ローラ・フェイとの最後の会話

【この小説が収録されている参考書籍】

【この小説が載っている参考書籍】

評判

ローラ・フェイとの最後の会話の評価:

4.50/5点 レビュー 14件。 C ランク

Amazon書評・レビュー点数毎のグラフです

平均点4.50pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全30件 21〜30 2/2ページ
No.10
(5pt)

人間心理の綾を精緻に描いて心震わせる感動と忘れ難い余韻を残す老練な巨匠の到達点。

日本では文春文庫で人気に火が点き今も多くの根強いファンを持つアメリカの犯罪小説の巨匠クックのポケミス初登場となる2010年発表の老巧な力作です。本書は著者が63歳の時に書かれた作品で、大胆にも非常にシンプルな限られた舞台設定の中で物語を展開し、回想場面を挿んで過去と現在を行き来しながら人間心理の綾を精緻に描き出す事で最大限の効果を上げるという老練な巨匠ならではの大技を披露しておりまして、この味はやはり若手には出し得ない老境の著者の到達点を示していると思います。
自らの新著を宣伝する講演会の為にセントルイスの西部博物館を訪れた歴史学者ルークは、そこで思いがけない女性ローラ・フェイ・ギルロイと20年振りに再会する。動機に不審を抱きながらも彼女とホテルのラウンジで話をする事にしたルークは、やがて自分の心の中にずっと封印して来た遠い故郷の町グレンヴィルで家族に起きた悲劇の忌まわしい記憶が甦るのを感じる。
私が最近の欧米ミステリーの注目作を読んでいて特に感じるのは、推理小説がどんどん普通小説に近づいているなあという感慨です。小説の中で起きる犯罪が大枠では不自然でなく実人生で起きてもおかしくないリアリティーと説得力を備えており、謎は小ぶりでも絵空事ではない本物の物語を読んだ感触に現代の読者は安心感を覚えて、そういった傾向を歓迎している様に私には思えます。そんな作品群が主流になって行く現状については昔から謎解きパズルの本格ミステリーを愛して来た者としては複雑な心境ですが、上辺だけでない真実の人間心理がきめ細かく描写され深い情感を湛えた物語にも大きな魅力が感じられ決して悪くないなとは思います。本書は少ない登場人物、語り手の主人公ルーク、謎めいた女ローラ・フェイ、大雑把な性格のルークの父ダグ、ルークに深い愛情を注いで来た優しい母エリー、ローラ・フェイを盲目的に愛する元夫ウディ、ルークと愛し合いながらも別れた前妻ジュリア、という人々それぞれの性格を二人の会話の中から断片的に少しずつ浮かび上がらせて行きます。そこで感じるのは開けっ広げで単純その物の理解し易い性格もあれば不器用なせいで相手に自分を上手く伝えられない性格もあるという事で、その誤解が積み重なり不運な状況と絡み合って生み出される残酷なドラマを著者は冷徹に描いてみせます。哀しい事に明るい晴天ではなく暗く不運な状況で示される愛情、悪の中にも人として理解出来る同情の余地を残した悲痛な人間ドラマといった著者の資質が遺憾なく発揮された本書は地味ながらも心震わせる感動と忘れ難い余韻を残す秀作だと思います。そして訳者あとがきでも触れられている様に、物語の行く末に希望の灯をともし大きな安らぎに満ち溢れたラストは著者の素晴らしい新境地だと言えましょう。
僅かに残された著者の未訳作品の全てが今後紹介されるかどうかはわかりませんが、これからも確実に刊行されて行くだろう新作は勿論の事としてこの機会に過去の作品群も探し出して読んで行きたいと思っています。
ローラ・フェイとの最後の会話 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 17-1) Amazon書評・レビュー: ローラ・フェイとの最後の会話 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 17-1)より
4151799516
No.9
(5pt)

