があった。畑には、一滴の水も 流れては来ない。ついに5人の庄屋が、全財産と己の命を懸けて立ち上がった! 川よりも高い場所にある村。そこでは、朝早くから暗くなるまで川から桶で水をくみ上げる 人間がいた。だが、どんなにがんばっても畑は潤わず、作物の育ちも悪かった。村の人びとの 生活は貧しいままだ。それでも、当時の人びとはその土地から離れることができないのだ。 運命を受け入れ、耐えるしかなかった。そんなあきらめの境地にいた人びとを救ったのは、 5人の庄屋だった。彼らは、全財産そして命までも懸けて、大工事を決行する。反対派の人たちを 説得できるのか?藩を動かすことができるのか?庄屋たちの運命は?緊迫した状況を感じながら 読み進めた。工事には、さまざまな困難が襲いかかった。そのひとつひとつを乗り越え、人びとは 悲願を形に変えていく。「信念」が何ものにも勝った瞬間、大きな感動に襲われた。読み応えが あり、心に強く残る作品だった。 | ||||
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田舎に行けば大きな川の側には、ひっそりと石碑に刻まれて、水神様が祭られている。今まで水害から村の暮らしを守るために、人が神頼みをしているものだと思っていた。間違いではないだろうが、この本を読んで、本当は治水工事などをした昔の名もなき人々、その一人ひとりがまさに水神と呼ばれるのにふさわしいのだと感じた。 筑後川に堰を作って水を引くことを決意した4人の庄屋、地方藩の郡代である下級武士、工事に携わった百姓、それら大勢の人々の苦闘と栄光を描いた傑作である。人のために生きる、生活を捧げるという行為が、現代を生きる我々の生き方に一石を投じる。流されるなよ。何が人間にとって大切なことなのか、我々は問われるはずである。 蛇足だが、本書に数々出てくる昔の料理の描写がなんとも旨そうで、匂いや舌触りが感じられて、付け加えずにはいられなかった。 | ||||
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九州、筑後川沿いの貧しい農村に水を引くための堰を築く庄屋達の苦労を描いた歴史小説。土地が、川の水面より高いため、農業用の水さえ川の水を汲んでいるような農村では、よい米どころか、稗や粟でさえも作るのが難しい。筑後川のような大きな川を堰き止め水を引くのは、とてつもない大工事で、財政の苦しい藩も簡単には動かない。農民苦しい状況を改善するため、命がけで立ち上がった5人の庄屋を、農民、武士、商人達が支えて取り組んでいく。貧しい農民達の姿や庄屋達の並々ならぬ熱意とそれを一生懸命支える老侍の描写は鮮明で、普段小説は読まない私も感動させられた。 | ||||
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NHKの週間ブックレビューで合評の対象になった一冊で、興味を引かれて読んでみたが素晴らしい作品だ。上下巻合わせると500頁超の大作だが、全く苦にならず最後まで一気に読み通した。 舞台は九州の有馬藩の江南原と呼ばれる地域の村々だ。この地域は筑後川を始めとするいくつかの川に囲まれているにも拘らず、地面の高さが川面より高いため川の水を引くことが出来ず常に水不足で穀物の生育は悪く、この地に住む百姓は有馬藩の中でも最も貧しい生活を強いられている。冒頭は元助と伊八という二人の百姓の暮らしが描かれるが、この二人の仕事は「打桶」と呼ばれ、朝から晩まで毎日川の水を桶で汲み出して田んぼに流すというもので、これを一生続けることが決まっている。元助の目を通して描かれる百姓の生活はとにかく貧しく、常に腹を空かしている。 絶望的な境遇を変えようとして立ち上がったのは、藩の殿様でも奉行でもなく、5つの村の5人の庄屋だ。中心人物の助左衛門は、筑後川を堰きとめて水路を作って村々に流すことを考案し、反対する村々の妨害にあいながらも、賛同する他の4人と一緒に藩に工事の嘆願書を提出する。嘆願書は聞き入れられたが、工事に要する莫大な費用はすべて庄屋の自己負担で、なおかつ失敗した場合には責任を取って磔の刑に処せられるという厳しい内容。 自らの身代を潰し、命を賭けても、後世の子孫によりより生活を残したいと戦う庄屋たちと、その姿に打たれて協力する武士や商人たち、そして貧しさにもめげることなく懸命に働く百姓達の姿は、壮絶であるが美しくそして尊い。前を向いて生きる人々の姿に心打たれた。 | ||||
