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トラ さんのレビュー一覧
トラさんのページへレビュー数25件
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前作の「満願」が好評だったことあって、出版直後に本書を購入し、早速読み始めましたが、3分の1ほどのところで挫折してしまいました。
2001年頃のネパールの様子を知りたいわけでも無いし、またその頃に勃発した王族殺害事件が詳しく書かれているわけでも無く、そのことに興味も持てませんでした。 もっとも、この本の内容は、王族殺害事件の話ではなく、それは単にこの小説の背景にすぎなかったのですが・・・。 カトマンズの街の様子や、ここからどこそこに行く近道の様子を書かれても、面白くも何ともありません。 カトマンズと言えば、まだネパールではマリファナが合法だった頃に作られた映画で、ジェーン・バーキンとセルジュ・ゲンズブールが共演していた「カトマンズの恋人」(1969年上映)で見た風景が記憶の底にあります。 さすがに、2001年頃には、その当時のようなユートピアを求めてやってきた白人の若者たちが、ホームレスのようにたむろって、あてもなくさまよい、クスリに溺れ、誰とは無しに抱き合っている・・・といった、そんな退廃的で自堕落な姿はすでに無くなっているにせよ、本書に書かれている街の様子とほぼ変わりばえのないイメージだったので、なおさら興味も持てませんでした。 ところで、12月になって、各紙のミステリベストテンを見て驚きました。三紙で1位、残りの一紙で3位です。 そこで、再度頑張って読み直しました。 海外旅行雑誌の取材の下見に行った時に出会った王族殺害事件を、日本で記事にするために取材を続けていくという話なんですが、その過程で殺人事件に遭遇してしまいます。 殺人事件が起こってからは、それなりに読み応えはありました。でも、身の安全が保証できない地域で、大きな事件を取材している途中に戒厳令もひかれ、緊迫している状況下なので女性ジャーナリストの身の危険を心配しながら私は読んでいるのですが、危険と隣り合わせになって居るという様子が伝わって来ません。 彼女が簡単に殺されてしまっても、おかしくない状況なのに、そんなに危険な目に遭わないし、その上、本書で初めて出会う女性と言う事もあって、なかなか感情移入できないので困りました。 私としては、この本をミステリとして評価するのは、ちょっと違うのではないかと思って居ますが、「広義の」というところでは、仕方が無いのかも知れません。 余談ですが、年明けに本屋さんに行ったら、本書が山積みされていました。帯には、「2015年度ミステリベストワン」と書かれています。 それを見て2000円ほどの本書を買われる方も居られるのかと思うと、こういったベストテンにはいささか疑問を感じてしまいます。 |
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4編の連作短編集です。
「氷結のメロディ」 鳥遊(とかなし)葵という、女装男子が登場します。それにしても、いつもながらの難しい名字です。小鳥遊(たかなし)とうのは知っていましたが、鳥遊(とかなし)は初めて知りました。 さて話は、櫃洗大学でバンド活動をしていた仲間4人が、次々と墜落死や自殺してしまい、一人残った女装男子の鳥遊葵が悩んでいるところに、住吉ユリエが声をかけ、彼女の「だ~りん」こと、腕貫さんの所へ連れていくという話です。 話を聞いただけで、腕貫さんが事の真相にたどり着くと言うことは、私たち読者も、腕貫探偵と条件が同じなので、よく読めば気がつきそうなんですが、ある程度の想像力が必要となるので、難しいですね。 一年半ぶりのシリーズなので、楽しみながら読みました。 「毒薬の輪廻」 婚約者が毒殺され、結婚できなくなった女性・新田目(あらため)美絵が、20年ぶりにその元婚約者の母親に会ったところ、突然切りつけられたと言う話です。 警察の判断では、おそらく、息子を毒殺した犯人が美絵だと思っての犯行だ・・・と言うことですが、その言葉に納得できない美絵が、いきさつを腕貫探偵に話していると、意外な結末が・・・。 話の中で、ちょっと複雑な家庭の事情が出てきますので、私にとってはあまり興味を引く話ではありませんでした。 「指輪もの騙(がた)り」 この話には、腕貫探偵が登場しません。 住吉ユリエ、鳥遊葵、阿藤江梨子の三人に、突然出会った刑事・氷見と水谷川(みやかわ)がランチにさそわれ、そこで30年ほど前の未解決事件を話すことになります。 5人でその事についていろいろ話していき、それぞれが少しずつ気がついたことをつなぎ合わせていくと、いつの間にか真相らしきものが見えてくるという流れです。 数人で、一つのことについて話し込むことで、意外な方向に話が進んでいくものなんですね。それにしても、この作者は、こういった話の作り方って上手いです。 30年前の未解決事件の犯人がわかっても、以前は時効というのがありましたが、今では殺人については時効がなくなっているので、検挙できそうです(笑) 「追憶」 一週間前に死んだ女性が、成仏できない理由を腕貫探偵に相談するという話です。 幽霊の視点で、腕貫さんとのやり取りが進んでいくというのも面白い所です。 読み返すと、謎を解くためのキーになる言葉が、あちこちに入って居るのに、気がつかないのは情けないですね。 |
