密やかな結晶

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評判

密やかな結晶の評価:

3.94/5点 レビュー 77件。 A ランク

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平均点3.94pt

Amazonレビュー一覧

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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全112件 81〜100 5/6ページ
No.32
(5pt)

忘れることの恐ろしさ

小川洋子の作品の中で最も好きなもののひとつです。

記憶を奪われることの恐ろしさ、

そしてそれをもう思い出せないことの恐怖。

そんな極限状態を、小川洋子特有のしっとりとした美しい言葉たちで

つづられています。

記憶をなくさないR氏を秘密警察から必死にかくまう私・・・

この情景はアンネフランクの日記を彷彿とさせます。

私はこれまでにいくつのものを忘れてしまったのだろう…

普段忘れることなんて特に気にしていないことだけれども、

とても悲しいことだと感じてしまいます
密やかな結晶 Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶より
406205843X
No.31
(4pt)

消えていくものたちにまつわる切ない物語

舞台となる「島」では人々はある種の諦観を持って静かに暮らしているのですが、「消滅」という理不尽な現象が断続的に起こります。ある朝目覚めると世界から何かが失われているのです。心の中に空洞ができてその何かに関する記憶が一切失われてしまいます。自分にとって何の感慨も価値観も見出せなくなったものたちは廃棄したり焼却処分します。さもないと秘密警察に連行されてどこかへ連れ去られたまま町に戻ってくることができないからです。秘密警察の使命は完全なる「消滅」です。主人公の「わたし」は小説家。彼女の担当編集者が「消滅」の影響を受けない(記憶が残りつづける)、特別な人であることを知り、秘密警察から守る為彼を匿うことになりました。そこからこの物語が始まります。最後には何が消えていくのでしょうか・・・。
密やかな結晶 Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶より
406205843X
No.30
(5pt)

冷たく、静かに、そして密やかに

次々とあらゆるものが、ひっそりと、静かに失われていく孤島。この島の中では失うことが必然であり、そうでないものは異常である。
 人、物、体の一部... 物を失うことが当然とされ、失わない者達は「記憶狩り」という秘密警察に排除されていく。
 何故?といった私の疑問を置き去りに物語は進んでいく。答えらしいものは描かれてはいない。唯々すべては失われてゆく。冷たく、静かに、そして密やかに。

密やかな結晶 Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶より
406205843X
No.29
(4pt)

何をなくしたのか私にもわからない

この文庫の帯に「何をなくしたのか私にもわからない」というコピーがありますが、読み終わったあと、これほど考えさせられる言葉もないでしょう。
 本文を文字づらだけ読み進めていけば、島の人々から時折脱落する「記憶」、ナチスの焚書ばりに燃え盛る「本」に代表される捨てられる物、記憶を失わない異能者に対する秘密警察の弾圧など、娯楽作としても一流の要素を含んでいるのです。
 しかしやがて娯楽そのもが消滅していきます。進む喪失が深まったとき、主人公の若い女性や彼女がかくまう異能者の「彼」、二人を助けるおじいさんの三者の苦しみと存在の意義そのものが、どこに帰着するのかがまったく見当がつかなくなり、最後に哀しみだけがそこに漂うような結末に導かれていきます。読書と同時に進行する読み手の喪失感は、今までの小説には見られなかったものでした。
 もうこうなってしまうと読み手としては、何をなくしたか、というよりも、彼らが、そして私たちが何を得たのかがわからないという一種の惧れを感じてしまい、あらためて帯の一文を眺めてしまう、そんな不思議な小説です。いや、勉強させられました。
密やかな結晶 Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶より
406205843X
No.28
(4pt)

不思議なお話でした

ストーリーを説明するのが非常に難しい作品ですね(^_^.)
抽象的でつかみにくくはあるけれど美しい作品でした。
全体の持つ静かで空気の澄んだようなイメージは村上春樹さんの「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」に似ている気がします。「忘れる」
「記憶を失う」
「認識できなくなる」
この3つの違いを考えてみると、この作品の中で起こる「認識できなくなる」がいちばん切なくはかない。より一層の喪失感があります。ぼんやりと自分までもが世俗から切り離されたような雰囲気の中で読みすすめましたが、ラストは意外にも希望に満ちてました。爽快で後味がよかったです。これはハッピーエンドと捕らえていいのでしょうか?
密やかな結晶 Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶より
406205843X
No.27
(4pt)

