007/わたしを愛したスパイ
- 007 (16)
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「ジェイムズ・ボンド」シリーズの第10作(長編小説としては第9作)。イアン・ランカスター・フレミングとヒロイン「ヴィヴィエンヌ・『ヴィヴ』・ミシェル」の共著という体裁をとっており、物語はヴィヴの一人称「わたし」で語られている。 ロンドンへの核ミサイル攻撃やフォート・ノックス襲撃や戦略爆撃機乗っ取りといった陰謀に比べて、本作で描かれる保険金詐欺はスケールが小さい。これまでの冒険活劇で大風呂敷を広げすぎたフレミングが、もともと書きたかったハードボイルド小説に原点回帰したのだろう。主人公の内面をくどくど説明しないのがハードボイルド小説だとしたら、他者の視点で書くというのは1つのアイデアではある。 また、世の中のリベラルな風潮に逆らって、「女はみんな強姦のような愛され方を好む」というマッチョな女性観を、あえてヒロインに語らせたかったのかもしれない。 ボンドの研究家ジョン・グリスウォルドによると、掌編「007号ニューヨークを行く」(小林弘子訳、『ハヤカワ・ミステリ・マガジン』2008年10月号所収)とこの『わたしを愛したスパイ』に描かれている時期は、ちょうど第11作『女王陛下の007』(1963年)の第5章と第6章の間の2か月間に当たるという。たしかに、本作でボンドは国際犯罪組織「スペクター」の復活を認知しているので、『女王陛下の007』の前ということはありえない。逆に、『女王陛下の007』のあとなら、「エルンスト・スタヴロ・ブロフェルド」とその部下「イルマ・ブント」に愛妻「トレイシー」を殺されたショックで酒浸りになっているはずだから、これまたありそうにない。 フレミングはヴィヴィエンヌという名前を、ジャマイカの別荘「ゴールデンアイ」の隣人の一人ヴィヴィエンヌ・スチュワートから採っている。ヴィヴはカナダのケベック州のセント・ローレンス川の中州のようなオルレアン島のサント・ファミーユで生まれる。 8歳のとき両親が航空機事故で死亡し、叔母「フローランス・トゥサン」が後見人になる。フローランスはプロテスタントだが、亡くなった両親がカソリックだったので、ヴィヴはウルシュリーヌ修道院で中等教育を受ける。 その厳格さに耐えられなくなり、16歳のときフローランスの計らいで英国バークシャー州サニングデールの花嫁学校アスター・ハウスに留学。17歳半のときパーティでイートン校の学生「デリック・マラピー」と知り合い、ウィンザーのロイヤルティ・キネマ映画館で体を求められる(まるでポルノではないかと物議を醸したシーンだが、フレミングもまさにこの映画館で童貞を捨てたのだという)。デリックがオックスフォート大学に進学すると、2人は別れる。 ヴィヴはローカル誌『チェルシー・クラリオン』に編集長助手として就職。『チェルシー・クラリオン』は「ハーリング」という職人が組む活版で印刷されていた(フレミングはハーリングという名前を、海軍情報部〔NID〕と『サンデー・タイムズ』で同僚だったタイポグラファー〔文字デザイナー〕のロバート・ヘンリー・ハーリングから採っている。ハーリング死後の2015年に遺稿『イアン・フレミング――ジェームズ・ボンドを創作した男の個人的な回想』が出版されている)。 ヴィヴはバスの車掌「フランク・ドナルドスン」を取材して過重労働の実態を告発(フレミングはフランク・ドナルドスンという名前を、妻アン・ジェラルディン・メアリー・フレミングの友人で伝記作家のフランシス・アネスレー・ドナルドスン男爵夫人から採っている)。一流のジャーナリストを目指す。 21歳のとき西ドイツ新聞協会(VWZ)のロンドン通信員「クルト・ライナー」に誘われて、その助手に転職。「トルーデ」という娘と婚約していたクルトが、婚約を破棄される。憐憫からクルトと関係を持ったヴィヴは、23歳のとき妊娠。途端にクルトが冷たくなり、ヴィヴはスイスのチューリヒで堕胎手術を受ける。 心も体も傷つき、ヨーロッパに居場所はないと感じて、帰国を決意。ロンドンで購入したヴェスパを、カナダに送る。 化粧を落として里帰りし、短期間フローランスとともに過ごす。それからヴェスパでさすらいの旅に出る。 途中、米ニュー・ヨーク州アディロンダック山地のドリーミー・ウォーターズ湖畔にある廃業間近のモーテル「ドリーミー・パインズ・モーター・コート」に泊まる。