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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数86件
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今まで読んできた道尾秀介の作品は、
人の心の感じ方と受け取り方の歯車のずれの妙が印象的で好みだけど、 結末がずっしりの読了感に、少し苦手意識がありました。 しかし今作は、感動の結末も書けます。と、言わんばかりで、 読後感が気持ちよくまとめ上げており、著者の作風の幅を感じる凄さを感じました。 本書は詐欺師を扱った題材なので、インスピレーションから、 何かしら騙し騙される展開になるんだろうなと感じつつも、それに気づかない。 理想的な詐欺の内容でした。 また、仕掛けに強く目が行きがちですが、 仕掛けはあくまで、物語の登場人物達の気持ちを引き出し、 物語の要所要所で起伏を作るスパイス的なものに感じられ、 私の中での見どころは、その時その時の登場人物たちの心模様でした。 ずっしりと心に残る過去作も好きだけど、 気持ちよく打たれる今作はいろんな人に薦めたくなる作品でした。 |
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これは良かった。好みな要素満載でした。
魔法の世界も本格物も私の好みの内容。 期待が膨らみながら読みましたが、それに応える面白さだったので大満足。 魔法の世界とはいえ、いきなり突拍子もない設定が飛び出す訳ではなく、 あくまで読者に納得できる世界観を提示した上での物語なので理不尽に感じる事はありません。 事件の主題は、操りの魔術によりソロンの領主を殺害した人物を見つけ出す事。 魔法が存在する世界であろうと、<走狗>(操られた人物の事)は彼である。また彼ではない。と、 理由をロジカルに導く様が本格物であることを感じました。 その他、 不死の青年の密室からの消失の謎や、 呪われたデーン人との戦いなど読ませ所もあり、 ファンタジーの物語と本格ミステリを巧く融合させた一冊だと感じました。 またこの様な魔法の世界観に沿った新たな物語を読みたいものです。(続編ではなく) 良作でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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リンカーン・ライムシリーズ1作目。
ジェットコースター・サスペンスの名にふさわしく、 目まぐるしく事件の発生と捜査劇が展開され、 文庫上下のボリュームもあっという間に読めました。 ライムは卓越した頭脳を持つ元科学捜査官であったが、 事故で脊椎不随になり、動くのは首から上と左手の薬指だけ。 ベッドの上で死にたいと尊厳死を求める日々である。 医師より念願の死を受けられる前日に 刑事より不可解な事件の調査協力を求められ、妥協で1日だけ協力する。 安楽椅子探偵物にもなりますが、 科学捜査や知識の提示方法のスピードと緊張感が面白く、 またそれに負けないぐらいスピーディーに猟奇的な連続殺人が発生するのが見ものでした。 推理小説における謎が提示されて読者と一緒に考える。と言うスタンスとは違い、 読者が知らない科学捜査や事件の現場を体験する構成となってます。 ここが結構徹底されて作られていると感じた所で、 読者に考える時間を与えない。科学捜査であっても、難しすぎる用語は控え思考を停止させない。 知的好奇心を刺激する捜査と事件を頻繁に発生させる。 作り方が巧い。ジェットコースター・サスペンス。なるほどって思いました。 とても面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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圧巻のボリュームでした。
広範囲に情報量を散りばめておき、 それらがページを読むごとに絶妙に絡みあってきます。 読むごとに新しい発見があるので止め時が見つかりませんでした。 SF的な内容でもあるし、ミステリとしての面白さもある。 かと言えば人権、人種問題。戦争、核、サイバー脅威、科学などを使った 冒険物、アクション、などなど色々含まれています。 意外と凄いなと思うのが、専門的に話しつつも言葉が判り易く伝えられてますし、 登場人物が外人のカタカナ名であっても特長や名前が区別しやい事。 ストレスを感じさせない事が標準。というぐらい苦なく読ませる表現や文章作りは凄いです。 ネタバレなしで、 本書で一番巧く印象に残ったシーンは、 イエーガーたちが森の中でサル集団に出くわし、猟奇的な場面に出くわすシーンでした。 人間より知能の劣るものたちの争いを見つめる様、 ライフルで射殺し文明の差を表現する内容など。 2,3ページのシーンですが、本書全体をとても凝縮させて表現している1シーンだと感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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読んで良かった。と思えた1冊です。
