土の中の子供

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評判

土の中の子供の評価:

3.45/5点 レビュー 86件。 D ランク

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平均点3.45pt

Amazonレビュー一覧

Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全165件 101〜120 6/9ページ
No.65
(5pt)

パウル・クレーの絵の中の魚のように

「土の中の子供」(中村文則)読了。ここで語られている主人公の魂の叫びを私は共有することができなかった。私にとってそれは想像力の埒外にあってまるでパウル・クレーの絵の中の魚のように強烈な寓話性の中にしか存在し得ない「何か」である。(自分でも何を言っているのか判らないが。)(笑)
むしろ私は併録の「蜘蛛の声」に共振してしまった。自分を取り囲む日常から抜け出して身を潜めているときの安らかな感覚が妙にリアルに肌に馴染むんだな。大丈夫か?俺。
とは言いつつも、私の貧弱な想像力はさておき、表題作の「土の中の子供」が持つ力強さは否定できないのである。

土の中の子供 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 土の中の子供 (新潮文庫)より
4101289522
No.64
(5pt)

文章が美しく、洗練されている。表現力は秀逸!

ものすごい表現力。土の中に生き埋めされるとき、めちゃくちゃに殴られるとき、虐待されるとき、ガードレールに自ら車で衝突するとき。
 こんな作家見たことない。いや読んだことない。しかも文章が読みやすくて心地よい。芥川賞作家の中でもセンスを感じる。好きになってしまいそうだ、この作家の表現力。
 扱ってるテーマはユニーク。こんなシーン、題材における、こんな被害者側の精神的なサディステックなまでのマゾヒズム的境地心地をリアルに上手く、そして沁みるようにストレートに表現した作家が今までにいただろうか?
 テクニックではなく、なにか天性のセンスを感じた。
 ここに、一緒に収められてる作品「蜘蛛の声」も、短いが、その世界はキュートですばらしい。
土の中の子供 Amazon書評・レビュー: 土の中の子供より
4104588040
No.63
(5pt)

文章が美しく、洗練されている。表現力は秀逸!

ものすごい表現力。土の中に生き埋めされるとき、めちゃくちゃに殴られるとき、虐待されるとき、ガードレールに自ら車で衝突するとき。
 こんな作家見たことない。いや読んだことない。しかも文章が読みやすくて心地よい。芥川賞作家の中でもセンスを感じる。好きになってしまいそうだ、この作家の表現力。
 扱ってるテーマはユニーク。こんなシーン、題材における、こんな被害者側の精神的なサディステックなまでのマゾヒズム的境地心地をリアルに上手く、そして沁みるようにストレートに表現した作家が今までにいただろうか?
 テクニックではなく、なにか天性のセンスを感じた。
 ここに、一緒に収められてる作品「蜘蛛の声」も、短いが、その世界はキュートですばらしい。
土の中の子供 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 土の中の子供 (新潮文庫)より
4101289522
No.62
(5pt)

ぎりぎり生きてる主人公に強い「生」を感じる

以前、大病をしたことがあるが、人生観が変わるなんてことは別になかった。しかし気がついたらそれまで思わなかったことを時折思うようになった。
それは「”生きる”って死ぬまでは生きることなんだなぁ...」ということ。何アホ言ってるのか?と思うだろうが、正直そう思ったのである。
偏差値世代の自分はどこかで人生には目標が必要であり、その目標達成のためにあると思っていたのだろう。しかしニンゲンは別に何かを為すために生まれて来た訳でなく、
生まれたからには死ぬまでは生きてるし、生きたいと思うものだなぁ、と改めて感じたわけである。
この小説をを読んでそんなことを思い出した。
主人公は決して前向きな生きる意欲をもってる訳じゃないし、精神状態はかなり危ない感じである。
でもぎりぎりに「生きてる」だけに「生」をより強く感じるのだ。
とはいえ「生きる勇気」をもらいたいと考えてる人には決して本書をお勧めはしない。
これは芥川賞作品だというが、常々、「名物にうまいものなし」「芥川賞におもろいモンなし」と思っていたが、これは今まで読んだ芥川賞の中で1番印象に残る。
土の中の子供 Amazon書評・レビュー: 土の中の子供より
4104588040
No.61
(5pt)