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御手洗潔シリーズ50作目と言う事で、早速購入しました。
このところの島田荘司のミステリは、大層なトリックと見せかけて、実はそうでも無かった・・・というのが多く、少しずっこけ美味でしたが、本作は久々の御手洗潔の登場と言うことで、期待して読みました。 内容を一言で言えば、「自殺するはずのない人たちが、次々に飛び降りる屋上の謎」と言うことなのでしょうが、話がだらだらしすぎて、長編にする必要があったのだろうかと思えてしまいます。 謎解きだけなら、中編で十分です。余計な部分が多すぎて、ちょっと中だるみもしました。 また、大阪の女性が登場しますが、変な大阪弁ですね。私は大阪に住んでいますが、あのような大阪弁を使う女性に会ったことがありません。 時代が違うのかとも思ったりしましたが、時代設定は1991年1月で、舞台は神奈川県T見市と言う事です。 別に大阪弁を使う女性を登場させなくっても良いような展開ですが、終始気になって仕方がありませんでした。 また、変なラーメン屋のおじさんの話なんて、どうでも良い感じです。 それでも、260ページを過ぎたあたりからやっと、御手洗潔と石岡和己の掛け合いも登場し、それ以降は読む速度も早まりましたが、何かドタバタ喜劇の裏側を読んでいるような感じで、今回もずっこけながら読み終えました。 余談です。 読後に知ったことですが、作者の島田荘司さんが、NHKの朝ドラ・「あさが来た」を欠かさず見ていたそうです。 それで本作に最初に登場する女性が大阪出身で、神奈川に行っても大阪弁を話すと言う事は、もしかして朝ドラの影響なのでしょうか? なので、登場する女性が、今はもう使わなったような、昔の大阪弁を使っているのかも知れないですね(笑) |
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発行店のHPに本書の紹介として書かれていた文章を読んだとき、(主人公の)伯朗と、弟の妻・楓との間に、なにやら変な関係が出来てしまうのでは・・・と勘ぐってしまいますが、そういう話ではありませんでした。
ということで、ネタバレに気をつけながら、少しあらすじも書いてみたいと思います。 池田動物病院の院長代理・手島伯朗(てじま はくろう)の視点で話が進んでいきますので、とても読み易く、その気になれば一日で読めてしまいそうです。 伯朗の父は、彼が幼いころに亡くなっており、父の死後、母は、資産家の御曹司であり、医者の矢神康治という男性と再婚します。 その再婚相手との間に出来た子どもが、弟の“明人”で、ある日突然、「(伯朗の弟の)明人の妻だ」と名乗る女性・楓(かえで)が、伯郎のまえに登場することから話が始まります。 父・康治が危篤であると聞いた明人と楓は、アメリカのシアトルから日本に帰国しますが、帰国後すぐに明人が失踪したということで、(義兄の)伯郎に相談しに来た・・・と言う事です。 母の死後、伯郎は、矢神家の人たちや弟の明人とは疎遠状態になって居たので、明人が結婚していたことを知らされていなくても、違和感は感じなかったようです。 楓の話によると、明人は母の死に疑問を持っていて、矢神家には気をつけるようにと言って居たと言うことですが、伯郎は、楓から、明人の失踪について一緒に調べて欲しいと頼まれます。 父・康治の見舞いに行き、矢神家の遺産相続の話し合いの場に参加させられていくうちに、少しずつ矢神家と父・康治に関する驚くべき事実が次々と明らかになっていきます。 でも、弟・明人の「失踪のヒミツ」と言う事が、前半の焦点になっていたはずなのに、途中から、伯郎の母の死についての謎や、伯郎の父の死についての経過などが明らかになっていきますが、いったい何がこの話の焦点なのかがよくわからない流れになっていきます。 伯郎が、動物病院勤務なので、動物病院内での治療の様子や看護師との会話などが時々出てきますが、その部分が結構楽しかった割には、本筋の話はイマイチでした。 また、ラストのどんでん返しは、ちょっとズッコケる感じの結末でした。 でも、看護師の女性が指摘したように、「女性に惚れっぽい」伯郎の心境などは面白かったので、複雑な家庭環境を背景に持って来て、込み入った話にしなくても良かったのではないでしょうか。 私的には、伯郎の義妹・楓よりも、看護師の女性が魅力的だったので、この話にどう関わってくるのかと興味を持っていたのですが・・・。 |
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第36回横溝正史ミステリ大賞を受賞した作品です。
