■スポンサードリンク


クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰

クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰の評価: 2.06/5点 レビュー 16件。 Dランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点2.06pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(3pt)

舞城チルドレン? その挑戦は買うけど・・・

あまりに評判が悪いので、逆に興味を持って読んでみたが、個人的にはそんなに悪くなかった。ピカソとかダリとか、一般にはすぐ理解されないだろう作風の画家の、小作品といったイメージ。

 まず文体。読点(、)のない、やけに感情的な饒舌文体から舞城王太郎をすぐ連想したが、この人の狙いはちょっと違ったところにあるのかもしれない。むしろ、村上龍や谷崎潤一郎の句読点なし文体だとか。
 ただ、擬音語の多用と、幼い感じの語り(高校生だから当然か)とで、アンバランスな印象になっているので、この文体は人によっては読みづらいだけかも。世界の平坦な印象と意識の持続という点で、それなりに効果はあげている。

 メタフィクションじみたストーリーからも、舞城氏の影響を感じるし、そのナイーブな感性にもその影を見てしまう。具体的な作品名を挙げると「九十九十九」だが…、まあ、これ一作ではその点については判断保留とする。

「私が現実だと思っていることはただ私にとって現実と思えるだけのことであって現実なんてものはそもそも現実ではなくむしろただのファンタジーで私はそれを都合良く現実だと思い込みながらのうのうと生きていて家族とか恋人とか友達とかそんなものも結局は粉々になったガラスの断片の向こうできらきらと変化するとらえどころのない世界のなかに存在するとらえどころのない人間みたいな存在を通して私が作り上げた錯覚に過ぎない? 」

と世界に猜疑心を抱いた主人公は、最終的には、

「私にはもう何も見えない――それでもこの暗闇の先には私の先を行く誰かがいる――そうであるとすれば私はその誰かを追い続けようと思う――」

と決心する。

その姿に、弱いものながら自分は感動に近いものを感じた。まあ今後に期待です。が、☆4は甘い気がしたので3に修正。人には勧めませんね。
クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰Amazon書評・レビュー:クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰より
4309020763
No.2:
(3pt)

なかなかやるじゃん。

2011年の文藝賞はどうだったのか?と思い購入。まず読後の感想なのだが、レビューでも賛否の真っ二つに分かれているように「評価が分かれるだろうな〜」というのが素朴な印象だ。本作は--村上龍氏の作劇術の影響があるだろう事は置いておくとして--、SF的設定と主人公の感じる現実の不確かさに対する困惑から、『リアル』とは一体何かをテーマとしていることが解る。読点の一切ない文体に違和感を感じる人が多いだろうし、一体何を描こうとしてこの小説が書かれたのかに疑問を持つ人が多いこともわかる。だが最後まで読み進めていくと、足の裏の傷の痛みに生々しい実感を覚えて進んでいこうとする主人公のスタンスは、単なるお遊戯として本作を書いたのではなく、生きる上での『リアル』は何処にあるのかを探そうとする著者の誠実さが読みとれた。〜他のレビュアの方の指摘にあったよう最後まで熱を失わない文体のテンションはなかなかのものだ。僕は読みながら「どこかで失速するんじゃ・・・」と不安に思いながら読み進めたのだが、最後までそれは落ちない。〜著者がまだ発展途上にあるのは否定できないが、虚無を冷笑するようなスタンスではなく、自分の身体感覚を信じて希望を失わないテーマに次回作も読んでみたい印象が残った。
クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰Amazon書評・レビュー:クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰より
4309020763
No.1:
(3pt)

「人間の探求」 を 「ライトな切り口」 で

作品紹介や他の書評に散見される「女子高生」「怪物」「異次元」という単語を見て、「涼」から始まる某有名ライトノベルを連想してしまったが、実際作品を読んでみると内容は大分違っているようだ。

戦闘機や怪物によって家屋が破壊され同級生が次々殺されていく中で、「ぶぉぉぉぉん」「びぃぃぃぃん」といった稚拙な表現を敢えて用いる所には、情景をリアルに想起されるという目的だけでなく、仮想空間の中で「大量破壊・大量殺戮を繰り返して快楽を得る」という筆者(若しくは全ての人間)の奥に根ざす狂人的な破壊願望を表現しようとする意図を感じる。
また、作品の中で登場する異世界は単なるパラレルワールドでは無く、それぞれの世界の存在(死者や霊も含む)が「確率」によってその存在の有無が決定するという点が非常に興味深い。この確率について、筆者は高校数学的な考え方で表現しているが、「存在の確率」というもの自体は恐らく量子力学に始まる現代物理学がその根底にあるように思われる。

筆者の表現力はまだ成長段階ではあるものの、マユミとカナが関係を持ってしまう場面については「官能小説家か?」と疑うほど、極限状況下で発情する少女達を見事に描ききっており、最終局面で意識と無意識の狭間を彷徨いながらクリスタル・ヴァリーを進んでいくマユミの心理・情景描写は、恐怖を覚える程、心に迫るもの(それは感動よいった類のものではなくて、「ありありとした人間」を再認識させるもの)を感じた。

「人間の探求」を「ライトな切り口」で追体験させてくれる作品はあまりないので、これを試みようとしている筆者には一定の評価をしたいと思う。
クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰Amazon書評・レビュー:クリスタル・ヴァリーに降りそそぐ灰より
4309020763

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!