ぎりぎり生きてる主人公に強い「生」を感じる

以前、大病をしたことがあるが、人生観が変わるなんてことは別になかった。しかし気がついたらそれまで思わなかったことを時折思うようになった。
それは「”生きる”って死ぬまでは生きることなんだなぁ...」ということ。何アホ言ってるのか?と思うだろうが、正直そう思ったのである。
偏差値世代の自分はどこかで人生には目標が必要であり、その目標達成のためにあると思っていたのだろう。しかしニンゲンは別に何かを為すために生まれて来た訳でなく、
生まれたからには死ぬまでは生きてるし、生きたいと思うものだなぁ、と改めて感じたわけである。
この小説をを読んでそんなことを思い出した。
主人公は決して前向きな生きる意欲をもってる訳じゃないし、精神状態はかなり危ない感じである。
でもぎりぎりに「生きてる」だけに「生」をより強く感じるのだ。
とはいえ「生きる勇気」をもらいたいと考えてる人には決して本書をお勧めはしない。
これは芥川賞作品だというが、常々、「名物にうまいものなし」「芥川賞におもろいモンなし」と思っていたが、これは今まで読んだ芥川賞の中で1番印象に残る。
土の中の子供 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 土の中の子供 (新潮文庫)より
4101289522
No.60
(5pt)

暗がりの中に一筋の希望

確かに暗いのは否めない。
他の人のレビューにもあるように、ヒロインの性癖や主人公の自分で自分を追い込む
思考は単純かもしれません。
ただこの作家の持つ、とことん掘り下げた表現には感嘆しました。
とにかく惹きこまれる。ぐいぐいと読み手を魅了する文章はお見事!!
暴力の中にある倫理を見せ付けられた。こんないい作品はなかなかない。
探そうとしても、滅多にお目にかかれない。
読み終わった後にも、翌日にも胸に残る感動が気持ちいいです。
ずっと手もとに置いておきたい1冊です。
土の中の子供 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 土の中の子供 (新潮文庫)より
4101289522
No.59
(5pt)

暗がりの中に一筋の希望

確かに暗いのは否めない。
他の人のレビューにもあるように、ヒロインの性癖や主人公の自分で自分を追い込む
思考は単純かもしれません。
ただこの作家の持つ、とことん掘り下げた表現には感嘆しました。
とにかく惹きこまれる。ぐいぐいと読み手を魅了する文章はお見事!!
暴力の中にある倫理を見せ付けられた。こんないい作品はなかなかない。
探そうとしても、滅多にお目にかかれない。
読み終わった後にも、翌日にも胸に残る感動が気持ちいいです。
ずっと手もとに置いておきたい1冊です。
土の中の子供 Amazon書評・レビュー: 土の中の子供より
4104588040
No.58
(3pt)

長けた精神描写

本書には05年芥川賞受賞作の「土の中の子供」とともに、もう一編「蜘蛛の糸」という短編も収録されている。
前者は暴力、後者は回避という異なった焦点で描かれるが、どちらも主人公の抑鬱、葛藤を通して、最終的にある種の克服に至る過程が描かれる。
外面(状況)も繊細に描写しつつ、内面(心の動き、精神の流れ)へのアプローチに成功しており、中盤から読了までは目が離せなかった。
ただ、扱うテーマ故に受け入れられるかは個々人の思想、嗜好によるところが少なくないように思う。
土の中の子供 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 土の中の子供 (新潮文庫)より
4101289522
No.57
(3pt)

長けた精神描写

本書には05年芥川賞受賞作の「土の中の子供」とともに、もう一編「蜘蛛の糸」という短編も収録されている。
前者は暴力、後者は回避という異なった焦点で描かれるが、どちらも主人公の抑鬱、葛藤を通して、最終的にある種の克服に至る過程が描かれる。
外面(状況)も繊細に描写しつつ、内面(心の動き、精神の流れ)へのアプローチに成功しており、中盤から読了までは目が離せなかった。
ただ、扱うテーマ故に受け入れられるかは個々人の思想、嗜好によるところが少なくないように思う。
土の中の子供 Amazon書評・レビュー: 土の中の子供より
4104588040
No.56
(2pt)

なんだかなあ…

純文学がダメだダメだといわれて久しいが、なんでダメになってくのか
その原因がよくわかったような気がします。
この作品が芥川賞でしょう?
いったい何十年前の作品ですかって感じじゃないですか。
もういい加減やめようよ、こういういかにもブンガク風ブンガク。
こういうの書かないと賞もらえないんじゃないかとか、
こういうんじゃないとブンガクって思ってもらえないんじゃないかって
勘違いして後追いするヒトがたくさん出てきて、それでますます純文学がダメになっていく。
その縮小再生産の様子を見る思いがした。
この小説を読んで。
土の中の子供 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 土の中の子供 (新潮文庫)より
4101289522
No.55
(2pt)

