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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数271件
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信濃譲二シリーズの短篇集。
シリーズ制覇のために手に取ったわけですが、本家長編家シリーズよりも全然面白かったです。 短篇集でありながら読者挑戦型。 問題編と解答編に分かれているところからは、読み手に「考えさせよう」としている作者の意図、そして自信が伺えます。 なる程、一話一話プロットが非常に良くできています。 無駄な記述をなくす事は短編ではある程度仕方のない事ですが、この作品は、話が急展開過ぎたりもせず、説明不足もありません。 非常に読みやすく尚且つ読み応えもあります。 特に「有罪としての不在」がお薦め。 多分殆どの方が騙され、驚かされるのではないかと思います。 私がこれまで読んだ短編作品ではNo.1かも知れません。 |
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世間で言われている通り「名作」だと思いました。
確かに、前知識なく読まれることをお薦めしたいです。騙されると思います。 本作には3箇所の驚愕ポイントがあります。 所謂脱力系のバカミス(と言ってしまっていいと思う)なのですが驚かされましたし、発表された時期を考えても、そのアイデアは素晴らしいと思いました。 まぁトリックというより「サプライズ」と言った方がいいかも知れません。 ただ感動したとまでいかないのは、申し訳ないですがその表現力というか文章力というか・・・そこにあった気がします。 作者と同姓同名の人物が登場しますが、強姦未遂で殺されてしまうという・・・ もう少しマシな役どころで・・・というレビュアーの方も多いですが、私は、あとがきで作者に裕子のモデルと言われたMさんの方が相当気の毒でした(笑) ▼以下、ネタバレ感想 |
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鮎川哲也賞受賞作である作者のデビュー作。
「エラリー・クイーンを彷彿とさせる論理展開+抜群のリーダビリティ」 まぁエラリー・クイーンは言い過ぎとしてもリーダビリティが高いことには同意。 アニメオタクの駄目人間の探偵役が時折発するオタクネタには全くついていけず少々うざかったが作品の邪魔になっているとも思えず許容範囲。 タイトルといい犯人の一人称によるプロローグといい綾辻館シリーズのパロディだと言う事はそれとなく分かったが、テンポはあるもののラノベかと勘違いしそうなくらい軽い。 個人的にその原因となっているのは、まるでいないのも同然となっている警察の描き方ではないかと思う。 主人公のキャラに全編支配されてしまっている。もっと素人探偵に反目し苦戦する警察を描いた方が、軽いながらも切れのある推理が際立ったのではないか。 ただ、1つの物的証拠に徹底的に拘り、そこから展開される消去法により犯人を絞り込んでいくという手法は正直好み。 他のレビュアーの方の指摘にもあるように、検討すらされず「抜け落ちて」て無視されてしまっている可能性があったのは少し残念でしたが・・・(まぁそういう作品多々あるんですけどね) ▼以下、ネタバレ感想 |
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貴族探偵の続編。
このシリーズ、設定の時点で既にコメディっぽいのですが、今作ではここにライバル?の女探偵を登場させた事でよりコメディ色が強くなっています。 何故なら貴族探偵はある意味無敵であり、ここにライバルを登場させて「VS」といったところで対決にすらならないからです。 探偵役が二人登場する事による多重解決が見どころになるのですが、勝者が決まっているところが難点とも言えます。 第2話に同じ女探偵が登場してきた時点で、想像していたとはいえ勝ち負けに関してははっきりしましたから。 毎回その間違った推理を披露する(させられる?)女探偵ですが、死亡した名探偵の弟子でただいま駆け出し中。 一応数々の事件を解決してきた名探偵との事ですが・・・ 女探偵視点で描かれているので、感情の起伏が激しかったり、負けず嫌いだったり、表情に出やすかったり・・・名探偵と呼ばれるまでのレベルにない事まで全て読み手にもろバレ。 まだまとまってもいない推理を披露したり、関係者に自分の考えをべらべらしゃべったりと、これでは推理好きのただの野次馬レベル。ワトソンですね。 でもまぁ貴族探偵の相手役としては、こういうキャラの方が嵌まるような気がします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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(化け物)碓氷優佳シリーズの3作目にしてこのタイトルですから、読む前から否が応でも期待が膨らむわけです。
