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陰気な私は地球を回さない さんのレビュー一覧

陰気な私は地球を回さないさんのページへ

レビュー数26

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No.26: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

ベスト更新

伊坂幸太郎氏の作品で私が最も気に入っている作品を挙げるとしたら、答えるのが非常に難しいがおそらく「チルドレン」であろう。今回「アイネクライネナハトムジーク」を読み、そのタイトルが塗り変わったかもしれない。作風だけで言えばチルドレンとも非常に構成が似通った本作だが、きっと私のストライクゾーンど真ん中に刺さった作品なのだろう。

▼以下、ネタバレ感想
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アイネクライネナハトムジーク (幻冬舎文庫)
No.25:
(9pt)

阪急電車への思い入れは格別になる

関西で最大級の鉄道会社である阪急阪神ホールディングス。その中でも阪急電車は特別であり、多くの人々にとって憧れの的である。そんな阪急電車の中でもあまり知名度のない、今津線を舞台にした物語が本作である。
今津線は宝塚〜西宮北口〜今津を結ぶ路線であるが、宝塚方面の電車と今津方面の電車は全く別のホームにあり、西宮北口で乗り継がなければならない。そしてそれぞれの路線が非常に短い。
この今津線沿線に住む人にとっては、各駅や街のイメージが手に取るように浮かび、非常に思い入れのある作品となるのではないだろうか。かくいう私は現在、この作品にも登場する西宮北口に住んでいる。そのため西宮北口の章では細かな描写がはっきりと伝わってくる。毎日通勤で使っているためそれは当然だろうが、一方でそれは阪急神戸線であり、今津線に乗ったことはたったの1度しかない。そういった点では西宮から宝塚にかけての新たな魅力を感じることができた。もう少しそっち方面にも足を伸ばしてみようと思った次第である。
もちろん阪急なんて乗ったことないといった人でも楽しく読むことができるだろう。なんとなく電車に乗っているが、電車に乗っている誰もが自分自身が主役の人生を歩んでいる、そんな当たり前のことも気付かされた。そのように様々な人生が交錯し、互いに影響を及ぼしながら物語は進んでいく。とても幸せな気持ちになれる一冊だ。
阪急電車 (幻冬舎文庫)
有川浩阪急電車 についてのレビュー
No.24: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

終盤の怒涛の加速!

なぜだろうか、主人公に準ずる人物が盲目である作品に強く惹かれる。乙一氏の「暗いところで待ち合わせ」や伊坂幸太郎氏の「チルドレン」もそうである。
小説において、与えられた文章以外には何もわからず、登場人物の顔さえわからない点では盲目の人と変わらず、少しだけ近づくことができる点に面白さがあるのかもしれない。目が見えないと小説は読めないのに、なんとも皮肉めいている。

本作は、孫の腎臓移植に自分の腎臓が適さず、兄に頼むが検査すら断られることから兄が偽物ではないかと疑うところから始まる。その中で数多くの謎を残し、終盤まで引っ張られワクワクしながら読むことができた。兄は本物なのかどうか、点字を用いて送られてくる差出人不明の手紙、さまざまな人物からの脅迫、無言の恩人などだ。それら全てを矛盾なく最後には説明され、また、伏線の中にヒントを散りばめていたあたりは見事だ。中盤までは面白さが鳴りを潜めていたが、そこから一気に加速する。
1つだけ注文をつけるとしたら、中国名にはふりがなをもっと振ってほしい。おそらく言葉が最初に登場した時のみに振られている。そこで引っかかりリズムの悪さは否めない。
本の最後には膨大な参考文献が並んでいたが、読んでいて勉強になったことがたくさんある。正直、私自身は残留孤児について全くの無知であった。まれに高齢者の方で生まれが満州だという人について耳にすることがあるが、このような過酷な環境であったとは全く知らなかった。
死がこれほど身近なものではない今の生活では当たり前のように暮らしているが、今の人生を大切にしたいと思わされた。自分のことと照らし合わせて読むことができたのが大きかったと思う。というのも余談であるが、私の祖父が戦争を経験し、祖父の弟は戦死しているからである。もし祖父が同じように亡くなっていたら今の自分はいない。そんな運命の巡り合わせを感じずにはいられなかった。
闇に香る嘘 (講談社文庫)
下村敦史闇に香る嘘 についてのレビュー
No.23: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