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図書館で見つけて読みました。書評も他作品も読んでいませんでしたから、この作家さんのものはこれが初めてです。 江戸時代のつましい暮らしぶり、その中でも貧しい村々の暮らしに心が揺さぶられました。それでも我慢強く日々生きている人々に好感を持ちました。 なかでも元助くん(と君づけでいいの?)は真っ直ぐで正直で無骨なところがかわいらしかったです。 下奉行、五庄屋、村の百姓たちが皆誠意を持って正直に生きていて、思いやりと感謝の心をもち、五庄屋と下奉行の菊竹様は百姓の為を思い、行動し・・・島原の乱で命を落とした人を想ったり残されたものの生活を慮ったりするくだりにも、他にも細かいところでも泣かされました。他の方のレビューにもありましたが、お涙頂戴のお話が個人的に好きなのかもしれません。 上下とも一気に読みました♪ | ||||
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感動しました。長い作品でしたが、引き込まれました。 まず前半は、江南原の百姓たちの貧しい暮らしぶりが描かれ、 その中での、主人公の5人の庄屋たちの真摯な姿に胸を揺さぶられます。 上巻の一番の見せ場は、5人の庄屋たちが、藩のお偉方を前に堰の工事を願い出る 口上のくだり。気迫のある言葉に圧倒されました。 下巻で堰の工事が始まってからは、難局を上手く乗り切って欲しいと読み手の私も はらはらしながら、読み進めました。 終盤、涙なくしては読めない箇所もあり、この主人公たちには心から頭の下がる 思いがしました。 作者、帚木さんは闘病しながらこの作品を書いたそうです。 現在はお元気になられたとの事でしたが、これからも良い作品を書いて下さい。 | ||||
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日経の日曜書評で本書の評を読んで気になって早速読みましたが、、、、帚木氏の過去の作品「閉鎖病棟」「三たびの海峡」「逃亡」「総統の防具」などで感じた「熱い熱い感動」を期待すると拍子抜けするかもしれません。 「国銅」と同様、淡々としすぎるくらい淡々とプロジェクト成就に向けて物語は進みます。(詳しく書きませんが)プロジェクト完遂のため命をささげる「ある人」が残す遺書のくだり(その内容そのものも含め)も帚木作品の「いつものパターン」で氏の作品を以前から読んでいる読者には見え見えの展開。「熱い感動」と「お涙頂戴」は紙一重だなあ、と痛感。水利プロジェクトそのものが難事業であることは想像はつくのですが、淡々と進み過ぎてその難易度がいまいちピンとこないのも盛り上がらない原因の一つとは思いますが・・。 そんなにヒネくれずに虚心坦懐で読めばそれなりに面白い歴史娯楽小説であるとは思いますが、「1,000枚渾身の書き下ろし」はそもそも上下巻に分けるような厚みのある話ではなく、一冊で1,800円くらいだったら不満感も多少は減殺されたとは思います。 | ||||
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江戸時代、筑後川の近辺にありながら水利工事の不徹底のため水不足にあえぐ村が舞台。一部の庄屋が財産、生命を賭して郡役所、近隣の村、百姓など関係者を説得し、一大堰渠造成、灌漑事業を成し遂げる物語。 帚木蓬生の作品は大方読んでいるが、私が一番好きな作品は、奈良時代を舞台にした大仏建立に関わった百姓の物語である「国銅」。帚木作品は、医療モノ、欧州モノが多く(帚木は医師であり欧州留学経験がある)、日本の歴史・時代小説は「国銅」とこの「水神」のみ。日本の歴史・時代モノの方が他の作品よりも徹底した取材がなされていて、作者の力が入っている印象(それでいて筆致は抑制的でアジテーションになっていないのがいい。)。 この小説では、堰渠造成、灌漑事業そのものの描写に加え、百姓の生活実態、村の様子など、細部にわたる徹底した文献渉猟、取材によりリアリティが確保されている。作品冒頭の「打桶」(百姓が桶を使って川から水を汲みだし土手を越えて田畑に流す)のシーンが印象的(「打桶」は作品全体の通奏低音をなす。)。堰渠造成、灌漑事業について具体的なイメージをまったく持っていなかったが、この小説を読むことによりある意味体感できた。 また、堰をつくることを巡る関係者の説得、調整の苦労の描写にも力点が置かれている。江戸時代の庄屋、百姓が主人公でありながら、組織間、関係者間の駆け引き、せめぎ合いは、現代のビジネス小説としても読める。 街角に立つ土地改良碑をみて「高々土地改良になぜこんな大きな碑を建てるのか」と思っていたが、当時の苦労をもう少し感ずるべきなのかもしれない。 | ||||
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