それにしても、奇抜な発想の物語でした。何かがなくなるなんて

すごく抽象的な話で、作者の本当に伝えたかったことは何だろうと、
いつもこの作家のものを読んだ後は考え込んでしまいます。
(といってもまだ殆ど読んでませんが)
読後はしばらくぼーーっとして、意味を考察してみるけれど、
何か掴み取れない感がずっと続くのです。
本を読んでいるとそういうことって多々あると思うけれど、小川さんの作品の場合はより一層、といった感じ。
しかしそのもどかしい感じが心地よいのも事実。
特に小川さんの場合は、彼女の独特な世界にずっといれる感があって、
良いのですが。。この作品の結末も、「それで?それで?!」って
色々作者に解説を頼みたくなるような形で閉じます。本当にむずむずします。
誰か、教えてくさだい(笑)(なぜ、むずむずするかは読んでのお楽しみです。)
それはともかく、物語の真意はわからないとしても、
彼女の作品の持つ独特な妖しい雰囲気はたっぷり堪能できたし、いいか。
(彼女の作品は、特に女性の官能を呼び起こすようななめらかな表現が
突出しているように感じます。この物語でも例外ではありません。)この作品は、現実的な部分もあるようでいて、
しかし全般に渡り抽象的で非現実的で、しかも最後は全くもって不確かで
更に抽象的で非現実的に終わってしまう。
読み手としては不安なまま放り出されてしまうことになりますが、
それがまた魅力でした。
密やかな結晶 Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶より
406205843X
No.26
(5pt)

どこか知らない土地の、ドキュメンタリー映画を見ているよう

ある日何かが消えていく・・・・
それは、物理的に消えていくのではなく、人々に認識されないようになってしまうのです。
島の人は、消滅したものを目の前に見せられても、それが何かわからない・・・・。
仕方なく、その目の前にあるなんだか分からなくなってしまったものは破棄する・・・・。
私のどこか知らない土地の、ドキュメンタリー映画を見ているよう・・・・。主人公の女性は、小説家で、彼女の小説も一緒に進行していくのですが
この小説のはなしと、彼女達に起こっている出来事、両方とも同じ雰囲気をもっていてどっちも現実に起こっているような感覚になります。最後には、島の人たちはすべてを失ってしまいますが、その最後はとても透明。
切ないはずなのに、美しい。
ハッピーエンドとはいえないと思うのですが、不思議と私は後味が悪くありませんでした。
密やかな結晶 Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶より
406205843X
No.25
(5pt)

遠くへ逝ってしまったものもの

一気に読んでしまってから、こっち(現実)の世界に意識が戻ってくるまで、時間がかかりました。
文章の良し悪しはよく分からないのですが、細かい描写やそれらから受ける印象が、独特の一個の世界をこの本の中に作り上げていきます。ただ、小説を読むときって読みながら「画」を想像しながら読むのですが、
なんとなく日本とか西洋とかそういう現実の世界とはまったくべつの(次元?っていうの?)話と思って読んでいたのに、
いきなり「和室」とか「畳」が出てくるので、「日本だったのか・・・・!」と思いました。結局、ものすごく論理的な人や現実的な人は気に入らないと思います。
日々常々「現実には起こらないこと」など空想しているような、幻想的な人はとても気に入ると思います。
密やかな結晶 Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶より
406205843X
No.24
(5pt)

失うことの切なさ

色々なものが唐突に消えていく島を舞台にした作品。
鳥が消え、帽子が消え、フェリーが消え、
虫食いのように、あいていく穴を見つめながら、
何かを失ったという記憶も失いながら生き続ける人々。
不安定で、はかなく、切ない、美しい世界の物語。
密やかな結晶 Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶より
406205843X
No.23
(5pt)

密やかに映像化希望

とてつもなく透明で美しい作品。
この世界を遜色無く映像化できるならばとても儚く美しい作品が出来るでしょう。
CGやら人形やらアニメーションやら実写を織り交ぜて、全体的にはロシアのアニメ作家が作るアニメのような簡素で寒々しい空気が覆ってて・・・なんて妄想をしてしまいました。この透明感と美しい世界を構築した点で☆5つ!!!読みながら何度も感動のため息をつかされました。
密やかな結晶 Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶より
406205843X
No.22
(5pt)

最後の一点に向かって

その島では記憶狩りによってものが一つまた一つと消えてゆく。
人々の記憶からその消滅したものは消え去り、消滅したという
事実さえ記憶に残らない。
記憶狩りに遭っても記憶を失わないR氏。
R氏を捕らえようとする秘密警察から、R氏を守るため隠れ家を
提供する主人公。最後の一点へ向かって、物語はたんたんと
進んでいく。
密やかな結晶 Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶より
406205843X
No.21
(4pt)