単なる不老不死の話では終わらない

こんなに楽しい読書は久しぶりだった。SFだが読んでいて置いてけぼりに全くならない。すぐに設定に溶け込めて、後は文庫で1000ページ弱、一息に読むだけである。こういったジャンルの作品は、どうしても穴がありツッコミたくなる隙のある作品もよくみられるが、最初から最後まで矛盾をよく抑えた作品だったように思う。それだけストーリーに浸りやすかった。

不老不死手術を受けてから100年間を生存可能とする100年法、それを過ぎた人々は安楽死を受け入れなければならない。自分が実際100年目に突入したらどう感じるか、もしかしたら死から逃げ出すかもしれない。自分をストーリーにはめ込んで読むと面白い。その中でいろんな人の感情や策略が混ざり合ったストーリーは、ボリュームがありつつ纏まりがある。ところどころ脇道に寄っているようで、全く寄っていない。
また、登場人物が1人ひとり色濃く描かれている。個性が立っていて、必要十分な駒が出揃っているように感じた。ちなみにどうでもいいが、戸毛幾多郎には嫌気がした。

▼以下、ネタバレ感想
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百年法 上
山田宗樹百年法 についてのレビュー
No.22: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

どんでん返し、そしてグロテスク

やっぱり西澤保彦氏の作品は面白い。本格物を得意とする彼の作品は明らかに他の本格作家と異なります。本格物といえば、淡々と進み謎解きにばかり重点を置いて、それ以外を御座なりにしている印象が拭えない物が多いです。けれども、彼の作品は必要十分に登場人物の心情を丁寧に描写してくれているので、作品に対するのめり込みが全然違います。本作も魅力的なキャラクターが際立っていてとても楽しめました。

「彼女が死んだ夜」この設定が奇抜で良かったです。飲み会から帰宅したら、知らない女が倒れている。明日からは待ちに待った海外留学が始まり、警察沙汰になりたくないがために友人に死体を処分させるという始まり。
変化球的な内容で楽しませてくれるのかと思っていたら、まさかの結末。二転三転、いや一体何回驚かされるんだと。真相含め、とにかく意外性に満ちていました。

主人公がアルコール依存気味であったり、女性に滅法弱い不思議な留年生だったりユーモラスな印象もありますが、一方で身近でありふれた世の中の闇の部分も丁寧に描かれています。そういう意味では「グロテスク」な内容だと思います。「男は所詮、女性のことを排泄用の便器くらいにしか考えていない。」こういった科白が出てくることにも衝撃を受けましたが、著者の様々な主張を感じました。そんなに世の中フェア(綺麗)じゃないんだよと。

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彼女が死んだ夜 (幻冬舎文庫)
西澤保彦彼女が死んだ夜 についてのレビュー
No.21:
(10pt)

続編が読みたい

なんとなくのほほんとしたタイトルや表紙から心温まるストーリーだと想像しましたが、想像の遥か上をいっていました。面白すぎます。
まず登場人物が魅力的です。「マーフィーの法則」という訳のわからない屁理屈を紹介する本をバイブルとしたリサイクルショップ店長。優しさと思いやりに溢れた副店長。そしてリサイクルショップに入り浸る中学生。彼らが事件に巻き込まれながら二度解決をするというのがユニークです。まず初めにカササギが事件を推理し、日暮が間違った推理をこっそり訂正するというパターンです。4話とも同じ形で始まり終わるので、安心して読め、次の話を楽しみにしてしまいました。
また、ユーモラスなだけでなく、ストーリーもよく練られており無駄がなく、温かみもありました。ずっと気持ちが良いです。全ては日暮の優しさに詰まってると思います。

あまりシリーズ化しない道尾氏ですが、彼らの作品はもっと読みたいと思わされました。シリーズ化しないからこそ手に取りやすい良さもありますが…
カササギたちの四季 (光文社文庫)
道尾秀介カササギたちの四季 についてのレビュー
No.20:
(10pt)