「多分半ばホラーだな」とか「犯人カワイソス」などなど色々想像していたのですが、期待していたものとは違いました。 タイトルにある「彼女」とは(怪物)碓氷優佳の事ではなかったからです。 序盤は「もしかしてイマイチ」と思って読んでいましたが、やはり(モンスター)碓氷優佳は期待を裏切らない。 彼女とは被害者の女性の事だったのですが、(悪魔)碓氷優佳の存在によって加害者が被害者に追われているような錯覚に陥るといった感じでしょうか。 読了後はこのタイトルもしっくりするものになります。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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学生アリスシリーズ初短編集。
有栖と江神の出会い、EMCへの入部から麻里亜入部までの1年が描かれています。 「桜川のオフィーリア」と「四分間では短すぎる」の間に「月光ゲーム」で描かれた事件が起こっていたり、「桜川のオフィーリア」には、(まだ起こっていない)「女王国の城」に登場するあの宗教団体の事が語られていたりとファンには嬉しい一冊になるはずだ。 9つの作品の中で異彩を放っているのが書き下ろしの「除夜を歩く」 望月が書いた「仰天荘殺人事件」を元に江神と有栖がミステリ論を展開させるというもの。 素人が書いた穴の多い探偵小説のトリックを題材としているのだが、これがかえって「いじりやすい」 お笑い担当である織田、望月コンビは不在であり、江神と有栖がサシで交わすのですが、かなり深く読み応えがあります。 日本のエラリークイーンが後期クイーン問題に物申す的なところも非常に興味深い。 「トリックは、ロジックに優先する」は作中の江神のセリフだが、この作者が代弁させていると考えると重みがある。 |
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この作品は児童養護施設の子供たちに焦点を当てた作品です。
そこに暮らす子供たちの境遇は非常に厳しいものなのですが、作者は必要以上に掘り下げた描写をしていません。 なので重くない、非常に読みやすい作品となっています。 作者がもしこの作品を通じて児童養護施設の現状、問題点を提起しようとしていたのなら、それには成功していると思います。 わざわざ掘り下げた描写をし、読み手に重苦しさを強要しなくとも伝わるのです。 この点が非常に好印象でした。社会派といってもよい作品だと思います。 ミステリの方ですが、全七章で学園の七不思議が語られ謎解きがなされます。 正直各章で描かれる謎はミステリとしては弱いです。 何しろ相手は子供ですから。 「子供だなぁ」「子供だからなぁ」といった子供ならではの未熟さをトリックに用いられても困ります。 ただ、学園七不思議の最後の謎が描かれる最終章に用意されていた大掛かりな仕掛けには感心させられました。 多少強引なところもあるのですが・・・ 最後の謎が明らかにされた時「わかりやすい」伏線が各所に散りばめられていたことに気付きます。 この「わかりやすい」ってのがミソですね。 続編の方が本命であり、そのために読んだ作品でもあったわけですが、正直読んで良かったです。 楽しめました。 |
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複数の父親に一人の息子。この設定はどこかで見た事があるのだがそこは伊坂流。
博才のある男、運動神経抜群の男、頭脳明晰な男、女性の扱いはお手の物の男。 単に4倍の愛情を受けてという単純なものではない。 四者四様の発言、行動の違いが面白いが、この4人が一つの目的に向かってタッグを組んだ時は最早無敵。 この作品、ゴールデンスランバーの1つ前の作品だそうで、作者曰く、この作品が第一期最後の作品だという。 何となく納得できるかなと。 散りばめられた伏線とその一気回収というスタイルは第一期、第二期とも同じだが、第二期の作品に多く見られる「重さ」がこの作品にはない。 単純に作者の繰り出すユーモアを楽しむ作品かと思う。面白くて一気に読めてしまった。 ただ軽すぎて、作者がこの作品を通して何を訴えたかったのかがイマイチ分からなかったかも。 血が全てではないと言いたかったのかな。 それと、富田林や鱒二の父親といったせっかくの個性的なキャラの扱いが中途半端に終ってしまったかなという印象はあります。 |
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名探偵の存在を否定し、そんな名探偵が登場する探偵小説に対し一石を投じる風刺の効いた作品です。
