剣と薔薇の夏
- 日本推理作家協会賞受賞 (110)
- 歴史ミステリ (189)
- 歴史小説 (99)
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2004年に発表され、第58回(平成17年度)の日本推理作家協会賞を受賞した本作品は、1860年(万延元年)のアメリカを舞台に起こった殺人事件を描く、歴史ミステリ。 黒船来航後、開国した日本は、日米修好通商条約を締結することとなったが、その批准書を携えた使節団がアメリカを訪れることになった。 1860年という南北戦争の前年にニューヨークを訪問した彼らは、米国民の熱狂的な歓迎を受けるのだが、その陰で、使節団への脅威とも受け止められる、奇怪な連続殺人が起きていたのだった…。 単行本で、1ページ2段組みで450ページ余り、文庫だと各430ページ余りの上・下2巻、しかも、改行が極めて少ない、という構成ですが、文章そのものは難解なものではなく、「歴史小説」好きならば、すぐにのめり込んでしまう小説だと思います。 1860年のアメリカ・ニューヨークの情景、そこに住む人物、社会情勢、さらには、政治的背景まで、きわめて丹念かつ精緻に描かれています。 1860年のニューヨークへ、時空を超えた旅をさせてくれる重厚な歴史小説です。 さらに、ミステリの部分も充実しています。 不可解な移動をさせられた死体の謎、死体に添えられた聖書の一部は何を意味するのか、さらには、密室状況での殺人事件発生と、本格ミステリの要素が詰まっています。 この難事件に取り組むのが、アメリカ人の新聞記者ウィリアム・ダロウと挿絵画家フレーリで、全編がアメリカ人の視点による文章となっているところも、ユニークなところです。 さらに、ジョン万次郎のような日本からの漂流民、ジューゾ・ハザーム(狭間十蔵)も魅力的な登場人物で物語を面白くさせています。 本作品の著者は最近まで知らず、ネット検索で突き当たった作品です。 ネットの普及していない時代であれば、未読のままになっていたことでしょう。 ネットの時代で良かった! | ||||
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2004年に出た単行本の文庫化。 2005年の日本推理作家協会賞の受賞作である。 著者は『名探偵は最終回に謎を解く』などのジュヴナイル作品で仕事をしたのち、長い沈黙を保っていた。それが17年ぶりに本書で再デビューしたのである。ジュヴナイル作品は江戸の下町を舞台とした軽いものだったが、本書は上下巻で800ページ以上という大作である。 まず、感想から述べれば、読み通すのがかなりつらかった。文章に面白みが欠けるというか、ストーリーに引っ張っていく力がない。緻密で重厚な文体なのだが、十分に味わうには長時間かけてじっくり読む覚悟がいる。 さて、上巻では、ひたすら風呂敷が広げられていく。南北戦争前夜のアメリカを舞台にしたミステリなのだが、日本使節団の来訪を主軸に据え、その興奮と喧噪のなかで殺人が繰り返されていくのだ。そこに黒人解放運動が絡んだり、ジョン万次郎を彷彿させるような漂流日本人が出てきたり。 下巻できちんと畳めるのかというくらいである。 | ||||
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「第58回日本推理作家協会賞・長編部門」受賞作の早速の文庫化ということで、久々に上・下巻に及ぶ読み応えのある歴史ミステリーを味読した。 作者の戸松さんは非常に寡作な作家で、1979年のデビュー以来、26年間に4作品しか書いていない。しかも4作目の本書は前作から実に17年ぶりの新作である。 舞台は南北戦争勃発前年の1860年のニューヨーク。江戸幕府の遣米使節団の歓迎に沸き立つ最中に本格パズラー風の不可思議な殺人事件が次々と起こる。 それらを当地の新聞社の古参記者と若手挿絵画家が、当時のアメリカの社会情勢や政治状況(主に黒人奴隷問題)と有機的に結び付けて解決してゆくという非常に凝った、重層的な構造の作品で、そこらあたりが単なるパズラーや歴史ミステリーを凌ぐ重厚さをかもし出している。 当時のアメリカの社会情勢や北部の大都市ニューヨークの社会風景が極めて精緻に描かれており、日本人の作家の手によるものというより、まるでアメリカの作家の翻訳ものを読んでいるような錯覚を覚えた。 | ||||
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2005年日本推理作家協会賞長編部門受賞作。1860年のニューヨークを舞台にした歴史ミステリー。日米修好通商条約批准交換のための日本使節団が、サンフランシスコを経て、いよいよニューヨークにやってきます。その直前から、ニューヨークでは殺人事件が連続して起こり始めます。手の込んだ残虐な殺し方と、死体に残された聖書からのメッセージ。不可解な謎に新聞記者ダロウと挿絵描きフレーリが、日本使節団の取材を交えながら、挑みます。実はミステリーがかすんでしまうほど、この時代のニューヨークが魅力的。18世紀建築様式の家々、豪奢なホテル、新しい商業施設、ブロードウェイといった街並み。その暗部としてのアンダーグラウンド。文字通り、運河を引き入れた地下に、迷路のような地下街が生まれ始めます。また国の暗部としての黒人問題。この翌年に南北戦争が勃発します。これらを描くとともに、日本という未知のエキゾチックな東洋人を歓迎する人々の熱気を描きます。これほどアメリカ人を熱狂させたことを、著者は当時の新聞から丹念に拾い、考証を重ねています。この時代の日本人をアメリカ側から描いた貴重な歴史小説でもあります。さらに海外ミステリーを意識した精緻な描写と文体。細かなしぐさや服装まで、研究し尽くされています。物語は、政治と社会状況が事件を生み出していく過程をつぶさに語ります。あらためてアメリカがたどった19世紀を思いおこしました。 | ||||
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