人間心理の綾を精緻に描いて心震わせる感動と忘れ難い余韻を残す老練な巨匠の到達点。

日本では文春文庫で人気に火が点き今も多くの根強いファンを持つアメリカの犯罪小説の巨匠クックのポケミス初登場となる2010年発表の老巧な力作です。本書は著者が63歳の時に書かれた作品で、大胆にも非常にシンプルな限られた舞台設定の中で物語を展開し、回想場面を挿んで過去と現在を行き来しながら人間心理の綾を精緻に描き出す事で最大限の効果を上げるという老練な巨匠ならではの大技を披露しておりまして、この味はやはり若手には出し得ない老境の著者の到達点を示していると思います。
自らの新著を宣伝する講演会の為にセントルイスの西部博物館を訪れた歴史学者ルークは、そこで思いがけない女性ローラ・フェイ・ギルロイと20年振りに再会する。動機に不審を抱きながらも彼女とホテルのラウンジで話をする事にしたルークは、やがて自分の心の中にずっと封印して来た遠い故郷の町グレンヴィルで家族に起きた悲劇の忌まわしい記憶が甦るのを感じる。
私が最近の欧米ミステリーの注目作を読んでいて特に感じるのは、推理小説がどんどん普通小説に近づいているなあという感慨です。小説の中で起きる犯罪が大枠では不自然でなく実人生で起きてもおかしくないリアリティーと説得力を備えており、謎は小ぶりでも絵空事ではない本物の物語を読んだ感触に現代の読者は安心感を覚えて、そういった傾向を歓迎している様に私には思えます。そんな作品群が主流になって行く現状については昔から謎解きパズルの本格ミステリーを愛して来た者としては複雑な心境ですが、上辺だけでない真実の人間心理がきめ細かく描写され深い情感を湛えた物語にも大きな魅力が感じられ決して悪くないなとは思います。本書は少ない登場人物、語り手の主人公ルーク、謎めいた女ローラ・フェイ、大雑把な性格のルークの父ダグ、ルークに深い愛情を注いで来た優しい母エリー、ローラ・フェイを盲目的に愛する元夫ウディ、ルークと愛し合いながらも別れた前妻ジュリア、という人々それぞれの性格を二人の会話の中から断片的に少しずつ浮かび上がらせて行きます。そこで感じるのは開けっ広げで単純その物の理解し易い性格もあれば不器用なせいで相手に自分を上手く伝えられない性格もあるという事で、その誤解が積み重なり不運な状況と絡み合って生み出される残酷なドラマを著者は冷徹に描いてみせます。哀しい事に明るい晴天ではなく暗く不運な状況で示される愛情、悪の中にも人として理解出来る同情の余地を残した悲痛な人間ドラマといった著者の資質が遺憾なく発揮された本書は地味ながらも心震わせる感動と忘れ難い余韻を残す秀作だと思います。そして訳者あとがきでも触れられている様に、物語の行く末に希望の灯をともし大きな安らぎに満ち溢れたラストは著者の素晴らしい新境地だと言えましょう。
僅かに残された著者の未訳作品の全てが今後紹介されるかどうかはわかりませんが、これからも確実に刊行されて行くだろう新作は勿論の事としてこの機会に過去の作品群も探し出して読んで行きたいと思っています。

ローラ・フェイとの最後の会話 Amazon書評・レビュー: ローラ・フェイとの最後の会話より
4150018529
No.8
(5pt)

ぞくぞくします!

おもしろいにきまっているトマス・H・クックの最新刊!
またしても、ハートを裏返して、その襞のひとつひとつ、シワの溝のひとつひとつを丹念に広げて見せるかのような、繊細かつ執拗な心理描写がたまりません。
「うわぁ〜」
「そんなトコまで・・・?」
というこまかいツボを突きまくり、読んでいて唸らされること数回。
「すごい、すごい・・・」
と没頭していて、降りる駅を乗り越しそうになりましたので、通勤時読書には要注意です。
こんな本を毎週一冊読めたら最高なんだけど。
(うんざりする人もいるかも)
ローラ・フェイとの最後の会話 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 17-1) Amazon書評・レビュー: ローラ・フェイとの最後の会話 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 17-1)より
4151799516
No.7
(5pt)

ぞくぞくします!

おもしろいにきまっているトマス・H・クックの最新刊!
またしても、ハートを裏返して、その襞のひとつひとつ、シワの溝のひとつひとつを丹念に広げて見せるかのような、繊細かつ執拗な心理描写がたまりません。
「うわぁ〜」
「そんなトコまで・・・?」
というこまかいツボを突きまくり、読んでいて唸らされること数回。
「すごい、すごい・・・」
と没頭していて、降りる駅を乗り越しそうになりましたので、通勤時読書には要注意です。
こんな本を毎週一冊読めたら最高なんだけど。
(うんざりする人もいるかも)

ローラ・フェイとの最後の会話 Amazon書評・レビュー: ローラ・フェイとの最後の会話より
4150018529
No.6
(5pt)

クックはやはり素晴らしい!

主人公は,自分の人生の先行きが見えてしまう煤けた小さな町から出て行く。
自分の能力を信じて。
だけど、時間がたち視点を変えると、なんて自分のあれほど信じていた
行動が我が儘で、多くの大切なものを失うことになったのか。
クックは私たちの心のひだに潜む、善意を装った「邪悪」に光をあてる。
決して声高ではなく、告発する。
読後、読者は自分の人生を想う。佳作である。

作品は素晴らしいが、本の値段が高い。文春文庫なら半値か?
ローラ・フェイとの最後の会話 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 17-1) Amazon書評・レビュー: ローラ・フェイとの最後の会話 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 17-1)より
4151799516
No.5
(5pt)

クックはやはり素晴らしい!

