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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数136件
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元精神科医である作者が、精神病院の実態を患者の立場から描いた作品です。
精神疾患系の作品にありがちな、読んでいるこちらも息苦しくなるような差別的描写も(殆ど)なく心温まるお話です。 患者達のその独特な思考や心理の描写が精神科医にしか描けないとまでは言いませんが、その描写に患者達を包み込むような優しさや暖かさを感じられたのは、この作者でこそではないでしょうか。 クライマックスで涙腺が緩むのですが、逢坂剛氏の解説がそれに追い打ちをかけます。 是非解説まで読んで下さい。 扱っている内容に若干デリケートな一面もあるためか、作者は問題提起こそしますが、最後少々あやふやに終わらせているところがあります。 そこを逢坂剛氏がズバリ突きます。 泣けます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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ローンによる多重債務と自己破産がテーマになっています。
92年の作品ですから、丁度バブルが弾けた頃ですね。 自己破産件数が顕著な増加を見せ社会問題となったのが96年ですから、若干時代を先取りした作品だったと言う事になりますか。 あれから20年以上経過しているのですが、10人に1人が消費者金融を利用している計算になるとか・・・ 消費者金融云々の話だけでなく、個人的に、日本人には「経済無知」が多い気がしますねぇ。 積極的に学ぶ意志を見せなければ、しっかり学べる場所すらないですし・・・ そういった意味でも、意義のある作品だと評価したいです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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腐敗した巨大組織の中で、自己を見失いそうになりながらも、圧力に屈しようとする自身への不信感を推進力にして殺人犯を追う刑事・合田雄一郎。
明と暗の人格を交互に繰り返すが故、社会的に底辺に位置する事を余儀なくされているマークスこと殺人犯水沢裕之。 追う側と追われる側の緊張感溢れる追跡劇が描かれる読み応えのある大作です。 そこには、社会的地位、名誉ある人物の圧力が介入してきます。 その圧力に、捜査の最前線にいる合田は怒り、苦しみ、一方マークスも怒り、そして圧倒的な狂気を発動します。 作者が女性とはとても思えないリアルな警察組織の描写、しかもその腐敗っぷりをも、汚らわしく描いています。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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日航ジャンボ墜落事故の全権デスクに任命された一人の新聞記者の物語である。
事故当時まさに地元群馬上毛新聞の記者であった作者にとっては、渾身の作品である事は間違いないし、リアリティの高さも保証付きである。 新聞社内部の喧騒、上層部との衝突、派閥争い、出世を巡る汚い嫉妬・裏工作・足の引っ張り合い。 そして、汗臭く、怒号が飛び交う、そんなまさに男の職場における1分1秒を争うスクープ争い。 その臨場感や半端なしで、終盤まで読み進めた時点で、ここまで僅か1週間しか経過していないと驚かされるその密度の高さも凄い。 ある意味特殊な世界と言えるが、新聞社も、会社という1つの社会である限り、否が応でもそこに存在する大人の事情。 主人公は、40過ぎの仕事人間であるが、衝突で潰されたり、攻め時を間違えたり、駆け引きに負けたりする。 時に怒り、時に迷い、そして傷つき、目の前の高い壁を前にしてもがき苦しみますが、しっかり向き合っています。 そこには高いリアリティを感じますし、同年代の社会人にとって「わかる、わかるぞ」とその人間臭さにシンパシーを感じずにいられません。 仕事のみならず、家族、仲間との関係・苦悩もしっかり描けている点が、更に主人公に対する好感度を上げていますね。 「男の人生」を謳歌している主人公が羨ましかったりもします。 特に男性に読んでもらいたい作品ですね。 |
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雫井脩介さんの作品は「火の粉」しか読んでいなかったのですが、同じ作者さんの作品とはとても思えませんでした。
引き出しの多さに驚かされました。 万年筆、マンドリン。 派手さはないですが、作品にいい味わいを出していますね。 主人公・香恵の人間性をよく表せているように思えました。(映画の方は人選を誤りましたね(笑)) 石飛クンも伊吹先生も、みんな好感度の高い人物です。 脇に軽い男、意地悪な女も登場しますが、所詮は脇。 好感度の高い主人公が、好感度の高い男性に淡い恋心を抱き、好感度の高い女性に共感し、影響を受け成長していく物語。 全編を通して不快感に襲われる事がありません。 その分、起伏がないと言われれば、その通りなんですけど、まぁ読みやすい作品です。 結末は序盤で予想できてしまい、その予想通りに終わるのですが、それでも泣けます。 感動作です。 後何年かしたら、娘、息子にも読ませてみたい作品です。 恋愛のエピソードにおいては、男性と女性の思考や行動のズレを、女性視点から描いているのですが、男からはドキッとさせられるような記述もありましたね。 この程度の事が、女性に「鈍感」とこき下ろされるのか・・・とか。 作者男性だよなぁとか思いつつ・・・勉強になりました。 主人公が、常識的でいい仔だって思って読んでいるので、こちらとしても少々焦りますね。 |
