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メイスン&ディクスン



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メイスン&ディクスンの評価: 3.43/5点 レビュー 14件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.43pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(1pt)

ダメ×ダメ=?

ダメでもともと、という言葉があるが、これほど人間の欲求をくすぐるセリフもない、
ダメでもともと、と思うと、よけいに「ダメ」を確かめたくなるのだ、
で、やはりダメだった、
ダメなりに収穫があったりするものだが、苦行を強いられたうえ何もなかった、

著者は読者のイメージを喚起する力を持っていない、場面を作れないので、アメリカ史をベースに著者なりの「ごった煮」を食わせようにも、読む側はすぐに満腹になり、無理に詰め込んでも吐き出すだけになる、著者らは、レールから弾かれた読者を見て快楽をおぼえ、次なる文学的(商業的)野心の燃料として温存しているのだろう、
レールから弾かれなかった読者は、一種の勝ち組には違いないが、レールを敷いた当人たちの配下の者であり、知らずにロゴ付きのTシャツを着せられていることに気づいていない――公的には大学教師や評論家が、私的にはこうしたサイトを含めた無名の記述者が、いわば宣伝係の立場を担わされることになる、サドマゾショーのようだが、アメリカ仕込みのマーケティングの真骨頂ともいえよう、

ある場面と別の場面とのつながりが見えてこない――活字を追う読者がそれをシーンとして形作れない、とすれば、これはフィールドのないサッカー、土俵のない相撲に例えられる、つまり、たんに双方の登場人物が勝手に入り乱れて暴れまくる泥仕合のていをなすだけなのは必然、金を取って見せる試合になるはずがない、どんなに高度な手法を駆使しようと、著者お得意の教養をどれだけ披露しようと、すべての発汗作用は芸術的活動の外にある、芸術は創造的行為であり、プラスの方向の創造ではなく大胆な破壊に打って出ても、そこには計算されつくした芸術的な野心が必要だ、したがってそこには太い骨格があり、無知の(注釈とは無縁の)読者であっても、作品世界に引きずり込むだけの強烈な力に満ち溢れ、しかも客観性という軸にぶれがないことが最低限の必要条件になる、

本作品でも著者はゲームのルールは自分が握り、読者に小出しにする、そこに辿り着く紆余曲折が醍醐味ともいえるが、迷路の果てにゴールは用意されていない、ゲームの勝者は、常に著者自身ということになる、

著者は「記憶」と「思い出」の違いがわからないのではないか、
小説家に必要なのは後者のほうだ、思い出は単に私的な記憶でなく、その人自身の色が加わったものだ、芸術家が一枚の絵をものにしようとするときのパレットであり、絵筆を浸すただ一つの拠り所だ、それが貧弱な者は、どんな方向に進もうとも作品で人に感動を与えることなどできない、

熟練の小説家でもストーリーに詰まることはある、だが大きな壁にぶつかり、その難所を克服するほどに、小説全体のどこに本物らしい生命が宿るかに気づくはずだ、「今は理解されなくとも未来には何倍にも評価される右肩上がりのブル」を気取っているらしい著者だが、未来を先取りどころか、実際には大胆な捏造が不得手で、小さな過去、歴史的事実やそれを加工したものを準備して、壁の部分を手際よく端折って、壊したつもりになって先に進んでいないか、ぼくはそれを疑う、自力ではなく、出来合いの武器を使って要領よく(自分が傷つかないように)突破を図っているように見える、内的になるのは結構だが――内的思考を鋭く深く掘っていけば、やがてローカルを超えた領域に近づいていけるのではないかと思う、著者は小心が災いしてか、せっかくいいところまで掘り進んでも、遠慮して引き返しているように見受けられる、それを突き破ったところに真の芸術的な狂気があるはずなのに

著者は謎に包まれた、正体不明の作家であるらしい、そのくせ資料(ウィキペディアなど)によれば「測量技師トマス・ラグルズ・ピンチョン・シニアとキャサリン・フランセス・ベネット・ピンチョンの間に生まれる」とされ、出生が明確化されている、くわえて「ピンチョン家はアメリカ最古の家柄」で、「遡れば11世紀にノルマンディーからウィリアムと英国に移住」とわかっている、これだけ素性がはっきりしていて謎、いったいどれだけの人間が家系を11世紀にまで遡れる?、

それだけではない、「高校を最優秀学生として卒業」、「コーネル大学から奨学金をもらって、工学部応用物理工学科に入学」、「講師にウラジミール・ナボコフがいた(らしい)」、「大学を最優の成績で卒業したピンチョンは大学院の奨学金を拒絶」、「1960年2月から1962年9月までの間、シアトルのボーイング航空機会社に就職」
謎どころか、こんなに詳細に学生時代以後の経歴まで調べがついている、謎に満ちてなくとも、そんなに調べがつく作家はなかなかいない、
つまり「覆面」というのは著者と編集者の間でつくられた事実に基づくカモフラージュであり、謎ではない、こういって悪ければマーケティングの一環として出版者と組んでセルフプロデュースをしているに過ぎない、

