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トラ さんのレビュー一覧
トラさんのページへレビュー数4件
全4件 1~4 1/1ページ
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「著者初の本格警察小説!」と書かれていますが、警察組織が舞台となった警察小説を期待して購入されると、ちょっとがっかりするかも知れません。
でも、トリックやロジックを楽しんで読まれると、期待以上に読み応えがあると思います。 話は、“警視庁付属犯罪資料館”、通称「赤い博物館」の館長が、捜査一課から左遷されてこの資料館に配属されてきた巡査部長と共に、時効となった未解決事件に挑むという連作ミステリです。 過去の事件の資料に疑問点が見つかると、巡査部長がその事件の再捜査が行い、それを元にして館長が事件の真相を推理していくという手法は、読者にも手がかりがすべて提示されているということで、読むのにもチョット力が入ってしまいます(笑) どの短編も、(私の)予想を覆す展開で、最後には驚くような結論が用意されている・・・と言う事で、それぞれが標準以上の出来だと思います。 今年度、私が読んだミステリのベスト3以内に入ってくるのは間違いない・・・、と思えるようなミステリです。 ストーリーをヘタに書いてしまうと、ネタバレしてしまいそうなので、全く書かないことにします。 本格ミステリ好きにはたまらない短編集です。ぜひ手にとって読んでみてください。オススメです。 館長がエリートコースをはずれたキャリアで、彼女の過去に何かがあったようなことをさりげなく描いているので、今後このコンビで続編が書かれるのかも知れませんが、楽しみなシリーズになりそうです。 |
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1988年度の第42回推理作家協会賞を受賞した作品です。
本屋さんで見たときは、ちょっと読みにくそうな内容だったので、文庫が出れば・・・と思ってスルーしたところ、すっかり忘れてしまい、気がついた時には、中央公論社から出されていた文庫も絶版になっていました。 いろいろ探したところ、双葉文庫から出されている「日本推理作家協会賞受賞作全集」の中に本書を見つけ、やっと読むことが出来ました。 この本が書かれたときはまだ、日本には欧米のような陪審員制度が無かったので、一般の人が裁判の公判調書を目にすることも無かったでしょうが、裁判員制度が2009年から導入されたので、もし選出されたら、こんなややこしいものを読まないとダメなんだろうなぁ・・・と思いながら、ページを開きました。 小説の構成は、100ページの市民セミナーの部分と、450ページほどの公判調書の部分に分けられています。(単行本の初版では、2分冊でした) 元裁判官だった方が講師となり、市民セミナーに参加している人に、実際に起こった裁判の様子なり公判調書の見方を解説するという方法で、話が進んでいきます。 市民セミナーは6回に分けられていて、講師が「次回のセミナーまでに、何ページまで読んでおいてください・・・」と言う指示に従って、公判調書の部分を読んでおき、次の講座でその内容の解説をしてくれるという流れになります。 市民セミナーに参加している人と一緒になって、実際の調書を見て、裁判の進め方やら調書の読み方などを学習しているような感じで、面白く読めましたし、公判調書の「証人尋問」のところはとても迫力がありました。 第9回公判調書を読み終え、4回目のセミナーは、「みなさんが裁判官になったつもりで、どういう判決を下すべきか、次回までに考えてください・・・」と言う講師の話で終わります。 第10回公判調書と第5、第6回のセミナーの部分は、単行本では袋とじになっていたそうです。 読まれる方は、ここで本を閉じ、裁判の結果と事件の顛末を考えてみてください。 最後の第10回公判調書で、事件の判決を読み、解説部分である第5回市民セミナーで、その判決について話し合われます。 その後、次回の予告と言うことで、「この裁判の判決が出されたあと、(どちらかが)それに意義を申し立てて控訴しますが、高等裁判所での審理中に、いろいろ真実が暴露される・・・」と言う説明があり、もう一度公判調書を読み直して、結果がどうなったのかを考えておくように言われます。 市民セミナーの最終回で、それぞれの推理が出されるという筋立てですが、公判調書をしっかり読むと、いろいろな矛盾点も発見でき、驚く結末が用意されていました。本格ミステリとしても、とても良く出来ていると思います。 実際の裁判の公判調書にそって、事件が進んでいくという形式には驚きましたが、セミナーの一員になったつもりで、講師の方が指示された通りに読んで行くと、最初に本書を手にしたときは、ちょっと取っつきにくいように思えた裁判の公判調書も、そんなに苦にせず読むことが出来たことも驚きです。 最初はおっかなびっくりで読み始めましたが、読み出したら面白くて、そのまま一気に読み終えてしまいました。 オススメです。 |
