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(短編集)

禁断の魔術



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【この小説が収録されている参考書籍】
禁断の魔術 ガリレオ8
禁断の魔術 (文春文庫)

禁断の魔術の評価: 7.57/10点 レビュー 7件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.57pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全7件 1~7 1/1ページ
No.7:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

禁断の魔術の感想


▼以下、ネタバレ感想

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mick
M6JVTZ3L
No.6:3人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

科学者が必ず直面する倫理との戦い

探偵ガリレオシリーズ第8作目である本書は一度「猛射つ(う)」という題名で短編として発表されたものに加筆して文庫化の際に長編として発表された。
長編での探偵ガリレオ作品は湯川の葛藤を中心に描かれた物語となっているが、本書もまたその例にもれず、母校の後輩が事件に絡んでいる。

本書の中心人物となる古芝伸吾はかつて高校時代に自分の所属するサークル物理研究会がサークル員が自分1人になったことで存続の危機に立たされて際、新入生の入部勧誘のためのパフォーマンスを行うために先輩たちに助けを求めたところ、学生時代に同じサークルに所属していた湯川が一肌脱いで古芝の手伝いをしたことが縁で、湯川を尊敬し、努力の末に湯川が所属する帝都大学に入学した好青年だ。

さらに彼は両親を亡くし、9歳年上の姉と一緒に暮らしている苦労人でもある。

そんな背景の中で、たった一人の肉親である姉が突然亡くなったことで念願の大学を辞め、町工場に就職するという、既にここで読者の心に遣る瀬無さを誘う設定が織り込まれている。

更に湯川は古芝の入学を喜んでおり、時折彼と連絡を取っていた間柄でもあった。そんな古芝がある事件をきっかけに突然失踪し、東京各所で起きる怪現象にかつて湯川が古芝に授けた部員勧誘のパフォーマンスに使われた技術が関わっていることが判明する。

一人の真面目な青年が身寄りの死によってこれから開けるであろう明るい未来への扉を閉ざされてしまう。本書は初めから人生の皮肉さによって読者の心を鷲掴みにする。

しかしそれが表向きの理由だったことが次第に解ってくる。例えば冒頭に挙げられる偽名を使って東京のシティホテルに宿泊していた女性が翌日に大量の血を流して死体となって発見される。そこに古芝伸吾の許に掛かってくる姉の死を知らせる電話。そして謎の失踪。

作中、科学技術は扱う人の心次第で禁断の魔術にもなると湯川が語るシーンがある。機械の技術者で世界を飛び回っていた亡き父を尊敬し、そして高校時代に出逢った先輩湯川に憧れ、機械工学の道に進んだ彼、古芝伸吾はそのまっすぐな性格ゆえに自分には復讐する武器と知識があることに気付き、復讐の道へ進む。
純粋であるがゆえに人生に折り合いを付けられない。そこに古芝伸吾の哀しさがある。

そして湯川も含め科学者とはその道を究めんとする純粋さが必要なのではないだろうか。古芝伸吾は高校の時に湯川から励まされた言葉

「諦めるな。一度諦めたら、諦め癖がつく。解ける問題まで解けなくなるぞ」

を胸に抱いてきたからこそ難関校である帝都大学に合格した自負がある。つまり求道心が強いからこそそのベクトルが殺人という誤った方向であっても軌道修正が出来なくなるのではないだろうか。
悪は悪であるから裁かれなければならない。
もちろんそうだろう。しかし罪に問われない人物に事情はどうあれ復讐するのはおかしいのだ。求道心は道徳―それが受け入れがたいものであってもーをも凌駕するのかもしれない。

東野氏は『手紙』、『さまよう刃』、『容疑者xの献身』など一貫してこの法律では割り切れない部分を描き、犯罪に走らざるを得ない社会の犠牲者の辛い立場を描いてきた。
古芝伸吾もまたその系譜に連なる犠牲者の1人と云えるだろう。