主人公は,自分の人生の先行きが見えてしまう煤けた小さな町から出て行く。
自分の能力を信じて。
だけど、時間がたち視点を変えると、なんて自分のあれほど信じていた
行動が我が儘で、多くの大切なものを失うことになったのか。
クックは私たちの心のひだに潜む、善意を装った「邪悪」に光をあてる。
決して声高ではなく、告発する。
読後、読者は自分の人生を想う。佳作である。

作品は素晴らしいが、本の値段が高い。文春文庫なら半値か?

ローラ・フェイとの最後の会話 Amazon書評・レビュー: ローラ・フェイとの最後の会話より
4150018529
No.4
(4pt)

肌で伝える旅路

しがない歴史学者の主人公ルークは、20年前の事件によって両親を次々と失った。
事件の発端になったローラ・フェイという女性が、ルークのもとを訪ねてくる。
避けて通りたいと思いながら、ルークは彼女の言葉から逃げ出すことができない。
そして、会話はいつしか二人の共同作業となってゆく…事件の真実、そして何よりルーク自身の真実をたぐり寄せるために。

物語の中、ルークは歴史の持つリアリティに強い憧れを抱いている。
冒頭、開拓移民の毛布を見た時彼は、その手触りと温もりにまで想像を寄せる。彼にとってそれは資料以上の存在なのだ。
この高い想像力と皮膚感覚が仕事の上でどうしても発揮できず、出版物も講義も平凡なものに終わってしまうのは果たして何故なのか、考えようとしてもそれが果たせない。そういう人物としてルークは描かれる。

対して、教養はなくともローラ・フェイは応用力が高いようで、殆ど出来すきだと言いたくなる。
この事を含め、途中の設定にはやや無理がある(例・父親が店を任せられる人にみえないこと、ウディの存在感が弱すぎること)のだが、その欠点を補うのもまたローラ・フェイ自身なのだ。
恵まれない生活にくたびれた雰囲気の描写が、十分な説得力を与えてくれる。
(個人的には映画「フローズン・リバー」のメリッサ・レオを思い出した)

もうひとつ避けて通れない金銭問題も、物語に揺さぶりをかけて、不安がだんだん増してゆく。
会話中心の前半はやや冗長だが、先ほどの皮膚感覚とこの問題とを編み込ませた上での加速は、近年の作品にない破壊力をぶつけてくる。

彼と同じ選択をせざるを得なかった人が本当に居そうな気がする、それが今の世の中なのかも知れない。

移籍でこれまでの倍額近い価格になってしまったので、食費を削って費用捻出したが買って良かった。
※本の内容とは直接関係ないが、落ち着いた灰色混じりのピンクの背表紙もローラ・フェイという女性にマッチしている。
こういった配慮はやはりありがたい。
ローラ・フェイとの最後の会話 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 17-1) Amazon書評・レビュー: ローラ・フェイとの最後の会話 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 17-1)より
4151799516
No.3
(4pt)

肌で伝える旅路

しがない歴史学者の主人公ルークは、20年前の事件によって両親を次々と失った。
事件の発端になったローラ・フェイという女性が、ルークのもとを訪ねてくる。
避けて通りたいと思いながら、ルークは彼女の言葉から逃げ出すことができない。
そして、会話はいつしか二人の共同作業となってゆく…事件の真実、そして何よりルーク自身の真実をたぐり寄せるために。

物語の中、ルークは歴史の持つリアリティに強い憧れを抱いている。
冒頭、開拓移民の毛布を見た時彼は、その手触りと温もりにまで想像を寄せる。彼にとってそれは資料以上の存在なのだ。
この高い想像力と皮膚感覚が仕事の上でどうしても発揮できず、出版物も講義も平凡なものに終わってしまうのは果たして何故なのか、考えようとしてもそれが果たせない。そういう人物としてルークは描かれる。

対して、教養はなくともローラ・フェイは応用力が高いようで、殆ど出来すきだと言いたくなる。
この事を含め、途中の設定にはやや無理がある(例・父親が店を任せられる人にみえないこと、ウディの存在感が弱すぎること)のだが、その欠点を補うのもまたローラ・フェイ自身なのだ。
恵まれない生活にくたびれた雰囲気の描写が、十分な説得力を与えてくれる。
(個人的には映画「フローズン・リバー」のメリッサ・レオを思い出した)