失われていくものたち

小川洋子さんの小説世界は、どれもとても変わったものです。この物語では、ひとつずつものが消滅していきます。たとえば小説、声、など。あらゆるものが、次々と取りさらわれていき、やがて人々の記憶からもそれらのものは消滅します。しかし、その中にも忘れる事ができない人たちもいます。彼らは危険人物とみなされ逮捕されてしまうのです。主人公は忘れることができない男性に恋し、彼をかくまいますが、やがて、自分自身の体の一部も失い始めます。物語は、しずかに、そして大きな消失感をともなって進んでいきます。小川さんの文章には、身体感覚がとても鮮明に描かれていて、それでいて、限りなく透明です。
密やかな結晶 Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶より
406205843X
No.20
(5pt)

暴力シーンも戦闘シーンもなく、圧倒的暴力を描く

ひさびさに、小説を読んで、その楽しさに耽溺しました。

小川洋子は、同世代の作家だし、2004年本屋大賞の『博士の愛した数式』
は当時高校生だった娘といいよねぇ、盛り上がった作品でした。
寺尾聰と浅岡ルリ子が出ている映画も見に行って。

この『密やかな結晶』はかなり前に買って読めないでいました。

世界からいろいろなものが消滅していく物語に心がひるんでしまって。

でも、400pの小説を読み終わって、これは

世界に誇れる日本文学の傑作ではないだろうか、、、
と思います。

暴力シーンも、戦闘シーンもなく、圧倒的暴力とその暴力への
抵抗を描いていることが奇跡のように思えます。

小説家である20代と思われる女性が主人公、この”わたし”が
生きている世界では、少しずつ、ものが消滅していきます。

リボン、香水、鈴、オルゴール、エメラルド、ハーモニカ、鳥、、、、

物体としてのものがなくなるだけでなく、それらのものがあったという
記憶そのものが抹殺されていく世界です。

確かに、これらのものが無くても、人は、生きていける。けれど、
私達が生きる世界がいかに、これらの些細なものの甘美な記憶と
体験で生きているか、ということが痛いようにわかります。

些細なものの消滅の次には、地図、カレンダー、写真、小説、、、、と
消滅は続きます。

そんな世界に、消滅したものを記憶している一部の人がいます。
そういう人たちは、記憶狩りといって、秘密警察に連行され、消えていく。

主人公の私は、記憶を保持したままの自分の編集者を自分の
家の隠し部屋にかくまいます。

まるで、ナチスの時代のアンネ・フランクのように。

そう、この小説自体が、ナチスの、またスターリンの粛正時代、中国の
文革、いやいや、日本の治安維持法、そして、今年の原発事故までも
暗喩しているようです。

思想が目に見えないように、記憶というものも目に見えません。
記憶が消されるという人間そのものに対しての圧倒的暴力。

消滅は、ついに、人の体の部分にまで及んでいくのです。
左足、、、右腕、、まるでSFのような話の展開になっていきます。

主人公がかくまった”すべての記憶を保持している編集者”は
隠し部屋で生き抜きます。

この世界では、記憶を持ち続けることが”抵抗”であり、”生きる”ことなのです。

そして、この小説のなかのことは現実でもいえることだと気づくのです。

権力者は、庶民が考えること、被害を覚えていること、被害を語る
ことを嫌いますよね。

もう一つ、作品のなかに主人公が書く、小説が一篇 埋め込まれています。
これがまた秀逸。信頼していた恋人に、声を奪われ、次は会話の手段で
あるタイプライターを奪われ、紙もペンも奪われ、部屋に軟禁される
物語です。恋人の豹変、それなのに、思考することさえ奪われ、
逃げられないのです。この物語が、美しい静かな文章で描写される
恐ろしさに私は、凍り付きました。

それでいて、読後感は、私達の生きる世界が、たくさんの無駄に思える
行為によって、なりたっていることを痛切に感じさせるのです。

なにげないおしゃべり、紅茶を飲むこと、香水のにおいをかぐこと、
部屋に飾ってある写真、小説を読むこと、、、効率からはずれるこれらが
あるから私達は生きていけるんだ、、、と思うのです。
密やかな結晶 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶 (講談社文庫)より
4062645696
No.19
(5pt)

ん〜。

初めて小川洋子さんの本おもしろいと思った小説です。『余白の愛』を読んだときはまだ小川洋子さんの小説に慣れてなくて“なんだ、この本と”思ってしまいました・・・。
独特の世界観があり、はまれば病み付きかも・・・です。川上弘美さんと同じ位置にいます。私の感覚では。この本がおもしろいと思われた方は『薬指の標本』もご覧ください。とっても素敵ですよ!!フランスで映画化されたものです。さすがフランス!!
密やかな結晶 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶 (講談社文庫)より
4062645696
No.18
(5pt)