表紙の絵が、何とも言えないほど良い感じです。裏表紙も良いですね。 ミステリと言うよりは、甘い恋愛小説をイメージさせる表紙になって居ますが、手に取られた方は、帯を取って、裏もしっかり見て欲しいと思います。 さて、本書ですが、いくつかのエピソードが書かれていますが、それがラストにどう繋がって行くのかがわからないまま終わってしまいました。 話としては面白いのですが、なにか取って付けたようなエピソードになって居ます。 また、舞台が2020年という、近未来に設定されていますが、数年後という近未来を話の舞台に設定する理由がイマイチわかりませんでした。 「現在(いま)」と言う事でも、全然違和感が無いような気がしました。 一つのエピソードとして、囲碁のプロと人工知能との対決という場面が登場します。 人工知能については、グーグルが開発した囲碁ソフトが韓国のプロ棋士に勝つなど、チェスや将棋の世界でも、人工知能がその道の最高峰の人間に勝利すると言う時代になってきました。 これからは逆に、人工知能を使ったトレーニングで、人間の能力を高めていくというような、共存の時代になっていくと思うのですが、それにしても、最新の人工知能に囲碁で勝てる棋士って、2020年にはホントに現れるのでしょうか? 本書では、この人工知能についての解説があり、中盤にサスペンス風の展開になり、最後には恋愛小説になってしまうという感じの流れです。 「横溝正史ミステリ大賞」を受賞したと言う冠を考えると、肩すかしを食いそうです。 いろんな人の書評を読むと、本書はそれなりに評判が良さそうですが、ミステリとしてはいろんな疑問点が残ってしまい、未消化の部分が多いような気がします。 まぁ、退屈しないで読めたのは良かったですが、人間と人工知能の恋愛物と考えれば良いのかも知れないですね。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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2015年度の江戸川乱歩賞受賞作品です。
以前のある時期には、受賞作と言ってもあまり面白くない作品が続いたこともありましたが、このところ、「カラマーゾフの兄妹」や「闇に香る嘘」といった、レベルの高い作品が受賞したと言う事もあって、本屋さんで見つけて、すぐに買ってきて読み始めました。 タイトルの「道徳の時間」と言うのも、なかなか良いですね。 話は、いろんな謎が次々に出てきて、なかなか面白かったです。この散らばっている謎を、どのように収束させるのかが楽しみで、一気に読んでしまいました。 読ませる筆力もあるなぁと、ちょっと感心して読んでいましたが、最後になってそれらが上手く一つに収束できずに、どこかに不時着してしまった・・・というのが読後感です。 主人公のビデオジャーナリスト・伏見が、休業に追い込まれた(らしい)と言う過去の事件を引きずっており、それが少しずつ明らかになっていきますが、どう考えてもそんな事で休業してしまうとは思えません。 また、13年前の事件で、裁判では黙秘を続けていたという容疑者の背景や動機も、なにか肩すかしを食った様な感じですし、最後の落ちについても、予想が付いていた(誰にでもわかる)事なので、驚くほどのことではありませんでしたし、逆にちょっとがっかりしたと言うのが、率直な感想です。 残念ながら、江戸川乱歩賞の受賞作も、以前のレベルに戻ってしまった様で、これなら「受賞作なし」でも良いのに・・・と思いました。 むりやり受賞作を作ってしまったという印象です。 |
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「東京帝大叡古教授」が、153回直木賞の候補になったことで、この作者の名前を知りました。
と言う事で、最初の作品集から読んでみようと、本書を購入しました。 美術関係のことについては門外漢の私なので、中学校の美術の本などでも紹介されているような絵が登場すればそれなりに理解は出来ますが、未知の絵についての説明をされると、上手くイメージが出来ません。 特に、『天才たちの値段』に登場する、ボッティチェッリの「春」と対をなす作品らしき贋作で、「秋」であろうと思われる作品の説明では、「葡萄畑で饗宴が繰り広げられている」「側に居るのはディオニソス」だとか、『早朝ねはん』に登場する仏陀の涅槃図の説明が、「お釈迦様はエアロビクスをするような不思議な格好で悶絶して死んでおり」「絵の周りにバラバラの七福神が描かれていた」と書かれているのですが、はたまたこれがどんな絵なのか、全くイメージできないので困ってしまいました。 でも、真贋を「舌」で判断できるという神永美有(みゆう)の特技(?)を、うまく読者を煙に巻く方法として使っているのは感心しました。 また、それぞれの短編は、(難しい漢字が使われているという評判でしたが、そんなに苦も無く読めましたので)それなりに面白かったと思いますが、読後にはほとんどその余韻が残ってきませんでした。読み終えても、「あっ、そうなの・・・」と言う程度の印象でした。 一番残念だったのは、主人公であるはずの美術講師・佐々木先生と美術コンサルタントの神永美有の人物像が全くイメージ出来ないし、彼らの行動や言動に共感が出来なかったと言うことです。 登場人物(特に主人公のワトソン役と探偵)に魅力が無いと、ミステリって面白くないですね。 |