批判されているかのような恥ずかしさ

この作品を読んでどれほど共感したことか、現実をここまで緻密に捉えているのは凄すぎます。主人公の拓人の心理描写が精密機械のごとく、実際の大学生活や就職活動、そして周囲の人々を捉えています。わかるわ〜と只々共感するばかりでした。それを文章にしてしまえるのが本当に凄いとそう思わずにはいられません。まるで朝井リョウ氏が大学生活や就職活動はたまたは人間社会の生みの親であるかのような笑。

反対の言い方をすると、フィクションとしての面白さは皆無とも言えます。事実は小説よりも奇なり、と言いますがこの作品は現実よりも現実な気がします。心躍る物語の世界へ飛び込める訳ではないのに、ハマってしまいます。

この小説はかなり毒があるというか棘があるというか、誰が読んでも心にチクリと刺さると思います、本当にカッコいい人以外は。
何者 (新潮文庫)
朝井リョウ何者 についてのレビュー
No.19: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

最高の読後感

前作を読んでないとわかりにくいかもしれません。そこからの話がたくさん出て来ます。

途中まではありふれた法廷ミステリかと思っていましたが、信じられないような結末に感動しました。これ以上ないところに落とし込む著者は凄いですね。

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追憶の夜想曲 (講談社文庫)
中山七里追憶の夜想曲 についてのレビュー
No.18:
(9pt)

もし自分がもう1人いたら

初めて西澤保彦氏の作品を読みましたが、奇妙なSFストーリーにのめり込みました。突如、虹色の壁が世界中に現れ、それに触れてしまうと触れた人と全く同じ人間が壁から生まれてくるという、クローンを題材とした作品でしたが、その状況下での人間心理が実に精緻に描写されていました。文章も主人公の心理描写がほとんどで、非現実的ではあるもののその心情は共感し得るものでした。

クローン技術が現代においてどこまで現実的な話なのかわかりませんが、恐ろしいものであることはよくわかりました。考えたこともないテーマであったのも重なり、新鮮な気持ちで唯一無二のミステリを読めたことに満足です。
複製症候群 (講談社文庫)
西澤保彦複製症候群 についてのレビュー
No.17: 6人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

思考を促された

ここまで考えさせられる一冊に出会えたことに感動しています。日本が超高齢社会に向かって行く中で、抱えることがわかっている(わかっていた)介護問題について警鐘を鳴らした本作を、何が正しいのか自問しながら読み進めていきました。

この作品では明らかな悪者は出て来ません。これは実際の世の中でもそうであり、程度差はあれ誰もが善性も悪性も持っているグレーの存在だと私は思います。
本作では、要介護老人を40人以上殺害した犯人「彼」が登場しますが、彼を真っ直ぐに否定できないように感じました。彼は、大変な毎日を送る介護者と被介護者を救うために殺害したと主張しているのです。
Aさんがコップが溢れそうになるほど水を注ぎました。それをBさんが倒してしまい水を床にこぼしてしまいました。この水をこぼしたのはAさんなのかBさんなのか、答えはすぐには出ないでしょう。同じことがこの作品にも言え、殺人を犯した彼が悪いのか、はたまたそうさせた社会が悪いのか。

最後に話は変わりますが、介護業界の抱える深刻な問題を認識させられました。つい先日、介護業の平均所得がかなり低いと書かれた雑誌を読みました。介護がビジネスであることに違和感を持つ人もいると思いますが、実際に多くの人が救われてもいます。大変であるが故にビジネスとして成立しており、社会保障が関与しているにも関わらず薄給だなんておかしい!と思いながらも介護問題から目を背けたがっている自分自信に呆れもしました。そういう意味では自分も「安全地帯」の方に行こうとしているのかもしれません。

誰もが避けては通れない問題なので、誰が読んでも心に響く一冊だと思ってオススメします!
ロスト・ケア (光文社文庫)
葉真中顕ロスト・ケア についてのレビュー
No.16: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

幻の夜はいつぞや

白夜行の内容を細かく覚えてないですが、特に関連がある訳でもなく単に作風が似ているぐらいに思って読むのがいいのかなぁと思いました。この一冊で充分すぎるぐらい面白いです。

