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カッコウの卵は誰のもの



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【この小説が収録されている参考書籍】
カッコウの卵は誰のもの
カッコウの卵は誰のもの (光文社文庫)

カッコウの卵は誰のものの評価: 5.80/10点 レビュー 10件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点5.80pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全4件 1~4 1/1ページ
No.4:4人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

才能を活かすのも本人次第

東野圭吾公式ガイドブックによれば、本書のテーマは“才能って何だろう?”とのこと。
よく才能があると云われるが、それこそ曖昧な物ではないだろうか、そして後世に残る記録を残し、また世界的に活躍したスポーツ選手の二世が必ずしも大成するとは限らない。

そんな疑問に対して東野圭吾氏は実に面白い設定を本書で設定する。それはかつてオリンピックのスキー選手であった父親の娘がその二世としてめきめきと頭角を現しているが、実は血の繋がりの無い親子だったという物。

一方で遺伝子のパターンを研究する機関からその才能の片鱗を見出された一介の高校生がやったこともないスキーのクロスカントリー競技の選手として訓練を受ける。いやいやながらやりつつもその根拠が正しいことを証明するかのように日進月歩の勢いで記録を更新していく。

私がこの高校生の件を読んで想起したのはサッカーの日本代表選手長友佑都氏だ。
彼の無尽蔵と云えるスタミナはかつて両親の祖父がそれぞれ競輪選手、ラガーマンだったことから、持久力に関して良質な遺伝子を受け継いでいるのではないかと云われている。
この高校生鳥越伸吾は長友にクロスカントリーをさせればこうなるのではないかと私に思わせた。

しかし東野圭吾氏はよくもまあ謎を幾層も重ね合せた話を描くものだと読みながら感心した。

育児ノイローゼで妻を亡くし、男手ひとつで育て上げ、一流のスキーヤーへとなろうとしている娘が実は他人の子だった。
そして妻の遺品の中には娘の生まれた年に起こった新生児誘拐事件。
その記事に書かれていた名前の人物が自分を訪ねてきて、血判を渡され、DNA鑑定をすると果たして娘と一致した。
しかしその血判はその男の妻のものではない。
さらに娘に対して出された脅迫状はその男の手になるもので、さらに当人は娘が乗るはずだったバスに乗って、何者かによって仕掛けられたブレーキへの細工で事故に遭い、意識不明の状態になっている。

さらに妻の過去を調べるうちに、明らかに娘の容姿とそっくりの女性が見つかり、それが妻の友人だったことが判明するが、その女性は娘の生まれた年に赤ん坊の遺体と共に焼死体となって発見される。

なぜ真の父親と思われる人物の奥さんは娘に似ても似つかないのか?

なぜ父親と思われる人物は実の娘と思われるスキーヤーに脅迫状を送ったのか?

なぜその人物は自ら乗るバスに事故に遭う細工を施したのか?

娘の真の母親と思われる女性と発見された赤ん坊とは一体誰なのか?

単に赤ん坊を盗みだし、その罪の呵責に耐えかねて自殺したと思われた妻に纏わる事件は調べれば調べるほど謎が積み重なっていく。まさに謎のミルフィーユ状態だ。

しかしそれら全ての謎が明かされると、単純に見えた物語の構図を複雑にするためにかなり無理があったと感じてしまった。

新生児の誘拐事件から始まった事件は単なる子供のすり替えの話だけでは済まない複雑な構図が隠れていることに気付かされる。

しかし上にも書いたように逆にこれが作られた事件としか思えず、しかも全てが十分解決されたか判断すらできないのだ。
プロットを捻りすぎてしまったが故に本書のような単なる応えあわせになってしまった。まあこんなミステリもたまにはいいか。

さて今回のテーマ“才能”について再び考えてみよう。
先にも述べたように才能は親がスポーツ選手や有能な科学者など、ある能力に秀でた者ならばその遺伝子を引き継ぐだろうが、それによって親のように大成するかどうかはまた別の話だ。

自らの才能に胡坐をかいて努力を怠る者は親が成したような偉業は達成できないし、逆にそれが足枷になって自身の人生に臨むと望まざるとに関わらず、常に付きまとう疎ましい幻影となってしまう。

しかし才能に甘んじず、切磋琢磨し、偉大なる親を超えようと努力する者にとっては才能とは天から与えられたギフトである。
実際に世界陸上で華々しいデビューを飾ったサニブラウンは本書でも挙げられているスポーツの優性遺伝子である黒人のそれを受け継ぎ、日本人離れした記録や成績を次々と打ち立てている。

つまりその才能を活かすも殺すも本人の努力次第なのだ。

人が羨ましがるような才能が逆に苦痛の種となり、本当の夢を諦めざるを得なくなるのは本末転倒だ。しかし才能を見出した側にとっては他者にはない特殊な能力を使用し、伸ばそうとしないことは宝の持ち腐れであり、なんとも勿体ない話だ。
私に彼鳥越伸吾と同じ才能があった場合、私は云われるままに代表選手として日々練習に励むだろうか?
果たしてそれは解らない。鳥越伸吾の選択した道は彼の人生だからこその決断だ。
そこに本書の題名の答えがある。カッコウの卵は即ち持ち主自身の持ち物なのだ。それをいかに孵化させ、育てるかはまた当人次第なのだ。

1人の子を持つ親としてこのことは肝に銘じておかねばならない感がである。才能は親から受け継いだだろうが、それを使うか使わないかは本人の意思次第だ。
しかし親はその才能に気付かせる努力をしなければならない。それが親だからだ。

しかし逆に大人になって思うのは今の私は私の中にある才能を十分活かした職に就いているのだろうか?
私にはどんな才能があり、どんな分野で今よりも活躍できたのだろうか?
そんなことを知る術があればいいのにと本書を読んで強く思った。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.3:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

タイトルはイマイチだが中身はそこそこ

東野圭吾久しぶりの本格推理ではなかろうか。
自殺、バス事故、そして脅迫とスリルとサスペンスが交錯し、最後の首謀者の告白に驚嘆させられた。

この小説のコンセプトは「生みの親と育ての親」。これにカッコウの生態が似ていることからこのタイトルなのか。
最後の方に「カッコウ」を語る文章が出てきたので、タイトルは後から付けられたと予想する。
にしても、ミステリーものにこのタイトルは無いだろう。
インパクトに欠けるし、面白そうと思って手に取る人は少なそう。恋愛ものなら有りだと思うが。
東野ファンなら読むべきマスト本だが、初心者にはとっつきにくいという印象。

それと最近の東野さんの文章の書き方にも変化があるような気がする。
文が「~した」で終わるのが圧倒的にに多いのだ。
これでは一文で途切れてしまう感じがして、前後の文章との繋がりがあやふやになってしまう。
読んでいてなんか気持ちが入ってこない。もちろん段落の最後で「~した」は結構なのだが。
最近、他の作家の本も読むようになったので、読みづらくなったという感想を持ってしまった。

と、このように段落の最後でなら「~した」は全く違和感なく、次の文章を読めますよね。
他のこの本を読まれた方はどのように思われたのか気になるところ。
育ての親の自殺の原因がなんとなくわかりづらかったが、それでも面白いのは変わりない。

yoshiki56
9CQVKKZH
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

カッコウの卵は誰のものの感想

うん、なかなか。

はあひい
S8NNOKSV
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

面白い

予想しない展開を迎える場面も多く、
たくさんの謎が散りばめられており、
ラストに向けて絡まった糸が一気に解き解れていく
展開が面白かったです。
これは重い話で、やはりミステリー要素が強かったです。

ディストリー
6971VOAP

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