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文庫新刊の平台に並んでいたのを見つけたので買って来ました。
「就職難民」となった窓居証子の視点で話が進んでいきますが、その彼女がどうして就職難民になってしまったのかという話が、延々と続きます。 全部で425ページにわたる長い話なんですが、事件の概要がわかってくるのは、第4章の162ページ以降になって、難民探偵こと根深陽義が捜査に乗り出そうとするところから徐々に知らされてきます。 殺された人物は一人で、容疑者は二人のみ。 しかも、捜査に乗り出したにも関わらず、結局、難民探偵・根深陽義には犯人を(わかっているのだけれども、証拠が無いので)特定できないまま時間切れ寸前となるところで、窓居証子があることに気がついて(それが何かは書けません)、難民探偵が出した答えの根拠を見つけるという流れです。 このような事なら、警察の鑑識課でも発見できるような内容なので、ミステリとして真面目に読んでいくと、ちょっと肩すかしを食ったような気になってしまいます。 そのうえ、読者には犯人が特定できないというのも、ちょっといただけません。 でも、話の流れや本筋とは関係の無いセリフが楽しくって、ほぼ一気読みでした。いくつか私のツボにはまってしまった気に入ったセリフもあります。 もっとも、最初に書いたように、本書は文庫で買ったので、本腰を入れずに気楽な感じで読む分には、なかなか楽しい本だと思いましたが、これを単行本(税込み1728円)で買っていたら、ちょっとむかついていたかも知れないですね(笑)。 |
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シリーズ第2弾と言うことですが、第1弾は読んでいません。
話は、人体模型が花壇に落下した事件の犯人を調べるというところから始まります。 その人体模型は、映画研究部にあった物で、屋上で撮影をしていた時に、その中の誰かが落としたのでは・・・という濡れ衣を晴らすために、その時の様子をいろいろ調べていきます。 その中で、過去に同じ場所で生徒の落下事件が起こった事がわかり、その落下事件の原因を突き止めるという話に展開していきます。 主要な登場人物5人(宙太、ユカリ、友樹、響、紀衣)のそれぞれの視点で話が進んでいきますが、その書き分けが上手く出来ていないのか、誰の視点なのかよくわからない章が時々ありますし、文中には、名前だけでは無く姓も出てきますので、誰がどの姓なのかこんがらがってしまいました。 最初のページに、登場人物の紹介がありましたが、顔のイラストと下の名前だけなので姓がよくわかりませんでした。 その後、人体模型は、屋上から落とされた物じゃ無く、そのように見せかけてばらまかれた物だと言うことが判明しますが、過去の転落事件との関係が徐々に明らかになっていき、最後には過去の転落事件の真相を、宙太(そらた)が推理するという展開です。 途中、少し中だるみはするものの、高校生活を面白おかしく描いた、爽やかな青春ドラマだと思いながら読んでいきましたが、あまり爽やかとは言えない転落事件の真相に、ちょっと引いてしまいました。 |
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2015年度のメフィスト賞受賞作です。
数理論理学を用いた解決だと言うことで、ちょっと興味があったので購入しました。 最初の3話は、大学生・詠彦(えいひこ)の知り合いの探偵たちが解決した事件を、叔母である天才数理論理学者の硯(すずり)さんの所に持ち込み、解決済みであるはずの事件について検証して貰うという話です。 ちなみに、3話とも違う探偵さんです。 最初の所に、論理式を使った例題のようなものがあるので、記号の仕組みを確認しながら解きましたが、それほどややこしい例題ではありませんでした。 でも、硯さんが推理するミステリの真の解決に、ここで紹介されている数理論理学を適用しなくっても良いような感じなので、ちょっと肩すかしを食った感じもしないではありません。 最初に、硯さんの甥の大学生・詠彦(えいひこ)の話に登場する探偵が解決する、推理の不完全な部分を指摘したり、足りない所を補足したと言う程度の物なので、推理した後で、それに論理式を当てはめるというような展開でした。 文中に、物々しい感じで、数理論理学で用いる記号の羅列が登場しますが、ほとんどスルーしても話の流れとしても問題ないようなので、読み飛ばして読み終えました(笑) 最終話では、最初の3話に隠された仕掛けが指摘されると言うような内容で上手くまとめられていますが、読み終えて全体を振り返ってみても、数理論理学が登場しなくっても全然問題の無い話の様な気がします。この数理論理学の解説部分が無ければ、ページ数が半分ぐらいになるのではないでしょうか? もっとも、古来の名探偵たちは、意味不明の蘊蓄や独りよがりの知識をひけらかす・・・というのが毎度のことなので、そういった物と同じだと思えば良いかって感じでした。 それにしても、アラサーの数理論理学者・硯さんのキャラクターがユニークだったので、ちょっと気に入って居ますが、表紙のイラスト(まるで、一緒に勉強をしている中学生か高校生の男女のよう)は、ちょっといただけません(笑) |