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大学寮の取り壊しを主張する大学当局と、存続を主張する学生の対立を通して、そこに学生達の成長を描いていますが、作者の真の意図は別のところにあるように思いました。
寮の存続を要求する学生達の主張には、絶対的な信念、確固たる主義主張がある訳ではないと批判しています。 驚くのは、一方で、現代の学生達の父親の世代、即ち大学紛争のあった時代と現代を比較し、当時の学生達も同じだったと批判している点です。 「最近の若い連中は・・・」的色合いの作品ではありません。 寧ろ、現代の学生を引き合いに出して、作者が学生時代に経験した大学紛争、それを扇動していた学生達が、単に社会や権力に反抗しているだけで、現代の軽い学生達と同レベルだったと暴いていきます。 作者の主眼は、こちらにあったのではないかと思います。 寮は周囲から浮いた存在として描かれており、廃寮問題は大多数の学生にとって関心外の事になっています。 この作品の廃寮問題は、大学紛争の縮図的扱いをされているように感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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伊坂さんの作品といえば、どこか重っ苦しいテーマがあって、全体的に「暗」のイメージが付きまとう作品が多いです。(嫌いではないですよ)
またラストの伏線回収に向けて、序盤から身構えて読む事が多いので、読むのに時間が掛かるし、結構疲れてしまう。(嫌いではないですよ) そんな中でこのシリーズは、全体的に「明」のイメージで、勿論伏線は張られているものの、そんなに気張らず気楽に読める作品だと思います。(好きなんですよ) 第1章が、主要登場人物4人が巻き込まれた事件の4本の短編で構成されています。 前作で披露した各々の特技、個性をフルに活用しており、前作を読んだ方には十分楽しく、嬉しい内容です。 第2章以降は、第1章で描かれた一見無関係に思われる事象に繋がりを持たせるという伊坂さんお得意の仕組みが楽しめます。 彼らの会話のテンポや掛け合いは、センスに溢れ、読み手を退屈させませんね。 また、巻末のボーナストラックが、このシリーズを愛する読者にはたまらない内容になっており、愛すべきギャング達がその「らしさ」を存分に発揮します。 1作目より楽しめました。 続編に期待したいです。 |
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まだ長いとはいえない私の読書人生ですが、これ程「バカな」話は読んだ事がありません(笑)
ただ「バカミス」は「バカミス」なんでしょうけど、この作品を壁に投げつける人はいないでしょう(笑) 作者の「バカミス」に賭ける執念には脱帽で、ここまで来てしまえば私は最早「芸術」と呼びたい(笑) この作品の謎が全て明らかになった時の衝撃度は、「十角館の殺人」を10とすると50くらいかなぁ(笑) 再読も楽しいと思いますよ、この作品は。 勿論お薦めしますね。 ただ「謎解き」の章辺りからは、一人でいる時に読んだ方がいいですよ。 ちなみに、文庫落ちを待っても無駄だと思いますので、是非今直ぐ本屋さんへ!! ▼以下、ネタバレ感想 |
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伊坂幸太郎を意識したのではないかと思わせる章構成で、シュールな要素を排除しその分人情をスパイスにしている感じ。
トリックを暴くといった作品でありません。 各章ごとに捜査の対象となる人物が異なっており、彼らは少なからずの「隠し事」を持っています。 加賀が、一人一人としっかり向き合う事で、彼らの人間性が非常によく描けています。 トリックを暴くのではなく、「隠し事」の真意を明らかにして少しづつ可能性を潰していくという趣向です。 「歩いて行く方向と、上着の有無」とか「無糖ブラックコーヒー」といった、些細な事への着目も、どこか新鮮さが感じられました。 派手さはありませんが、心打たれるエピソードもあります。 ガリレオシリーズは映像で見たい作品ですが、このシリーズは文字で追った方が味があると思いますね。 |
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読み終えた時、これ程「もっと読んでいたい」と思えた本は久しぶりです。
私のような、学生時代など遠い昔というおじさん、またはおばさんが読むと、込み上げてくるものがあるかも知れません。 各種方面からストレスをかけられている中間管理職の皆さん、子育てに一息ついた奥さん、そんな疲れた中年にお薦めします。 名作だと思います。 高校生達が丸一日歩きゴールを目指します。 それ以外何もありません。 この作品には、意外な展開・結末など何ひとつありません。 ただそれだけの話に何故これだけ引き込まれてしまったのか。 作者の技量が窺えますね。 この「歩行祭」、気の合う者同士がつるんで歩きます。 既にお互いの事をよく知る間柄であるはずなのですが、一日中共に歩いている内に、秘めていた思いが露見していき、それが新しい発見となり、繋がりを一層強くします。 貴子と融という、クラスメイトでありながら、会話も交わしたことのない異母兄弟の和解が中心に添えられていますが、彼らを囲む仲間達も気持ち良い奴ばかりです。 前向きさ、ひたむきさ、必死さ・・・若いなぁ、羨ましいなぁ、自分にもこういう多感な時期があったなぁと・・・ 楽しい読書タイムでした。 |
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