蛇鏡



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【この小説が収録されている参考書籍】
蛇鏡
蛇鏡 (文春文庫)
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初公開日(参考)1994年02月
分類

長編小説

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蛇鏡 (文春文庫)

1997年06月01日 蛇鏡 (文春文庫)

婚約者の広樹と共に帰郷した玲は、かつて姉の綾が結婚を目前にして首を吊った蔵で、珍しい蛇の浮き彫りのある鏡を見つける。その日を境に、玲の心の中で何かが変わっていく。そして、様々な人間の思惑が絡み合う中、「みぃさんの祭り」がやってくる…。奈良を舞台に人の心の移ろいを描きだす傑作伝奇長篇小説。(「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

蛇鏡の総合評価:8.50/10点レビュー 8件。Bランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(8pt)

まるで心の中を覗かれているかのよう

姉の七回忌で婚約者とともに故郷の奈良は田原本町に帰省した玲は、実家の蔵の中から銅鏡を見つける。それには裏に尻尾を咥え、花びら形にくねらせた蛇が浮き彫りにされていた。
ある日、父親の史郎がその鏡を見て、憤った。七年前、姉が蔵で自殺した時に傍らにその鏡が落ちており、それ以来、禍物(まがもの)として忌み嫌っていたのだった。史郎は古物商をしている玲の婚約者広樹に売り払うよう頼む。しかし玲はなぜかその鏡を手放せなかった。
一方、大学で考古学の助教授をしている田辺一成は田原本町のある斗根遺跡の発掘に従事していた。昔のお堀の痕跡を掘り当てた一成だったが、その花びらが開いたような形のお堀の形からただの集落の跡ではないと直感する。
調査しているうちに田原本町にある鏡作羽葉神社に行き着いた一成はそこで玲と再会する。かつて二人はお互いに恋を抱きながらも恋愛に結びつかずに別れた仲だった。
さらに鏡作羽葉神社では神主の東辻高遠は境内の鏡池から沸き立つような波が発生しているのを発見する。それは過去に2回発生した凶事であり、言い伝えでは蛇神が復活する凶兆とされていた。そんな中、町では蛇神を奉る地方祭が近づいていた。

この人の小説は一筋縄ではいかない。予定調和で決して幕を閉じないのだ。人間の業はまだ終わらないというメッセージが共通して感じられる。
そして、『死国』、『狗神』、この作品と3作品通して共通しているテーマが、死者の再生。失われた者たちが生者の心の隙間を利用して甦ってくるという設定が一貫して、ある。
生を営む者たちが心の奥底に潜ませている愛という名の傲慢さを発揮した時に、再生を虎視眈々と狙っている死せる者達が牙を剥く。そして坂東眞砂子氏はこの生者たちが己の感情の赴くままに犯す過ちを描くのが非常に巧い。

私を含め、すぐ隣にいる誰かが心に孕んでいる感情、それは凡人であるがゆえに説明できない気持ちや想いをこの人は実に的確に表現する。その心理描写は読中、ページを捲る手、文字を追う眼をはたっと止めるほどストレートに心に飛び込んでくる。恰もページから手が出てきて心臓を鷲掴みにされる、そんな感じだ。
今回も読中、思い惑う表現がいくつかあった。いくつかピックアップしてみよう。

①主人公、玲が自身の性格について語るシーン。
「多弁なのは、(人と喋るのが好きなのではなく)沈黙に耐え切れないからだ」
②同じく玲が婚約者広樹の性格について語るシーン。
「この人は私を見ようとしていないのだ。(中略)それぞれ、相手への自らの愛情の深さをいとおしんでいるだけ」
③そして玲が親類の美佳伯母さんの性格を語るシーン。
「気はいいのだが、自分の言動がどんなに他人を傷つけるのかがわからない女だった」

これらを読むとドキッとする。そうそう、こういう人たちっているんだよなぁと思う反面、これは私のことを客観的に表現しているのではないかと。
特に①は私にかなり当てはまる。こういう文章に遭遇するとき、この作者の人間観察の眼の確かさに感心するとともに戦慄が奔る。出来れば逢いたくない、とまで思ってしまう。

またこの作者は実にドラマ作りが巧い。玲が一成と契りを交わした直後に、なかなか電話を掛けてこない婚約者広樹から電話が掛かってくる。そしてその台詞「ひどいな、玲ちゃん」の巧さ!そして首を吊った玲を助けに入るのが一成ではなく、想いが離れつつある広樹である所なんかも巧いなぁと思ってしまった。人物配置と小道具の使い方が非常に巧く、何一つ不自然さが無い。
そして玲と一成の鏡池でのキスシーンの官能的な事!泥にまみれた二人の指が絡まるところは二人の止まらない愛情の激しさが行間から匂い立つようだった。