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前作の第34回横溝正史ミステリ大賞を受賞した「神様の裏の顔」が結構良く出来た話だったので、受賞第一作目を期待して、発売日を待って購入しました。
雑誌の対談の中で、表の顔と裏の顔が登場し、その中で登場人物の秘密が徐々にわかってくると言う流れは、なかなか面白い設定なので、楽しく読みました。 対談の司会(取材と文)を担当しているのがいつも同じ人物なので、後々このことが話の流れの中でどう絡んでくるのだろうかと思いながら読み進めていきましたが、こちらの方はうまく処理をしているように感じました。 ただ、対談に登場してくる人物たちが、都合良く繋がってきて居るのはあまりにも出来すぎだし、最後のエピローグの所はイマイチのような気がします。 ところで、本の帯の所に、「数々の裏切りはやがて快感に変わる」「革新的嫌ミス」とありましたが、嫌ミスと言うほどの話でも無いし、読後も快感にも変わりませんでした。むしろ、最後になってちょっとドタバタしてきたので、笑ってしまうほどでした。 でも、この表紙の絵はちょっと面白いですね。 カバーでは仮面を半分被っていますが、表紙をめくると、扉絵には仮面を外した二人のイラストがあったので、思わず表紙カバーを外して見たところ、仮面だけがありました。 イラストレーターは、加藤木(かとうぎ)麻莉(まり)さんと言う方だそうです。 |
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前作・「イーハトーブ探偵 ながれたりげにながれたり」と同様に、宮沢賢治を探偵役、彼の親友・藤原嘉藤治(ふじわら かとうじ)がワトソン役として書かれた、5編の連作短編ミステリ(文庫オリジナルと書き下ろし)です。
本書の舞台は、大正12年と言う事なので、前作より一年後(前作は大正11年の話で、その間に、賢治の妹・トシが亡くなっていた)の話です。 前作のような、大がかりなトリックはありませんが、知り合いの人が持ち込んできた事件を解決すると言った話や、ちょっと小耳に挟んだ事柄から事件を推理していくと行った話などです。 いわゆる「犯人捜し」となっているのは、「山ねこ裁判」と「赤い焔がどうどう」のみで、それも読んでいる内に犯人の予想がつくような内容です。 いずれも、この時代や、この地方独特の雰囲気を感じさせる内容で、全作とも、宮沢賢治の著作と絡めて上手く話を作られており、つい「青空文庫」で宮沢賢治を読んでみたくなりました(笑) 実際の宮沢賢治がどんな方だったのかは知りませんが、教科書の写真で見る様な優しいまなざしから想像出来る、彼の人となりが良く伝わってくる話で、気持ちよく読み終えました。 この作者(鏑木蓮さん)は、宮沢賢治が好きなんだなぁ・・・と感じさせられる内容になって居ます。 |
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男装の女剣士・毛利玄達と柳生十兵衛が、諸国を回りながら過去の剣豪たちの逸話や秘伝に付いての考察を行うと言う話で、3話の連作短編です。
「柳生十兵衛秘剣考」の続編になりますが、今回も玄達と十兵衛の掛け合いも面白く、剣術小説としても興味深い話になっています。 「一刀流“夢想剣”」 伊東一刀斎にまつわる逸話に関しての話です。 玄達と十兵衛が、一刀斎の後を継いだ小野次郎右衛門の墓前で偶然に出会った老人が、一刀流の継承を争った、次郎右衛門と善鬼の決闘に立ち会っていた同門の一人だったことから、一刀斎の経歴に異説が多いのはなぜか・・・と言う事を探っていくという話です。 この一刀流の継承を争った決闘は、私でも知っている有名な話ですが、その後の一刀斎については、何の話も残って居らず、その後どうなったのかという事も含めて、大胆な仮説を十兵衛が立てるという流れです。 剣術の流派の世界には、こういうこともあったのだろう・・・と思わせるような興味深い推理でした。 「新陰流“水月”」 一羽流の諸岡一羽の元で同門だった、根岸兎角と岩間小熊の「常盤橋の決闘」の話だそうですが、私はこの話は全く知りませんでした。 岩間小熊が根岸兎角を「常盤橋の決闘」で破ったことから、小熊は兎角が創設した微塵流道場の師範として迎えられますが、ある日、小熊は湯殿の中で血まみれで発見されます。 中からかんぬきが掛けられていたことから、密室の殺人と言うことになりますが、「実は、微塵流道場の者が、根岸兎角の敵討ちとして、丸腰で裸同然の小熊を殺害した」ということで、その後、微塵流道場の門弟が狙われることになります。 たまたまそういう現場に出くわした玄達と十兵衛が、その抗争に巻き込まれてしまい、密室殺人の謎を十兵衛が推理しますが、なぜ密室で殺人が起こったのかと言うところが面白い話になっています。 「二階堂流“心の一方”」 二階堂平法の松山主水(もんど)の謎にまつわる話です。 