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梁山泊 さんのレビュー一覧
梁山泊さんのページへレビュー数166件
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「中学生がクラスメイトと殺し合いをする」
この過激な設定に興味、関心を示す人は意外と多いのではないかと思います。 確か残虐な事件の低年齢化が問題となった時代だったかな、とかその時代背景なども考えつつ読み始めたのですが、悪人として描かれているのは完全に大人の方ですね。 「悲惨な状況下におかれて人間はどう生きるか」 が主眼になるのかと思いきや、まず(作者にその方面に知識がないのか)サバイバル的な要素は皆無。 食料も薬も、見つけたもの勝ちではあるが、調達しようと思えばできるのである。 「自分も同じ状況になればどうするか」と多分殆どの読者が考えるでしょう。 そんな中、「逃げる」か「受け入れる」しか選択しない登場人物たち。 ここでいう「逃げる」とは、殺されないように逃げ惑う事であり、「この理不尽なゲームから何とか脱出を図ろうとする者」が殆ど現れないのである。 事務局を狙おうとしたのもわずか一人だけ。しかも中盤で死んでしまうし。 頭を使おうとする生徒が少ないと感じたのだが、人間追いつめられると考えることをしなくなるというのだろうか。 ちょっと有り得ない。 また、物語を進行させるという意味で必要なのも分かるのだが、ターミネータみたいな奴が一人混じってるし・・・ 登場人物はクラスメート42名。 その全ての登場人物について、その死亡時の状況が描かれており「知らない間に死んでいました」という人物がいない。 そりゃこれだけページ食うわ、である。 オタクがいたり、オカマがいたり、とそれなりにキャラを描こうとしているのだが、キャラに合った思考を元にゲームに挑むという事をしていない。 これはキャラであってキャラでない。 こういうのが好きな人も多分いるだろう。だからこそ映画化もされた訳で・・・ ただ読み物としてはどうなのだろう。 何か残るだろうか。 と、ここまでボロカスに言ってきたが、正直結構楽しんで読めたかな・・・と。 ただ映画は見る気しないなぁ。 こんなの2時間や3時間でまともに表現できるわけがない。 |
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相当前になりますが日本ホラー小説大賞を受賞した作品で、かなり骨太で読み応えのある作品だと思います。
ただ、他の方たちのレビューにもあるように、薬学部出身の作者による専門用語の登場頻度が高すぎますね。 適量ならビシっと作品を引き締めてくれたりするんですが、ちょっと長すぎですかね。 また、これを読み飛ばした場合、Y染色体のくだりなど、物語の把握に支障をきたす可能性があるのがたちが悪いです。 あと意図的なのかは不明ですが、視点や時系列が前触れもなく変わるので、その場その場の状況が理解できるまでに時間を要してしまいました。 色んな点で少し読みづらい作品だなと感じました。 ただ、ミトコンドリア視点の描写は失敗ではなかったかなと。 思考をトレースできた時点で、底知れぬ怖さではなくなってしまった気がします。 共生が寄生だったというアイデア、その発想は抜群だったと思います。 しかし、その後の展開が余りにも現実離れ過ぎ、突飛過ぎるように思えます。 鈴木光司氏の「らせん」に表向きは非常に似た流れになるのですが、「らせん」のパロディかと思えるくらいのドタバタ劇になってしまいます。 ジワジワ見せるのが怖いのに、この作品の場合、いきなり「ドッカーン」です。 「発火」って・・・まぁここまでは分からんでもないですが、「意外と軽症だった」ってどんな発火システムなんだろう? |
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恥ずかしながら下巻の中盤に差し掛かるまで主人公の女性が「模倣犯」に登場していたあの人だという事に気が付かなかった。
続編というよりスピンオフと言った方がいいだろう。 自分の子供を殺してしまうという事。 これが一般常識では普通でないという事は誰の目にも明らかで、世論も黙っていないはずである。 しかし、その子供がどうしようもないクズだったらどうだろう。 この作品には、どうしようもない自分の子供を殺してしまった親とそれを放置した親が登場します。 そして放置された側は更生しないまま社会復帰して再び犯罪を犯してしまう。 作者は少年法についても一石を投じているのかもしれません。 「殺してしまった」と「放置して傷口を広げてしまった」 親としての苦しみはその中味こそ異なるだろうが、苦しむ事自体はどちらも同じかなと思う。 しかし、後者に対する同情らしき描写が一切ない以上、作者は前者を正当化しようとしているのかなと感じます。 つまりは、楽園を得るために何かを切り捨てるという選択は必要悪なんだと。 全編通して淡々としているのですが、淡々としているだけに余計にえげつない。 