そしてその古芝が師である湯川から授かった技術がレールガン。これは本当に実在するらしい。米軍で開発も進んでいるという。
私がこの武器の存在を知ったのはゲーム『メタルギア』でかなりずいぶん前だった。確かあのゲームでは連発していたが、実際は一日に1発しか打てない代物で、撃った後も研磨などの整備に何日もかかるらしく、軍事用には向いていないのが湯川の弁だ。しかし数キロ離れたところから標的を捉えられることから実用化すれば恐ろしい兵器になるに違いない。
そんな武器を高校を卒業したての青年が姉を見殺しにした相手の復讐心で完成させる。それは純粋さゆえの過ちだった。

しかし今回最も辛かったのは湯川自身だったのかもしれない。自分が目を掛け、将来を期待した年の離れた後輩が突然の不幸から道を踏み外し、科学を悪用する立場になってしまった。しかも自分が教えた技術で以って。

「科学は世界を制す」が口癖だった古芝の父親はそれが我が子たちに向けたメッセージでありながらも実は科学は使う者によって善にもなり悪にもなる、世界を制するのも豊かな社会にして制する、もしくは軍事的に使われて制するという二律背反性を備えた禁断の魔術師なのだと自身に刻み込んだ戒めの言葉だったことが最後に解る。

300ページ足らずの長編で、元は短編に加筆した作品だったがそこに内包されたメッセージ、とりわけ科学者とはどう生きるべきかという根源的な命題を刻み込んだ作品で中身は濃かった。
そして今までは科学を悪用した相手に博識でトリックを看破してきた湯川だったが、今回初めて自身で授けた技術の悪用と愛すべき後輩に対峙した湯川の心境はいかばかりだったのか。
この事件を経て湯川はさらに人間的な魅力を備えて我々の許に還ってくるに違いない。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.5:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

長編ですよ、これ!

過去のレビューを見ると、短編集と書いてあるのだが、どうしてでしょう。
文庫で読むと、300ページくらいの長編ですがね。
もしかすると、虚像の道化師に含まれた3編がもともとは禁断の魔術としてハードカバーで売られていたのでしょうか?

まあいいだろう。

ところで、この本である名言が誕生する。
「科学を制するものは世界を制す」
なんともすばらしい響きではないか。正に湯川学の為にある言葉である。
今回のお話は湯川の教え子が犯罪に手を染めようとするのを未然に防ぐために、湯川を始め、草薙や内海らが奮闘する物語。
科学全開の湯川ワールドに嵌るし、泣きは無いものの、政治家の悪行に立ち向かう姿に共感も出来るし、ヒーロー物を読む感覚も味わえた。
正に、「科学を制せよ、そして悪は罰っせよ!」に尽きるだろう。
恐らくこの作品も近い内に映像化されるであろう。

yoshiki56
9CQVKKZH
No.4:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

三割打者の安定感

3本の短編と1本の中編を収めた、ガリレオ・シリーズの8作目。期待通りに安心して楽しめる作品ぞろいである。
人気のシリーズも8冊目となると、以前、どこかで読んだことがあるような話も出てくるのだが、それぞれに新しい魅力が加えられていて飽きさせない。
例えば、旅行中などに乗り物内で読むには最適な一冊として、どなたにもオススメできる。

iisan
927253Y1
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

禁断の魔術の感想

作中の「科学を制する者は世界を制する」という言葉。色々な意味で深く考えさせられます。科学が発展することは人類にとって良いことなのか?悪いことなのか?

松千代
5ZZMYCZT
No.2:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)
【ネタバレかも!?】 (1件の連絡あり)[]  ネタバレを表示する

禁断の魔術の感想

ガリレオシリーズ8作目。短編集だが、4話目の「猛射つ」は長編作品のような雰囲気を醸し出しており、長編として独立させても面白かったのではないかと思う。

BOY
IM7XWAPW
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

禁断の魔術の感想

これぞガリレオ!!!
7があまり好みの作品ではなかったので、8は満足度100%でした。

マグル
ZH9M7YFR

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