ちなみに、二階堂平法とは、初伝を「一文字」、中伝を「八文字」、奥伝を「十文字」とし、これら「一」「八」「十」の各文字を組み合わせた「平」の字をもって平法と称した・・・と言うことですが、私はこの話を中学生の頃に読んだ、白土三平のマンガ・「真田剣流」と「風魔」で知りました。 また、タイトルにある「心の一方」とは、瞬間催眠術のような秘術だということらしいです。 玄達は、「心の一方」の前では、どんな剣豪でもかなわないのではと考えますが、十兵衛は主水の奇怪な行動からある仮説を立てる・・・と言う話です 後日談ですが、松山主水は「荘林十兵衛」という人物によって、簡単に暗殺されてしまいます。 このような秘術を持った人物が、なぜ簡単に暗殺されてしまうのかと言う事も納得させられてしまう話になっていますが、この後日談を知らない人にとっては、中途半端な終わり方になっているので、ちょっと不親切な話ではないでしょうか。 |
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長編作の『切り裂きジャックの告白』で登場した、警視庁捜査一課の刑事・犬養隼人が主人公の七編の連作短編集です。
「小説野性時代」に掲載された6話に、書き下ろしの1話が追加されて刊行されたと言う事です。『切り裂きジャックの告白』は未読なので、犬養隼人については予備知識はありませんでした。 目や唇の動きを見ただけで嘘を見抜く鋭い観察眼を持っており、男の犯人に限るなら検挙率は本庁で1,2位を争う捜査一課のエースだと言う事ですが、女には騙されてばかりいる・・・と1作目の「赤い水」で紹介されています。 全作ともホントに短い話です。 その中にどんでん返しが入って居るという事で、興味を持って読んでいきましたが、あっと驚くような「どんでん返し」では無く、事件を追っていく内に、捜査の流れの中で違う事実が判明した・・・と言う程度のものでした。しかも、一作目を読めば、その他の作品の展開もだいたい予想が出来てしまいます。 7作を一息に読んでしまったので、面白さが半減したのかも知れませんし、話が短すぎます。 不定期な形で、一作ずつ雑誌に掲載されている方が、それぞれの印象が良いのかも知れません。 また、主人公である警視庁捜査一課の刑事・犬養隼人の特徴(というか特技)が、この話ではほとんど生かされていないように感じました。 自分が気になった事件には、管轄外であっても何処にでも顔を出してくる、出しゃばりの刑事だというだけの印象です(笑) ただ、最終話の書き下ろしの話は、それまでの話(どの話かは言えません)の続編という形で書かれていたので、ちょっと面白く読みました。 一度読んだ後、この話だけ2作続けて読みましたが、やはり、これぐらいの長さが無いと、話の深みが出てこないのかも知れないですね。 この短編集で興味深かったのは、「黄色いリボン」です。 性同一性障害の話を扱っていますが、1日に1度だけ女の子の格好をして、「ミチル」と言う名で外出しても良いと両親に許されている少年・桑島翔の視点で話が進んでいるのもユニークです。 でも、最後のどんでん返しが「普通」だったのが残念でした。 |
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前作の「ハートブレイク・レストラン」が面白かったので、その続編と言うことで期待して購入しました。
六編の連作ミステリですが、最後の二編は書き下ろしだと言うことです。 前作が良く出来た連作短編集だったので、期待しすぎたのかも知れませんが、最初の短編から面白くありませんでした。 謎にしても、それほど興味を引くような話でも無いし、背景にある登場人物の人間関係もイマイチよくわかりません。 特に、今回から老画家と女性の刑事が登場しますが、薄っぺらな感じです。 最後の書き下ろし分の二編で、この二人を中心にした話が出てきますが、何かとってつけたような話で、謎が解決したのかどうかわからないまま終わってしまうと言う中途半端な話だし、二人の態度もよくわかりませんでした。 どうしても前作と比べてしまいますが、やはり今回は、前作に比べインパクトに欠けるような話ばかりのうえに、すっきりしない終わり方なので、読後の印象も良くないですね。 |
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本書は、「完全黙秘の女 弁護士探偵物語」を文庫化にあたり改題されたもので、第10回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作・「弁護士探偵物語 天使の分け前」の、続編です。