トレント最後の事件というタイトルですが実はトレントは初登場だったりします。 これで思い出したのが「メルカトル鮎最後の事件」 これまでのミステリの概念をぶち壊す迷探偵メルカトル鮎。 アンチミステリを打ち出す麻耶雄嵩が描く作品の背景にはこの作品の思想がはっきりと浮かんでいる気がします。 私の場合、読んだ順序が逆ですし、今頃気付いたのと言われそうですが、何かこういう気付きって嬉しい。 読書の醍醐味の一つな気がしました。 ほぼ最低点を付けてしまった麻耶さんの「翼ある闇」ですが、もっと自身の経験値を上げてから読むべき作品でしたね。 再読したい気持ちになりました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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相変わらずロジック一本槍で、動機であるとかトリックに関してはおざなりな印象ですし、そのロジックのひも解きに全く到達しない警察の描き方も少しご都合主義的かなと思いますね。
そのロジックですが、(私には)正直納得のできるものではありません。 ただ、(納得できないにしても)作者の意図は何となく読み取れるので、その思惑にわざと嵌って読み進めれば、この作品に関しては犯人の特定はある程度可能ではないかと思います。 この分かり易さが高評価の秘密なのかなとも思いますが、登場人物が余りにも多いのは、その容易さを隠蔽して意図的に複雑にしようとしたのでは・・・という穿った見方をさせてしまいますね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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一人の女性をめぐる二人の男性、二人は幼い頃からの親友であり、非常に優秀で将来を嘱望されているのだが、対女性となると共に未熟と言えます。
主要登場人物の構図がこうなので「友情を取るか恋愛を取るか」になるのかと思いきやそうではない。 こういう青い展開を「深い」とは思いたくはないですが、そこにすら至らなかったのである。 三人の人間ドラマに全く魅力を感じられませんでした。 序章での、山手線と京浜東北線における出逢いの導入は、タイトルの「パラレルワールド」をどこか連想させますし、恋愛小説が得意でない私にとってもこの先の展開に何かを予感させるものであったのですが・・・正直これは「ラブストーリー」ではないですよね。 女性が単なる「飾り物」のような浅い造形ぶりですし、作者もラブストーリーを描くつもりはなかったのかも知れませんが・・・だったらタイトルが・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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加賀恭一郎シリーズの短篇集です。
全作品通しての共通のテーマはタイトルにもある「嘘」です。 トリックを見破るというよりも、犯人がつく嘘の僅かな綻びを見逃さず加賀が看破するという流れです。 また、読み手に犯人は初めから丸わかりで、且つその犯人視点の作品が多い事を考えても、追い詰められていく犯人の心理状態の描写に重点が置かれた作品と言えます。 如何にも加賀らしい観察眼とねちっこさは、短編とは言えしっかりと表現されており、シリーズのファンにも納得の一冊だろうと思います。 ただやっぱりこのシリーズは長編で読みたいかな。感情移入できる間もなく終わってしまう。 加賀の人間味にどっぷりと浸りたいですね。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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国名シリーズ第2作。
数多い登場人物から消去法により犯人を絞り込んでいくという手法で、パズラーにはたまらないフーダニット作品になっています。 犯行現場→犯人の性別→共犯/単独犯→関係者による犯行→そして・・・という無駄のない怒涛の論理展開で非常に好感度の高い推理小説。 そして今作に限って言えば、よくありがちな強引なロジック操作もありません。 しかし逆に、推理小説をよく読まれる方にとっては既視感ありありで当たり前だろと思えること、例えばこの作品で言えば「犯行現場の特定」に対して長々とページを割いており「・・・なので犯行現場はここでは有り得ないのです(ドドーン)(一同驚嘆)」なのですが、「・・・30頁くらい前から知ってるって(汗)」ってツッコミを入れたくなります。 DNA鑑定やルミノール検査が出来ない歯がゆさもありますね。 まぁそれが「古典」だとも思うので減点の対象にはできませんが・・・ この作品では警視が人間関係の軋轢の中存在感がなく、エラリーが完全に推理の主導権を握っています。 普通なら最後の最後までダンマリを決め込むはずが捜査過程で喋る、喋る。 読者への挑戦が挿入された後、事件関係者を集めての大団円があるのですが、本来なら「待ってました」のはずが、そこでの謎解きが、殆ど読者にとって既知なのです。 「さっき聞いたよ」なのです。本来最後の謎解きで生まれる「驚き」が、既に捜査の過程で明らかになった時に「驚き済み」なのです。 そこが少し残念でした。 最後の最後に・・・ってのは中々洒落た演出だと思いましたけど。 あとロジック重視で動機が後から取ってつけたような感じなのはいただけないかなぁ。 あの「粉」の正体が明らかになった時、真っ先に疑われるべき人物は明白なのに一言も触れないのも不自然ですかね。 まぁ細かいこと言ってもきりがないので・・・前作の「ローマ」よりはかなり完成度高いように思います。 |