これほどまでに構成がしっかりしているのに、結末をああいう形で終わらす事に実は私自身、戸惑いを感じているのだ。これこそこの作者の資質なんだろうが、個人的には余計な味付けだと思った。レストランに食事に行き、おいしい料理を堪能した後で、最後に出てきたデザートが陳腐だった、そんな感じがするのである。やはりここはあるべきところに収まって欲しかったなぁ。残念。
あと最後に1つ。人が首吊り自殺した縄を腰に巻くと陣痛が軽くなるというエピソードが作中出てくるのだが、これは本当なのだろうか?もし嘘だとしたら、死と生を弄ぶがごときこの作者の想像力は恐ろしい。

Tetchy
WHOKS60S
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.7:
(5pt)

神様の閻魔帳にアクセスできる作者

坂東眞砂子はアカシックレコードにアクセス出来る人なんじゃないかと思ってる。
世界を動かす神様にはアクセスできないけど、田舎の神社に祭られている御神体のアカシックレコードなら読めて、小説に起こせるのではないかと。。。
登場人物の思考、行動が操られている感じがしながらも自然で、どの立ち位置に立っても同じ事をするだろう、と思わせるキャラ配置が素晴らしい。
蛇鏡 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:蛇鏡 (文春文庫)より
4167584018
No.6:
(4pt)

連子窓からの目

監視社会が 連子窓から見られているというシーンから伝わってきました。
蛇鏡 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:蛇鏡 (文春文庫)より
4167584018
No.5:
(5pt)

TANUKI

今年著者が亡くなられて、再度どうしても読みたくなり購入。やはり素晴らしいホラー小説と納得!
蛇鏡 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:蛇鏡 (文春文庫)より
4167584018
No.4:
(4pt)

時空・思念・現実と異空間の複層の中で蠢く命(生)のざわめき☆

内容は他のレビュアー氏におまかせして
別の観点から述べたい。

坂東さんの著書は 行間が1行空くと場面転換となる。
場面ばかりではなく 登場人物も時代も場所も自由に変わる。
読者がその一状況に 思いを膨らませ、予想しながらその後の
展開を待ち望んだ途端 1行空いてしまう。
何度も何度もそうやってはぐらかされ じらされながら
結局最後まで その繰り返しなのだ。
いや実際は 繰り返し編まれながら高揚して
唸らせる最終章となる。(弁証法的?)

しかし この複層的文章構成の効果は測り知れない。
途中で読むのを止めることをできなくさせるばかりではなく
読者の頭の中に沢山の映像や場面を記憶させながら
著者ならではの 細やかで五感に張り付くねっとりした描写で
読者を身動きさせなくする。

めくるめく展開の速さに眩暈さえ覚える。
殆ど官能的といっていいほどの世界であるが
どの題材も 知識は限りなく深く また参考文献を丁寧に
紐解きながら 彼女独自の切り口で創造する作品に
圧倒される。読後はいつも 魂がごっそり奪われる。
蛇鏡 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:蛇鏡 (文春文庫)より
4167584018
No.3:
(4pt)

愛されたいと願う女たち

土地の習俗と人間模様を絡ませた物語は、坂東真砂子氏の真骨頂と思います。

氏の描く恐怖が怖いのは、登場人物たちが「恐怖」を恐怖として騒ぎ立てることなく、いつの間にか、ひとつの心情として受け容れてしまうことです。読んでいる方としても、恐怖に対して「そうかもしれない」と思ってしまう。

『蛇鏡』においても、永尾玲が彼女の姉がそうであったように、同じ行動に出ることが読みとれます。「本当に玲はやってしまうのか?」とドキドキしながら読み進むわけですが、どういうわけか、玲がそこに至る心情や行動に納得してしまいます。坂東マジックとでも言うのでしょうか。

また、本著で繰り返される言葉が「愛」。登場する女たちが切実に「愛されたい」と望んでいます。玲を始めとして、綾も霧菜も清代も、皆必死の思いで叫んでいるのが胸に痛い位です。対して、男性の描写はずいぶん淡白というか、時に冷酷だったりします。例外の男性も登場しますが、いまいち唐突な感じが否めません。

男女間の「愛」について、坂東氏は幸福な結末を用意しない傾向があるように思われます。この作品でも、不吉な予感を漂わせながら完結するところは、「やっぱり」と感じます。かといって、心弾む結末であれば「えっ、違う!」と思ってしまうのですけれど。
蛇鏡 (文春文庫)Amazon書評・レビュー:蛇鏡 (文春文庫)より
4167584018



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