前作の出来が、大賞受賞作とは思えないほど、あまりにもひどいし、主人公である弁護士の「私」が、ちょっと鼻持ちならない人物だったので、次作の購入はないかな・・・と思っていましたが、2作目の文庫が出版されていたのを本屋さんで見かけて、つい購入してしまいました。 前作を読んでいるので、癖のあるセリフを吐く「私」については、そういう奴だとわかっていましたが、前作に増してその発言が全面に出てきましたので、イライラしながら読んで行きました。 それでも、ストーリーは前回よりは興味を引く展開だったし、終盤に出てきた法廷の場面は、読んでいても緊張感があり、楽しめました。 完全黙秘をする容疑者が、なぜ黙秘を続けるのか・・・と言う事から、DNA鑑定に絡んだ事件に繋がっていくところは、興味を引きましたし、新人弁護士の土田有里が、少しずつ成長していく様子もなかなか良かったと思いました。 もっとも、えん罪という大きなテーマを扱っている割には、都合良く話が進んでいくのには、ちょっと違和感がありました。 作者は、主人公の「私」に、気の利いたセリフを吐かせているつもりなのかも知れませんが、そのところが好き嫌いの分かれるところでは無いでしょうか。 そういう部分を抜きにすれば、本書は前作よりは良く出来た作品だと思います。 |
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本書は、「神楽坂謎ばなし」の続編と言うことで、文庫書き下ろしとして刊行されましたが、前作の「神楽坂謎ばなし」は未読です。
前作は、江戸落語と落語家の話と言うことだったのでスルーしましたが、本書は、「手妻」と「太神楽」ということで、ちょっと興味があったので購入しました。 前作のだいたいの流れは、本書でも説明されているので、読んでいなくっても困らなかった・・・というよりむしろ、前作は人間関係がややこしいような感じだったので、読まなくて良かったと思っています。 ところが、前作の流れとして、少しどろどろした話が絡んで来るので、ちょっと水を差されたような気分になりかけましたが、その話はいつの間にかどこかに消えてしまいました。 おそらく、その絡みは、また次作に続いていくんでしょうね。 舞台で行われる芸事の話と、それにまつわるちょっとした謎だけで終われば楽しく読めたのですが、主人公の武上希美子の周辺で起きた出来事が突然出てくるので、ちょっとしらけた部分もありました。 それぞれの中編では、「手妻」と「太神楽」の舞台での様子が面白く描かれ、それを読むだけでも楽しかったのですが、そのうえにちょっとした謎が含まれているので、楽しく読みました。 「高座の上の密室」では、手品と手妻の違いについて理解できましたし、二重の(葛篭と舞台上の)密室状態の中で、少女が消えてしまうと言う謎も、なかなかユニークでした。 また、「鈴虫と朝顔」では、舞台上で、一人前の太神楽師としてやっていけるのかというテストをし、希美子にその判断を任されると言う話ですが、海老一染之助・染太郎さんの傘回しを思い出しながら読みましたし、その歴史にも触れることが出来て楽しかったです。 |
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タイトルにある「ラプラス」というのは、学生時代に、微分方程式に関することで、「ラプラス変換」と言うのを関数論の時間にかじったことがありましたが、その数学者・ラプロスから取ったものなんだろうな・・・と思いながら読み始めました。ということはさておき・・・。
前半は大変時間がかかりました。 話自体は面白いのですが、最初から最後まで、5~6人の視点で話が展開していきます。 話の視点がコロコロ代わり、誰がこの物語の主人公なのかがわからないので、戸惑いながら読みました。 もっとも、そういうことは作者が意図的になされているのだとは思いますが、それが何をもくろんでの意図なのかは、残念ながら最後まで私にはわかりませんでしたので、戸惑うばかりでした。 主人公が居ない話って、登場人物に深く入り込めないので、イマイチ気持ちが入って行きませんでしたが、後半は、こういう設定なんだと割り切ってストーリーを追っていくだけにしました。 大層な問題提起を設定した割には、ちょっとお粗末な結末(どんなお粗末なのかは言えません)だったので、拍子抜けしました。 でも、全体像が見えてきた後半あたりからは、話の展開はそれなりに面白いので退屈はしませんでした。 この話は、映像化すれば面白いドラマになるのかも知れませんね。 二時間もののサスペンスドラマには、ちょうど良いのでは無いでしょうか。 |
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【ネタバレかも!?】
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第22回鮎川哲也賞受賞作でもある「体育館の殺人」は読んでいますが、二作目の「水族館の殺人」は、文庫待ちにしています。