戦争を知らない若い世代=主人公と設定し、 『戦争を知らせる』のではなく、あくまで『祖父の生涯を知る』事にして 主題をずらし、読者を入りやすくしたストーリー構成は巧いと思いました。 自分自身、主人公と同じで祖父はどんな人だったのか。 ミステリ小説としてどんな仕掛けがあるのだろう? なんて思いながら本書を手に取り読み始めましたが、 ものの数十ページを読んで意識や考え方がガラリと変わりました。 良い意味で別物です。 ページが進むにつれて言葉でうまく言い表せない たくさんの気持ちが芽生えました。 読了後に自身の考え方や意識の持ち方まで 響いてくる作品です。 これは本当に良い作品でした。 |
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著者は関わる皆を大切にする刀自同様、
本書にでてくる人々をとても大切に温かく描いているのが印象的です。 ミステリの特性から事件を扱うにも関わらず、 すべてが気持ち良く丸く収まる様は本当に気持ち良い。 おばあちゃんが本当に良いキャラしてます。 価値観や物の考え方を伝えるインプット&アウトプット。 凛とした振る舞いの裏に見えた内なる悩み。 おばあちゃんが本当に魅力的でした。 なかなかの活劇で傑作です。 |
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シリーズの2作目の『トスカの接吻』に書かれていましたが、
オペラの舞台は演出家の善し悪しで好みが決まる所があります。 その演出は定説通りの台本ではなく、解釈の多様性もありだと思われています。 本書はワーグナーのニーベルングの指輪を下敷きにしており、 北欧神話にでる「巫女の予言」を婆さんで表現した所から始まり、 藤枝和行をジークフリートと模した演出から乙女の存在、 最後の印象的な場面に至るまでオペラの内容を事細かく習って活用しています。 なので、これはもはや解釈の多様性を用いた 『現代版のニーベルングの指輪』を 著者は演出家として作り上げてしまったんだと感じました。 本書はミステリのジャンルでありながら、 ミステリの要素を表に出さずにオペラ歌手藤枝和行を視点とした オペラの舞台裏の物語になります。 この"舞台裏"という所が自分が感じたこの本の主たる印象で、 よくあるミステリに期待するものとは大きく外れた点が ミステリではないのに凄い作品だと気に入った所であります。 ミステリの要素とも言うべきロジックやトリックというものを 舞台裏に追いやってしまっており、 表に出すものと裏に追いやるモノの強調が逆になっているのも面白いです。 言いかえると分かり辛くとても捻くれた内容で、 期待するものが違うと肩透かしを食らうと思いますが、 その作り方の完成度はとても高く感じられ自分には圧巻の作品でした。 細かい事はネタバレで。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ノベルス版「雪と魔術と殺人と」の改稿版、
「北斗の星」殺人事件を読みました。 ゲレンデのスピーカーから突如鳴らされたジングルベルの音楽と共に サンタクロースの帽子を被ったロウ人形の首が現れる。 異様な雰囲気で始まる雪の山荘物です。 90年代始めのころの本書。 世の中オカルトが流行っていたのもあり、 悪霊が人に乗り移り、勝手に手が動き出してしまう所など、 今読むと首をかしげてしまうシーンが現れます。 が、第2、第3の非現実すぎる出来事が続き、 一体どんな真相なのか。まとまるのか?と不安になりますが、 ラストの真相はなるほどと納得。 なかなか面白かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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剣と魔法の世界に君臨する圧倒的な存在である不死身の竜が刺殺されてしまった。
誰がどうやって?何のために……。 全体を通してRPGをしているような旅のお話。 旅の目的は竜事件の真相解明の為、事件前に竜に会ったとされる容疑者達に会いに行く事です。 容疑者1人毎に章が設けられていますが、 その各エピソードがそれぞれ面白く、 個性的なキャラクターやファンタジーの世界観に楽しく浸れました。 普段ファンタジー物を読まないのもありますが、 コテコテな展開なので分かりやすく気軽に読めたのもよかったです。 この旅の雰囲気に竜が殺されたという、 世界観ならではの不可能犯罪が足され、 先が気になり一気読みでした。 あんまりミステリに拘ると肩透かしをくらう恐れがあるので、 世界観に浸る気軽な気持ちで読んでもらいたい1冊でした。 とはいえ、なかなかの伏線の入れ方と真相でした。 シリーズ物なので他のも読んでみたいと思いました。 (真相でおかしいなと感じる所があったのですが、それはネタバレで) ▼以下、ネタバレ感想 |
