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天山を越えて
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【この小説が収録されている参考書籍】
天山を越えての評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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支那事変前夜の関東軍がブイブイいわしていた頃の満洲からシルクロードが舞台。 魅力的な舞台設定に加えて、現代(昭和56年)、小説「東干」発表当時(昭和35年)、そして物語中の時代(昭和8年)を舞台にした凝った三段構成の演出、なにより1983年の第36回日本推理作家協会賞を獲っているということで、なかなか期待を高めてくれる。 ところが主人公の衛藤は、鍾馗様ばりの髭を生やした魁偉な風貌だが、中身は極々平凡な人物。冒険という名称でイメージされる能動的なものは最初から最後までまったくなく、ただただ状況に流される一兵卒に過ぎない。 これは推理作家協会賞だけでなく、江戸川乱歩賞でも同様の傾向があるのだが、わたしの考える推理小説/探偵小説からは大きく逸脱してしまってる作品が多い。 たとえ僅かなりと「推理小説」の範疇にひっかけるならば、推理される謎がなければ話にならないが、本書で謎にあたるのは、前述したように“ひっそりと暮らしていた老人がある日立派な車に乗せられて姿を消した。なんで?”というところだ。しかし広くエンタメ小説ならば、読者のリーダビリティを稼ぐために、前半何らかの情報を伏せておいて後半に開示するというのは特別なことではない。むしろその要素がない小説は、一部のよくわからない私小説くらいでは? まぁ推理小説という特殊なジャンルが閉塞しないように、間口を広げることは悪いことではないので、冒険小説として面白いのなら文句はないのだが……。 | ||||
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中国、特に近世歴史に興味を持つ私は、この小説のタイトルである「天山」が目に留まり、アマゾンの概説を読んで購入した。まさに、陸路四つのシルクロードの内の一つである敦煌・トルファン・ウルムチと天山北路をたどる壮大な冒険の旅である。始めの一章27ページは、序説らしく主人公の年老いた現況を淡々と語っている。二章から冒険が始まる(戦時中外地での稀有な経験を回顧する)のだが、稀有な話の展開が面白くてグイグイと引き込まれてついつい長読みしてしまう。しかし、読んでる間は話のテンポも良くて面白かったが、読み終わってしばらく経つと、遠い異国を舞台に同じ人物との絡みが何度も繰り返されるのは非現実っぽくて正直違和感を感じる。だから、総合点は星3.5位。 | ||||
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荒川洋治の「一年一作百年百篇-1900~1999」の1982年選定作品。 わくわくするような冒険小説です。 ですが、その魅力は普通のジャンル作品では考えられないところにあるのです。 やらされた冒険。慫慂する苦難。待つこと、耐えること。速度のなさ。受け入れること。葛藤しないこと。 ふつうの冒険小説に要求される闘志、攻撃性などを裏返したものでつくられている。 そもそも回顧で話がされるから、主人公の帰還は約束されている。 なのに、ハラハラドキドキは止まらない。語り口はどこまでも優しく温かい。 傑作です。 | ||||
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喫煙しない私にはタバコかカビの臭いが気になりました。 昔読んで心に残った本だったのでもう一度懐かしく読み返したくて古本で購入しました。 そんな臭いも古い懐かしさを盛り上げてくれましたよ~。 お値段にも安く反映されているので文句は言えませんね・・・満足です。 内容、そりゃ~もう忘れた頃にもう一度読みたくなる本でした皆様も是非お読みください。 | ||||
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大戦時、中国戦線を有利化すべく、辺境の移動戦闘民族の英雄へ、日本人花嫁を政略結婚させようと画策する政府。花嫁、護衛の軍人、花嫁の恋人の運命が天山山脈を中心に交錯するという作品。 その旅に同行しかたのような、まさに艱難辛苦、過酷な状況の緻密な描写に魅せれる。 元軍人が書いた埋もれた実録小説の体裁で始まり、ラストはその小説の顛末を含め見事に締めくくられている。とても良くできた壮大かつ重厚、ロマンあふれる物語だ。男女の心の機微の細やかさも良い。 直木賞候補作だがが、著者の受賞作『黒パン俘虜記』よりこちらの方がずっと好み。【日本推理作家協会賞】 | ||||