なんだかなあ…

純文学がダメだダメだといわれて久しいが、なんでダメになってくのか
その原因がよくわかったような気がします。
この作品が芥川賞でしょう?
いったい何十年前の作品ですかって感じじゃないですか。
もういい加減やめようよ、こういういかにもブンガク風ブンガク。
こういうの書かないと賞もらえないんじゃないかとか、
こういうんじゃないとブンガクって思ってもらえないんじゃないかって
勘違いして後追いするヒトがたくさん出てきて、それでますます純文学がダメになっていく。
その縮小再生産の様子を見る思いがした。
この小説を読んで。
土の中の子供 Amazon書評・レビュー: 土の中の子供より
4104588040
No.54
(2pt)

うーん?

まず、文体としては内容の重さに反比例してするすると読めました。
でもそれがいいことなのかどうか…。私には違和感が。
ときどきキラリとする言葉もあるのですが、物事の表現がどうも
ステレオタイプな印象です。
これらの作品の内容が中村さんご本人の経験とどれほど
関わっているのかは知りませんが(調べたらわかるのかも)
深く関わっているのだとすれば、こうやって世の中に出すにはなんだか
まだまだいろいろしなくてはいけないことが多いように思いますし
関わっていない、完全なフィクションであるとしたら
ずいぶん失礼なというか…。結局何をしたいのかしら?という感じ。
創作というものが、悩んで悩んで、考えて考えて、それをアウトプットする
ということだけだとは思いませんし私はあまり好きではないですが
本人がそれを望むなら、もっと色んな分解の方法を試してみるべきでしょうし
そうではないのならもっと明るい主題を選んだほうが、本人も周りの人間も
ハッピーなのではないかと思います。個人的には。
受賞がどう影響するかが微妙ですが、うまく働くといいですね。
何年か後にすごいものを書いていたらいいなぁ。
土の中の子供 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 土の中の子供 (新潮文庫)より
4101289522
No.53
(2pt)

うーん?

まず、文体としては内容の重さに反比例してするすると読めました。
でもそれがいいことなのかどうか…。私には違和感が。
ときどきキラリとする言葉もあるのですが、物事の表現がどうも
ステレオタイプな印象です。
これらの作品の内容が中村さんご本人の経験とどれほど
関わっているのかは知りませんが(調べたらわかるのかも)
深く関わっているのだとすれば、こうやって世の中に出すにはなんだか
まだまだいろいろしなくてはいけないことが多いように思いますし
関わっていない、完全なフィクションであるとしたら
ずいぶん失礼なというか…。結局何をしたいのかしら?という感じ。
創作というものが、悩んで悩んで、考えて考えて、それをアウトプットする
ということだけだとは思いませんし私はあまり好きではないですが
本人がそれを望むなら、もっと色んな分解の方法を試してみるべきでしょうし
そうではないのならもっと明るい主題を選んだほうが、本人も周りの人間も
ハッピーなのではないかと思います。個人的には。
受賞がどう影響するかが微妙ですが、うまく働くといいですね。
何年か後にすごいものを書いていたらいいなぁ。
土の中の子供 Amazon書評・レビュー: 土の中の子供より
4104588040
No.52
(3pt)

人との関わり。

表題となっている「土の中の子供」と短編「蜘蛛の声」の2話が収録されている。
どちらの作品も不遇な幼少期を過ごした男性が主人公であり、成長の過程で、
あるいは大人になった現在も、当時の記憶が色濃くその後の人生を多い尽くしている様が
悲しく、暗い。
「蜘蛛の声」は、多い尽くされ混沌としている男の姿が描かれ、「土の中の子供」は
同じであるものの、虐待後に引き取られた施設長との出会いのおかげで、かろうじて均衡を
保ち、人生の光を失っていない点に、大きな違いがあると思う。
人との出会い、頼れる者の存在、そして、自分が頼られる存在になることの大切さを見た、
というのは安易な感想だろうか。
土の中の子供 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 土の中の子供 (新潮文庫)より
4101289522
No.51
(3pt)