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15年前と現在、2つの殺人事件には、大人が大事なものを守るという共通項が存在している。
で、実際はどうなったか。 誰かを犠牲にして生きている辛さ、罪を背負って生きていく辛さ。 結局は守ろうとした存在を苦しめる事になっているのが皮肉だ。 親にとって子供はいつまでたっても子供なのかも知れないが、子供はそんな大人の小賢しいごまかしにいつ迄も騙されたままでいる程幼くはないのでしょうね。 さて、 子供が苦手だという(湯川の)設定を曲げてまで、作者が描きたかったもの。 「今回のことで君が何らかの答えを出せる日まで、私は君と一緒に同じ問題を抱え、悩み続けよう。忘れないでほしい。君は一人ぼっちじゃない」 湯川にこれを言わせたかったのかな。 ここでいう「答え」こそが方程式の解って事なんだろう。ならば本作品のテーマなのだろう。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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正直ハードボイルドものは余り好きではありません。
登場人物の心理描写がなされないので、口数少ない主人公のセリフや何気ない所作から色々察する必要があります。 作品に没頭するには主人公に感情移入できる事が必要不可欠と考えます。 特にセリフに味わいがあるはずなのですが、訳によっては「キザ」「ダサい」で片付けられてしまい、こうなってしまっては最早「無味乾燥」 何も残らない作品として読み終えてしまうことが多いです。 分厚いけれど文字が大きいので読了までそれ程時間はかからないかなと思っていましたが、読み始めてみると改行が少なく字がびっしり、予想外に時間がかかってしまいました。 ただ、可読性が悪かったわけではなく寧ろすこぶる良好でした。 可読性が良いのに読了時間を要してしまったのは、それだけ苦手なはずのホードボイルドの世界に没頭できたからでしょう。 私が読んだのは村上春樹訳です。 村上春樹とハードボイルドっていまいちピンと来ないのですが、粋でウイットに富んだ文章を堪能させてもらいました。 清水訳は読んでいないのですが、本来ストーリーテラーであるはずの訳者により、違った価値観が付加されているように感じました。 いい意味での「軽さ」ですかね。 主人公を単なる「キザで鼻持ちならない奴」に終わらせず、ハードボイルド苦手な読み手にも好感を持たせる事に成功している訳者村上春樹のこの作品、この主人公に対する愛を感じることが出来ました。 ミステリっぽい部分もあるのですが、推理しながら読むような作品でもないでしょう。 世界観を楽しむ作品かなと思いますので。 最後、この作品一番の真相が明らかになる某セリフに「おっ」と驚かされる事でしょう。 これで十分、こんな事まで期待していなかったって分、感動は2倍って感じでしょうか。 私は知らなかったのですが、かなり有名なセリフだったようです。 後はタイトルの意味をどう解釈するか、ですかね。 面白かったです。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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クリスティ・ポワロシリーズの代表作の一つです。
初読でしたが映画を観ていたので犯人は既に分かっていました。 この作品は非常に登場人物が多いのですが、最初の事件発生までに非常に頁を要し、それまでの200頁余りを割いて、登場人物一人一人を非常によく描いています。 そして、乗客の中には、窃盗常習者、横領もみ消しを企む人物、 警察が追うアジテータが含まれています。 作中3名の人物が殺害されますが犯人の当初の目的はただ一人。 その目的の人物を亡きものとせんとする人物が実は乗客内にもう1名いて、未遂に終わったものの実際実行にうつしています。 この辺りがミスリードを誘い、読み手が推理に様々な方向性を見出せる様になっています。 この構成力は、クイーンやカーには無いように思いますね。さすがという内容です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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