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瞬一郎より、著者の日本語や芸術、教育思想にいたるまで、
思いを強く代弁させている印象を受けました。 日本語の美しさや表現力、ルビの扱い、文学の歴史など 読んでて嫌な気持ちにならなず、色々と良い面で再認識させられました。 瞬一郎の作中作「花窗玻璃」に至っては 物語を表現する文体まで芸術化を目指したんだと 著者の意気込みを感じました。 美術好きには蘊蓄かつ、それが参考書で目にするような類ではなく、 著者自身の新しい考えとして聞けるのが、たまらなく面白かったです。 そして、これらがタダの衒学にならずに事件に結びつく所が毎回凄いと感じる所です。 シリーズ通して本作も芸術(今回は美術)の分野で事件構成、 トリックに至るまで表現するのが本当に凄い。 コンセプトと作風の統一が凄いなと思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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月で発見された死後五万年の死体の謎を追うSF小説。
死体とともに発見された所有物に使われている物質から 年代や生活環境を推測したり、 手帳にある文字列から言語学者が言葉や数式の意味を推測したり、 生物学者が死体の骨格や生体から推理を試みたり、 月面調査の手掛かりを元にさらに謎の解決と新しい疑問が生まれたり・・・ と、 さまざまな分野のプロが不可思議な死体から 可能性を現実的かつ理論的に解明していく過程にとてもワクワクしました。 宇宙規模に視野を大きく広げ、物事の可能性を追う研究者の姿が とても気持ち良く読めました。 ラストの壮大な謎の解答もフィクションでありながら、 そうではないとも言えない神秘に触れた気がして、 他とは違う、なんとも言えない感動を味わいました。 普段SF小説をあまり読んでいないだけに新しく映りました。 宇宙は壮大な謎と魅力がたっぷりだなと再認識します。 タイトルも凄く良いです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
(2件の連絡あり)[?]
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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この作品の面白いと感じたところは、
ミステリ好きな人程、このゲームの主催者と気持ちがリンクしている所だと思いました。 クローズドサークルの舞台は整い、各人に道具も渡された。 これで事件が起こらないはずはないと、 ミステリ好きな読者程 事件を期待するとおもう。 この期待感は主催者=読者だと感じました。 主人公が、どこかで見ている主催者へ 思い通りにならないぞ!。と気持ちを叫んだ所が 自分に対して言われた気がしたのが印象的でした。 物語とは関係ないですが、 ・主人公たちの閉じ込められた世界 ・ゲームの主催者 ・読者 の3つの空間の扱いが面白いと勝手に感じました。 肝心の話の感想についてはネタバレで。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
(2件の連絡あり)[?]
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前作が面白かったので続けて読みました。
職場や仲間が変わったとしても、 主人公の竜崎は警察庁の頃と変わぬ姿勢で我が道を淡々と突き進んでいきます。 周りからは変人扱いされても、正しき事を行っている竜崎に やがて人々が付いてくる姿がとてもカッコ良かったです。 早々に立てこもり事件が解決しますが、 そこから話が尾を引き事件の全貌が明らかになる展開も見事でした。 読み始めたら最後まで一気読みさせられる小説でオススメ。 |
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登場人物が前作と同じで、話もチャットをして互いの殺人方法を解きあう構成。
前作読んでいただけに、設定が同じだから、 パラレルワールド?時系列が違うのかな? なんて違和感がありましたが、途中に挿入される数行の解説に納得。 よくこんな舞台設定を思いついたものだと驚かされました。 短編集のように各自のトリックが惜しげもなく披露されるのですが、 どれもクオリティ高いし、本作の構成だからできる必然的な仕掛けもあって完成度は高いです。 好みは「ザンギャ君の切り裂きジャック三十分の孤独」かな。 044APDの問題も良く、ミスリード自体は面白いし衝撃的だった。 作品舞台のインパクトは1作目の方がありましたが、それに負けない面白さがあります。 次回作も出て欲しいなと思える作品です。 |
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