人との関わり。

表題となっている「土の中の子供」と短編「蜘蛛の声」の2話が収録されている。
どちらの作品も不遇な幼少期を過ごした男性が主人公であり、成長の過程で、
あるいは大人になった現在も、当時の記憶が色濃くその後の人生を多い尽くしている様が
悲しく、暗い。
「蜘蛛の声」は、多い尽くされ混沌としている男の姿が描かれ、「土の中の子供」は
同じであるものの、虐待後に引き取られた施設長との出会いのおかげで、かろうじて均衡を
保ち、人生の光を失っていない点に、大きな違いがあると思う。
人との出会い、頼れる者の存在、そして、自分が頼られる存在になることの大切さを見た、
というのは安易な感想だろうか。
土の中の子供 Amazon書評・レビュー: 土の中の子供より
4104588040
No.50
(5pt)

久しぶりに出会ったいい作家。

 他のかたのレビューを見てみると、わりと辛口の感想が多くて正直驚いた。
最近は、読んだ後に何も残らない、読後感のさっぱりしたものが人気になり、洗練された……というか簡素な文章が小説によく使われていると思う。そのせいか、ストーリーの以外性や奇をてらった表現方法ばかりが目立ち、描写表現が大幅にカットされている場合が多いような気がする。
 しかし、この作家は一切の手抜きなしで、主人公が感じるモノを正確に、緻密に言葉に表そうと努力している。言葉に言い表し難い感覚や心情、極めて主観的なものの見え方などを上手く(丁寧に)言葉に表現している。 そのため、読んでいる側が本の中の世界に入っていき易いし、主人公にシンクロできた。筆力があり、読んでいて感動した。
 
 この小説の書き方が純文学っぽくてとっつきにくいとか、古いとか思う人がいるようだけど(好みによるんだろうけど)言葉だけで世界をつくる作家は、言葉でどこまで世界を表現できるかという、この努力がなにより大切だし、必要不可欠だと私は思っている。
 なんとなく、梅崎春夫に雰囲気が似ている気がした。
この人が書く長編小説をぜひ読みたい。今後に期待します…!!!
 
土の中の子供 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 土の中の子供 (新潮文庫)より
4101289522
No.49
(5pt)

久しぶりに出会ったいい作家。

 他のかたのレビューを見てみると、わりと辛口の感想が多くて正直驚いた。
最近は、読んだ後に何も残らない、読後感のさっぱりしたものが人気になり、洗練された……というか簡素な文章が小説によく使われていると思う。そのせいか、ストーリーの以外性や奇をてらった表現方法ばかりが目立ち、描写表現が大幅にカットされている場合が多いような気がする。
 しかし、この作家は一切の手抜きなしで、主人公が感じるモノを正確に、緻密に言葉に表そうと努力している。言葉に言い表し難い感覚や心情、極めて主観的なものの見え方などを上手く(丁寧に)言葉に表現している。 そのため、読んでいる側が本の中の世界に入っていき易いし、主人公にシンクロできた。筆力があり、読んでいて感動した。
 
 この小説の書き方が純文学っぽくてとっつきにくいとか、古いとか思う人がいるようだけど(好みによるんだろうけど)言葉だけで世界をつくる作家は、言葉でどこまで世界を表現できるかという、この努力がなにより大切だし、必要不可欠だと私は思っている。
 なんとなく、梅崎春夫に雰囲気が似ている気がした。
この人が書く長編小説をぜひ読みたい。今後に期待します…!!!
 
土の中の子供 Amazon書評・レビュー: 土の中の子供より
4104588040
No.48
(2pt)

なぜこの作品が芥川賞?

選考評は読んでないが、僕にはこの作品の“意味”が正直わからない。著者がどんな不幸な境遇に育ち、それを克服したか、なんて“リアル”の部分に評価の比重が置かれている訳ではないだろうが。 
  この本に描かれていることは作中の言葉を借りれば“自分とは関係のない世界”である。そしてそうした“世界”に想像力を働かせることが読書の楽しみだと思うが、一方で重要なのは“世界”を提示する作者の世界観であり表現方法だろう。不幸な生い立ち、それに対する自虐、自閉、無力感、弱者が弱者を叩くネガティヴ・スパイラル、そして崖っぷちの転機によって人生に光明を見出す...いかにも文学的な主題と起承転結な展開。メディアの中の社会事件や欺瞞的な幸福の情景と自分の境遇をパラレルに対比させる手法なんて30年前の井上陽水やられてもなぁ。“潰れたヒキガエル”“薄汚れた軍手”“狂ったように吠える犬”といったメタファーの頻出も鬱陶しい。さらに主人公だけでは飽き足らず“男に捨てられ孕んだ子を死産”なんて70年代女流作家的ネガティヴモチーフな相方の女を登場させて物語を補強、それって“群れから離れた男と女が子羊みたいに肌寄せ合って”森進一「東京物語」ですか?
 なんと言うか一々古くて、大昔の文学をトレースしているようにしか思えない。時折ハッとするような表現もあるだけに全体としての陳腐さが惜しい。
  あとがきの「僕は小説というものに、随分と救われてきた。世界の成り立ちや人間を深く掘り下げようとし、突き詰めて開示するような物語、そういったものに出会っていなければ、僕の人生は違ったものになっていたと思う」といったおめでたい文学観の披瀝は勝手だけど、そういう文脈でこの小説が評価されているんだとしたら、今ってほんとに救いようのないほど暗い、重い、余裕のない、被害妄想で不幸な時代なんだろうな。考え方次第だと思うけど。
土の中の子供 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 土の中の子供 (新潮文庫)より
4101289522
No.47
(2pt)