その理由は――学歴コンプレックス、家柄コンプレックス、職業コンプレックス、この三大コンプレックスに凡人が常に悩まされるからだ、それを逆手にとる非凡な者たちも、実は俗人であり、凡人の変種であり、ついやりすぎて馬脚をあらわにしてしまう、逆の見方をすれば、家柄以外に見るべきものがないのであり、ハーバードは無理でコーネルに行ったのであり、ボーイングでいい仕事ができなかったから辞めたのではないか、ノーベル賞候補の常連らしいが、何度まな板に乗っても落とされるのは、選考委員が作品の不出来を指摘したからではないか、「謎の作家」だけあってこれらには確証が何ひとつない、だが腑に落ちない点が多すぎる、ピンチョンというのは凡人の劣等感を餌にして膨れ上がったハリボテのようなものではないかと思う、「明らかな経歴」に「保守」の臭いがつきまとっているから、

翻訳もまたひどかった、一人称が一種しかない言語で[わし]、あんな風に訳されたら、どうにもゆかなくなる、編集者はなぜダメを出さなかったのか
トマス・ピンチョン全小説 メイスン&ディクスン(上) (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:トマス・ピンチョン全小説 メイスン&ディクスン(上) (Thomas Pynchon Complete Collection)より
4105372025
No.2:
(2pt)

なんだかな・・・

別の人も書いていますが、まず翻訳がひどすぎます。
柴田氏の翻訳はオースターのような書生堅気の内省的な文体には合うのかもしれませんが、
ピンチョンのような大作家には土台無理です。つまずいて、こけるだならまだしも、かなり不自然な
帳尻合わせが透けてきて厭になります。せめて青野聡氏くらいの運動神経と五感の持ち主に
この本は託すべきでしょう。それか大胆にチョウヤクのできる人物とか。。。言葉も運動しています、
跳ねまわります。運動神経の無い者が訳すと最悪になるという良い見本です。見本という意味で、
★一つのところを★★にしました。

翻訳が不味いとなると、出版社の姿勢を疑いたくなります。
べらぼうな値段設定にも納得がいかなくなる、というより私は怒りを覚えました。
いまどき高い金だして小説読むのが間抜けなのだ、といいたいばかり。
だからこれ以降の『逆光』などは買ってません。ここでは絶対に読みたくない。読者をね、馬鹿にしちゃ
いけませんよ。柴田氏にも木原氏にもなんの恨みもないけど。
自分には佐藤と志村の「ピンチョン」(三宅先生のも良いです)があればいいや、という感じです。
あとは原書をこつこつペラペラと気分に応じて読むしかないですね。
トマス・ピンチョン全小説 メイスン&ディクスン(上) (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:トマス・ピンチョン全小説 メイスン&ディクスン(上) (Thomas Pynchon Complete Collection)より
4105372025
No.1:
(1pt)

出版社、手を抜いてるんじゃないの?

すごく期待していたのに、正直、期待外れ。
まず、翻訳。著名な柴田さんですが、会話のリズムがまったくなかった。
ピンチョンの小説はいつも会話がおもしろくて、グルーブがあるのだけれども、それがない。
「あなた」を「汝」と訳したり、極力カタカナを使わずない翻訳
ー例えば「パン」を「麺麭」と「ライフル」を「旋条銃」と訳したりー がリズムを悪くしているようにも思えた。
とはいえ、これは個人の受け取り方次第。こういう変わった翻訳をよしとする人もいるはず。

根本的問題は、その注釈の少なさ。
主人公の二人が天文学者と測量士だから、必然と天文学と測量の専門用語が多くなる。しかし、それにほとんど注釈がない。
さらには、地図がひとつもない。アメリカ大陸を終始横断しているというのに地図がない!
上下あわせて8000円もするのに、あるのはまったく使えない人物一覧だけ。
これで”ピンチョン・コンプリート”なんて笑止千万!筑摩や河出のピンチョンの方がはるかに丁寧なつくり。
ピンチョンと柴田元幸というビッグネームに甘えて、出版社が何にもしてねー、そんな感じ。
さらなる改良を求める。ピンチョン全集の1冊目がこれって、いいの?
個人的には佐藤良明訳でもう一度読みたい。
トマス・ピンチョン全小説 メイスン&ディクスン(上) (Thomas Pynchon Complete Collection)Amazon書評・レビュー:トマス・ピンチョン全小説 メイスン&ディクスン(上) (Thomas Pynchon Complete Collection)より
4105372025

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