幻夜は、主人公の1人である雅也の視点を使う場面が度々あるので多くのことがわかってしまいます。具体的に書き過ぎないことで自分なりの解釈で楽しめたのが白夜行であったのに対して、本作は情報を与えられ過ぎているように感じました。それ故この物語独特の奇妙さ、暗さが半減してしまったのかなと。
とはいえ、ミステリとしての中心の話題である「美冬の謎」が際立っているとも思います。美冬の行動の1つ1つが謎めいていて、真相に至ってもやっぱり謎。全く共感できることはありませんが、突飛だからこそ面白かったのかも。

後はタイトルがいつの夜を指しているのか(1人1人違うのか)興味深いです。
幻夜 (集英社文庫 (ひ15-7))
東野圭吾幻夜 についてのレビュー
No.15: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

これはフィクションなのか

脱輪事故により人を殺めてしまった、その責任はトラック運送会社の整備不良にあるのか、それとも自動車メーカーにあるのか。重苦しく感動的なストーリーではありますが、何とも嫌味な大手企業との戦いに爽快感に溢れていました。

ホープ財閥からはどうしても◯菱財閥を連想せずにはいられません。地上波ではスポンサーが付かないから有料チャンネルでドラマ化されたとの噂もある本作ですが、それだけ大手企業にとっては耳の痛い作品でしょう。大企業の高慢さを描いており、どうやって懲らしめるのかワクワクしました。
池井戸作品ではお馴染みの住◯財閥をモチーフにしたであろう白水銀行は出てきません。その代わりにはるな銀行が登場します。名前からもわかりそうですが明らかに某銀行を連想させる説明があります。フィクションとしてここまで現実を描写したかのような作品に引き込まれない訳がないと思いました。

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空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)
池井戸潤空飛ぶタイヤ についてのレビュー
No.14:
(9pt)

これぞ伊坂ワールド

短編集です。それぞれの話が特別リンクしている訳ではなくほとんど独立した話です。いずれの作品も作風が大きく異なるので飽きずに読めると思います。ですが一冊として綺麗にまとまってます。不思議です。
どの話も一癖も二癖もあり、伊坂幸太郎氏らしい作品が集まっていて大満足の一冊でした。彼の作り出す設定にどうして?なんで?となってしまう人はハマらないかもしれません…ただ、彼の描く世界観や物語の雰囲気が好きな人にオススメしたいです!
首折り男のための協奏曲
伊坂幸太郎首折り男のための協奏曲 についてのレビュー
No.13: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

ありえなくもない気がする

ここまでのめり込んで読んだ作品は初めてです。大げさに感じるかもしれませんが、気付いたら読み終わっていたというぐらいに一気に読めてしまいました。SF物なので伝わりにくい表現や説明が長々としてたら嫌だなぁと思っていましたが、非常にわかりやすく、そして違和感無く読ませてくれた著者の力量に脱帽です。
こんなゲームが近いうちにできてもおかしくない気がします。

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クラインの壺 (講談社文庫)
岡嶋二人クラインの壷 についてのレビュー
No.12: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

御手洗潔の原初

島田荘司氏が初めて手掛けた小説だそうです。とはいっても発表された順番では御手洗潔シリーズで4作目。あえてその順序を変えたそうですが、その効果は絶大でしょう。私は「占星術殺人事件」と「斜め屋敷の犯罪」を先に読みましたが、そうでなければここまで物語に深く浸ることができたかどうか…それは一生わかることはないんですが。

どこがどう違うのかと言われると説明できませんが、今まで読んだ御手洗潔シリーズの作品と雰囲気が異なりました。謎解きに主眼を置いた本格ミステリのそれではないように感じます。私は強引な展開もほとんどあるようには感じず、すんなり読むことができました。どこか心温まるストーリーに、純粋に文学としても楽しめるそんな作品ではないでしょうか。「占星術殺人事件」で感じた読みづらさは一切感じませんでした。

もともと好きでしたが、御手洗潔というキャラクターがより一層輝いて見え、他の作品全てを読んでしまいたい気持ちにさせられました。

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異邦の騎士 改訂完全版
島田荘司異邦の騎士 についてのレビュー
No.11:
(9pt)