絶望的で悲しいけれど、

個人では抗えない大きな力による不幸に黙って耐える人たち、

しかもその不幸の記憶もだんだん薄れてしまう。

そんな状態に流されている主人公が、大きな流れに逆らうことをする。

その動機は本人にもはっきりしないが、自分にとってもかなり危険なことをやり通してしまう。

けれども、自分自身は大きな流れに乗って、消えていくことを受け入れてしまう。

ファンタジーですが、人ごととは思えない不安も感じてしまいます。

悲しくて辛いことが、たんたんと過ぎていく。

せめてもの救いは、本人はつらさをそれほど感じることができない、というところです。
密やかな結晶 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶 (講談社文庫)より
4062645696
No.17
(5pt)

美しくて心地のよい文章

初めて小川洋子さんの作品を読みました。

最初から主人公の置かれてる「消滅」のある世界という設定に驚きましたが

次に、その文章や選ぶ言葉の一つ一つがすごく優しくて美しくて驚きました。

残酷な情景を描いているのに、美しい絵を想像してしまうような感じで。緊迫した状況での登場人物達の優しさや愛情表現が、激情的ではないけど、とても心地よく感じます。読み終えて、悲し〜い気分になりましたが、「何かすごい小説読んじゃった」っていう興奮が残りました。

映画「博士の愛した数式」を見て本を手にした、ミーハー派ですが他にも小川洋子を読みたくなりました。
密やかな結晶 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶 (講談社文庫)より
4062645696
No.16
(4pt)

消滅

淡々と進む物語なので、1回入ってしまえば読みやすい。

忘れることの空しさと、覚えていることの儚さが見事に融合した淡白な作品だ。

所詮、人間は物体なのだということを思い知らされる。

何故か物凄く悲しくなる本だ。
密やかな結晶 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶 (講談社文庫)より
4062645696
No.15
(5pt)

忘れてしまうということ

ものすごく、淡々と物語は進んでいって、

なのにすごく感情移入して読んでしまうんです。なぜか。

まぶたより、あたたかい作品。おじいさんがだいすきでした。

消滅は悲しいはずなのに、

消滅してしまうと、それが悲しいことだということも忘れてしまって、

どんな消滅も受け入れて、生きていくけれど、

島は、そして自分の心は、スカスカで、空虚ばかり。

だけど、それを辛いとも感じることはないんです。

消滅とは、そういうこと。

消滅を受け入れて、全て忘れてしまう人と、

覚えている「異端」な人。

覚えている人は、忘れてしまう人を、かわいそうだと思います。

でも、忘れてしまう人にとっては、それは普通なことで、

消滅を辛いと思う、覚えている人がかわいそうだと思います。

「忘れてしまうこと」と、「覚えていること」

いったいどっちが幸せで、どっちが辛いんでしょう。
密やかな結晶 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶 (講談社文庫)より
4062645696
No.14
(5pt)

キラリと光る銀細工のような・・・

この物語は、全編をとおして流れている静かな雰囲気にまず引き込まれてしまいますが、人間であればどうしても持たずには生きていくことのできない感情の動きを、実に丁寧にすくい上げ、物語として「結晶」させた作品だと思います。消滅に立ち会った人々が、なぜ消滅の対象となったものたちへの記憶を、あんなにも徹底的に消そうとするのか。その心の動きは、例えば、心はある人に寄り添っていたくとも(恋心でも、友情でも)、状況がそれを許さず、自分自身を消していくようなつらい気持ちで忘れようとする。そんな心の動きに、非常によく似ていると思います。また、古い異国の童話のようなエピソードが随所で銀細工のようにキラリと光っていて、時々本棚から取り出して読んでしまう魅力的な作品です。10年前から小川洋子さんのファンですが、最も愛着の強い作品です。
密やかな結晶 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶 (講談社文庫)より
4062645696
No.13
(4pt)

読むと後悔するかも

著者の作品には名前があまり出てこない。

この作品にしても出てくるのはせいぜい「乾さん一家」(各人の名はあらわれない)とR氏くらいだ。

主人公にさえ名はない。

名前も持たない人々が、大切なものを次々と無くしながら、それを哀しむこともできず、生きている。

そして読者に問いかける。

「あなたは何もなくしていないの?」「なくしていることに気づいていないんじゃないの?」

読者は答える。

「そんなことはない。何もなくしてなんかいない。なくしていたとしても、それで不都合はない。」
密やかな結晶 (講談社文庫) Amazon書評・レビュー: 密やかな結晶 (講談社文庫)より
4062645696