幽霊塔
評判
幽霊塔の評価:
4.11/5点 レビュー 81件。 C ランク
Amazonレビュー一覧
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全140件 101〜120 6/7ページ
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幽霊塔の評価:
4.11/5点 レビュー 81件。 C ランク
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目玉はもちろんオールカラーで描かれた宮崎駿作画の「ぼくの幽霊塔」。セルフ突っ込みを入れつつ「千と千尋」な擬洋風化け物時計塔が立ち上がってくる様はまさに圧巻の一言。原作にはない幕末維新の太陰太陽暦時代を反映した月時計を配するあたりは流石の慧眼(確かにギミックとしては和時計の方が遥かに面白い)。宮崎駿オリジナルのみならず、本編描写準拠の乱歩時計塔。そのネタ元である涙香時計塔に、本家本元アリス・M・ウィリアムソン「灰色の女」のローンアベイ館までをも内部図解入りでビジュアル化し、その変遷を宮崎キャラ化した涙香と乱歩が解説してくれる上に本編の一部を絵コンテ化して見せてくれるのだからもうお腹一杯。
ジブリファンは勿論、「幽霊塔って、時計の秒針で首チョンパされる話だっけ?」と、うろおぼえの既読読者の方もこの機会に再読しておいて損はないでしょう。
ちなみに、ここで描かれる乱歩は石井輝男~実相寺昭雄路線をガン無視した「あやしくてふしぎなお話を書く」少年小説の「乱歩おじさん」なので、良くも悪くも90年代の映画「RAMPO」前後に確立された現在の乱歩像に慣れ親しんでいると、このあたりの造型には違和を覚えるでしょうが、その分黒岩涙香が堂々たるインチキ親父ぶりを発揮してイイ味だしてます。
問題なのはこの「ぼくの幽霊塔」を先に読んでしまうと本編の乱歩の「幽霊塔」の粗が目立ってしまうことで。漫画では「ホホホと笑わない」と婉曲に表現された、「女は見た目が十割」丸出しな主人公の行動原理にはドン引き必至。列車転覆に見られる行き当たりバッタリかつご都合主義な展開も多く、多分作者達が惚れこんだであろう、怒りのデスロードばりの巨大暴風に吹き飛ばされかけながら、それでもなお抗おうとするヒロインの凛とした姿も時として展開上の都合に合わせて相反し合う雑多な要素を詰め込まれた木偶人形にしか見えないことがあります。中でも最大の欠点は「時計塔の謎を解くこと」が「物語が進行する中で生じた諸問題の解決」に直接に繋がらないということ。世間的な評価は知りませんが、個人的心証として本作は数ある乱歩作品としては下位ランクに属するものであり、「ぼくの幽霊塔」読了後、すっかりジブリナイズされたイメージで読み始めると「通俗文化の王道」とブチ上げる宮崎駿の思い入れとは裏腹に「昨日の世界」が剥き出しの差別と偏見に満ち満ちた「激安感覚」溢れるものであったことを思い知らされることになります。冒頭に置かれた色鮮やかなカラーページを無視するのはかなり難しいとは思いますが、可能ならば本編読了の後に「ぼくの幽霊塔」を読むことをお薦めします。
*追記
・本書はジブリ美術館の2015~2016の企画展示「幽霊塔へようこそ」展のサブテキストとして発売されたものですが、これを片手にジブリ美術館に向かおうとする方は、吉祥寺からはちょっとばかり距離が離れておりますが、宮崎時計塔の時計塔部分以外のモデルになったとおぼしき上野の旧岩崎邸庭園(決め手は洋館隣の和屋敷の存在。ここには喫茶室もあって一服できます)にも足を向けてみては如何でしょうか。たまに無料の音楽会を開いたりしてくれます。
・ジブリ発行の無料雑誌「熱風」2015年7月号の第二特集は「幽霊塔へようこそ展」。宮崎駿のインタビューを筆頭に乱歩のお孫さんである平井憲太郎氏などが文章を寄稿されており大変興味深い内容となっております。ただし、宮崎氏のインタビュー内の「とんでもなく大きな時計の歯車というのは、子供たちの妄想の中にしか存在しない」といった発言にはご注意を。あの巨大な歯車群が動かしているのは時計の針なぞではなく、「モダンタイムズ」や「メトロポリス」と同じく、万物を使い捨て可能な部品=歯車と見なす「世界」そのものなのだということをあの人が知らないはずがなく(だからこそ最後に爆撃でふっ飛ばしてるわけで)。おそらくは「自分の力でこのカラクリを解き明かせ」というつもりなのでしょうが、もうちょっと親切にヒントを与えてくれても良いのではないかと思われます
・カラー最終頁「わしらは大きな流れの中にいるんだ~」以下のくだりにちょっとしんみりした方は「ホームズなんかよりルパンの方が全然上」と公言し、夭逝しなければ007に夢中になってその亜流を書きまくったであろう小栗虫太郎先生のことも少しだけ覚えておいてあげてください(「ぼくの幽霊塔」を読むとロマネスクにゴシックのステンドグラスをはめ込む黒死館の構造が、多彩な仕掛けを埋め込む為の「壁の厚さ」を必要としたからだということがよくわかりますし、何より「こういうのがやりたいんだ」と望みながらも全作品通して0.1%も達成できなかったものこそ「カリオストロの城」だったりするのですよ)