ノンストップ

読み始めてすぐに死体が発見され、そこからわずか一晩の話とは思えないぐらいに濃密な物語でした。いい意味で最初から最後まで通して緊張感があり、退屈な場面は全くありませんでした。

主人公が骨髄ドナーとして子供を助けたいと行っているのに、あまりの悪党っぷりに感情移入できなかったことを唯一残念に感じています。古寺巡査長と剣崎主任は好きです。
グレイヴディッガー (角川文庫)
高野和明グレイヴディッガー についてのレビュー
No.10: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

あらゆる要素の詰め合わせ

この小説に書かれているのが恋愛なのかは疑問ですが、人間関係の複雑さ、難しさが丁寧に描き出されていて、悲しみや温かい心を感じることができ、さらにはミステリとしての要素も盛り込まれています。ジャンルを分類できるような一冊ではありませんでした。

盲目の人の家に勝手に潜むことがとんでもない設定であるというのもわからないでもないですが、それほど違和感を感じずに読めました。目の見えないミチルが感じ取る情景を豊かな文章力で表現しているのがとにかく素晴らしかったです。
暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)
乙一暗いところで待ち合わせ についてのレビュー
No.9: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

天使のナイフの感想

妻が3人の少年によって殺害されたが、少年法に守られた彼らは法によって裁かれることない。これでは被害者の親族は全く納得することができない。そんな少年法を取り巻く現実について問題提起をした社会派小説として序盤は特に目立った面白さも感じませんでしたが、次々に明かされていく驚愕の展開にミステリーとしての面白さが詰まっていました。怒涛の逆転劇とたくさんの伏線を無駄なく回収していくあたりに、重たいテーマながら楽しんで読めるところが良かったです。

メソポタミア文明のハンムラビ法典ではないですが、「目には目を歯には歯を」のように、悪いことをしたら同じことを仕返しされても仕方がないという感覚しか持っていなかった私としては、考えさせられる小説でした。幼い子どもであっても罪を犯したら罰するべきか、教育によって更生させるべきか、どちらも正しい部分もあり間違っている部分も含んでいるように思えて、それぞれの登場人物のやるせない気持ちにも感情移入できました。
1番の感想は自分の子供が罪を犯したら被害者には謝罪に行くのが家族でしょ!とは思わずにいられませんでした、そうする勇気が湧かないのも理解できますが…


▼以下、ネタバレ感想
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天使のナイフ 新装版 (講談社文庫 や 61-12)
薬丸岳天使のナイフ についてのレビュー
No.8: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

暗喩が素晴らしい

比喩を用いて、直接的な表現をせずに読み手の想像を求める小説に感じます。タイトルにも使われている「龍」と「雨」を用いた情景描写や心理描写の文章を追っていくのが楽しい小説でした。解説を読んで、なるほどそういう読み方もできるのかと驚かされましたが、読む人によって受け取り方も大きく異なると思います。

終盤まではあまりミステリー感が感じられませんでしたが、終盤にはまさに雨で溢れた川のように勢いの良い展開にワクワクしました。
龍神の雨 (新潮文庫)
道尾秀介龍神の雨 についてのレビュー
No.7: 5人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

社会派であり本格派

とにかくオススメできる1冊です!
刑務官と前科者が、死刑囚の無罪を証明するために奮闘するという、ありそうでなかなかない設定が魅力的に感じます。前科者の心理描写など、普段あまり触れることのない感情に興味を刺激されました。死刑制度や犯罪者の心理など、多くのことを考えさせられる心に残る作品でした。

重要な点にはとことこん掘り下げて書くのに対し、飛ばすべきところは詳細を書かずに飛ばしてしまうテンポの良さに、最後まで飽きずに面白いところだけを読まされている気分になりました。

そこまで多くはない登場人物にそれぞれの想いが秘められていて、最後には全てがわかります。全く無駄がありませんでした。二転三転する仕掛けなど、社会派でありながら本格派でもあるように感じました。
13階段 (講談社文庫)
高野和明13階段 についてのレビュー


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