(短編集)

神祭



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神祭 (角川文庫)
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初公開日(参考)2003年06月
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短編集

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神祭 (角川文庫)

2003年06月01日 神祭 (角川文庫)

土佐の山に囲まれた盆地に、ひっそり佇む嬉才野村。村の家々では、かつて盛大な「神祭」が行われていた。それは、氏神様に一年の収穫を感謝する祭りであり、遠方からの親戚縁者が集い、村が賑わう日でもあった。村に住む老女・由喜の脳裏に甦った、四十年前の「神祭」の奇妙な記憶とは…。ある盆の日、山中に忽然と消えた公務員・定一。山に隠れて、あることないことを吹聴し、村人を嘲弄し始めた。定一は神隠しにあったのか、それとも死んでしまっているのか…。嬉才野村を舞台に、神秘と幻想美あふれる土俗世界を描いた、珠玉の短編小説集。(「BOOK」データベースより)




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神祭の総合評価:7.13/10点レビュー 8件。Cランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

物語が終っても生活は続く

高知の山村、郊外の村を舞台にした短編集で、5編が収められている。

まず表題作の「神祭」と「火鳥」と「隠れ山」の3編は嬉才野村を舞台にした作品。前者は老女由喜の回想譚。畑の物、海の物、山の物を氏神様に捧げて五穀豊穣を願う神祭。とはいえ、親戚一同が会して宴を行うだけの特にこれといって変わり映えのない祭りだったが40年前の神祭で由喜は今も忘れらない事件がある。それは当時男子に恵まれなかった由喜夫婦のために、精がつくと云われる鶏の生血を夫に飲ませようということになり、親戚一同、盛り上がっていた。夫が暴れる鶏を抱え込み、従兄の敬一が首を刎ねたのだが、首の無い鶏はそのまま裏山に飛び込んで消えてしまい、親戚一同で探索するが、見つからないづくだった。その後、由喜は子宝に恵まれたのだったが・・・。
「火鳥」は村にある二畳ほどの広さしかない蔵番小屋に住む未亡人みきの話。その小屋の隣に家を建てて住んでいたみき夫婦はその肉を食べると祟ると云われていた全身真っ赤な鳥ミズヨロロを食べたために火事で家と家族を失ったと専らの噂だった。しかし村の少年竹雄はいつも満ち足りた表情をしているみきを見て、みきが不幸であるとは信じかねるのだった。ある日、竹雄はみきが川で全裸で水浴びをしている所に遭遇する。それは竹雄の性の目覚めであった。それがきっかけでみきと時々交わる事になった竹雄だったが、ある夜、我慢できなくなり、みきに夜這いをかけようとするのだが。
「隠れ山」は北村定一という村役場の課長が突然失踪するという話。家庭菜園と亡き母の墓の世話を唯一の趣味にしている何の特徴の無いこの男らしく、いつものようにふらっと出掛けたまま、それっきり帰らなくなってしまったのだった。村の消防団で山中を捜索するが、どこそこで見たという噂があるだけで、その行方は杳として知れなかった。しかし、失踪1ヵ月後、頭から血を流して佇む定一の姿を見たという人物が現れる。しかし、それは北村定一という男がその後、繰り返す奇行の始まりでしか過ぎなかった。

4編目の「紙の町」は嬉才野村の近くにある白糸町を舞台にし、そこに住む知恵遅れの老女ヒサの一日の散策とそれに伴う生い立ちの回想譚。
最後の「祭りの記憶」は戦後10年目のよさこい祭りで起きた外国人殺害事件を扱った作品。外国人の殺害事件が起こった祭りのとき、田宮良則は現場の近くに居た。その時、不意にすれ違った恍惚な表情を浮かべた若者の顔に見覚えがあった。記憶を辿り、それがかつての教え子村上卓雄だと気付く。隠居前、蓮浜で学校の先生をしていた田宮は当時大人しく、これといって特徴の無かった卓雄が犯人ではないかと思い、蓮浜へ赴く。当時と変わりの無い街並みを歩きつつ、かつての教え子やその親たちと邂逅しながらも当の卓雄には逢えないのだった。数日後、はりまや橋の料亭で働く卓雄の母親を訪れたその足で再び蓮浜を訪れた田宮が見たものは・・・。

土俗ホラー作家として名高い坂東氏だが、本短編集ではホラー色がでているのは最後の「祭りの記憶」ぐらいで、その他は日本昔話や「世にも奇妙な物語」を髣髴させる御伽噺とか「奇妙な味」作品群である。
今までの短編集もそうだが、30~40ページ前後の短編とは云え、その濃厚な筆致は全く薄まっていない。逆に時にどぎつさを感じさせられる情念は成りを潜めている分、その文章は洗練された印象が強い。