一作目の読後は、二作目も買う予定でしたが、見送りました。なぜか学園ものって、好きじゃ無いですね。 本書は、このシリーズの三作目になります。紙の本じゃなく、電子書籍で読みましたが、前作・「水族館の殺人」を読んでいないとわからない話が少し出てきますし、舞台設定や登場人物なども共通しているので、やはりシリーズものは中抜きだとちょっと読みづらい・・・と、今更ながら納得です。 「もう一色選べる丼」 誰かが、学食の外へ持ち出して食べたどんぶりが、きちんと返却せずに置き去りにされていたのはなぜかと言う話です。好きな具が二つ選べる学食名物の「二色丼」と言うことですが、私なら、カツ丼と牛丼の二色です(笑) この話は、時間的には、「体育館の殺人」と「水族館の殺人」の間に位置する話のようです。 なかなかよくできていると思ったのは、「なぜ」置かれていたのかと言うところもそうですが、「誰」が置いたのかという犯人捜しになっているところです。 話の流れとしては面白いのですが、いくら嫌いなおかずが入っているからって、捨てるのはどうかと思います。 「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」 夏祭りの屋台で300円のたこ焼きをかって、500円を出したら、50円玉4枚のおつりが来たと言う話で、調べてみるとどの屋台でもだいたい50円玉でおつりを出しているようだとわかります。 この話は、若竹七海が実際に体験したという「五十円玉二十枚の謎」に通じるところもあり、興味深く読みました。 「なぜおつりは50円玉ばかりなのか」という謎を解くと言うことで話は進んでいきますが、真っ先に探偵役の裏染天馬の取った行動が、お店の人に聞く・・・と言うことだったのには、思わず笑ってしまいました。 ただこの設定では、一件のお店じゃ無く、夏祭りの屋台全部と言うことになるので、大量の50円玉をどうやって各店に配布したのかと言うような疑問点は残ってしまいますし、ちょっとせこい話になっています。 「針宮理恵子のサードインパクト」 体育館の殺人」に少し登場した、ちょっと不良っぽい外見の針宮理恵子を主役としたエピソードです。 彼女がこっそりつきあっている、ブラスバンド部に入っている一年下のちょっと頼りない男子・早乙女が、クラブの先輩たちにいじめられているのではという疑問を持つ話です。 ミステリとしての出来はイマイチかと思いますが、ちょっとありそうな話なので、私としては面白く読みました。 「天使たちの残暑見舞い」 演劇部のOBが部室に残したノートに書かれていた、教室に居た二人の女子生徒が消失すると言う謎を解くという話ですが、その時の状況を実際にさせてみるというところが、ちょっと可笑しかったです。 消失事件の解釈としては、それなりに良く出来ているとは思いますが、こういう設定はどうも嘘っぽくていけません。 でも、最後に出てきた袴田柚乃の推理の方は、なかなか楽しめました(笑) 「その花瓶にご注意を」 私立緋天学園中等部に在籍する、天馬の妹・裏染鏡華を探偵役とする話です。どうやら彼女は、「水族館の殺人」に登場しているんですね。 放課後、廊下に飾られていた大きなガラスの花瓶が、床に落ちて割れているのが見つかり、その犯人捜しと言うことです。 花瓶の割れた音がしなかったと言うことから、一人の生徒に目星をつけ、対決しますが、「風ヶ丘五十円玉祭りの謎」で出会った裏染鏡華とは、イメージがまるで違うので驚きです。 でも、読者が参加できないような謎は良くないですね。 「世界一居心地の悪いサウナ」 おそらく裏染天馬とおぼしき人物が、スパなどの温泉施設のサウナで、「世界に二番目に会いたくない相手」と遭遇した一幕の話です。 よくわからない内容ですが、この話が次作に繋がっていくのでしょうか? それにしても、それじゃ、世界で一番会いたくない相手って誰なんでしょうね・・・? |
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この作品は、「第1回新潮ミステリー大賞」の最終候補作となったものの、大賞は取れませんでしたが、新潮文庫nexより刊行されたという事です。
前座(?)となる短編四編と、話のメインとなる第五話目の中編「流霊島(りゅうれいとう)事件」、そして最後の第六話目に短編という構成の、全六話の連作ミステリかと思いながら読みましたが、長編と考えた方が面白いし、わかりやすいのかも知れません。 と言うのも、最初の四編の短編が、あまりにもバカバカし過ぎます。 アヤタこと田中綾高と灯影院(ほかげいん)の二人が、大学に探偵同好会を設立すべく、彼らの周辺で起こった日常の謎を解こうとしますが、灯影院の探偵ぶりは、見事にハチャメチャですし、その上、灯影院のボケにアヤタが面白くない突っ込みを入れるという展開が続くので、途中でイヤになって、なかなかページが進みませんでした。 でも、二つほどは、私の笑いの壺に入った話もありましたが・・・。 それでも、第5話で、彼ら二人だけの探偵同好会に、頼み込んで入会してもらった坂本先輩の実家があるという流霊島に行き、そこで起きる事件がそれまでの雰囲気を一変させ、(それまでがダメだったということもあり)ちょっと良い感じで話が進んでいきましたし、探偵役である灯影院が、やっと事件の解決となるような推理を展開するので、それなりに楽しめました。 ところが、最終話の短編で、アヤタと灯影院の共依存的な関係が明らかになり、そこで、前半の謎解きが、なぜハチャメチャだったのかということがわかってきます。 前半の短編部分では、途中で投げだしてしまおうと何度も思いましたが、読後は、こういう謎の設定もありかな・・・と言う気もしてきました。 |
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