単体なら、この内容で十分評価できるしさすが宮部みゆきというところなのですが、あの「模倣犯」の・・・と考えると、何ランクも落ちる作品と言わざるをえないです。 作者が大好きな超能力云々についても「模倣犯の」という作品の印象を大きく逸脱させている事は否定出来ない。 そこには目をつぶれたとしても、ピース、ヒロミ、カズ・・・色々な視点から描かれ、これでもかというくらい掘り下げられた人物描写がありました。 この作品にこれがあったか。 滋子視点で「敏子、等」「土井崎家、茜、誠子」「あおぞら会」とグループ化出来るように思うが、それぞれのつながりが弱いというか一体感がないというか・・・ これは、そのあたりの「浅さ」に起因しているのではないかと。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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40代中間管理職の男性を主人公にした5編の短編集。
社内の昇進や異動に絡んでくる人間関係。 この年代になると同期入社の間でももう明暗がはっきりとしている。 順番から行くと私かと思っていたところに他所から、しかも女性だったなんていうのは経験者には笑えないか。 それだけでなく、子供の進路で悩まされる家庭での話、親の介護問題なんかも現実感を帯びてのしかかってくる。 四十にして惑わず、なんて言葉があるが、人生の折り返し地点を迎え、社内でこれからピークを迎えられる人間などごく僅か。 殆どの人間は、子供の養育費、住宅ローンを抱え下り坂を迎えるのだ。 恋愛の話も含まれているが、これはおまけか? いやいや、恋愛でもやってなきゃやってられないのかもね。 「サラリーマンは気楽な稼業ときたもんだ!」といった植木等の言葉はもう死語、っていうか当時のサラリーマンは気楽だったのかね。 今はこれでしょ。「独りモンはは気楽な稼業ときたもんだ!」 ホント羨ましいわ。 ただ、人生やり直せるとしても君らみたいにはなりたくないけどね(笑) 感想っていうか愚痴になってしまった。 若い人や女性はこれを読んでどう思ったかな。 |
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噂や口コミが社会に及ぼす影響やその怖さを描いた作品です。
学校や地域社会といった範囲にとどまらず、今や企業や国家の戦略としてさえ存在しているという事。 そして、そこに人為的な操作が介在している事に対しても不思議だと思っていないのですが、騙されていないと思っている自分がいる。 騙されていたとしても、自分がそれでハッピーなら問題ないのかも知れないですが・・・ あの東京五輪エンブレム問題にしても、あの不祥事を連発するハンバーガチェーンにしても、さてさて事実なのか虚偽なのか、人為的なことが働いているのか違うのか・・・疑いだすときりがないですね。 操作した側が結局その噂により消されるというこの作品の結末。 たかが「噂」、しかし発動したら最早人間の力では止められない強大な力というか津波のごとく全てを飲み込んでしまう怖さを感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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感動的な物語だという事は知っていたが、映画も見ていないし結末も知らないまま読みました。
妻殺しの警察官の、殺害から自首までの「空白の2日間」の謎を解明していくという物語。 物語の中心に据えられるのはその殺人を犯した警察官で、彼を取り巻く、警察、検察、裁判官、新聞記者ら6つの視点から描かれます。 この手法はこの作者の得意とするところなのでしょうか。以前読んだ「動機」も同じでしたね。 殺人犯である中心人物はいわゆる「静」、黙秘の姿勢を貫きます。 余りにも存在感がないのは気になりましたが・・・ その分彼を取り巻く「動」の面々が魅力的で、仕事に命をかける男たちの生き様には迫力があり、そこに存在する軋轢や摩擦そして挫折といったものは読み応えがありした。 彼から「自死」の臭いを嗅ぎ取り、自分の保身を考えずリスクを負いながら、何とか死なせまいとする男たちが何とも美しかったです。 ただ・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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警察官、裁判官、新聞記者、元犯罪者と、警察とどこか関連のある4つの異なる立場の視点から描かれた4編の短篇集です。
事件は発生しますが、事件と言っても「警察手帳の盗難」などちっぽけなものばかりで迫力という点ではいまいちかも知れません。 どこか「警察あるある」的な軽さがあります。 些細な事件、些細なきっかけ・・・だったりするのですが、そんな些細な事が「動機」に繋がる。 人間の内面の弱いところにスポットを当てて、浮かび上がってくる「動機」に至るまでの過程を描いている。 そんな作品だと思いました。 正直、短篇集だと知らずに読み始めました。 面白かったのですが、男臭い長編警察小説を期待していたわけで若干拍子抜けくらったかな。 |