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日本推理作家協会賞の候補には幾度となく挙がってくるのですが、やっと短編「暗い越流」で受賞されました。
その受賞作を中心に、5編の短編を集めた短編集です。 1作目の「蠅男」と5作目の「道楽者の金庫」は、「プレゼント」という連作短編集に登場してきた女性の探偵・葉村晶が活躍する話となっています。 1作目の「蠅男」を除いては、最後の数行であっと言わせるような仕掛けがされていますが、これがなかなか面白いです。 表題作の「暗い越流」では、登場人物の性別が良くわからないまま話が進んでいきましたが、最後でその落ちとともに性別が明らかにされ、ちょっと驚かされました。確かに良く出来ている作品です。 でも、私としては「幸せの家」と「狂酔」がなかなか気に入っています。 特に、「幸せの家」は、これからの高齢社会では起こりそうな話のような気がしますし、あってもおかしくない話です。でも、犯罪に結びつかないような形で収まれば良いのかなとか思ったりしました。 「狂酔」は、過去にこういう事件があったような、なかったような・・・と、そういう話です。 読んでいて、宮部みゆきさんの「ペテロの葬列」をふと思い出しましたが、最後のところはちょっとゾ~とする落ちになっています。 それにしても、久々に若竹七海さんの(ずいぶん旧作を読み返していました)新作を読み、やはり話の持って行き方がうまいなぁと、改めて感心しました。 |
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葉村晶が登場する、久々の長編ミステリです。
第66回日本推理作家協会賞の短編賞を受賞した作品を収めた短編集・「暗い越流」の中にも、葉村晶を主人公にした二編の短編が収めてありましたが、これまで、葉村晶が主人公として登場した本は、「プレゼント」(1996年短編集)「依頼人は死んだ」(2000年短編集)「悪いうさぎ」(2001年長編)の三作です。 長編作品としては、「悪いうさぎ」以来となる13年振りの登場ですが、今回は文庫書き下ろしだということもあって、出版後すぐに購入しました。 話の中心となるのは、元スター女優から依頼された、20年前に失踪した彼女の娘探しです。 冒頭からチョットしたトラブルが発生し、そのことがきっかけで、元女優から娘捜しを依頼をされると言うことになりますが、その娘を探す過程で、次々に様々なトラブルや謎が発生し、それをその都度解決すると言う展開です。 登場人物が、それぞれ一癖も二癖もあるような人ばかりで、最初は、ハードボイルドのような感じで進んでいきましたが、小さな事件が上手く絡み合って、最後に事件の真相が判明するという流れで、いろんな謎が次々登場してくるので、途中で退屈することなく、楽しく読み終えました。 それにしても、話の流れと言いテンポと良い、今更ですが、さすがに上手いです。 失踪事件から殺人事件に発展し、その話の展開の中で、登場人物たちがそれぞれ引き起こす事件やトラブルが発生するといった面白さが、一杯詰まった話になっています。 話が、葉山晶の視点で書かれて居るので、一緒に事件を追って行けるというのも、読んでいて楽しかったところです。 でも、こんなのが文庫書き下ろしで提供されるとは・・・、チョット感激です。 ということで、オススメの一冊です。 余談ですが、本文中に、「三大倒叙ミステリ」の一つ、リチャード・ハルのミステリのタイトルが、東京創元社では「伯母殺人事件」で、早川書房では「伯母殺し」と訳されていると言う話がありましたが、他にも、エラリークイーンの「中途の家」と「途中の家」や、アガサ・クリスティの「アクロイド殺し」と「アクロイド殺害事件」などがあります。 早川ポケットミステリよりも、創元推理文庫の方が手頃な値段だったので、私は、両方から出版されている本は創元推理文庫の方を買っていました。そのせいで、「アクロイド殺し」というタイトルには、未だに違和感があります。 |
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