もうひとつ避けて通れない金銭問題も、物語に揺さぶりをかけて、不安がだんだん増してゆく。
会話中心の前半はやや冗長だが、先ほどの皮膚感覚とこの問題とを編み込ませた上での加速は、近年の作品にない破壊力をぶつけてくる。

彼と同じ選択をせざるを得なかった人が本当に居そうな気がする、それが今の世の中なのかも知れない。

移籍でこれまでの倍額近い価格になってしまったので、食費を削って費用捻出したが買って良かった。
※本の内容とは直接関係ないが、落ち着いた灰色混じりのピンクの背表紙もローラ・フェイという女性にマッチしている。
こういった配慮はやはりありがたい。


ローラ・フェイとの最後の会話 Amazon書評・レビュー: ローラ・フェイとの最後の会話より
4150018529
No.2
(5pt)

善悪二項対立では割り切れない複雑な人間模様を描いた小説

クックは初期から買って読んでいたけど最近の作品は買うだけでほったらかしてましたが、移籍に驚いて買ってすぐ読んでしまいました。
話は主人公が帰郷してかつての知り合いと昔のことを話している内に過去の出来事に意外な側面が見えてくるという展開でした。ここで出てくる登場人物たちの行動や思惑に対して私は誰が悪く誰が良いとはっきりいえない複雑な感慨を持ち、何度も出てくる作者の「人生の最終的で最大の希望は何なの?」という多分読者への問いかけにも明確な答えを持てませんでした。それはこの小説を読んだ他の人もそうであろうし、もしかしたら著者のクック自身もはっきりした読者を納得させうる答えを提示できないのでは、と思いました。そしてこの境地は初期のクックも書けなかったろうと思いました。初期から更に深化したクックの小説家としての技量に感銘をうけました。私の読んでない近作でも多分更なる高みに達していることと思います。内省的だけどあまり暗くならず、読みやすいけど通俗にならない文章も素晴らしいと思います。
前の版元の時、たまたまクック担当の編集者の方とメールをやり取りする機会があり、初期の数作で未訳になってるものはどうなっているか聞いてみたら試行錯誤の時期に書かれた感じで売れそうにないので出せないのと、毎年1作書く人なので出す隙間がない、とのことでした(実際、初期ので後から翻訳された「神の街の殺人」はクックの中で売り上げが1番良くなかったそうです)。移籍を機に(言葉は悪いが)在庫一掃の形で何とか翻訳してもらえんもんでしょうか。他のクックのファンも同じ気持ちだと思いたいです。
ローラ・フェイとの最後の会話 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 17-1) Amazon書評・レビュー: ローラ・フェイとの最後の会話 (ハヤカワ・ミステリ文庫 ク 17-1)より
4151799516
No.1
(5pt)

善悪二項対立では割り切れない複雑な人間模様を描いた小説

クックは初期から買って読んでいたけど最近の作品は買うだけでほったらかしてましたが、移籍に驚いて買ってすぐ読んでしまいました。
話は主人公が帰郷してかつての知り合いと昔のことを話している内に過去の出来事に意外な側面が見えてくるという展開でした。ここで出てくる登場人物たちの行動や思惑に対して私は誰が悪く誰が良いとはっきりいえない複雑な感慨を持ち、何度も出てくる作者の「人生の最終的で最大の希望は何なの?」という多分読者への問いかけにも明確な答えを持てませんでした。それはこの小説を読んだ他の人もそうであろうし、もしかしたら著者のクック自身もはっきりした読者を納得させうる答えを提示できないのでは、と思いました。そしてこの境地は初期のクックも書けなかったろうと思いました。初期から更に深化したクックの小説家としての技量に感銘をうけました。私の読んでない近作でも多分更なる高みに達していることと思います。内省的だけどあまり暗くならず、読みやすいけど通俗にならない文章も素晴らしいと思います。
前の版元の時、たまたまクック担当の編集者の方とメールをやり取りする機会があり、初期の数作で未訳になってるものはどうなっているか聞いてみたら試行錯誤の時期に書かれた感じで売れそうにないので出せないのと、毎年1作書く人なので出す隙間がない、とのことでした(実際、初期ので後から翻訳された「神の街の殺人」はクックの中で売り上げが1番良くなかったそうです)。移籍を機に(言葉は悪いが)在庫一掃の形で何とか翻訳してもらえんもんでしょうか。他のクックのファンも同じ気持ちだと思いたいです。
ローラ・フェイとの最後の会話 Amazon書評・レビュー: ローラ・フェイとの最後の会話より
4150018529