女支配人「ミルドレッド・ファンシー」とその夫「ジェッド・ファンシー」が、受付のアルバイトに誘う。モーテルのオーナーは「サンギネッティ」という実業家だという。手持ちの金が心細くなっていたヴィヴは、引き受ける(フレミングの友人アイヴァー・フェリックス・C・ブライスはアディロンダック山地に「ブラックホール・ホロー農場」を持っており、フレミングはそこを訪ねる途中でよくこうしたモーテルを目にしていた)。 廃業前日の朝、明日サンギネッティに鍵を渡せばいいからと言い残したファンシー夫妻が、ステーションワゴンに乗って出ていく。雷雨の夜、メトロ損害・家庭保険の「ジョーンズ」と「トムスン」と名乗る男たちが、押しかけてくる。本名を「『スラグシー』・モラント」と「ソル・『ホラー』・ホロウィッツ」といい、サンギネッティに雇われた殺し屋だった(「スラグシーとホラー」なんて安手のスリラーを連想させる二つ名だが、フレミングはパルプ・フィクションのような味わいを狙ったのだろう)。たちまち凶暴性を露わにした男たちに、ヴィヴは犯されそうになる――。 一方、英国に亡命して秘密を洗いざらいぶちまけたソ連の原子力潜水艦建造の技師が、秘密情報機関(SIS)に新しい身分を与えられてカナダのトロントで暮らしていた。国家保安委員会(KGB)が裏切者を探し出して処刑しろという指令を全世界に発する。亡命者の潜伏先を嗅ぎつけたスペクターが、10万ポンドと引き換えに始末してやるとKGBパリ駐在部に持ちかける。KGBは応諾し、ブロフェルドは元ドイツ秘密国家警察(ゲシュタポ)メンバー「ホルスト・ウールマン」をカナダに差し向ける。ウールマンはトロントの犯罪組織「メカニック」の地回りを5万ドルで雇って襲撃を企てる(「メカニック」は架空の犯罪組織だ)。メカニックにもぐりこんでいた王立カナダ騎馬警察(RCMP)の潜入捜査官が、殺害計画を通報する。 SIS長官「M」に命令されてブロフェルドを追及する「べドラム作戦」を担当するボンドは、ひょんなことから「テレサ・『トレイシー』・ディ・ヴィンセンツォ伯爵夫人」の命を助ける。そして、トレイシーの父親でコルシカの犯罪組織「ユニオン・コルス」の首領である「マルク=アンジェ・ドラコ」に、ブロフェルドがスイスに潜伏していると教えられる(「ユニオン・コルス」は実在の犯罪組織だ)。だが、それ以上の進展がなく、もどかしい日々を送る。 SISを退職してニュー・ヨークに住む女が、国連本部職員に偽装したKGB部員とそうと気づかずに同棲。それを知ったMが、米連邦捜査局(FBI)や中央情報局(CIA)に知られる前に手を打とうと、ボンドを派遣。「デイヴィッド・バーロウ」に偽装したボンドは、多少の手違いはあったもののロックフェラー・センターのスケート・リンクのそばで女と密会して、Mの警告を伝える。自殺すると泣き出す女に、ボンドは途方に暮れる。 ウールマンが亡命者を狙っていると知ったMが、ボンドをトロントに急行させる。ウールマンを生け捕りにしたいボンドは、亡命者とすり替わってアパートで待ち伏せる。だが、銃撃戦となり、ウールマンに深手を負わせしまう。ウールマンはスペクターについて一切喋らず翌日病院で死亡。Mからメカニックの米国側組織の摘発に協力しろと命じられたボンドは、フォード・サンダーバードでワシントンに向かう。その途中でタイヤがパンクし、ドリーミー・パインズ・モーター・コートに立ち寄る。 スラグシーとホラーに襲われたヴィヴは、白馬の騎士のように現れたボンドに救われる(229ページ中139ページ目にしてようやくヒーローの登場だ!)。護身用に「スミス・アンド・ウェッソンのポリス・ポジティヴ」を渡される(これは「コルト38口径ポリス・ポジティヴ」の間違いだろう)。 就寝中にスラグシーに客室に押し入られ、頭を殴られて昏倒。スラグシーとホラーがモーテルに放火するが、ヴィヴはボンドに救出されて森に避難。サンギネッティがヴィヴのランプの火の不始末に見せかけて保険会社から火災保険金を騙し取ろうとしたのだ。 ヴィヴとボンドを焼き殺したと思い込んだスラグシーとホラーが、行きかけの駄賃にテレヴィを盗み出そうとする。両手がふさがった2人に、ボンドが銃口を向ける。ホラーの拳銃を取りあげようとするヴィヴは、逆に人質にとられてしまう。ボンドがホラーに威嚇射撃をして、ヴィヴは逃げ出す。ボンドの銃弾を浴びたスラグシーが、軽機関銃を放り出してセダンに逃げ込む。ホラーも車に乗り込む。