なぜこの作品が芥川賞?

選考評は読んでないが、僕にはこの作品の“意味”が正直わからない。著者がどんな不幸な境遇に育ち、それを克服したか、なんて“リアル”の部分に評価の比重が置かれている訳ではないだろうが。 
  この本に描かれていることは作中の言葉を借りれば“自分とは関係のない世界”である。そしてそうした“世界”に想像力を働かせることが読書の楽しみだと思うが、一方で重要なのは“世界”を提示する作者の世界観であり表現方法だろう。不幸な生い立ち、それに対する自虐、自閉、無力感、弱者が弱者を叩くネガティヴ・スパイラル、そして崖っぷちの転機によって人生に光明を見出す...いかにも文学的な主題と起承転結な展開。メディアの中の社会事件や欺瞞的な幸福の情景と自分の境遇をパラレルに対比させる手法なんて30年前の井上陽水やられてもなぁ。“潰れたヒキガエル”“薄汚れた軍手”“狂ったように吠える犬”といったメタファーの頻出も鬱陶しい。さらに主人公だけでは飽き足らず“男に捨てられ孕んだ子を死産”なんて70年代女流作家的ネガティヴモチーフな相方の女を登場させて物語を補強、それって“群れから離れた男と女が子羊みたいに肌寄せ合って”森進一「東京物語」ですか?
 なんと言うか一々古くて、大昔の文学をトレースしているようにしか思えない。時折ハッとするような表現もあるだけに全体としての陳腐さが惜しい。
  あとがきの「僕は小説というものに、随分と救われてきた。世界の成り立ちや人間を深く掘り下げようとし、突き詰めて開示するような物語、そういったものに出会っていなければ、僕の人生は違ったものになっていたと思う」といったおめでたい文学観の披瀝は勝手だけど、そういう文脈でこの小説が評価されているんだとしたら、今ってほんとに救いようのないほど暗い、重い、余裕のない、被害妄想で不幸な時代なんだろうな。考え方次第だと思うけど。
土の中の子供 Amazon書評・レビュー: 土の中の子供より
4104588040
No.46
(4pt)

濃厚な暗さ

 芥川賞という事で読んでみました。
 最初は文章が冗長でありわかりにくく、暗いだけでおもしろみが感じられませんでしたが、中盤にかけての展開から夢中で読んでしまいました。幼少の頃の抑えられていた感情が徐々に吹き出してくるシーンや、幻聴でめまいを起こすシーンは暗いだけでなく、引き込まれる怪しい魅力があると思います。私自身がネガティブ思考なのもありますが、主人公の暗い物の考え方には共感できます。最後の「私は土の中から生まれたんですよ」という台詞には、グッと来ました。
 プロットも回想があって、それで終わりという訳ではなく、またひと山用意してあるのはなかなかです。収録されているもう一遍の方も、嫌疑と憂鬱さが幾重にも重なって自分の正体を見失ってしまうという構成は秀逸だと思います。個人的には文章にも癖が無く、もう一遍の方が私は気に入りました。
 ただ、人物設定が薄っぺらく、人間味が感じられないようなキャラクターもちらほら。前述した文章の件と併せて☆一つマイナスです。しかし、某ホームページのように登場人物に関するネーミングセンスで、著者の才能を測ると言うのは納得がいきませんね。
 興味があれば読んでみるのをお勧めします。徒に楽しさやわかりやすさだけを追いかけている現代文学の風潮には珍しい作品かと思います。
土の中の子供 (新潮文庫) Amazon書評・レビュー: 土の中の子供 (新潮文庫)より
4101289522