5編とも外れはなく、どれも読み応え十分。表題作の首の無い鶏のアイデア、「火鳥」の南国を舞台にした少年の性の目覚めとギラギラした情欲の話、「紙の町」の知恵遅れの女ヒサが辿ってきた人生譚、「祭りの記憶」の引退した教師が遭遇する蓮浜という一見善良な町民が行ったある秘密、等々非常にコクがある。
そして個人的なベスト作品は「隠れ山」。何の特徴もない公務員の男があるとき、ふらっと失踪する。その発端自体は決して珍しい物ではないが、その後の展開に着想の冴えが光る。その定一が出くわした人々に当たるとも遠からずの町民の噂話をしては山へ帰っていくというのが面白い。それが町の混乱を引き起こすのだが、そこでカタストロフィが訪れるのではなく、それをありのままに受け入れる村社会の、懐の深さというか、暢気さが非常にいいのだ。

そして坂東作品に通底する人の起こす物事は性の衝動に起因するという考えはここでも常に述べられており、特に知恵遅れのヒサの口を通して語られる、「下半身にいる別の生き物」や「昼と夜とでは人は変わる」といった表現は痛烈である。
そしてこれらの話は全て何かが解決するわけでもなく、物事は起こった後も、そのまま秘密のままに残される。本格ミステリとは対極に位置するが、これもまたミステリ。謎は謎のままなのが世の常なのだ。

初期の『死国』、『狗神』、『蛇鏡』、『桃色浄土』、『山妣』、そして短編集の『屍の聲』などでは、それぞれの人が抱える人間の業が情念の渦となり、最後の最後にカタストロフィとして、それぞれに人生の終焉や無限に続く不幸を投げかけるといった作風だったが、先の『葛橋』や『道祖土家の猿嫁』以降、本作も含め、物事が起こるが、それで皆が不幸を迎えたり、生活が破綻するではなく、その後も人の営みは続くのだという風に変わっている。これはもちろん創作者としての成熟もあるのだろうが、当時タヒチに在住する著者が異国で体験する事も関係しているのかもしれない。

Tetchy
WHOKS60S
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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No.7:
(5pt)

好きな作家です

折口信夫の「死者の書」を思い出させるような、独特な雰囲気を感じさせてくれる作家。民俗学ホラー&ミステリー&サスペンスとでも言えばいいのか...この作家でしか味わえない唯一無二の世界を楽しめます。
この作品はそんな坂東眞砂子の短編集、どれも佳作でおすすめの一冊
です。
神祭 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:神祭 (角川文庫)より
4041932092
No.6:
(4pt)

普段心身の奥に畳み込まれているものが蠢く☆

長編『道祖土家の猿嫁』を読んだ後でしたが
短編にも 著者の人間の捉え方の厚みが浸み込んでいます。
登場人物の言動には
道徳観などの「脳」が入り込む甘さはありません。

五つの短編の根底に流れるものは
大らかで正直で汚くて純粋なものです。
罪の意識などという頭で考えたものではない情動が
主人公たちを突き動かしています。

「隠れ山」の終わり方には ちょっと物足りなさを感じますが
どの作品も 著者の観察力からくる
形容詞句・副詞句 形容詞節・副詞節の見事さに唸ります。

土佐のある地域の情景を素材にしていますが
特殊な条件が必要なのではなく普遍性をもっているのが
すごさの所以でしょう。
神祭 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:神祭 (角川文庫)より
4041932092
No.5:
(5pt)

「祭り」がテーマの土俗的短編集

土佐を舞台にした、土俗色の強い5篇を収める短編集。テーマは祭りということでしょうか。

 「隠れ山」に対する評価が高いようですが、私は4作目の「紙の町」が印象深かったです。これまで読んだ坂東作品の中では唯一、軽度知的障害者を主人公にして、世界を眺めています。その心理描写など、並の作家にできることではありません。
 幻想的な結末も、味わい深いです。…まあエロスも入っていますが。
神祭 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:神祭 (角川文庫)より
4041932092
No.4:
(5pt)

濃厚な世界観

5編の短編小説集ですが、いずれも人間の業や宿命といったものが濃密に描かれており独特な世界観を堪能することができたと思います。読み終えた後、不思議な余韻が残る作品が多かったと思います。

幻想的な雰囲気が漂う表題作「神祭」、濃密な性描写と切ない読後感が印象に残る作品「火鳥」などいずれの作品も小説としての完成度が高く、人間の内面の深い部分が掘り下げて描かれており、秀逸だと思います。
神祭 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:神祭 (角川文庫)より
4041932092
No.3:
(3pt)

現代版「遠野物語」?

5編中,「隠れ山」が好き。

 平凡な公務員だった定一が,ある日突然失踪する。定一は,山に隠れて,会う人に対し,嘘ではないけれども本当でもない与太話をするようになった・・・。不思議な設定のまま迎えるアンチ・クライマックスが,どことなく,現代版「遠野物語」のような不思議な余韻を残す,不思議な作品だった。
神祭 (角川文庫)Amazon書評・レビュー:神祭 (角川文庫)より
4041932092



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