ヴィヴとボンドは車に発砲し、車は崖から転落して湖に沈んでしまう。 生き延びたヴィヴとボンドは、焼け残った3号室で激しく愛しあう。だが、水没する車から脱出していたスラグシーが、天窓から2人を見下ろして銃口を向ける。ヴィヴは悲鳴をあげ、ボンドはスラグシーに発砲してとどめを刺す。 晴れ上がった翌朝、ヴィヴが目覚める前に、ボンドは立ち去る。ボンドの通報を受けた警察が到着。事情聴取を終えた州警察の「ストーナー警部」が、あなたはいまボンドという男に心を奪われているかもしれないが、所詮彼は冷酷非情な世界の住人なのだと諭す。だが、ボンドの面影を胸にヴィヴは旅を続ける。 帰任したボンドは、チューリヒの弁護士事務所を表に立てたブロフェルドが、英国王立紋章院のお墨付きを得てフランス貴族「ド・ブルーヴィル伯爵」になりすまそうとしていることを知る。SIS部内にさえブロフェルドの追及が終わったと信じこませるために、べドラム作戦は終了。かわってひそかに「コロナ作戦」が発動されて、紋章院の紋章官「ヒラリー・ブレイ卿」に扮したボンドはスペクターの本拠地ビズ・グロリアに乗りこんでいく。 フレミングが本作で試みた新機軸は、読者には不評だった。エロティックといっても今日の目から見れば「ハーレクイン・ロマンス」と同程度だろうが、1960年代初めには猥褻だとみなされ、いくつかの国では発売禁止になったほどだ。フレミングはよほど応えたのか、本作の重版もペーパーバック化も映画化も禁じた。ペーパーバックが出版されたのは、フレミング死後のことだ。映画『私を愛したスパイ』(1977年公開)も題名を拝借しただけで、ストーリーはまったくの別物だ。 | ||||
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イオンの映画化にあたっては「タイトルのみの使用しかまかりならん」とされたシリーズ異色の本作。 確かに世界を股にかけるような舞台スケールも巨悪との大掛かりな対決もなく、第一部”わたし”ではヒロイン?の恋愛遍歴が延々と語られている辺りなんかは、007映画から原作に興味をもって初めに手にする作品だったりした場合には「なんじゃこりゃ」と投げ出されかねない程ではありますね。 ところが私はこの作品、結構好きなんですねぇ。 映画、小説、共にトホホな「黄金の銃をもつ男」「黄金銃を持つ男」よりも余程楽しめる。 シリーズ中たまにはこんな一風変わった作品があってもいいんじゃないでしょうか? | ||||
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この[わたしを愛したスパイ]は、イァン・フレミングの小説007シリーズの中では、番外編となっておりますが、私は初めて読んだ時からプロットが変わっていて結構好きな小説です。 | ||||
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前作にあたる「サンダーボール作戦」が個人的に好きになれませんでした。 作者も作風を変えてリフレッシュしたかったのか、、、007は後半しか出てきませんし、、、最後は、、、居ません。。 がとても楽しめました!!!! 最初の方は、、、、官能小説のような感じ。。 しかし楽しめました(笑) | ||||
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この本が発売されたのは映画の『007ドクター・ノー』の上映に合わせてだったと思う。 映画になるまではイアン・フレミングも007も全く無名だったのに、一躍ブームになったのを覚えている。 まだ小さい頃だったが、昔の子供はませていた。友達の一人が、すごい本があるぞ、とこの本を渡してくれた。 映画館の特別席でエッチをする、この情景描写に小さな子供達は、大人はこんなことをやっているのかと、興奮したものだ。 この本を皮切りに、早川書房からは数冊の007シリーズが出版されたと思う。 もちろんこれらはまともなスパイ小説として、子供を熱狂させてくれた。 最近になって再度この本を読み返してみた。 レベルの低いポルノ小説だが、日本で初めて007が紹介された記念碑的作品であると同時に、私にとっては少年時代のよき思い出として貴重である。 | ||||
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