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キャリア官僚の視点で描かれた警察小説。
連続殺人事件が起こっているにも関わらず現場視点で描かれていないので緊迫感という点でどうかと思っていたが、そこには別の意味の緊張感が存在した。 警察内の不祥事と家族の不祥事。 それに対する決断までの苦悩が描かれます。ただそれだけの話なのですが、これがなかなかに面白い。 決定的に効いているのが主人公のキャラ設定な気がします。 「東大以外はクズ」と言い切る主人公。 実際官僚の世界では当然の事なのだろうが、無縁な私にとって、そんなセリフを主人公の口から聞かされるのは気持ちのいいものではない。 よく言えば「一本筋の通った男」と言えるが、堅物、融通が効かない、思考に柔軟性がない・・・などなど、これでは周りにいる人間は大変だ。 普通なら「最後に負けるキャラ」だ。 そんな彼がした決断は、最も正しいが、実際は一番有り得ない決断と言えるかも知れない。 物語前半で読み手に植え付けられた出世至上主義者が選択する決断ではないのだ。 どこか不思議なキャラである。 読了後もまだこのキャラに違和感を拭い去れずにいるのですが、出世街道から外れた彼が次回作以降でどんな活躍をするのか楽しみです。 |
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この作品には事件以外にもう一つの見どころがあって、登場人物の一人である推理作家により「アリバイ講義」が作中で展開されているんですね。
「やりたかったのかなー」って想像してしまう。 まぁ、江神は学生だし、火村にしても犯罪心理学者な訳で、彼らの口を借りて「アリバイ講義」を始めるのはおかしな話ですからね。 良かったんじゃないでしょうか。 で、事件の話。 序盤はアリバイ崩しに終始、しかもそれが「時刻表トリック」 この作者がこのような作品を描いていたんだという驚きがありました。 双子を上手く使って単なるアリバイ崩しで終わらせていないところはさすがだとは思いましたが、やっぱり受け身にならざるを得ない「時刻表トリック」は苦手で、読中は「つまんねーなー」でした。 で、第二の殺人が起きる事で物語は急転直下、加速度的に面白くなっていくのですが・・・ ▼以下、ネタバレ感想 |
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「開かせていただき光栄です」の続編。
主要登場人物も同じですし、前作の事件ありきの今作品ですから、さすがに前編を読んでいないと厳しいですね。 今回の主役は盲目の治安判事サー・ジョン。 確かに前作においても好キャラであったし不満ではないものの、バートン先生だけでなくダニエルズの登場が少ない。 ダニエルズの中心的存在であった二人が出奔中という事もあり、仕方ないのかなと思いつつ、いやいや終盤ではと期待していましたが・・・ う~ん想像していたものとはかなり違う内容。 所謂スピンオフ作品と言っていいのではないでしょうか。 それでも、腐敗した世の中で、他人の事をこれ程までに思い、その信念を貫き通そうとし続ける時代の弱者達。 前作もそうでしたが、この作者の描く感動は「安っぽくて薄っぺらい」感動ではないのです。 登場人物たちの、ある時は苦悩、またある時は喜びが、すっと入ってきます。一緒になって泣き、笑いが出来るのです。 背景や人物がしっかり描かれているからですね。 この作品については、バートンズの活躍を期待していた分、若干期待はずれの部分はありましたが、このシリーズは絶対にお薦めできますよ。 一名の退場者こそ出してしまいましたが、勿論これで終わっていいワケがない。更なる続編ありと思っています。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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白夜行の続編だという事を知らなくとも、勿論単品でも読めますし、小説としての完成度も高い素晴らしい作品です。
しかし白夜行の続編として読むと・・・白夜行に勝る所の無い作品。こういう評価にならざるを得ないです。 白夜行では、主人公である男女二人の視点からは全く描かれませんでした。 全編第三者から見た印象で語られたわけですが、このストーリーにこの手法を持ってきた事に驚かされたものです。 彼らの心情は正確には誰にも分からず読者の想像に委ねられる形で、実際色々な解釈が出来たはずです。 また、雪穂と亮二は過去の不遇を共有しており、悪事をはたらきながらも底辺から成り上がっていくその姿には、十分感情移入できる設定になっていました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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この作品は名作なのか?