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探していた書籍できれいな品物を求める子世ができました。 多謝。 | ||||
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中央アジアを舞台にした恐ろしく密度の濃い冒険譚で、一筋縄ではいかないストーリー展開が 読むのを飽きさせず、グイグイ物語に引き込んでくれた。 当時の世事を利用したストーリーが違和感のない話の流れを上手く作っているのが特に素晴らしい そして余韻の残るあのラスト…… 創作ではあるものの、そこには人間の一生という深い人生ドラマが感じられ、 まさに物語の終わりを告げるに相応しいものだといえた 近年中々お目にかけることができない珠玉の一作 | ||||
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胡桃沢耕史といえば、一級の冒険ロマン小説の大家であるが、ご存じない方のために、簡単に書くと、一頃”清水正二郎”名で「性豪小説」(?!)を書きまくった事もあるので、この方面でなら読まれた方もいらっしゃるのでは?。 昭和58年、「黒パン俘虜記」で直木賞を受賞する。冒険小説のほかに、「翔んでる警視シリ−ズ」も売れてるが、彼の真骨頂は、わたしは、冒険ロマン小説だと思う。 たとえば、「60年目の密使」は、共産党が地下に潜っていた時代の日本を脱出、モスクワに留学した主人公が政府高官夫人と恋に落ち、諜報機関も絡み、激動の時代を送る・・・。 「上海リリ−」は、1930年代に、租界で、社交界の華"、中・日語を操る美貌で謎のダンサ−。 日本の特務機関、CC団、藍衣社、CIAまで登場、誰がどの機関に属するかは謎・謎・・・。 主人公は、上海へ遊学しリリ−と知り合う。リリ−の正体は、日本人、でも何故か、国共内戦が始まると八路軍の大物の愛人となり、その後上海市政府の幹部に昇進、数十年ぶりに訪ねた主人公と愛を交わす。 「パリ経由夕闇のパレスチナ」、「太陽の祭り」(インカの遺跡ペル−を舞台に全共闘で日本を追われた主人公が日本の公安に取引を強要される・・・)などなど、この系列は13作ある。 「天山を越えて」は、実体験に基づいたフィクション。胡桃沢は拓大出身で、中国語はぺらぺら、というところを、特務機関に見込まれ1930年代、密命により、この、地方を旅している。 小説も、同時代を舞台に今の新疆ウイグル自治区を支配した若き将軍に、関東軍はアメリカ育ちの日本娘を嫁がせて、中国支配達成時に将軍を日本側に付かせようと政略結婚を画策する。主人公は少数の護衛隊と娘を護りつつ、西安から砂漠と5000メ−トルの山々が連なる天山山脈を越えウルムチを目指す。 今、この地方は石油・天然ガスが出て政府は大型トラックの走る道路や、鉄道を作り開発を進めているので、80年前とは様変わりしている。当時はみちなど無い土漠を荷馬と人力荷車と徒歩で越えるのである。 70年後、"ガン末期”の女は主人公と天山山中を死に場所として、抱き合うのである。 これらの小説に共通するのは、虚構の話ではなく、実際に起こった事件、実在の人々をちりばめて、ありうる話に仕上げてるが、中身はぶっ飛んで、奇想天外な展開となり、彼の”Story Teller”としてのうまさがよく出ている。 それと、主人公には、だいたい、うら若き美女が絡むので、乾燥したタクラマカン砂漠が舞台でも、艶っぽく仕上がっていて、読んでて楽しい。 もうひとつ、60年前とか、80年前という時代と、現在が交錯して出てくる、タイムマシンめいた面白さもある。 更に、私は、旅行に行く前に読んでおくと、カシュガルから敦煌へ行く時など、主人公達はここを歩いて数ヶ月かけていったのかと、古の情景を妄想する楽しみも増える。 と、独りよがりに、褒めちぎったが、総ての人への”レビュ−”になったかは自信が無い。 というのは、私の年代(1933生)の常識であっても、若い方々は、CC団、藍衣社、八路はおろか、非合法共産党、国共内戦、援将ル−トもご存知あるまい。いちいち説明をつけると長文になるので、興味をもたれたら”Wikipedia”などで読んでほしい。 とにかくスケ−ルが大きい、時間・空間を越えて話が展開するのである。それに、いまは、百科事典に載っていないようなことでも、ネットで簡単に調べられるので、知らない事柄に突き当たっても容易に読み進められると思う。 ぜひ、「天山を越えて」だけでなく胡桃沢のとりこになってほしい。生きる楽しみがひとつ増える。 | ||||
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