(短編集)
アシェンデン
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| . 第一次世界大戦中、イギリス人作家アシェンデンは祖国のためにスパイ活動に勤しむことになる。これはその顛末を描いた連作短編集。 --------------- 『月と六ペンス』や『人間の絆』で知られる作家サマセット・モーム自身、大戦中にMI6の一員として諜報活動に携わった経験があります。これはそのときの実体験を基に描いているのでしょう。 実際に諜報活動に携わったイギリス人作家といえば、007シリーズのイアン・フレミング、『第4の核』で知られるフレデリック・フォーサイス、そしてサーカス・シリーズのジョン・ル・カレと、有名どころが数多存在します。フレミングは華麗で女性にも大人気のスーパー・スパイ、フォーサイスは一応の大団円を迎えるエンタメ・スパイ小説、ル・カレは非情なスパイの実態を冷徹に描く、とそれぞれ個性があります。モームの『アシェンデン』はそのどれとも異なり、ある種淡々と、だからこそ日常の市民生活と諜報活動の不即不離な様子を描いているな、というが素朴な感想です。 そしてわたしの心に一番残ったのは、諜報活動の様子ではなく、実ることのなかった女性との熱情を描いた『大使閣下』と『恋とロシア文学』の2編です。 『大使閣下』はX国に駐在するイギリス人大使のウィザースプーン卿がかつての友人の女性関係――と称してはいるものの十中八九、自身の体験――を語る短編です。卿とアリックスという軽業師の女との間に恋情が生まれますが、女の自由奔放ぶりに卿自身は翻弄され、腹を立て、それでも縁を切ることができません。自らの気持ちを御することのできない、惚れた男ならではの哀れに心惹かれるのです。 また『恋とロシア文学』ではアシェンデン自身とロシア人女性アナスターシャ・アレクサンドローヴナとの間のいわくいい難い関係が乾いた筆致で描かれます。あれほど気のあったはずの相手の女性なのに、その女性のほんの些細な日常の習慣が、男の胸中で耐え難い障害と化していく。それでいてアシェンデンと件の女性は数年を経て『ハリントン死の洗濯物』で奇妙な再会を果たします。どこか割り切ったように大人の対応を見せるふたりの関係が奇妙に印象的です。 この『ハリントン死の洗濯物』はモーム自身がロシア2月革命直後に首都ペトログラードに入って諜報活動に当たり、それがレーニン率いるボルシェビキの11月革命によって頓挫していった苦い経験が背景にあります。当時のロシアの混乱状況を間近に目撃した作家ならではの緊迫感が描かれていて、その点もまた、味わい深い一編といえます。 翻訳は河野一郎先生。33歳時の1963年(昭和38年)に新潮文庫用に翻訳されたものを、1994年にちくま文庫に収録するにあたって手を入れています。『翻訳上達法』(講談社現代新書)等の指南本を残した河野一郎先生ならではの、大変読みやすい邦訳です。 . | ||||
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| スパイ小説の超古典。作者は第一次世界大戦時に大英帝国のスパイとして暗躍。フィクション化されて、いくらく誇張があるにせよ、登場人物のスパイや暗殺者も怪物ぞろい。最後はロシア革命で終わるが、そこで描かれるロシア人が傑作。また、革命前の西ヨーロッパでのロシア・ブームの描写が見事。 ロシア革命が成功したのは、それが大戦前の世紀末ヨーロッパの没落感と連動していたからだと、ぼくは思うが、リアリスト・サマセット・モームはどうもその没落感を楽しんでいる気配がある。自称リアリスト、実はニヒリスト。人間とは卑小なものだとモームは得々としている、安全地帯(?)でね。 | ||||
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| モームの作品はどれも退屈しないでどんどん読める。 ロシアのウクライナ侵略でプーチンがKGBに居たということで、読んでみたくなった作品。 中でも「売国奴」の章が一番おもしろかった。 私はモームと相性がよいようで、もっとモーム作品を読んでみたくなり、「要約すると」と「お菓子とビール」を注文した。楽しみである。 | ||||
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| 全く問題なし | ||||
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| たぶん、一般受けはしないだろうが。これは、なかなかいい。こういうのを読むことは老人の冬場の夜の愉しみのひとつなのだ。満足です。 | ||||
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