趣向、アイデアは最高に面白いというか驚くべきというレベルと言っていいと思う。 なのに知名度がそれ程高くない(よね?)のは何故か? というのも納得できてしまうのである。 何故これ程のアイデアを、こんな作者の遊び心満載な作品に仕上げてしまったのか・・・ 古典本格をあまり読まない人、例えばカーを読んだ事のない人が読んだらどう思うのだろうか。 因みにカーのファンの人が読んだら複雑な気分になるという意見が多いようであるが・・・ あと「ノックスの十戒」のあの中国人に関する件を知らない人と知っている人では、作品内の「ある結末」に関する感じ方も違うはず。 これだけのプロットを、こんな「分かる人には分かる」的要素の含まれる作品で披露するべきではなかったのではと思いますね。 不満はそれだけではない(ネタバレにて) ▼以下、ネタバレ感想 |
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信濃譲二シリーズの短篇集。
シリーズ制覇のために手に取ったわけですが、本家長編家シリーズよりも全然面白かったです。 短篇集でありながら読者挑戦型。 問題編と解答編に分かれているところからは、読み手に「考えさせよう」としている作者の意図、そして自信が伺えます。 なる程、一話一話プロットが非常に良くできています。 無駄な記述をなくす事は短編ではある程度仕方のない事ですが、この作品は、話が急展開過ぎたりもせず、説明不足もありません。 非常に読みやすく尚且つ読み応えもあります。 特に「有罪としての不在」がお薦め。 多分殆どの方が騙され、驚かされるのではないかと思います。 私がこれまで読んだ短編作品ではNo.1かも知れません。 |
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世間で言われている通り「名作」だと思いました。
確かに、前知識なく読まれることをお薦めしたいです。騙されると思います。 本作には3箇所の驚愕ポイントがあります。 所謂脱力系のバカミス(と言ってしまっていいと思う)なのですが驚かされましたし、発表された時期を考えても、そのアイデアは素晴らしいと思いました。 まぁトリックというより「サプライズ」と言った方がいいかも知れません。 ただ感動したとまでいかないのは、申し訳ないですがその表現力というか文章力というか・・・そこにあった気がします。 作者と同姓同名の人物が登場しますが、強姦未遂で殺されてしまうという・・・ もう少しマシな役どころで・・・というレビュアーの方も多いですが、私は、あとがきで作者に裕子のモデルと言われたMさんの方が相当気の毒でした(笑) ▼以下、ネタバレ感想 |
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貴族探偵の続編。
このシリーズ、設定の時点で既にコメディっぽいのですが、今作ではここにライバル?の女探偵を登場させた事でよりコメディ色が強くなっています。 何故なら貴族探偵はある意味無敵であり、ここにライバルを登場させて「VS」といったところで対決にすらならないからです。 探偵役が二人登場する事による多重解決が見どころになるのですが、勝者が決まっているところが難点とも言えます。 第2話に同じ女探偵が登場してきた時点で、想像していたとはいえ勝ち負けに関してははっきりしましたから。 毎回その間違った推理を披露する(させられる?)女探偵ですが、死亡した名探偵の弟子でただいま駆け出し中。 一応数々の事件を解決してきた名探偵との事ですが・・・ 女探偵視点で描かれているので、感情の起伏が激しかったり、負けず嫌いだったり、表情に出やすかったり・・・名探偵と呼ばれるまでのレベルにない事まで全て読み手にもろバレ。 まだまとまってもいない推理を披露したり、関係者に自分の考えをべらべらしゃべったりと、これでは推理好きのただの野次馬レベル。ワトソンですね。 でもまぁ貴族探偵の相手役としては、こういうキャラの方が嵌まるような気がします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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学生アリスシリーズ初短編集。
有栖と江神の出会い、EMCへの入部から麻里亜入部までの1年が描かれています。 「桜川のオフィーリア」と「四分間では短すぎる」の間に「月光ゲーム」で描かれた事件が起こっていたり、「桜川のオフィーリア」には、(まだ起こっていない)「女王国の城」に登場するあの宗教団体の事が語られていたりとファンには嬉しい一冊になるはずだ。 9つの作品の中で異彩を放っているのが書き下ろしの「除夜を歩く」 望月が書いた「仰天荘殺人事件」を元に江神と有栖がミステリ論を展開させるというもの。 素人が書いた穴の多い探偵小説のトリックを題材としているのだが、これがかえって「いじりやすい」 お笑い担当である織田、望月コンビは不在であり、江神と有栖がサシで交わすのですが、かなり深く読み応えがあります。 日本のエラリークイーンが後期クイーン問題に物申す的なところも非常に興味深い。 「トリックは、ロジックに優先する」は作中の江神のセリフだが、この作者が代弁させていると考えると重みがある。 |
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